【WIPO】グローバル・イノベーション・インデックス 2024年版発行(9月26日)

世界知的所有権機関(WIPO)は、9月26日付、毎年発行しているWIPO加盟133国のイノベーション力を評価するグローバル・イノベーション・インデックス(GII、Global Innovation Index)の17回目2024年版を公示した。

2024年版GIIによると、トップは昨年同様、スイス、スウェーデン、アメリカ、シンガポール、イギリスが上位にランキングされ、中国、トルコ、インド、ベトナム、フィリピンが過去 10 年間での急成長の国に挙げられるとしたが、2020年から2022年にかけてのイノベーション投資ブームの反転、金利上昇などでベンチャーキャピタル(VC)資金が2023年比約40%減少、研究開発(R&D)支出の伸びは鈍化し、国際特許出願と科学出版物は減少し、イノベーション投資に暗雲が立ち込めていると報告している。なお、近年、サウジアラビア、カタール、ブラジル、インドネシア、モーリシャス、パキスタンが最も順位を上げており、いずれも3~4年連続好成績を維持していることも指摘している。日本は、一つ落ちて13位、地域では4位である。

GII2024年では、 「社会的起業家精神は増加しているのか?」という調査を主題にしているが、全体的な調査結果を以下のように挙げている。
・2020年から2022年にかけてブームが見られたが、2023年は科学出版物、VC、国際特許出願は低迷し、R&Dは減速した。
・VCや科学出版物はコロナ前の水準まで急激に減少し、ラテンアメリカやアフリカなどの新興地域で顕著である。
・リスクファイナンスを取り巻く環境悪化を反映し、VC投資額は2022年から36%減、2023年にさらに39%減となった。
・VC取引件数が2023年には9.5%減少見込である。
・国際特許出願件数が2023年に1.8%減少、2009年以来初めての減少となった。
・世界の研究開発費は2022年に5%増加しが、2023年は実質3%に減少が予測される。
・企業のR&D支出は、2023年実質約6%増加したが、過去10年間の長期成長率(約8%)を下回っており、2019~2021年の10~15%のピークやパンデミック前の成長率よりも低下した。
・成長技術分野は、健康関連とコンピュータ処理能力が急速に増加し、5G(2022年比約25%増)、ロボットや電気自動車(EV)では、EV投資が2022年比54%増加した。
・一方、グリーンテクノロジーは過去10年間の平均よりも遅く、スーパーコンピュータのエネルギー消費削減、電池価格のコストダウンの難しさが浮き彫りになった。

参照サイト:https://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2024/article_0013.html

【中国】代理人との業務委託契約書ひな形に意見募集(9月24日)

国家知識産権局(CNIPA)は、9月24日、特許及び商標代理人と締結する業務委託契約書ひな形(代理委托合同示范文本)とその締結ガイド(签订指引)を作成し、一般からの意見募集を開始した。
 CNIPAは、国務院弁公庁が公布した「特許転化運用特別行動プロジェクト(2023-2025年)」、「国家知識産権局など17部門の知的財産権サービスの高品質発展の加速に関する意見」に基づき、特許や商標の代理サービスの質の向上、特許の転化運用や商標ブランド構築促進のため、中華全国特許代理師協会、中華商標協会と協力し特許及び商標に関する代理委託契約の雛形と締結ガイドを制定した。

 背景としては、特許代理条例(14条)や商標代理監督管理規定(13条)に書面による委託契約を締結しなければならないとの規定があり、雛形を提示することで当事者双方の合法的権益の確保や業界の事業秩序を標準化しようとする方針がある。
 契約書のひな形は、特許も商標も概ね統一されており、前文、委託事項、委託者の権利・義務、受託者の権利・義務、秘密保持義務、作業期限、料金、双方の明確な共通認識、違約責任、その他の約定事項、紛争解決、契約期間及び解除、契約発効・変更と終了の12項目からなる。
 締結ガイドは、それぞれの条項について、解説と意義を説明する内容となっている。

 代理人によっては税務問題もあるので、既に業務委託契約の締結を顧客に通知し、締結している場合もあると思われるが、締結ガイドで内容を確認する意味はあるので、一読をお勧めする。

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2024/9/24/art_75_195107.html

【中国】最高人民法院による独占禁止と不正競争八注目典型事例(9月11日)

最高人民法院は、2024年の中国公平競争政策宣伝週間に合わせて、8件の独占禁止と不正競争防止の典型事例を発表した。独占禁止は、主に水平型独占禁止、支配的地位の乱用など、不正競争は一般条項の適用や誤認混同、営業秘密などが含まれる。事例7は、8月の江蘇高級人民法院の無印良品の判決とも繋がり、外国企業にとり有意義な内容である。概要は、以下の通り:

事例1.「ビーフンメーカー」水平型独占協定事件
 競争関係のある複数の事業者が競争関係のある他の事業者をボイコットする際に取った横方向、縦方向に交錯する契約措置の手配を明らかし、一般消費財での独占行為を規範化した。
 商品価格維持、ボイコット取引の認定及び損害賠償の確定((2023)最高法知民終653号)

事例2.「有線デジタルテレビスクランブル信号サービス公的企業」の市場支配地位濫用事件
 ケーブルデジタルテレビ供給者と受信者の間で事件は発生したが、エンドユーザーがケーブルデジタルテレビを視聴する民生福祉に直接関係し、公平な競争の維持に意義がある。
 抱合せ販売、取引拒否行為の認定((2023)最高法知民終383号)

事例3.「天然ガス会社」市場支配的地位による拘束取引事件
 行政処罰不服訴訟であり、原告の立証責任を軽減するとともに、民生用天然ガスの利用者の権益維持及び業界の市場競争秩序を規範化した。
 独占禁止行政処罰後続訴訟における立証責任及び損害賠償の確定((2023)最高法知民終1547号)

事例4.「野菜卸売市場」の市場支配的地位濫用事件
 最新の独占禁止民事訴訟の司法解釈の規定に基づき仲裁合意では人民法院の独占民事紛争受理を排除できないことを認定し、契約履行行為による市場支配地位濫用紛争の管轄基準を明確にした。(最高法知民終748号)

事例5.「新エネルギー自動車車体」営業秘密侵害事件
 組織的、計画的、大規模な技術秘密侵害行為に対する典型的事例で、懲罰的賠償、侵害に対する具体的民事責任を広範囲積極的に検討された。
 営業秘密侵害の判断及び侵害停止の具体的措置((2023)最高法知民終1590号)

事例6.「轻抖」不正競争紛争事件
 「ホワイトウォッシング(刷粉刷量)」などのインターネット業界の裏の部分を取締る典型的な事例で、流量に関する虚偽宣伝不正競争行為を適時かつ効果的に規制し、プラットフォーム事業者の誠実な経営、健全な業態を保障し、公平な競争、規範的で秩序ある市場環境を構築に貢献した。
 流量の組織化や偽トラフィックの作成など、誤った宣伝行為の特定((2022)浙0110民初8714号)

事例7.「シュナイダー」偽造誤認混同事件
 有名登録商標に便乗するなどの模倣・誤認混同行為(SchneiderにSCHNEiDERと寄せる、或いは会社名の一部に「施耐德」を使用)を厳しく処罰した典型的例で、権利侵害による利益が法定賠償の最高限度額を超えていることを証明する十分な証拠がある場合、人民法院は証拠提出責任を合理的に分配し、裁量による賠償額を確定することができる。
 権利侵害による巨額の悪意のある権利侵害行為に対する賠償額の確定((2021)蘇知終19号)

事例8.企業信用データプラットフォーム不正競争事件
 ビッグデータ業態の発展段階、ビジネスモデル、技術、及びデジタル経済発展の現状と法則を十分に考慮し、原データ主体の競争権益の範囲及びデータ使用者が負担すべきデータ品質保証義務などを合理的に確定した。
 データ利用者の不正競争行為の認定((2023)広東03民終4897号)

参照サイト:https://mp.weixin.qq.com/s/D0FTanyG45fMts60T90_rA

【中国】「AIセキュリティガバナンス枠組」初版を発行(9月9日)

9月9日、2024年国家サイバーセキュリティ広報週間のメインフォーラムで、国家サイバーセキュリティ標準化技術委員会( 全国网络安全标准化技术委员会、以下、委員会)は、「AIセキュリティガバナンス枠組(人工智能安全治理框架)」のバージョン1.0をリリースした。

枠組は、AIのイノベーション的発展を奨励することを第一の重要任務とし、AIのリスクを効果的に防止・解消することを出発点と帰結点とし、包括的で慎重に、安全を確保し、リスクの方向性、迅速な管理、技術管理の結合、協同対応などのAIの安全管理の原則を提示している。

全体は以下の6項目27ページからなり、中国とと英語で作成されている。
1.人工知能安全管理の原則
2.人工知能セキュリティ管理フレームワーク構成
3.人工知能セキュリティリスク分類
4.技術的対応
5.総合的なガバナンス措置
6.人工知能安全開発応用ガイドライン

参照サイト:https://www.tc260.org.cn/front/postDetail.html?id=20240909102807

【中国】上海市営業秘密侵害十大典型事例(9月3日)

上海市場監督管理局は、9月3日付、昨年に続き2023年度の営業秘密侵害にかかる十大典型事例を発表した。すべて元従業員による犯罪であり、不正競争防止法の適用であるが、特に、9番目は外国への情報漏洩を刑法に新設された条項で処罰した事例である。また、10番目は行政、刑事、民事のセットの事件として注目される。その概要は以下の通り:

事例1:中某半導体設備(上海)股份有限公司vs科某研究開発股份公司などの営業秘密侵害事件
(上海市高級人民法院(2017)沪民终169号)
原告のプリモD-RIE誘電体エッチング設備にかかる営業秘密侵害で、当事者の秘密保持期間満了後も一般に開示されていない技術は営業秘密であり、不正な手段で技術秘密を獲得、使用した場合、侵害の停止、損害賠償などの責任を負わなければならないとして、使用禁止と損賠賠償を命じた。

事例2:容某実業(上海)有限公司vs吴某氏らの営業秘密侵害事件
(上海市徐汇区人民法院)
原告は金属材料の輸出入会社で、被告は元従業員でビジネス情報である外国顧客対応を5年間担当し、退職時に顧客情報を獲得し自らの事業に違法に利用した。原告が損害を立証できないところ、裁判所が税関に開示請求を行い、1500万ドル位以上の取引を確認し、侵害停止と損害賠償を命じた。審理の必要に応じて裁判所が立証責任を合理的に担当し、侵害停止と損害賠償を命じた。

事例3:蔡某氏の営業秘密侵害事件
(上海市楊浦区人民検察院)
耐某実業(上海)有限公司が秘密管理する商品(シューズ)の価格と在庫情報にかかるビジネス情報を従業員がダウンロードしていることを知った被告はその情報を入手し、自らのWeChat「ディスカウントストアの商品一掃」で会員に提供した。検察は新業態における営業秘密侵害での隠蔽された手段、複雑な証拠収集、営業情報や営業秘密の特定方法などの侵害立証に積極的に対応し、処罰した。

事例4:陸某X氏、陸某Y氏の営業秘密侵害事件
(上海市虹口区人民検察院)
被告らは元勤務先の上海某信息科技有限公司が開発し秘密保持措置を採っていた「ドラゴンボール伝奇」ゲームのアプリケーションコードを使用し、自ら設立した上海某網絡科技有限公司で「ドラゴンボールZ戦士」ゲームを開発し、オンラインで運営した。検察は、ゲームソフトコードを営業秘密の対象と認定し、違法所得に基づき処罰した。

事例5:青島信某高新材料有限公司、金某氏らの営業秘密侵害事件
(上海市人民検察院第三分院)
被告らは上海邁某貿易有限公司に勤務中に青島信某高新材料有限公司を設立し、秘密保持義務に違反し、青島信某社の技術情報を利用して有機ケイ素化合物を製造販売した。検察は、難易度の高い化学工業分野で、「技術情報+製品効果」や「データの新規調査+研究開発証拠」などの手法を用いて、被告人のリバースエンジニアリングの抗弁を排除し、処罰した。

事例6:徐某氏、上海恒某建築工程有限公司らの営業秘密侵害事件
(普陀区市場監督管理局)
徐氏は、勤務先の建設会社の仕入部長でありながら秘密保持義務に違反し、入札時に入札予定価格などに加えて関係図面などを応札会社3社に無断で開示し、応札会社は取得した営業秘密を事業に使用していたことが判明し、当局は侵害当事者に罰金の処罰を科した。こうした隠ぺいし易く検証が難しい事件を当事者の関係文書のハッシュ値の検証などの方法で立証に成功している。

事例7:高某(上海)工業設備有限公司の商業秘密侵害事件
(奉賢区市場監督管理局)
退職した会社で生産監督であった呉某氏が高某(上海)工業設備有限公司を設立し、前職で取得したファンの図面で影響のない一部の部品を修正し、当該ファンの生産を外注していた。当局は外注の電子メール、送信図面などの証拠の固定、鑑定機構により図面は実質的に同一との判断とともに当該図面は営業秘密との認定し、罰金の処罰を科した。

事例8:上海涵某工程技術有限公司の商業秘密侵害事件
(金山区市場監督管理局)
退職した会社でセールスマネージャーであった陳某氏は、退職時に技術情報などのバックアップファイルを削除せず、上海涵某社に就職し、製品の研究開発や設計などを担当した時に、顧客のプロジェクトに退職した会社の製品図面の社名を変更するだけでそのまま転用するなど、秘密保持義務に違反し、当該会社も知りうる立場でありながら事業に従事させたことから、当局は違法所得の没収、罰金の処罰を科した。

事例9:鄭氏の国外への商業秘密提供事件
(上海市浦東新区人民検察院、上海市浦東新区人民法院)
被告の陳某氏は中国企業のエンジニアであったが、コンサルティング仲介会社のハンティングを受け専門コンサルタントに就任した。その後、外資系コンサルティング会社から電話インタビューをうけ、勤務していた会社との秘密保持義務に違反し、研究開発、生産計画、生産能力などの営業秘密を当該外資系コンサルティング会社を通じて、外国企業やその人員に提供し利益を受けたとして、刑法に新設された第2119条の1つ海外に商業秘密不法提供罪に基づき、禁固と罰金の懲罰が科された。

事例10:上海堃某知能設備有限公司などの商業秘密侵害事件
(上海市松江区市場監督管理局、上海市松江区人民検察院、上海市人民検察院第三分院、上海市普陀区人民法院、上海市第三中級人民法院、上海知識産権法院)
被告の李某氏は豪某機械(上海)有限公司に機械エンジニアとして入社後、第三者と共同で上海堃某知能設備有限公司を設立し、総経理に就任した。その後、前職時の秘密保持義務に違反し、勤務時に入手した「HOMGシーリングマシン」の技術情報と図面を利用し、シーリングマシンを外注で生産販売したことから、当局は違法行為の差止と罰金の処罰を科した。これに不服の李氏は行政訴訟を提起したが棄却された。一方、検察は営業秘密侵害罪で違法所得の没収、侵害品や製造機器などの没収、禁固と罰金が命じられ、二審に上訴したが請求棄却された。一方、豪某機械社は営業秘密侵害による損害賠償を請求し、請求した損害賠償全額が認められた。行政、刑事、民事のフルセットの事例として注目される。

参照サイト:https://scjgj.sh.gov.cn/1073/20240903/2c984a72918c23f10191b6cabd9b4c7d.html

【カナダ】出願料金値上げ(2025年1月1日)

カナダ知的財産庁(CIPO )は、本年に続き、来年度の出願手続きのオフィシャルフィーの改訂を公示している。特許、意匠、商標など全種別について、一部の料金を除き、概ね5%弱ではあるが料金を値上げする。以下は、主な料金であるが、12月末までに支払いができれば現行料金が適用される。

特許関係の主な料金改定
・標準出願                      C$555.00            新C$579.42
・継続出願                      C$1110.00          新C$1158.84
・20以上超過クレーム     C$110.00            新C$114.84
・標準審査請求                C$277.00            新C$289.19
・認可                            C$416.00            新C$434.30
・特許年金2-4年次        C$125.00            新C$130.50
 同 5-9年次                C$277.00            新C$289.19
 同 10-14年次            C$347.00            新C$362.27
 同 15-19年次            C$624.00            新C$351.46

参照サイト:https://ised-isde.canada.ca/site/canadian-intellectual-property-office/en/patents/patent-fees

意匠関係の主な料金改定
・標準出願                      C$567.00            新C$591.95
・10以上意匠                  C$14.00               新C$14.62
・意匠維持年金                C$496.00            新C$517.82

参照サイト:https://ised-isde.canada.ca/site/canadian-intellectual-property-office/en/industrial-designs/fees-industrial-designs

商標関係の主な料金改定
・標準出願                       C$458.00            新C$478.15
 追加区分                       C$139.00            新C$145.12
・異議申立                       C$1040.00          新C$1085.76
・更新                             C$555.00            新C$579.42
 追加区分                       C$173.00            新C$180.61

参照サイト:https://ised-isde.canada.ca/site/canadian-intellectual-property-office/en/trademarks/fees-trademarks

【オーストラリア】出願料金値上げ(2024年10月1日)

オーストラリア知財庁(IP Australia)は、すでに2023年末から2024年1月まで公示していた特許、意匠、商標及び植物新品種の手続きオフィシャルフィーの改訂を2024年10月1日より実施する。IP Australiaは、オフィシャルフィーを4年毎に改訂しており、2020年の10月以来となる。

特許出願では、直接出願とPCT出願の移行出願がともにAU$30の値上げ、審査請求がAU$50の値上げ、超過クレーム料が新設され、21以上30個までAU$125、30個以上AU$250となる。特許年金も6年次以降値上げとなっている。
 超過クレームについては、これまで認可時のクレーム数で超過料金が計算されていたので、認可前にクレームを調整するようにしていたが、今後は審査開始通知6か月前に審査開始通知があるので、この機会にクレームの削減や減縮し、不要なクレームを調整することができる。また、審査官にとっても負担が減る機会でもある。

意匠出願では、出願がAU$50値下げ、しかし審査がAU$80値上げとなり、意匠年金も6年次以降値上げとなる。

商標出願では異議申立の手数料が新設されている。その他は、以下のサイトでご確認ください。

参照サイト:https://www.ipaustralia.gov.au/about-us/accountability-and-reporting/fee-review-2023-24

【中国】国家知識産権局2023年度報告(9月3日)

国家知識産権局(CNIPA)は、9月3日付、特許や商標の出願統計データを含む国家知識産権局2023年度報告を公示した。この年報は、CNIPAの2023年度の活動内容を紹介するものであるが、2023年度の特許と商標の出願状況を唯一知ることができる。

2023年度の特許出願は全体で対前年比3.7%の増加し、2022年まで減少し続けた実用新案と意匠特許出願で、国内出願がそれぞれ3.8%、3.4%と伸びたことは大きな変化である。非正常特許出願対策が一段落したといえるだろう。発明特許出願は167.7万件と+3.6%の増加となってる。
 一方、2023年の外国からの出願は意匠出願が▲4.1%と減少した、実用新案特許出願が4.1%増加している。日本からの発明特許出願は近年減少を続けていたが対前年比+2.2%と増加に転じた。実用新案と意匠特許出願は引き続き減少している。
 2022年5月に加盟が発効したヘーグ協定国際意匠の中国企業の出願は1814件(前年1286 件)と41%増加した。外国からの中国指定は1974件(前年607件)と3.25倍と大きく増加した。

発明特許取得トップ10は以下の通り:
(中国)1.Huawei華為技術4,529件、2. Tencent騰訊4,480件、3.Sinopec中国石油化学4,257件、4.Baidu百度3,638件、5.Oppo広東移動通信3,236件、6.BOE京東方科技2,895件、7.Gree珠海格力電器2,844件、8.inspur浪潮2,587件、9.平安科技1,862件、10.NONOR荣耀2,193件。
(外国)1.Samsung三星電子2,301件、2.トヨタ自動車1,490件、3.Qualcommクアルコム1,398件、4.セイコーエプソン1,184件、5.LG電子1,157件、6.本田技研工業1,066件、7.三菱電機1,053件、8.SKハイニックスる955件、9.ボッシュ932件、10.サムソンディスプレイ854件。

審査関連では、発明特許の平均審査期間が16か月(前年16.5か月)と目標を達成した。

復審(審判)関連は、以下の通り。特許出願拒絶不服再審は実用新案特許出願が2022年より急増しており、2023年19%弱減少したもの、6千件を超えている。意匠特許出願も21%増加しているが、AIを活用した非正常や進歩性判断による拒絶査定に対する不服が多いと考えられる。特許無効は前年が減少したが、何れの種別も前年を大きく上回る増加を示している。

商標は出願も登録も減少した。悪意出願などに対する却下処理や地方政府の知識産権局の対応によるものと思われる。外国からの出願も▲5.8%減少したが、日本からは▲19.8%と大きく減少している。

異議申立は▲21.1%減少し、無効申立も▲0.7%減少し、悪意出願が減少しているものと思われる。不使用取消のみが+33.7%と増加しており、まだ不正出願の登録対策が多くあることがわかる。

詳細は報告書でご確認ください。

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/col/col3430/index.html

【中国】特許開放許諾手続きFAQ(8月28日)

国家知識産権局(CNIPA)は、2024年8月28日にそのSNSサイトで、特許開放許諾届出手続きに関するFAQを掲載した。特許開放許諾届出手続きについては、特許法実施細則と特許審査指南などに詳細な説明があるが、CNIPAは、以下の4項目に34の質問を上げ、それに回答している。
 特許開放許諾届出は、中国版のライセンスオブライト(LOR)であり、年金を15%減額できるなど知的財産権部門には厳しい予算措置の環境で、ヨーロッパなどのように活用できるとの考えもあろうが、営業秘密やノウハウ、また顧客情報などが指導の名目で流出し、取り返しのつかないことになるため、個人的にはお勧めしていないが、以下はそのQ&Aの質問をご参考まで。

1.特許開放許諾宣言の提出
問1.特許開放許諾とは何か、どのような機能があるか?
問2.特許開放許諾宣言を提出する前にどのような資料を準備すべきか?
問3.特許開放許諾宣言様式に記入する時どのような事項に注意すべきか?
問4.特許権者は簡単な説明にどのような内容を明記すべきか?
問5.特許代理機構に開放許諾宣言手続きを委に関して、どのような要件があるか?
問6.「その他の資料」とは、どのような資料をいうか?
問7.特許業務処理システムを通じて開放許諾宣言を提出する時に、注意すべき事項は何か?
2.特許開放許諾実施契約の届出
問8.特許開放許諾実施契約を届出する人に制限はあるか?
問9.特許開放許諾実施契約の届出の提出時期はいつか?
問10.開放許諾が達成された書面とはどんな文書か?
問11.特許開放許諾実施契約の届出手続き前に準備すべき資料は何か?
問12.被許諾者が特許権者に出した開放許諾特許実施の意思を示す通知書の具体的な要件は何か?
問13.被許諾者が特許権者に許諾使用料を支払った証憑(或いは特許権者が許諾使用料を受取った証憑)について、届出手続きの時に注意しなければならない事項は何か?
問14.「特許実施許諾契約届出申請書」を記入するとき、注意する事項は何か?
問15.特許開放許諾実施契約の届出手続きで、請求人の身分証明書類はどのような書類か?
問16.特許開放許諾実施契約の届出手続きの委託において、注意する事項は何か?
問17.特許開放許諾実施契約の届出請求を提出する方法に何があるか?
問18.外国人、外国企業或いは外国のその他の組織が開放許諾特許を実施する要件は?
問19.当事者は、電子形式のオンラインで特許開放許諾実施契約の届出を処理する場合、どの事項に注意しなければならないか?
問20.特許開放許諾実施契約届出が承認された場合、特許権者は特許開放許諾実施期間中、規定に従い特許年金の減額を享受できるが、ここでいう「特許開放許諾実施期間」はどの期間をいうのか?
問21.特許開放許諾実施期間の減額手続きはどのように提出するか?
問22.特許開放許諾実施期間中の減額にはどのような注意が必要か?
問23.特許権者が開放許諾宣言を撤回した場合、特許開放許諾の実施期間中の減額に対して、どのような影響があるか?
問24.開放許諾を実施している特許権者と被許諾者は許諾使用料について協議し許諾契約を締結した場合、年金は減額されるか?
3.特許開放許諾宣言の撤回
問25.特許開放許諾宣言は撤回できるか?
問26.特許開放許諾宣言を撤回する場合、どのような資料を準備する必要があるか?
問27.提出された特許開放許諾宣言撤回文書は、どのような記載要件があるか?
問28.開放許諾宣言の公告後、特許権者が特許開放許諾宣言を自発的に撤回する必要がある情況は何か?
問29.特許開放許諾宣言の撤回はどのように提出しなければならないか?
問30.特許開放許諾宣言の撤回に関する事項は、どこで調べることがでるか?
4.関連法律手続き業務の処理
問31.既に開放許諾を実施している特許は、権利譲渡できるか?
問32.開放許諾実施特許について、特許権者は当該特許権を自発的に放棄できるか?
問33.既に開放許諾実施している特許を担保に供し、特許権質権設定登記手続きを行うことができるか?
問34.当事者名で公開されている開放許諾宣言、特許質権設定登録、特許実施許諾契約届出情報をどの照会できるか?

参照サイト:CNIPAのSNSサイト
仮訳

【ルーマニア】統一特許裁判所協定(UPCA)発効(9月1日)

ルーマニア政府は、2024年5月31日に統一特許裁判所協定(UPCA)を批准する手続きをとっており、9月1日より発効し、18番目の加盟国となる。これにより、2024年9月1日以降に発効する欧州単一効特許(UP)はルーマニアを自動的にカバーすることになる。ヨーロッパ特許庁(EPO)は、これを受けて、2024年6月5日、単一効の登録を2024年9月1日以降まで延長して請求を受ける通知を公示していた。

 2023年6月1日に単一特許が発効して以来、EPOは3.4万件を超える単一効の申請を受け、3.3万件の単一特許を登録した。この制度には、欧州企業から高いニーズがあり、今年上半期の単一効の申請の63%がEP加盟国からなされ、32%以上が中小企業と個人発明家の申請である。また、今年登録になった欧州特許の約4分の1が単一効特許になっている。なお、ルーマニアの加盟により、1,000以上のユーザーが、登録を9月1日以降まで延期する申請をしている。

参照サイト:https://www.epo.org/en/news-events/news/unitary-patent-now-covers-romania

【アルゼンチン】特許出願優先権の審査状況報告義務導入(8月26日)

アルゼンチン知的財産庁(INPI)は、2024年8月26日に政令No. 364/2024を官報に公示し、優先権主張を伴う特許及び実用新案出願について、当該優先権主張の基礎出願の審査状況を出願人は報告すること義務付け、報告がない場合は、見做し放棄とする通知を出した。本制度導入は、滞留する係属出願ですでに放棄されている案件が多くあり、そうした審査扶養案件の削減や審査期間の短縮を目的としている。

TRIPS協定の29条2段には、対応出願の情報を出願人に求めることができるとの規定があり、INPIは、2008年、2014年に優先権主張出願が登録になっているかどうかを出願人に照会する政令を出し、効果を上げることができた。今回はそうした経験に基づくもので、出願人はINPIから通知を受けた場合、60日以内に応答しなければならない。この期間は延長できないので、注意が必要である。応答内容としては、登録に未だなっていない場合でも、審査状況を報告することが重要であり、応答しない場合、見做し放棄処理され、特許公報に公示される。

参照サイト:https://www.boletinoficial.gob.ar/detalleAviso/primera/312803/20240826

【中国】「優先権回復、優先権主張の追加或いは訂正に関するガイド」の公示(8月22日)

国家知識産権局(CNIPA)は、そのSNSサイトに「優先権回復、優先権主張の追加或いは訂正に関するガイド(关于优先权恢复、优先权要求的增加或者改正的指引)」を公示し、改正された特許法、特許法実施細則と特許審査指南の施行に基づき、追加された優先権回復、優先権主張の追加或いは訂正を正確に理解し、活用できるよう指導することを目的とするとしている。

本ガイドの構成は、具体事例を含む21ページで構成され、その内容は以下の通り:
一、優先権回復制度
(一)優先権回復制度の紹介
(二)国内出願の優先権回復
 1.優先権回復請求の条件
 (1)出願時に優先権主張陳述
 (2)期限内に優先権回復請求提出
 (3)期限内に費用納付
 (4)期限内に必要書類提出
 2.審査と通知
 3.救済ルート
(三)PCT主張の国内段階で優先権回復
二、優先権主張の追加或いは訂正制度
(一)優先権主張の追加或いは訂正制度の紹介
(二)優先権主張の追加或いは訂正請求の条件
 1.特許出願時に1件以上の優先権主張
 2.期限内に追加或いは訂正の請求
 3.期限内に費用納付
 4.期限内に必要書類提出
(三)審査と通知
(四)救済ルート
三、その他の注意すべき事項
(一)優先権の主張の追加或いは訂正に関するその他の事項
(二)援用追加に関する注意事項

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/module/download/down.jsp?i_ID=194339&colID=66
仮訳

【中国】「商標行政法執行証拠規定」(意見募集稿)の公示(8月19日)

国家市場監督管理総局(SAMR)は、8月19日、「商標行政法執行証拠規定(商标行政执法证据规定)」(意見募集稿)を公示し、一般からの意見募集を9月19日まで受け付ける。

党中央委員会と国務院は、知的財産権強化に関する一連の施策を実施しているが、本証拠規定は、商標行政執行、証拠収集、証拠審査と認定などの内容と要件をさらに明確にし、事業主体の正当な権益を保護することを目的としており、2023年12月1日に「商標行政法執行証拠基準規定(商标行政执法证据标准规定」)(意見募集稿)を商標行政法執行の専門的指導を強化し、法執行基準を統一し、商標の違法事実を正確に認定し、証拠の収集、審査、認定を規範化するためのもので、これまで商標行政法執行法には専門的な証拠規定が制定されいなかったために本規定と同様の構成で5章46条で起草された。
 今回は、2度目となり、全24条に減縮されている。主な内容は、目的と法律根拠、適用主体と事件範囲、証拠の概念、証拠の種類を明確にし、主に、書類証拠、物証、視聴覚資料、電子データ、証人証言、当事者の陳述、鑑定意見、現場記録及び外国での証拠などを対象とし、各証拠に対する収集要件と認定を明確にしている。

参照サイト:https://www.samr.gov.cn/hd/zjdc/art/2024/art_275583fb35664df595acaf3c38cba102.html
仮訳

【中国】商標局2024年上半期総括報告(8月12日)

国家知識産権局商標局は、8月12日、2024年上半期の商標業務及び関連情況を総括し報告した。

1.商標出願
今年上半期の審査処理は 334.8万件、平均商標登録審査期間は 4 か月、通常の商標出願の登録期間は 7か月と安定している。
早期審査処理が504件。異議申立処理完了が5万件。審判処理完了が17.6万件。
重大な悪影響を伴う出願の却下が958件、悪意登録対策が20.5万件。
「2024年商標審査業務配分計画」を実施し、毎月指導計画を発行、四半期毎に状況把握しながら処理レベルの強化を実施した。また、審査官の教育・研修による品質管理を実施した。

2.マドプロ商標出願
上半期に商標局が受理したマドプロ商標国際出願は3,637件、前年比20.3%増加した。審査期間は2か月、審査通過率は99%を超えた。
安定した審査期間を維持し審査の質を確保するため、マドプロ商標国際登録審査期限の管理と業務処理全体の品質監督の強化、マドプロ商標国際の利用促進も強化した。

3.地理的表示
今年上半期に新たに107 件の地理的表示登録され、登録件数は7,384件になった。
団体商標・認証商標制度の役割を十分に発揮し、産業クラスターブランドや地域ブランドを創造する「強い知財力構築大綱(2021年~2035年)」を積極的に推進し、「余江眼鏡」、「新干箱包」、「威海釣具」、「山水武寧」など産業クラスターと地域ブランドが8件が団体商標で保護され、地域の新たな生産を促進している。

参照サイト:https://sbj.cnipa.gov.cn/sbj/ssbj_gzdt/202408/t20240812_33904.html

【中国】「医薬品分野に関する独占禁止指南」(意見募集稿)の公示(8月9日)

国家市場監督管理総局(SAMRIは、8月9日付、医薬品分野の独占行為を効果的に予防・制止し、医薬品市場の公平な競争と健全な発展を促進し、消費者と社会公共の利益を維持するため、中国独占禁止法(反独占法)などの法律規定に基づき、「医薬品分野に関する独占禁止指南(ガイドライン)」の意見募集稿を作成し、公示した。一般からの意見は、8月23日まで受け付ける。
 本指南の起草背景は、ここ数年来、中国での薬品分野の独占行為が多発し、安定した供給価格に影響を及ぼしており、市場での公平な競争秩序と消費者の利益が損なわれている。市場監督管理総局は、遠大医薬品独占事件、揚子江薬業独占事件、上薬生化学独占事件など20件を超える医薬品分野独占事件を調査、処分している。2021年、原薬分野の独占行為が多発している状況に対し、「原薬分野に関する独占禁止指南」を公布し、原薬分野の独占行為の規範化に重要な役割を果たしたが、独占禁止法執行のターゲットと効果を高める必要性があるとしている。対象は、漢方薬、生薬、生物製品などすべての医薬品を対象とする。
 本意見募集稿は、7章55条からなり構成は以下の通り
 第一章 総則 独占禁止監督管理法執行の全体原則の明確化(第1~6条)
 第二章 独占協合意 独占合意行為の細分化(第7~19条)
 第三章 市場での支配的地位の濫用 濫用行為の認定原則(第20~29条)
 第四章 事業者の集中(合併) 合併審査原則(第30~36条)
 第五章 公平な競争審査と行政権力の濫用による競争の排除、制限(第37~44条)
 第六章 法的責任の適用(第45~53条)
 第七章 附則

参照サイト:https://www.samr.gov.cn/hd/zjdc/art/2024/art_709b7b3bed794e1ca464524d1e5a3dcd.html