【中国】独占禁止法にかかる「独占協議の禁止に関する暫定規定」、「市場での支配的地位の濫用行為の禁止に関する暫定規定」の施行(2019年9月1日)

市場監督管理総局は6月26日付、「独占協議の禁止に関する暫定規定」、「市場での支配的地位の濫用行為の禁止に関する暫定規定」及び「行政権力の濫用排除、競争行為の制限に関する暫定規定」を局令第10号、11号、12号で公布し、7月1日付公示したので、同局のコメントの仮訳とともにご紹介する。

市場監督管理体制の改革と独占禁止法執行体制の改革ニーズに適応するため、機構改革後の市場監督管理部門の独占禁止に対する統一した法執行の法治上の保障を提供し、市場監督管理総局は実務経験を十分に総括し、社会の各方面の意見を広く求めた上で、研究論証を繰り返し、発展改革委員会と元工商行政管理総局が公布した独占禁止法関連規定を統合し、「独占協議の禁止に関する暫定規定」、「市場での支配的地位の濫用行為の禁止に関する暫定規定」及び「行政権力の濫用排除、競争行為の制限に関する暫定規定」を制定し、2019年9月1日から施行する。

1.三規則制定過程においての主な遵守原則:
(1)党と国家機構の改革精神を全面的に貫徹する。
(2)法の執行を統一的に規範化するために制度の基礎を作る。「法に基づく行政推進、公正で文明的執行を厳格に規範化」
(3)消費者の合法的権益を確実に保護する。独占禁止法執行を通じて消費者の知る権利、選択権、公正取引権などの各権利を確実に保護し、人民大衆のために良好な消費環境を構築し、獲得感と幸福感を確実に強化する。
(4)法律執行の経験を全面的に総括する。法執行上のホットなテーマなどにも独占禁止規則システムを改善し、独占禁止法執行のレベルを向上させる。

2.三規則に共通の内容:
独占禁止法執行業務の統一性を確保するため、委嘱(授権)、監督、手順などの面でできるだけ同じように規定している。
(1)法律の広い法執行権限。独占禁止法の規定は国務院が規定した独占禁止職責を負う機構が独占禁止法執行業務を担当し、業務に応じて省クラス政府の対応する組織に独占禁止法執行業務を委嘱することもできる。「市場監督管理総局の独占禁止法執行授権に関する通知」(国市監反独占[2018]265号)
(2)届出報告及び監督制度。省レベル市場監督部門に対する指導と監督を強化する。
(i)市場監督管理部門が受託後、その委託内容がその検査・管理範囲に属さない、或いは市場監督管理総局の統括が必要な場合、速やかに市場監督管理総局に報告すること。
(ii)市場監督管理部門は立案日から7営業日以内に市場監督管理総局の管理簿に記録すること。
(iii)市場監督部門は調査を中止・終了決定、行政処罰通知、処分案を事前に市場監督管理総局に報告すること。
(iv)市場監督管理部門が決定書、行政処罰決定書或いは処分を出した後、7日間以内に市場監督管理総局に届出ること。
(v)市場監督管理総局は省クラス市場監督部門に案件の指導と監督を強化し、統一的な法律執行基準を制定すること。省クラス市場監督管理部門は市場監督管理総局の関連規定に従って各種案件を厳格に調査すること。
(3)違法行為の発見ルート、告発書の要求、調査依頼、調査協力、公示などに統一規定。他の行政機関との連携や受託業務の活動範囲と連携範囲、結果の共有や国家企業信用情報公示システムを通じた公示などを規定した。
(4)関連規則との活用問題。「独占協議の禁止に関する暫定規定」、「市場での支配的地位の濫用行為の禁止に関する暫定規定」に独占協議、市場での支配的地位の濫用行為の調査、処罰手順に規定がない場合は、期限、立案、事件管轄の規定を除き「市場監督管理行政処罰手順暫定規定」に基づき執行する。独占禁止法執行機関が行政処罰の聴取をする場合、「市場監督管理行政処罰聴取暫定弁法」に基づき執行する。行政権力の濫用を防止し、競争行為の排除、制限は行政処罰の対象ではないため、「市場監督管理行政処罰手続暫定規定」、「市場監督管理行政処罰聴証暫定弁法」は適用しない。

3.「独占協議の禁止に関する暫定規定」
本規定は全36条からなり、授権と管轄、独占協議の認定、立案、調査、免除、調査の中止、調査の終了、調査の再開、処罰、減免措置、公示などの実務と手続き内容について全面的に規定している。
(1)独占協議の認定。独占禁止法第二章「独占協議」の内容及び機構改革状況に基づき、価格と価格以外で独占協議事件を区別せず、独占禁止法第13条、第14条に列挙される価格の固定または変更、生産販売数量の制限、市場の分割など7つの具体的な独占協議形態及び国務院独占禁止法執行機関がその他の独占協定で考慮すべき要因を細分化し、法律の運用を強化した。
(2)調査の中止。独占禁止法第45条の規定を細分化し、調査を中止する手順と要件を明確化し、調査を受ける事業者が法に基づく調査中止申請のための明確な指針とした。また、調査中止の適用規模を厳格に把握するため、価格の固定、生産販売数量の制限、市場の分割などのカルテルの主要行為には中止手続きを適用しない。
(3)免除制度。独占禁止法第15条の事業者が法に基づき免除申請できる内容を細分化し、免除申請条件、独占禁止法執行機関での適合考慮要素、免除決定の効力などを認定し、独占禁止法で原則性の強い免除規定の運用を明確化し、事業者の合法的権利の保護に効果がある。
(4)減免制度。独占禁止法の減免制度を「重要な証拠」の意味を明確化し、自発的な報告及び重要な証拠を提供した事業者に申請順に異なる幅で罰金を軽減する。「重要な証拠」とは、独占禁止法執行機関が調査の開始または独占協定の認定において重要な役割を果たす証拠であり、参加事業者、商品範囲、合意内容及び方式、協議の具体的な実施などが含まれる。第一申請者には処罰免除、80%を下回らない罰金の軽減、第二申請者には30%~50%の幅で罰金の軽減、第三申請者には20%~30%の幅で罰金の軽減など、罰金を大幅に軽減する。
 上記の他、起草過程で、一部の省クラス市場監督管理部門と専門家学者から、独占協議の認定時に「セーフハーバー」条項を追加することについて議論があったが、独占禁止法は「セーフハーバー」での市場シェアなどの要素について規定がなく、上位法の根拠も足りないため、今後の検討課題とされた。

4.「市場支配地位の濫用の禁止する暫定規定」
本規定は全39条からなり、授権と管轄、市場での支配的地位の認定、市場での支配的地位の濫用の表現形式及び正当な理由、立案、調査、届出、調査の中止、調査の終了、調査の再開、処罰、公示などの実務と手続き内容について全面的に規定している。
(1)市場での支配的地位の認定。本規定は市場での支配的地位の意味と認定要素に対して規定している。実際の発展の必要性に応じて、インターネット、知的財産権などの分野での事業者の市場での支配的地位を認定する考慮要素と2つ以上の事業者が市場での支配的地位を持つと認定した場合の考慮要因も規定し、運用を更に強化している。インターネットなどの新しい経営業態事業者が市場での支配的地位を持つと認定した場合、関連業界の競争の特徴、経営モデル、ユーザー数、ネットワーク効果、ロック効果、技術特性、市場のイノベーション、関連データの掌握処理能力及び事業者の関連市場における市場支配力などの要素を考慮することができる。知的財産権分野の事業者が市場での支配的地位を持っていると認定した場合、知的財産権の代替性、下流市場での知的財産権利用商品の依存度、取引相手と事業者とのバランス能力などを考慮することができる。
(2)市場での支配的地位の濫用の認定。不当な価格での商品の販売または購入、取引拒否、限定取引、付帯または不合理な取引条件、差別待遇など市場での支配的地位を濫用する行為を細分化し、完全なものとしている。「正当な理由」を明確に列挙し、運用性と市場主体の事前準備を強化する。その他、公共事業分野の事業者の経営行為について、その市場での支配的地位を濫用して消費者の利益を損なってはならないと規定している。
(3)調査の中止。独占禁止法第45条の規定を細分化し、調査を中止する手順と要件を明確化し、調査を受ける事業者が法に基づく調査中止申請のための明確な指針とした。独占禁止法執行機関は、調査対象者の調査中止申請に基づき、行為の性質、継続時間、結果、社会的影響、事業者が承諾した措置及びその予測効果などの具体的な状況を考慮し、調査を中止するかどうかを決定する。独占禁止法執行機関が調査の中止を決定した場合、調査中止決定書を作成し、事業者の承諾履行状況を監督しなければならない。事業者は定められた期間内に独占禁止法執行機関の書面報告により履行状況を承諾しなければならない。事業者が未履行或いは不完全履行のため調査中止決定の根拠事実に重大な変化が生じ、調査中止決定が事業者の提供した不完全または不実の情報に基づいている場合、独占禁止法執行機関は調査を再開しなければならない。

5.「行政権力の濫用防止排除、競争行為の制限暫定規定」
本規定は全25条からなり、授権と管轄、行政権力の濫用、競争行為の排除、制限の表現形式、調査、法に基づく処理提案などについて全面的に規定している。
(1)行政権力を濫用し競争行為を排除、制限する表現形式。独占禁止法第32条から第37条までの限定取引、商品の自由な流通の妨害、入札制限、投資または支社の設立、事業者に独占行為を強制、排除・競争内容を含む規定の作成など行政権力の濫用を更に細分化し、運用を強化した。
(2)行政権力の濫用による競争排除、制限行為の取締。独占禁止法が行政権力の濫用が競争行為を排除し、制限すること規定していることから独占禁止法執行機関は関連上級機関に法に基づき処理案を提出することができ、行政処罰ではなく、本規定の「摘発」は「調査を行い、法に基づく処理案の提出」と明確にし、調査手順を明確にする:
(i)「調査」とは法に基づき関係単位と個人の状況を把握し、証拠を収集、聴取することだけが含まれることを明確にしている。
(ii)関連上級機関に法に基づき処理案を提出するとは、行政議定書を作成し、主送単位名、調査対象会社名、違法事実、調査対象機関の意見陳述及び採用状況、処理提案及び根拠、独占禁止法執行機関名称、公印及び日付などの事項を明記する。
(iii)調査期間に当事者が自発的に関連行為を停止し関連の結果を除去した場合、調査を終了することができる。独占禁止法執行機関は行政権力の濫用による排除、競争を制限する行為を構成しないと判断した場合、調査を終了しなければならない。

参照サイト:
「独占協議の禁止に関する暫定規定」
http://gkml.samr.gov.cn/nsjg/fgs/201907/t20190701_303056.html
「市場での支配的地位の濫用行為の禁止に関する暫定規定」
http://gkml.samr.gov.cn/nsjg/fgs/201907/t20190701_303057.html
「行政権力の濫用排除、競争行為の制限に関する暫定規定」
http://gkml.samr.gov.cn/nsjg/fgs/201907/t20190701_303058.html

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