【中国】最高人民法院知識産権法廷は2019年度報告書を公表(4月16日)

最高人民法院知識産権法廷は、4月16日付、2019年の年度報告書を公表した。統計データによると、2019年の技術類の知的財産事件の受理は1945件、結審は1433件であり、約73.7%が年度内に完了している。平均審理期間は73日、管轄異議二審は29.4日、裁判官一人当たり39.2件を処理した。概要は以下の通りで、実用新案特許侵害事件が全体の47%、発明特許侵害事件が24%と高い比率を占めている。

上訴法院の上位は、北京(376件)、広州(297件)、上海(143件)、南京(107件)、深圳(96件)である。外国や香港、マカオ、台湾関連の事件は174件で、日本関係は15件である。

結審の1174件の内容を見てみると、原審判決維持が731件(62.3%)、却下が280件(23.9%)、調停71件(6%)、変更が92件(7.8%)と、判決の変更が比較的目立っていると言える。変更の内訳としては、民事二審が66件、管轄異議二審が21件、行政二審が5件である。

全体の特徴としては、以下の6点を挙げることができる。
(a)医薬、バイオ、通信、機械、農業林業など広い技術分野に渡っている。
(b)社会的影響が大きく、賠償額が1000万人民元を超える事件は17件、一億元を超える事件は3件もあり、また、標準必須特許、医薬特許などの先端技術と国民生活に関連するものである。
(c)当事者が異なる裁判所に多数の民事、行政事件を異なる手続きを行っているといった、手続きが交錯する事件が多かったので、裁判手続き、裁判基準、全体的な調停の取扱いを調整し、良好な結果を達成した。
(d)技術類の裁判は難度が高く多様な要素があるために係属期間が一般に長期化するが、平均73日と審理期間が比較的短期間で終えた。
(e)外国、香港、マカオ、台湾関連の訴訟が全体の8.9%を占め、一部の訴訟は当事者の国境を越えた訴訟の一部であり、外国での特許侵害訴訟と関係していた。中国と外国の当事者の正当な権利と利益の平等な保護に努めた。
(f)文書の提出命令を履行しない、製品を破壊し保全の邪魔をするなど原告に不利な状況でも司法保護レベルを強化し、権利者の勝訴率は61.2%を占めた。

特許民事事件の特徴
(1)クレーム解釈と均等の侵害判断事件が多い
クレーム解釈では、機能的特徴の認定、名称のクレーム範囲限定作用、寄付原則(明細書に記載がありながらクレームに含まれない技術的特徴の放棄)など難しい事件が多いが、おおむね均等の侵害判断に関連している。
(2) 合法的出所、従来技術、先使用権による抗弁が多い
合法的出所の開示による非侵害の抗弁(特許法第70条)の事件が一番多く、立証責任の配分、賠償責任の免除の範囲などに争点が集中している。
(3) 商業的権利保護を伴う訴訟が一定割合を占める
権利者は無審査登録の実用新案特許で全国各地に一定比率の商業権利を保持し、被疑侵害者の多くが小型販売店である。

特許行政事件の特徴
(1)ハイテク分野の事件が多い
技術分野では、機械分野が最も多いが、無効宣告事件では、電気分野と機械分野の案件数が並んで最も多く、通信技術、コンピュータなどのハイテク分野も多い。化学分野の数は多くないが、医薬、バイオ技術などの重要産業分野に集中している。
(2)進歩性判断の事件が多い
進歩性事件は92件で全体の約70%を占める。裁判所は、「三歩法」でて非明白性を判断し、ビジネス上の成功要因などの補助的判断要因の規範化、化合物、生物材料などの発明の進歩性などに取り組んだ。
(3)拒絶査定再審事件では個人出願人が多い
拒絶査定再審事件では、個人の出願事件が75%以上を占めており、ほとんどは進歩性や実用性がない。

参照サイト:http://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-225861.html