【中国】CNIPAの2020年度の総括と第14次5か年計画の初年度2021年の重点業務報告(1月22日)

国家知識産権局(CNIPA)の申長雨長官は、1月22日に、2020年が共産党及び中国政府の第13次5か年計画(十三五)の最終年度に当たることもあり、2020年度の総括と第14次5か年計画(十四五)の初年度2021年の重点業務について報告を行った。

まず、第13次5か年計画を総括し、以下の通りまとめている。一部省略。
1.知的財産管理体系の歴史的再構築
 国家的機構改革により国家知識産権局は特許に加え、商標、原産地表示、集積回路配置設計の統一管理をするようになり、市場での法執行に加え、品質管理、標準化、独占禁止、薬品監督管理などの管理業務についても協調するようになった。また、併せて、地方の知的財産権管理業務の効率も向上した。
2.知的財産権関連の豊富な立法
 特許法第4次改正により侵害に対する懲罰賠償、医薬品特許の期間補償と紛争早期解決制度、意匠の保護期間の延長などを導入し、商標法第4次改正で懲罰賠償の導入や悪意出願の規制を導入した。そのほか、民法典に知的財産権の原則記載、特許代理条例、オリンピックマーク保護条例などの法律が改正された。
3.知的財産権保護の向上
 中国政府の「知的財産権の保護強化に関する意見」に基づき、厳格で、幅広く、迅速な保護が総合的に推進された。知的財産権保護センター40か所、高速権利維持センター22か所を設け、知的財産権保護の規範化を進め、118の規範化市場を構築した。また、知的財産権紛争調停と仲裁機構を100数か所、国家海外知的財産権紛争指導センターとその支所10か所を設立したことで市場満足度が80ポイントまで向上した。
4.知的財産権品質向上
 第13次5か年計画の目標であった1万人当たりの発明特許保有件数が15.8件に達し、目標を達成した。有効登録商標は3017.3万件、マドプロ国際出願の登録も44,223件に達した。団体証明商標192件、地理的表示商標6,085件、地理的表示保護商品2,391件となり、地理的表示産品の価値は一兆元を超えた。財政部と共同で37の重点都市での知的財産権運営サービスシステムの建設を支援し、13の知的財産権運営センターを設けた。5.3万社が知的財産権標準認証に合格し、国家知的財産優位模範企業5,729社が育成された。知的財産権の担保融資総額が7,095億元に達し、第12次5か年計画期間に対し倍増した。2019年の外国ライセンス収支は409.8億ドルと2015年に比べ15.4%伸びた。CNIPAが選出する特許金賞は130プロジェクトを選出し、新たなイノベーションの売上総額は1兆元を超えた。2019年にはPCT出願件数で中国が世界一位になり、中国の特許集約型産業の付加価値は、前年比7%増の11.5兆元に達し、国内外で広く注目された。
5.知的財産権の「放管服(行政サービス)」改革の持続的深化
 審査の品質と効率を向上させ、特許平均審査期間は20か月と2か月短縮(高付加価値特許出願は14か月)、商標平均審査期間は4か月と5年間で半減した。期間中に減免された特許及び商標手続費用は471.7億元に達した。
6.国際協力と交流
 特許審査ハイウェイ(PPH)で欧米日ほか30の国と地域の協力関係を推進した。中米経済貿易協定、中央知的表示保護協力協定、地域的な包括的経済連携協定(RCEP)などを実現した。
7.知的財産権事業発展の基礎構築
 地方に特許審査協力センター5か所、商標審査協力センターか所を設立した。知的財産権環境整備のために世界知的財産権の日、全国知的財産権宣伝週間、中国特許週間などの活動を実施したほか、中国国際特許技術及び製品交易会、中国国際設計博覧会、中国知的財産権年会、知的財産権サービス行脚などの活動を実施した。知的財産権サービス組織は6万社を超え、就業人数は80万人超える人材が就業している。国家資格の職名に知識産権師が組み入れられた。

次に、2020年度については、以下の通り10の項目から総括している。一部省略。
1.全力でコロナ対策に業務の全体的な安定と推進(六稳六保)の徹底
 特許や商標出願などの便宜措置、コロナ防疫特許情報プラットフォームの展開、「特許ナビゲーションガイドライン」など7つの国家基準の策定を行った。
2.知的財産権強国戦略綱要と第14次5か年計画の研究制定
知的財産権強国戦略綱要が国務院に承認され、第14次5か年計画の重点プロジェクトとして組み入れられた。
3.知的財産権関連法整備
 特許法改正の完成、商標の更なる改正の検証及び商標や公式エンブレムなどの部門規定の改正作業を行った。
4.知的財産権保護強化
 「知的財産権の保護強化に関する意見」を公布し実施を徹底、「商標権侵害判断基準」、「特許紛争行政調停手続き指南」、「知的財産権権利維持支援強化の指導意見」を公布、最高人民法院と知的財産権紛争のためのオンライン訴訟・調整メカニズム、電子商取引プラットフォームでの知的財産権保護管理国家標準などにより、行政執行指導を強化し、4.2万件(前年比9.9%増)の行政裁決を行った。
5.知的財産権の高品質な発展の推進
 教育部、科学技術部と共同して、「大学の特許の質の向上に関する転化・運用の促進に関する若干の意見」を発表し、110の大学を選抜して試験的模範業務を展開した。
6.知的財産権分野での行政サービスの継続・深化
 政府サービスの評価制度の健全化、特許代理人事務所の審査や官費納付通知、知的財産公共サービスネットワークの試行などを行った。
7.知的財産権審査の質の向上の推進
 特許審査の結果の正確率は92.2%にアップし、商標登録審査の抜取り検査合格率は96.7%に達した。
8.知的財産権サービス業界の監督管理の強化
 「藍空(ブルースカイ)」プロジェクトを進め、特許・商標代理機構2,950社を調査し、1,095社に是正を命じ、立案審査所330社を立件審査し、内182社に行政処罰を下した。なお、代理機構2.5万社の信用状態を承認した。また、非正常の特許出願と使用を目的としない悪意の商標出願に対する処分を行った。2018年から15万件の悪意商標出願を却下した。
9.知的財産権を用いた貧富解消
 農業分野の支援をするための特許技術、商標ブランド、地理的表示の開発を促進した。
10.コロナ蔓延での国際協力
 各国との会議主催など実施した。

第14次5か年計画での2021年の重点業務
 2021年から始まる第14次5か年計画は中国政府が100年の節目を迎える期間になり、これまでの繁栄の勢いを利用し、200年に向かって社会主義の現代的国家の建設に新たな道を切り開く期間であるとしている。2021年は以下の8項目に努力することを表明している。
1.知的財産権強国戦略と第14次5か年計画実施のためのトップレベルの設計開始
2.知的財産権法制の整備と法治レベル向上
 特許法関連法規の整備では特許法実施細則、特許審査指南、商標法関連では地理的表示の立法、商標代理管理弁法、商標審査及び審理基準の改正。その他では、ビックデータ、AI、遺伝子技術など新分野の保護ルールの研究。
 法治関係では行政の権利審判、行政の法執行と司法の関係の健全化や基準の統一、行政指導制度の整備。紛争時の行政裁決の健全化、、判定や鑑定の技術支援の推進。
3.知的財産イノベーションの質量の発展推進
 審査の質と効率の持続的向上、イノベーションに対する資金支援、転化運用、行政保護の推進。実用新案特許制度の改革、非正常特許出願や使用を目的としない悪意商標出願に厳しい対応。イノベーション主体の知的財産権管理能力の向上、特許ナビゲーションや特許金賞をさらに推進。
4.知的財産権の全面的保護強化
5.知的財産権の転化と運用を推進
 知的財産権転化運用メカニズムの完成、価値評価メカニズムと標準の整備、知的財産権帰属制度の改善、特許開放許諾制度の実施。
6.知的財産権公共サービスの能力向上
7.知的財産権保護の国際協力と競争を統括的に推進
 意匠のハーグ協定加盟、RECEPの推進。
8.知的財産権事業の基盤強化
 知的財産権の宣伝、教育、人材育成。

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2021/1/22/art_53_156324.html