【中国】「最高人民法院による消費促進のための司法サービスと保障の提供に関する意見」の公示(12月26日)

最高人民法院は、12月27日付、12月26日公布された「最高人民法院による消費促進のための司法サービスと保障の提供に関する意見(最高人民法院关于为促进消费提供司法服务和保障的意见)」(法発(2022)35号)と「最高人民法院による雇用安定のための司法サービスと保障の提供に関する意見(最高人民法院关于为稳定就业提供司法服务和保障的意见)」(法発(2022)36号)を公示し、中国の経済発展に欠かせない消費と雇用にに関する司法の立場からのサービスと保障について、明確な司法手続きにおける取組を提示した。ここでは、「最高人民法院による消費促進のための司法サービスと保障の提供に関する意見」を取り上げ、知的財産権にまつわる部分を仮訳で紹介する。

「最高人民法院による消費促進のための司法サービスと保障の提供に関する意見」は、経済成長の持続的な原動力である消費の質の高い促進を図るために、消費者、生産者、市場秩序と司法のサービスレベルについて、その方針を意見として提示するものとなっている。全体は4部30項目からなり、その概要は以下の通り:

1.消費者権益の司法保護強化 1~16
 食品・医薬品、前払い式サービス、売手優位の契約条項、インターネットサービス、宅配便サービス、個人情報、不動産取引、旅行、コロナなど疫病対策品、医療・スポーツ、未成年、高齢者、農村部の消費者保護
2.生産事業者権益の司法保護強化 17~22
 各種財産権の司法保護強化、農村の各種市場主体の権益保護、懲罰的賠償制度を厳格に実施した知的財産権保護強化、EC取引に関与する事業者主体の法的責任の正確な認定、新しい消費取引での紛争を適切に処理、住宅賃貸契約紛争を適切に処理
3.誠実公平で効率的な市場秩序の維持 23~26
 不誠実な営業活動対策強化、公平な競争秩序維持強化、社会信用システムの構築推進による懲戒メカニズムの構築、安全で効率的な物流システム支援
4.司法サービスレベルのさらなる向上 27~30
 オンライン紛争審理の質の向上、消費者権益保護のための集団訴訟の検討、司法以外を含む多元的紛争解決メカニズムの構築、司法保護の普及活動

知的財産については、第19項で以下のように言及している。
19.知的財産権の保護を強化する。知的財産権侵害での懲罰的賠償制度を厳格に実施し、知的財産権侵害行為を効果的に抑制し、司法保護の強化を通じて科学技術革新成果の産出と運用を促進し、科学技術強国の建設を支援する。法律に基づき知的財産権分野の虚偽訴訟、悪意のある訴訟、訴権乱用などの不誠実な訴訟行為を制御し、広範な市場主体の技術研究開発と科学技術革新のために良好な法治環境を積極的に創造する。「専精特新(専門的、洗練された、特別な、新しい)」中小企業の主要なコア技術と独自のイノベーション成果の司法保護を強化し、市場主体が科学技術の進歩と技術イノベーションを通じてコア競争力を強化するよう支援および指導し、消費のグレードアップを支援し供給側の役割を積極的に発揮させする。文化的創造的製品の著作権保護を強化し、文化的創造的製品の創作を奨励し、良質な文化資源の開発と中国の優れた伝統文化の創造性の転化、革新的な発展を後押しし、良質な文化製品とサービスの供給の増加を支援する。

懲罰的賠償の対象の紛争には適宜対応し、不誠実な訴訟には認めず、中小企業のイノベーション保護、著作権作品の保護を強化すると読むことができる。

参照サイト:https://www.court.gov.cn/fabu-xiangqing-384291.html