国家知識産権局(CNIPA)は、2010年から毎年て再審(復審)と無効審判(無効宣言)事件から10大事件を選出発表し、特許審査基準の解釈などの役割を果たしている。2022年は無効事件として、発明特許8件、実用新案特許1件、意匠特許1件が挙げられ、事件はAI(人工知能)、SEP(標準必要特許)、バイオ医薬品、漢方薬、新エネルギー、新ビジネスモデルなどの発明技術、秘密保持審査の適用、意匠と商標権の衝突、優先権の認定など比較的典型的で広い問題に注目している。
●2022年特許無効審判10大事例
事例1. 「B型肝炎ウイルス(HBV)iRNA組成物及びその使用方法」発明特許無効事件
特許番号:108064294B (ZL201580072874.0)
特許権者:Alniram Pharmaceutical Co., Ltd.(阿尔尼拉姆医药品有限公司)
無効申立:張媛
【概要】審決第58530号、補正により有効維持。遺伝子治療分野での低分子干渉RNA siRNA(small interfering RNA)に代表される短い核酸配列の進歩性判断プロセスを説明すると同時に明細書の実験データと理論的予想に乖離がある場合、明細書の開示をどのように判断すべきかを示している。
事例2.「複方血栓通漢方製剤及びその製造方法」発明特許無効事件
特許番号:101716254B(ZL200910215815.0)
特許権者:広東衆生薬業股份有限公司
無効申立:楊州中惠製薬有限公司
【概要】審決第59383号有効維持。主に網膜静脈閉塞症と狭心症の治療に使用される複方血栓通は年間売上10億元以上のベストセラーの漢方薬製品で、特許実験データの真実性の判断と証明基準、明細書に十分な開示の有無及びサポート要件を満足しているかどうか判断すべきか、また組合せ示唆を判断するときの当業者の動機の判断も示している。本件特許はこれまで特許侵害訴訟3件で活用され、無効が9回チャレンジされている。
事例3.「電極シート及び当該電極シートを含むリチウムイオン電池」発明特許無効事件
特許番号:104466097B(ZL201410782528.9)
特許権者:寧德新能源科技有限公司、東莞新能源科技有限公司
無効申立:珠海冠宇電池股份有限公司、福建翔雲科技有限公司
【概要】2件の無効請求を合併審理、審決第59830号補正により有効維持。ポリマーリチウムイオン電池に関し、業界上位企業同士の紛争。進歩性判断において、発明が実際に解決した技術的課題を確定するとき、全体として複数の技術的特徴に基づく場合、単一の技術特徴自体の固有の機能或いは作用だけにしてはならず、明細書の関連する技術特徴とその機能と作用の記載と、技術的効果を組合せ、当業者の立場から全体的に考慮し、客観的な認定すべきことを示している。
事例4.「伸縮可能な伝動アセンブリ装置及び昇降支柱」実用新案特許無効事件
特許番号:207016433U(ZL201720389490.8)
特許権者:浙江捷昌銭性駆動科技股份有限公司
無効申立:袁小中
【概要】審決第 55586 号無効(法20条1項)。本件は中国特許法に秘密審査義務条項が導入されて初めて適用された事例で、法定義務である中国で完成した発明であること、国外で特許を得ようとしたことを立証する義務、或いは証拠に基づき否定する義務が双方にあり、無効申立人の立証が高い確率で要件を満たしている場合、特許権者は外国で発明が完成したことを反証する証拠を提出する義務があることを示している。
事例5.「セロトニン再摂取阻害剤としてのフェニルピペラジン誘導体」発明特許無効事件
特許権番号:1319958C(ZL02819025.4)
特許権者:H. Lundbeck A/S (H•隆德贝克有限公司、DK)
無効申立:成都康弘薬業集団股份有限公司
【概要】審決第54793号有効維持。抗うつ薬のボルチオキセチン世界95か国と地域で販売が承認されており、本件はジェネリック薬申請人が原薬企業の特許に無効をかけた事件であり、技術的効果、医薬品化合物の十分な開示の要件の判断が適応症間の関係を明確にしていること、及び体外試験結果は開示に対して十分に意義があり、その結果に基づき実証され効果も特許法上の技術効果と見なすべきであることを示している。
事例6.「ユーザ機器(UE)におけるリンク最大伝送単位(MTU)の設定方法」発明特許無効事件
特許権番号:101663864B(ZL200880009370.4)
特許権者:Ericsson AB (艾利森电话股份有限公司、SE)
無効申立:Apple Computer Trading (Shanghai) Co., Ltd.(苹果電脳貿易(上海)有限公司)
【概要】審決第58954号無効。本件は5G通信技術の標準必須特許であり、世界的通信適用技術仕様とレポートの策定を専門機関3GPPのメーリングリスト文書の公開の有無が特許法上の公開の要件(公知)に適合するかどうかの認定で、その運用メカニズム、実際の検証に基づき公知と判断された。2022年12月に当事者はグローバル特許ライセンス契約を提携し和解している。
事例7.「自動車」意匠特許無効事件
特許権番号:307018088S(202130363449.5)
特許権者:Renault S.A. (雷诺两合公司、FR)
無効申立:華人運通控股(上海)有限公司
【概要】審決第57220号無効。本件は、意匠特許権と先行商標権(エンブレム、中国、欧米で登録)との抵触(法23条3項先に取得した合法的権利)の審査に関し、比較する際に先行商標の実際の使用状態及び広範な使用による知名度と影響力(商標としての機能の発揮)と一般公衆の標準的注意力を基準による類否判断を考慮することを示している。係争当事者は国内外で多くの訴訟事件を起こしている。
事例8.「電動立乗車及びその支持カバー、始動方法及び回転方法」発明特許無効事件
特許権番号:108275231B(201810180450.1)
特許権者:浙江騎客機器人科技有限公司
無効申立:浙江九華進出口有限公司、万院安、王彬
【概要】審決第57433号無効。本件は、分割出願の記載要件の審査に関し、親特許出願が認可後、6件の分割出願をした1つであり、原出願明細書に基づき補正を加えた請求項が元の記載範囲を超えている(実43条)と判断された。本件当事者には複数の訴訟があり、無効決定後それらはすべて棄却された。
事例9.「廃棄鋼を分類するニューラルネットワークモデルの構築方法」の発明特許無効事件
特許権番号:110660074B(201910958076.8)
特許権者:北京同創信通科技有限公司
無効申立:衡陽鐳目科技有限責任公司
【概要】審決第55072号有効維持。本発明は鉄鋼業界でのAI技術の応用で鋼材の特徴中手と分類分けをディープラーニングにより実現しており、現在の中国のAI技術特許審査基準でも進歩性判断が課題となっている。本件はアルゴリズムの特徴を含む発明特許の進歩性判断基準を細分化しアルゴリズムの特徴を含む発明特許に対して創造的な判断を行う場合、アルゴリズムと適用シナリオを全体的に考慮しなければならず、特にアルゴリズムを異なるシナリオ適用した後にアルゴリズムの訓練モード、重要なパラメータ或いは関連ステップが実質的に調整されたかどうか、その調整が特定の技術的課題を解決したかどうか、有益な技術的効果が得られたかどうかを考慮しなければならないことを示している。
事例10.「効果的に不連続通信を提供する方法及び装置」の発明特許無効事件
特許権番号:101637052B(200880008630.6)
特許権者:Nokia Corporation (诺基亚技术有限公司、US)
無効申立:OPPO広東移動通信有限公司
【概要】審決第54441号補正により有効維持。本件は優先権主張が成立するかどうかの判断に関し、基礎となるPCT出願での優先権譲渡証明書の提出要件不備に対し、無効手続き中に特許権者が提出した優先権譲渡陳述書を有効と認定した。当事者は複数の国で係争関係にある。
参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2023/4/26/art_3207_184728.html