国家知識産権局は、2022年に705.6万件の商標出願を審査し、悪意のある商標先取出願3.5万件、社会公共の利益を損なう悪意商標出願3,192件を却下した。一方、商標異議申立事件17.6万件、商標無効事件41.2万件を審査し、悪意商標出願・登録6,102件を取締った。そして、2022年の典型事例10大事例としてブランドのフリーライドなど、異議と無効それぞれ5件を10大事例として公表した。
●2022年商標異議・評審10大事例
事例1.第43541282号“花满楼”(30類)商標異議申立事件
商標出願人:四川普度茶叶有限責任公司
異議申立人:鄭小龍(引用小説著書の娘)
【概要】異議不成立。当該標章は、小説「陸小鳳伝奇」の登場人物名で「先の権利」(法32条)に違反との異議理由に対し、評審は唐、宋の詩人の作品に登場しており、異議証拠はお茶などの関連商品での誤認混同を立証するには不十分と認定した。先行する合法的権益は保護されるが、不当に自由に制限することは認められない。
事例2.第58141161号“张子憨” (20類)商標異議申立事件
商標出願人:曹雪花
異議申立人:広州市天河区棠下松本喪喪服飾工作室
【概要】異議成立、出願却下。当該標章は、異議申立人が「抖音(中国版TikTok)」で使用しているアカウント名称で「先の権利」(法32条)に違反との異議理由に対し、評審は提出された当該アカウントが称賛されているスクリーンショットなどと総合的な調査により当該アカウント名称が衣料品分野で一定の知名度があること、出願人に一定の悪意があることも認先し、先の権益を侵害するとして出願を却下した。これは新しいメディアのアカウントに民事権益を認めた事例である。
事例3.第54491795号“华莱仕福”(35,42類)商標異議申立事件
商標出願人:唐山米源企業管理諮詢有限公司
異議申立人:上海榕贏品牌管理有限公司
【概要】異議成立、出願却下。当該標章は、先登録第23667026号 (35類)及び第10912752号(43類)の「华莱士」と類似商標との異議理由に対し、本願は第35類広告、第43類レストランを指定し、引用は第35類ホテル、第43類喫茶店と一部類似サービスになるが、出願人の法人登記が2021年に取消されていることから、復審に答弁もなく、主体資格がないため(法4条)、出願を却下した。なお、本件出願に代理人はいない。
事例4.第54053085号“唐妞” (11類)商標異議申立事件
商標出願人:河南広播電視台
異議申立人:陝西歴史博物館(陝西省文物交流中心)
【概要】異議成立、出願却下。当該標章は、先登録第17454729号、第17455036号、第17455700号の同一商標とは第29、30、43類と区分が異なり類似を構成しないが、異議申立人が提出した証拠によると「唐仕女俑」をモデルにし創作された唐文化のイメージ名称で、新聞報道、出版図書、店舗の設立などで宣伝、使用し、すでに全国的に有名となっていることから、復審は出願人は知り得る状況にあると認定し、先行権益を損害するとして(法32条)、出願を却下した。
事例5.第52917720号“惠民南粤家政” (45類)商標異議申立事件
商標出願人:惠州市南粤家政務有限公司
異議申立人:広東省人力資源和社会保障庁
【概要】異議成立、出願却下。当該標章は、広東省委員会、省政府が初めて提案し、複数の政府部門が共同で実施している重要な民生プロジェクトの名称“南粤家政”と類似し社会に欺瞞と悪影響があるとの異議理由に対し、復審は出願人が当該出願に政府の許可を提出していないこと、「恵民」には「人民に利益を与える」という意味があり、それを付加することでサービスの提供元を誤認しやすくするとして(法10条1項(7)、(8)号)、出願を却下した。
事例6.第13571777号“东来顺”(17類)商標無効事件
商標権利者:劉玉志
無効申立人:北京東来順集団有限責任公司
【概要】無効成立。本商標は、中国でレストランの老舗ブランド(老字号)であり、無効宣告請求時は既に除斥期間5年を過ぎていたため、申立人は係争商標の出願日前に既に当該商標が関連公衆に知られている馳名商標の証拠(法13条)に加え、商標権者が事業範囲を超えて出願していること、標章の独創性や知名度の証拠で商標所有者に悪意があったとの理由での無効主張に対し、評審は馳名商標としての証拠により老字号と認定し、商標権者に主観的悪意があり、誤認混同惹起、申立人の権益の損害があるとして(法13条3項)、無効宣告した。
事例7.第33194676号“正泉茂”(30類)など商標無効事件
商標権利者:林紅紅
無効申立人:泉州市鯉城鯉中泉茂糕点店
【概要】和解成立。本事件は、第25908980号“泉茂”、第33187494号“林记正泉茂”、第33194676号“正泉茂”の商標無効及び第26373585号“泉茂世家 QUANMAO PASTRY”出願拒絶再審事件などに関し、当事者は叔父と甥の関係で、「正泉茂」標識はその家族が伝承使用している屋号や商標で、主に緑豆餅に使用され、泉州地区で比較的高い知名度があるが、当事者双方は10年以上にわたり、20件以上の商標出願事件を起こしている。合議体は現地での巡回口頭審理を行い和解に導いた。
事例8.第44714668号“叁零叁”(19類)商標無効事件
商標権利者:天津市参零参物流有限公司
無効申立人:天津市万栄化工工業公司
【概要】無効成立。申立人はグループ企業傘下の会社であり、その元法定代表者が職務中に無断で53件の登録商標を上記商標権者に譲渡し、その後の民事訴訟により返還命令が下された((2021)津01民終131号)が処理未完了、一方、商標権者は違法譲受した商標の類似商標を出願登録したことから、信義誠実の原則違反など(法4条、7条、10条1項(7)、(8)号、44条)を理由とした無効主張に対し、評審は主張の一部は立証が不十分であるが、裁判の通り申立人に不利益となる譲渡がある情況で、本登録出願に正当化されず、信義誠実の原則違反し、不正な手段によるものとして(法44条1項)、無効宣告した。
事例9.第16038591号“伍连德医疗及図” (41,42,43,44,類)商標無効事件
商標権利者:伍連德国際医療管理中心有限責任公司
無効申立人:黄建堃
【概要】無効成立。本商標の「伍连德(伍連德)」は、中国での衛生、防疫、検疫事業の創始者、この分野の先駆者であり、中華医学会の初代会長でもあるところ姓名権を侵害する理由での無効主張に対して、評審は当該登録商標の顕著な識別部分は「伍連徳」であり、登録されたサービスに使用すると、同氏と何らかの特定の関連がある、またサービスの提供元を誤認混同させるとして法10条1項(7)号」、無効宣告した。
事例10.第48720058号“莱迩” (43,類)商標無効事件
商標権利者:郝磊
無効申立人:上海莱迩酒店管理有限公司
【概要】無効成立。本商標の「莱迩」は、申立人がホテル事業に使用している屋号であり、商標権者は元従業員が宿泊、託児所、老人ホームなどのサービスに登録したことから主観的悪意を理由とした(法7、9、10、32条ほか、不競法など)無効主張に対して、評審は申立人の先の使用、元従業員の職歴、商標権者の他の類似商標出願などから当該商標を知っていたことを合理的に認定でき、正当な出願とは言えないとして(法15条2項)、無効宣告した。
参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2023/4/26/art_3207_184727.html