【中国】2023年期初4か月は実案、商標の登録が大きく減少(5月31日)

国家知識産権局(CNIPA)の2023年の1月~4月度の統計情報によると、実用新案特許、意匠特許、及び商標の登録が以下の表の通り、前年2022年同期比、それぞれ、▲27%、▲6%、▲50%と減少していることが分かった。

実用新案特許登録の内訳を見ると、企業の登録が 前年同期834,130件に対し661,466件と▲172,664件(▲20.7%)減少、個人の登録が前年同期111,821件に対し51,172件と▲60,649件(▲54.2%)減少、大学の登録が前年同期52,467に対し21,605件と▲30,862件(▲58.8%)、その他、研究所や団体の登録も同様に50%弱減少している。
意匠特許登録の減少は、企業の登録が▲4,732件(▲3.1%)減少、個人の登録が▲9,607件(▲10.2%)減少したことで全体が減少している。

実用新案特許と意匠特許の減少の背景には、有効性の低い出願が多いことが指摘されており、原則無審査でありながらも、審査官は特許審査基準の規定により、新規性を中心に出願受理時に意見書を出すことで対応してきたが、昨年の審査方針の変更により実用新案特許の進歩性についても職権で審査意見を出し始めたこととが影響していると思われる。なお、2023年度国家知識産権局の事業計画では、実用新案特許出願に対する進歩性及び意匠特許出願に対する創作性の審査を重点的に行うことが具体的に示されている。
 さらに、昨年からの不正な手段での権利化を阻止する行政活動が各地で進んでおり、AIなどを活用して対象者を抽出し個別に行政指導を行い、出願を取下げさせる活動が個人の登録の大きな減少に結果として現れているものと理解する。

商標登録も前年同期比▲49.5%と大きく減少している。外国からの登録も同様に減少しているが、いずれの情報も内訳は不明であり、上記のような分析はできない。しかし、中国国内出願については、悪意商標出願や代理人による不正出願への対策プロジェクトや商標局での積極的な却下措置が効果を上げたものと思われる。出願に対する異議申立が前年同期比▲43.5%減小していることはそうした理由からと考えられる。なお、最近は不使用取消もそうした悪意商標出願対策に利用されるので、増えているものと思われる。
 ところで、今年の1月~3月期の中国国内の登録と出願を地域別に前年同期と対比したところ、件数の多い上位のデータは以下のような結果となった。

この統計データで分かることは、登録件数の減少率は全体で▲52.8%減少しているが、どの地域(リストにない地域を含め)を見ても、ほぼ50%から60%弱、一番低い陕西省でも▲43.7%と何かの力が働いていると言われても仕方ないところである。一方、出願件数をみると、減小率は全体で27.4%であるが、地域での差が比較的ばらついていることがわかる。件数の多い地域ででのトップは上海市▲39.3%に対し、安徽省▲19.3%、江西省▲17.1%と比較的差があることから一定の方向性で指導がされているが、新たな出願については制限にも限度があるということであろう。

出典:国家知識産権局 数据 当社作成