国家知識産権局(CNIPA)は、12月20日付で「第3回知的財産権行政法執行指導事例」を各地方政府の知識産権局などに通知したことを12月29日(国知発保字〔2023〕54号)で公示した。本指導事例は3月31日(国知発保字〔2022〕17号)に次ぐもので、通知された指導事例は3件、その概要は以下の通り。
指導事例第9号:北京市知識産権局での「歯列矯正システムとその製法」発明特許権侵害紛争事件
上海友慧投資諮問有限公司vs北京瑞程病院管理有限公司、愛斉(四川)医療設備有限公司、北京瑞程病院管理有限公司瑞泰口腔病院支社
概要:申立人は、2022年11月1日、発明特許(ZL 201180028187.0、歯の再配置のためのシステム及びその製造方法」を侵害するとして行政裁決請求したところ、2023年1月11日、愛斉(四川)医療設備有限公司が特許無効宣言を請求し、2023年2月1日、北京市知的財産権局は係争中の特許権がすべて無効と宣告された場合、申立人の行政裁決請求を却下する裁定を下した。その後、国家知識産権局が係争特許権のすべての無効決定を下したことを受けて、北京市知的財産権局は行政裁決請求却下の裁定を下した。
ポイント:特許権者は特許無効の裁決に不服であれば15日以内に北京知識産権法院に行政訴訟を提訴できるが、行政機関はその訴訟結果を待たずに、審理効率を上げ、合法的権益を保障するために裁決を下すことができる。こうした手続きを「先行裁量、別途請求(先行裁驳,另行请求)」というが、権利が回復できれば、権利者はその判決を受けて、再度行政裁決を請求することができる。
指導事例10号 重慶市渝中区市場監督管理局での「穴」などの登録商標専用権侵害調査処分事件
王蔓蓮vs重慶洞味鮮老火鍋有限公司
概要:申立人は、登録商標3278749「洞子老火鍋+竈の図形」)及び18634764「洞子」を43類で取得しており、看板や従業員用のエプロンに使用されているとして侵害差止と賠償を請求した。当局は2022年8月11日に立件調査後調停を開始し、9月6日に双方の合意を経て関連商標の使用停止、1万元を賠償する調停書を作成した。その後、10月21日、当局は侵害者が調査処理過程で関連商標の使用を自ら停止したことから処罰を軽減し、侵害行為の停止と罰金3000元を命じた。
ポイント:権利者が行政手続きで損害賠償を請求した場合、「行政処罰+行政調停」の処理方法で対応できるが、行政調停中に侵害者が自主的に侵害行為を停止した状況を「行政処罰法」』第32条第1項定める当事者が主導的に違法行為による危害の結果を除去や軽減に該当すると認定し、罰金を軽減している。
指導事例11号 天津市平和区市場監督管理局での天津市麦購入商業管理有限会社麦購入レジャーマーケット商標権侵害調査処分事件(対象商標不明)
概要:天津市麦買商業管理有限会社麦買レジャーマーケットは化粧品、服装、アクセサリー、飲食、娯楽などを事業とする大型商業施設である。2020年7月16日、当局は、マーケット内の業者が登録商標侵害品を販売しているとの投訴を受け、関与した業者を調査・処分するとともに、マーケット事業者に主体的責任の実行を要求した。しかし、2020年7月から2021年4月にも当局は18業者に行政処罰を行うこととなり、度重なる要請に事業者が必要な措置を取っていなかったとして、5月21日に商標法第57条6項、商標法実施条例第75条などの規定に基づき、事業者の行為を商標権侵害と認定するとともに、罰金4万元を科した。
ポイント:事業者が権利侵害行為を阻止するための必要な措置には、通知、警告、契約の中止(解除)、違約責任の追及などが含まれるが、本件のマーケット事業者は何ら必要な措置も採らず、主観的に侵害者を幇助する意図があり、侵害結果に関連性があると認定された。
参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2023/12/29/art_546_189387.html