最高人民法院は、2月23日付、「最高人民法院知識産権法廷年度報告(2023)」を公示した。本年度報告は4部13項目、25頁からなり、概要は以下の通りであるが、最高人民法院の最高知識産権法廷での事件であり、原則、第二審が対象となる。
(1)2023年の処理状況
①2023年の事件数
2022年の技術類知的財産権と独占事件の受理7,776件(前年6,183件、+25.8%)、内、新規5,062件。審決4,562件(前年3,468件、+31.5%)。裁判官一人当たりの担当件数140.4件(前年142.5件)、また処理件数82.3件(前年79.9件)で2.4件増加している。
②事件内容別内訳
民事二審は3,222件(前年2,956件、前年比+9%)で、
発明特許権侵害687件(前年615件、前年比+11.7%)、
実案特許権侵害1,125件(前年968、前年比+16.2%)、
特許出願権と権利帰属紛争285件(前年312件)、
植物新品種権紛争168件(前年144件)、
集積回路配置設計紛争2件(前年6件)、
営業秘密紛争113件(前年78件、前年比+44.9%)、
コンピュータソフトウェア紛争704件(前年648件)、
契約紛争14件(前年96件)、
独占紛争25件(前年15件)、
その他の紛争は99件(前年74件)。全体的に増加している。
行政二審1,227件(前年877件、前年比+39.9%)は不服再審で、
特許出願296件(前年241件)、
実案特許出願46件(前年27件)、
意匠特許出願7件(前年0件)、
発明特許権無効365件(前年234件、前年比+55.9%)、
実案特許権無効330件(前年207件、前年比+59.4%)、
意匠特許権無効139件(前年84件、前年比+65.5%)、
植物新品種紛争3件(前年3件)、
独占行政紛争19件(前年24件)、
行政処罰などその他の行政事件72件(前年65件)を処理したが、
特許無効関係が大きく伸び、有効性が一審で決着しないことが増加していることがわかる。
③審理結果
審決4,562件(前年3,468件)での原審維持2,260件(前年2,040件)、維持率49.5%(前年58.8)、過去5年の平均原審維持率は41.6%である。なお、却下裁定は21.5%であった。民事調停が368件(前年2688件)と大きく増加している。却下再審・改審892件(前年468件)と全体の19.6%を占める。その他は51件(前年66件)。

④外国、香港澳門台湾の関与事件
第一審の受理490件(前年457件、前年比+7.2%)で全体の9.7%を占め、外国は421件、香港澳門台湾は69件。民事246件(前年274件)、行政244件(前年183件)。結審は391件。なお、過去5年間に1,678件受理し、内、アメリカ31%、ドイツ、フランス、イタリアなどECで36%、日本15%、スイス6%、イギリスと韓国がそれぞれ3%を占めている。
(2)事件の全体的特徴
① 権利侵害民事事件は5年連続増加、平均伸び率35.3%。植物新品種の紛争の増加が持続している。
② 行政事件が昨年減少したが2023年は大きく増加した、特に発明特許出願不服再審が-47.3%、同無効行政不服再審-17.3%とそれぞれ減少した。
③ 戦略的新興産業分野の事件が244件増加し全体の31.3%(前年30.42%)と相変わらず増加傾向である。
④第二審での実質的な判決変更が25.7%と積極的な前審に対する監督業務が進んでいる。