【カナダ】閉庁によるの手続きの期限延長(9月19日)

カナダ知的財産庁(CIPO)は、9月19日、入居するビルの水道供給のトラブルのために9月17日から19日の3日間にわたり閉庁を余儀なくされたため、この予期せぬ休業のため、この3日間に手続き期限のある特許、意匠、商標の案件について、その手続き期限を業務再開日まで延長を適用すると公示した。CIPOは、9月22日(月曜日)に業務を再開する。

参照サイト:https://ised-isde.canada.ca/site/canadian-intellectual-property-office/en/service-and-website-interruptions
https://ised-isde.canada.ca/site/canadian-intellectual-property-office/en/time-period-extensions-resulting-office-closures#section3

【中国】「2025年中国企業トップ500」発表(9月15日)

中国企業連合会と中国企業家協会は、9月15日、北京で記者会見を開き、「2025年中国企業トップ500」を発表した。このランキングは、2024年の営業収益を基準とし、前年比+5.79億元増の479.6億元で、トップ500企業の営業収益は110兆1500億元で、前年比微増である。なお、併せて、「2025年中国多国籍企業トップ100」、「2025年中国戦略的新興産業のリーディング企業トップ100」、「2025年中国イノベーション企業トップ100」も発表されている。
 ランキングトップ10社は、国家電網、中国石油天然気集団、中国石油化工集団、中国建設、中国工商銀行、中国農業銀行、中国建設銀行、中国銀行、中国鉄路工程集団、京東集団で、京東集団(JD)を除き、国営企業である。
 営業収益が1000億元を超える企業は、前年より45社増の267社、1兆元を超える企業は15社で、トップの国家電網は3兆元を超え、中国石油天然気集団、中国石油化工集団、中国建設は、2兆元を超えた。
 また、先進製造業および現代サービス業の企業数が増加し、新規或いは再参入企業が39社ある。自動車・部品製造、物流・サプライチェーンの関連企業の増加幅が最も大きく、新規に6社が加わった。コンピュータ通信機器などの電子機器製造、電気通信、インターネット情報サービスなどの業界は、多くの指標で上位にランクインし、研究開発費、特許、標準規格取得において顕著な貢献を示した。
 特許と研究開発投資は、1兆7,300億元に達し、研究開発集約度は1.95%と8年連続増加した。トップ500企業の有効特許件数は、224.37万件で前年比+21.4万件増(+10.5%)、その内、発明特許は103.96万件と前年比+15万件増(+16.9%)で、全体の構成比は46.3%となり、前年比2.5ポイント増加した。

参照サイト:https://mp.weixin.qq.com/s/fgm0iNyPDGzBPnC-DACqaw
2025年中国企業トップ500社リスト

【アメリカ】PTABの裁定変更に関する覚書の公示(9月16日)

アメリカ特許商標庁(USPTO)は、9月16日、アメリカ特許出願で発行された特許の請求項の有効性に関する審判手続きで、係争特許請求項に関する先行裁定に対する特許審判部(PTAB)による検討に関する覚書を発行した。

この覚書は、AIA審判手続きの特許審判部(PTAB)で係争中の特許請求項、或いはUSPTO、地方裁判所、アメリカ国際貿易委員会(ITC)で既に審理されている実質的に類似の特許請求項に適用される。PTABが、USPTO、地方裁判所、ITCの以前の事実認定や裁定と異なる事実認定或いは法的結論について、初期判断或いは最終的判断を下した場合、PTABは、審理開始決定或いは最終決定書において、異なる結果が正当化される理由を説明するしている。

従って、PTABの裁定を支援するため、AIA手続きの当事者は、37 C.F.R. § 42.8(b)(2)に基づき関連する有効性や特許性に関する判断の進捗状況をPTABに提供する必要がある。AIA審判手続にでのPTABの審理日程決定書で、この要件が当事者に通知されることになる。

参照サイト:https://www.uspto.gov/sites/default/files/documents/Memo_re_prior_findings_of_fact_and_conclusions_of_law_9_16_25.pdf

【WIPO】グローバル・イノベーション・インデックス 2025年版発行(9月16日)

世界知的所有権機関(WIPO)は、9月16日付、毎年発行しているWIPO加盟139国のイノベーション力を評価するグローバル・イノベーション・インデックス(GII、Global Innovation Index)18次、2025年版を公表した。上位のランキングは、変わらずスイス、スウェーデン、アメリカ合衆国で、韓国が2ランク上がって4位、シンガポール、イギリス、フィンランド、オランダ、と続き、デンマークと中国がトップテンになった。日本は、1ランク上がって12位となった。

今回の主な調査結果は下記の通り:
・2024年の研究開発費の伸びは、前年の4.4%増から減速し、2.9%減少、2025年はさらに鈍化を予測している(2.3%)。
・企業の研究開発費は、実質ベースで1%に減少したが、過去10年間の平均4.6%を大きく下回る。ICT関連(特にAI集約型セクター)、ソフトウェア、製薬は研究開発予算を拡大しましたが、自動車産業や消費財などは、企業収益の減少を背景に削減した。
・VC投資額は回復し、7.7%増加した。主に米国を拠点とする大型案件と、生成型AIへの投資急増によるも。この投資を除けば、VC投資額は縮小している。
・WIPO経由の国際特許出願は回復(+0.5%)し、韓国が+7%の増加したが、アメリカ、日本、ドイツでは引き続き減少した。
・ロボット工学とコネクティビティ分野では依然として成長が顕著、高速鉄道網は拡大した。が、ロボットと電気自動車の導入は減速した。
・社会経済指標は改善し、労働生産性と平均寿命は上昇し、貧困はさらに減少しました。

今回注目されるのは、上位100位以内にランクインする経済圏または国境を越えた地域別のトップイノベーションクラスターを掲載しており、深圳・香港・広州がトップで、東京・横浜)、サンノゼ・サンフランシスコ、北京、ソウルが上位5クラスターと分析されている。

参照サイト:https://www.wipo.int/web-publications/global-innovation-index-2025/en/gii-2025-at-a-glance.html

【シンガポール】PPH出願年末まで割引運用(9月12日)

シンガポール知的財産庁(IPOS)は、通達第4/2025号を公示し、特許審査ハイウェイ(PPH)プログラム利用した特許出願での手数料割引を、2025年9月15日から12月31日まで、試行実施することを発表した。

具体的には、企業によるPPH利用支援を強化し、利用を拡大することを目的としており、サーチおよび実体審査請求(PF11)と実体審査請求(PF12)の手数料の30%、返金額はそれぞれS$6,151とS$426ドルを払戻すとしている。

詳細は、下記の参照サイトでご確認ください。

参照サイト:https://isomer-user-content.by.gov.sg/61/a8f60347-b64a-4ecb-a034-f79a7b1ebd49/circular-no-4-2025.pdf
JPOのPPH-シンガポールサイト https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/soki/pph/pph_singapore.html

【中国】「仲裁法」の改正施行(2026年3月1日)

中国政府は、9月12日、主席令第54号で、2025年9月12日に開催された第14期全人代常務委員会第17回会議において中国仲裁法の改正が採択され、2026年3月1日から施行されることを公示した。
 現行の仲裁法は、1994年8月31日に第8期全人代常務委員会第9回会議で採択され、1995年9月1日から施行されており、2009年と2017年に一部改正されており、2024年11月に改正案が意見募集された。改正でのポイントは、対外関係における法治の強化、中国の仲裁制度の信頼性と国際競争力の向上に対応するものであり、当事者の同意に基づくオンライン仲裁実施、国際商事仲裁での優先地の明確化、外国関連仲裁、仲裁監督、裁判所による仲裁の支援などの関連制度が改正されている。

改正法は、16条増えて、以下の8章96条からなる。

第一章 総則
第二章 仲裁機構、仲裁人及び仲裁協会
第三章 仲裁合意
第四章 仲裁手続
 第一節 申請と受理
 第二節 仲裁廷の構成
 第三節 開廷と裁決
第五章 裁決取消申請
第六章 執行
第七章 外国仲裁特別規定
第八章 付則

参照サイト:https://www.gov.cn/yaowen/liebiao/202509/content_7040438.htm
http://www.npc.gov.cn/c2/c30834/202509/t20250912_447762.html

【中国】2025年人民法院独占禁止典型事例(9月10日)

最高人民法院は、2025年中国公正競争政策広報週間(9月8日~12日)に併せて、独占事件の裁判を通じて、公平な競争秩序を維持し、全国統一市場の建設に堅固な司法保障を提供することを示すために独占禁止典型事例5件を公表した。これらは、一般市民の生活に不可欠な分野に関連し、行政権力の濫用による競争の排除・制限、価格カルテルや市場細分化に伴う水平的独占行為、業界団体による独占行為といった重要な法律問題を取り上げている。

事例1.「シェア電動自転車」の行政権力濫用による競争排除・競争制限事件 (2023)最高法知行终1011号)
杭州青某公司vs杭州市行政審批服務局、杭州市大数据中心、第三人:杭州市交某智慧城市開発有限公司
 インターネット自転車レンタルサービスを提供する杭州青某社は、行政認可サービス局とビッグデータセンターが市内で電動自転車の共同フランチャイズを設立・運営していることを行政権力の濫用による競争の排除・制限行為に該当するとして、行政訴訟を提起し、一審は訴訟を棄却したが、二審の最高人民法院は行政機関によるシェアリング電動自転車のフランチャイズの設定・付与に該当し、合法性、合理性を欠き、競争を排除・制限する効果があるとして、独占禁止法での濫用を構成すると裁定した。

事例2.「セメント協会水平独占協定」独占禁止行政処罰・行政再審事件 (2024)最高法知行终148号、(2023)京73行初6605号)
陕西省水泥協会vs江蘇省市場督管理局、国家市場監督管理総局
 セメント協会が省内の一部のセメント企業13社を組織し独占協定を締結させ、複数回価格を引上げたことを市場監督管理局は独占禁止法違反と判断し違法行為の停止を命じ、罰金50万元を科した。これに不服のセメント協会は行政訴訟を提起したが一審は請求を棄却し、二審はセメント協会がWeChatグループなどで意見交換し、価格競争の回避と価格安定策の導入に関するコンセンサスを形成したと判断していたことを認定し、一審判決を維持した。

事例3.「樟脳原料水平独占協定」独占禁止行政処罰・行政再審事件 (2023)最高法知行终30号、(2021)苏01行初753号)
梧州黄埔化工薬業有限公司vs江蘇省市場監督管理局、国家市場監督管理総局
 梧州黄埔化工薬業有限公司と蘇州優合科技有限公司は合成樟脳を、蘇州嘉福製薬有限公司は天然樟脳を製造する競合会社であるが、市場監督管理局は調査の結果、3社は水平独占契約を締結しているとして、違法行為の停止、違法収益の没収、及び前年売上高の5%の罰金が科された。これに不服の原告は、行政訴訟を提起したが一審は請求を棄却し、二審は当事者が市場の分割に同意し、会議などを通じて下流最終医薬品メーカーに対する交渉価格を決定し強要していたなどと認定し、原判決を維持した。

事例4.「コンクリート企業」水平独占協定事件 (2024)最高法知民终456号、(2023)渝01民初303号)
広西建工第五建筑工程集団有限公司vs重慶建典混凝土有限公司
 当事者は、単価を決める売買契約を締結し、その後、補足協定で単価を引き上げ、重慶建典社は広西建工社にコンクリートを供給していたところ、重慶建典社と重慶江都建材有限公司が市場を分割する水平独占契約を締結し実施したとして行政処罰をうけたことから、広西建工社は損害が生じたとして、損害賠償を求めて提訴し、一審は46.7万元の損害賠償を命じた。水平独占契約中の条件に基づいて締結・履行された当事者の契約は正常かつ公正な市場競争の下で締結・履行されたものではないと判断し、認定し、原判決を維持した。

事例5.「ホルムアルデヒド販売市場」水平独占協定事件 (2024)最高法知民终350号、(2023)鄂01知民初335号)
湖北三潤祥新材料有限公司vs湖北鑫西康化工有限公司
 当事者は、競業避止条項を含むホルムアルデヒド供給に関する売買契約を締結していたが、被告が省エネ企業とホルムアルデヒドの調達契約及び包括契約を締結したことから、競業避止条項に違反するとして50万元の支払いを求めて提訴した。一審は、競業避止条項は独占条項に該当しないとして、請求を棄却した。二審は、当事者は上流・下流関係に加え、湖北省の特定地域におけるホルムアルデヒド販売市場で競合関係にあり、実質的に市場を分割する水平独占契約を締結していたので契約は無効と判断し、一審判決の理由を訂正し、控訴を棄却した。

参照サイト:https://china.huanqiu.com/article/4OGT0tgh2Bo

【中国】2025年人民法院不正競争防止典型事例(9月8日)

最高人民法院は、2025年中国公正競争政策広報週間(9月8日~12日)「統一市場、未来への公正競争」に併せて、司法裁判の模範的かつ指導的役割を示すために典型的不正競争防止事件8件を公表した。これらの事件は、偽造・混同、営業秘密侵害、商業上の名誉毀損、オンライン不正競争の認定、不正競争防止法の一般規定の適用といった重要な法的問題を扱っている。対象分野は、電子商取引プラットフォームや自動車整備サービスといったオンライン・オフラインの幅広い分野に加え、人工知能やライブストリーミングプラットフォームといった新技術・新ビジネスモデルを含んでおり、厳格な保護と公正な競争秩序の維持、「有名ブランド模倣」などの不正競争行為に対する厳罰、新しいタイプの紛争に対する適切に裁定の特徴がある。

事例1.「公牛」の商号不正競争事件
公牛集団股份有限公司vs公牛王(山東)科技発展有限公司ほか;(2024)最高法民再224号
原告は、コンセントなどの電気設備に「公牛」商標を保有し、何度も浙江省の知名商標と認定されているところ、被告は同業種の会社で、商号に公牛を使用するともに、「公牛王」の商標出願もしたことから、「公牛」を商号に使用することは不正当競争に該当すると提訴した。一審は、被告に主観的な故意があり、事業も一定の関連性があるため、関連公衆の混同誤認を招きやすく不正競争行為を構成すると判断し、商号の使用中止、10万元の損害賠償を命じた。二審は、商号として登録する行為は「商業的使用」行為ではなく、原告は被告が実際の商業的使用行為を証明していないとして、一審判決を破棄した。最高人民法院の再審では、反不正当競争法6条に規定する商号の使用には、銘板、取引書類、販促広告、製品包装への商号の記載だけでなく、商号の法人登記も含まれると判断し、二審を破棄、一審判決を維持した。

事例2.「遠心圧縮機選択型」のソフトウェア著作権及び営業秘密侵害事件
瀋某集団股份有限公司、瀋陽東平機械古墳有限公司vs瀋陽某機械有限公司、瀋陽斯某機械制造有限公司、孫氏、印氏、呉氏;(2022)最高法知民终1592号
被告の孫氏、印氏は、原告の元従業員で遠心圧縮機の設計・製造図面、本件に係るソフトウェア、および関連基礎データを不法に取得し、被告の企業での侵害行為を行い、2011年に和解により侵害行為の停止を制約していた。しかし、営業秘密情報を保持し、侵害行為を係属したことから提訴された。一審は侵害行為の停止と2500万元の損害賠償を命じた。二審では、リバースエンジニアリングの主張をしたが成立せず、著作権侵害と営業秘密の侵害として、ソフトウェアとデータの使用、開示などの停止、1.66置く減の支払いを命じた。

事例3. 「天然プロテアーゼ3」の営業秘密侵害事件
ニュージーランド某诊断会社vs武漢博某生物科技有限公司、孫氏の営業秘密侵害事件;(2023)最高法知民终2913号、(2022)鄂01知民初707号
原告の元従業員の孫氏が、退職後、被告会社の法定代表者になり、原告の、ヒト好中球の青顆粒から天然プロテアーゼ3(PR3)を分離・精製する製造プロセス及び製品調製手順に関する技術秘密を開示と特許出願を行い、秘密保持義務に違反し、損害を受けたとして提訴した。一審は、反不正当競争法9条の技術の同一性を認定し、開示、利用に該当するとして、被告らに侵害行為の停止、損害賠償180万元の支払いを命じた。二審は、営業秘密であることを認定し、控訴を棄却し、原判決を支持した。

事例4. オンラインゲーム第三者取引プラットフォーム不正競争事件
深圳市騰訊計算機系統有限公司vs鄭州市易晟信息技術有限公司;(2022)粤73民终3597号、(2020)粤0192民初46315号
原告は、被告のゲームコインなどの仮想資産の取引サービスを利用者に提供する行為が利用者の権益を損ない、違法な利益追求の情況を起こしているとして提訴した。一審は、その可能性を十分に認識しながらゲーム通貨の取引サービスを継続し、消費者と公共の利益、原告の正当な権益を損ない不正競争行為に該当すると判断し、合法的出所が証明できないゲーム通貨の取引サービスの停止、損害賠償303万元の支払いを命じた。二審は控訴を棄却し、原判決を支持した。

事例5. 「商品ライブ配信販売」での商標権侵害及び不正競争事件
華為科技有限公司vs衢州市大某電子商務有限公司、張氏、北京抖某科技有限公司など;(2025)浙08民终563号、(2024)浙0803民初1192号
原告は、被告らが許可なく「華為」などの商標を付けた多数の短編動画を中国版Tiktokの抖音で公開し、ライブ配信のでも常設背景として使用しデジタル商品を販売したため侵害行為の停止と損害賠償を求めて提訴した。一審は、侵害行為の停止に加え、被告が賠償から逃れるような行為を審理中に行ったことを受けて、3倍の懲罰的賠償を含め110万元の賠償を命じた。二審は、商標権侵害に加え、知名度の会社名や商品名の無断使用は誤認混同につながる不正当競争法6条に該当すると判断し、一審を支持し、控訴を棄却した。

事例6. 「点検整備サービス」での不正競争事件
上海途虎信息技術有限公司vs北京某東世紀貿易有限公司、北京某東世紀信息技術有限公司、北京某広行信息技術有限公司;(2025)沪73民终33号、(2024)沪0112民初3840号
原告は「途虎」商標を35類や37類に保有し比較的著名であるところ、被告らが「震虎价」をうたって低価格の点検整備サービスのキャンペーンを展開し、特に、「虎」の文字を使って原告に対抗するような宣伝広告を実施したため提訴した。一審は、被告らが低価格販売キャンペーンで原告を悪徳事業者という虚偽かつ誤解を招く情報を捏造・流布し、事業と製品の信用を毀損したことが反不正当競争法8条に該当すると判断し、侵害行為の停止と損害賠償500万元の支払い命じた。二審は、一審を支持し、控訴を棄却した。

事例7. 移行ソフト「盗図抄店」での不正競争事件
浙江淘宝網絡有限公司、浙江天猫網絡有限公司vs鎮江市微楓計算機軟件有限公司、鎮江微陶信息軟件開発有限公司など;(2024)蘇民终212号、(2023)蘇11民初29号
被告らは、他人のECプラットフォームの保護措置を回避し当該ECサイトが販売する商品を販売する店舗を開設して、当該店舗で受けた注文をECサイトから出荷させるアプリを有料で提供しており、原告は不正競争行為に該当するとして提訴した。一審は、潜在的取引機会と利益が奪われたたとし、反不正当競争法12条2項4号に該当すると判断して、500万元の損害賠償を命じた。二審は一審を支持し、控訴を棄却した。

事例8. 「画像イラスト化アプリ」の不正競争事件
北京抖音科技有限公司vs億睿科信息技術(北京)有限公司;(2023)京73民终3802号、(2023)京0105民初71391号
原告は、AI技術を駆使した顔写真を漫画風にリアルタイムでイラスト化するアプリをリリースし、市場で大きな反響を受けていたところ、被告が同種のアプリはリリースし、それは原告のアプリとほぼ同じイラストを作成することから、技術を盗用した不正競争にあたるとして侵害行為の差止、損害賠償を求めて提訴した。被告の反証がないことから、反不正当競争法2条に該当すると判断し、150万元の賠償を命じた。二審も一審を支持し競争上の利益に重大な損害を与え、競争秩序を混乱させ、消費者の権益も毀損したと認定し、控訴を棄却した。

参照サイト:https://www.baidu.com/link?url=xDiPie_SZDuErhNxIgrcXaAPRqlPLwgOwuo5wSAEDqwXxDyUvKt2OanFJgSqCE4euO5CfSAUPMLyUgqQUEhiAa&wd=&eqid=c22804a6013203600000000668c35375
https://m.thepaper.cn/baijiahao_31591091

【中国】「企業競業制限規則順守手引」の公布施行(2025年9月4日)

人力資源社会保障部弁公庁は、9月4日付、地方政府の関係部署に対して、企業が競合避止条項を法に基づきかつ法令順守するよう指導するため、労働契約法などの法律法規に基づき、実務経験を踏まえて策定した「企業競業制限規則順守手引(企业实施竞业限制合规指引)」を企業の指導に参考するよう通知(人社庁発〔2025〕40号)した。企業は、競合避止条項の範囲を科学的に確定し、実施手順を標準化し、従業員の権利義務を公平に合意することで、企業の営業秘密と従業員の選択権、労働権の双方をバランスよく保護しなければならないとしている。

手引は全25条からなり、会社と従業員が競業避止義務契約における経済的補償と違約金の交渉を合理的に決定するための指針として、以下のポイントに注意が必要である:

1.経済的補償の決定要素の明確化。会社は商業秘密の研究開発コストとビジネス上の価値、雇用就業範囲の限定、雇用期間中の賃金給与基準、従業員の求職活動やキャリア形成への影響などの要素に基づき経済的補償を合理的に確定しなければならない。

2.経済的補償基準と競業制限期間の適合性の明確化。会社が従業員に支払う月額経済補償は、通常、従業員との労働契約解除或いは終了前の12か月の平均給与の30%を下回らず、かつ雇用契約地域の最低賃金基準を下回らない。競業制限期間が1年を超える場合、月額経済補償は、通常、従業員の労働契約解除或いは終了前の12か月の平均給与の50%を下回ってはならない。(13条)

3.経済的補償の支払い方法の明確化。会社は競業制限期間内に現金で毎月従業員に経済的補償を速やか支払わなければならない。従業員に常時支払われない賃金や賞与にはすでに競業制限補償が含まれているとして支払いを拒否してはならない。

4.違約金の合理的算定方法の明確化。違約金額は、従業員により商業秘密が漏洩したことによる経済的損害と会社が従業員に支払った競業避止の経済的補償額に基づき合理的に確定しなければならず、通常、約定した競業避止の経済的補償総額の5倍を超えてはならい。(14条)

重要社員の退職時の競合避止条項は悩ましい問題であるが、秘密保持契約書だけでは十分でない場合に退職時の合意をする必要があるが、本手引はコンプライアンスの目的であり、法的拘束力があるかどうかは議論があると思料するものの、契約条件を確定する際に確認することをお勧めする手引である。

参照サイト:https://www.gov.cn/zhengce/zhengceku/202509/content_7040571.htm

【欧州】EPOカラー図面受理開始に関する通知(2025年10月1日施行)

ヨーロッパ特許庁(EPO)は、9月5日の官報で、カラーとグレースケールによる図面を使った特許出願を2025年10月1日より受理開始することを公示した。これは、2024年3月に管理理事会で採​​択された共通実務の関連部分に対応しており、EPOは長年にわたるユーザーからの要望に応え、デジタル化のメリットを活かすための継続的取組みの一環として、カラー及びグレースケールの図面を電子出願で提出する場合のみ受理を開始する。なお、国際段階のPCT出願には適用されない。

図面の作成については、EPC規則49(2)に基づき、2025年7月7日付EPO長官による申請書およびその他の書類の提出に関する決定の下記、第1条(2)(a)項に従い、図面は引き続き白黒で提出できるが、電子的に提出する場合はカラー図面及びグレースケール図面(以下まとめて、カラー図面という)も許容される。
(a) Drawings shall be executed without colourings in durable, black, sufficiently dense and dark, uniformly thick and well-defined lines and strokes. When filed by means of electronic communication, drawings may also be executed in colour or in greyscale, in durable, uniformly thick and well-defined lines, strokes or areas. They must also be sufficiently rich in contrast and suitable to be clearly displayed at a resolution of 300 dpi.

9月5日の官報によると、ヨーロッパ特許の直接出願、Euro-PCT出願の国内段階移行出願においてカラー図面を使用可能とし、以下のように説明している。
1.明細書、クレーム、または要約において、カラーまたはグレースケールを使用することは認められません。現行の実務に従い、カラーで提出された場合、当該要素は公開のために白黒に変換される。
2.明細書、クレーム、または要約において、図面の色の特有の特徴に言及しないことを推奨する。色の指定は必ずしも確実かつ客観的に識別できるとは限らないため。
3.ヨーロッパ特許出願(直接出願)は、カラー図面を含めることができる。これは、2025年10月1日以降に受理される分割出願にも適用される。ただし、分割出願におけるカラー図面はEPC規則76(1)の遵守を審査される。
4. EP移行するEuro-PCT出願は、原図面がカラー図面で提出され、その形式がPATENTSCOPEで入手可能で、かつ国際公開にその旨が記載されている場合、提出される翻訳文中の図面は原図面と同程度にカラー図面を含めることができる。
5.カラー図面と白黒の図面の組合せも許可される。
6.EPC規則56(3)または規則56a(4)に基づき、欠落部分或いは訂正図面を提出する場合、出願人は、優先権主張出願の図面の内容とその形式と正確に一致することを確認しなければならない。優先権主張出願の図面が白黒で提出された場合、そうした図面も白黒で提出する必要がある。
7.2025年10月1日以降カラー図面を含む直接出願は、カラー図面を含んで公開され、登録になれば、同様にカラー図面を含んで公告される。

参照サイト:https://www.epo.org/en/legal/official-journal/notice-5-september-2025

【中国】「商標3年連続不使用取消」申請厳格化後の現状(9月6日)

国家知識産権局商標局が登録商標に対する3年連続不使用取消の手続きを厳格化したことを、本サイトでは6月1日に掲載した。9月5日から中国商標協会が主催する中国国際商標品牌節(中国国際商標ブランドフェスティバル)が開催されており、この件についての現状の報告がされているので、情報を更新する。

商標局によると、今年1月から7月までの商標3年連続不使用取消申請件数は、約127,100件、前年同期比▲3.2%減少した。この内、商標局は、6,736件を却下し、前年同期比+58.9%増加した。この却下申請には、悪質な申請が841件が含まれる。一方、不使用取消申請に対して商標局が修正指示を出した案件は毎月減少しており、4月の38.6%が6月は6.9%まで減少し、提出された申請書類の標準化が進んでいることが分かる。

この間、商標局は異常な申請行為を行った申請人10名以上に対応しており、特に、個人2名が商標代理人事務所4社に依頼して、3件の商標に不使用取消申請440件以上を依頼していたことが判明している。その代理人も身分証明書を偽造するような不正行為が行っている。商標局は悪意や不正な商標出願を監視しており、現状で961件のそうした情報を保有しており、これには16件の悪意による不使用取消も含まれている。

いずれにしても、通常の手続きで不使用取消申請ができるようになることが好ましいところである。

出所:中国知的財産報ほか
https://www.iprchn.com/cipnews/news_content.aspx?newsId=143703

【日本】2025年上期の税関差止やや減少(9月5日)

財務省は、9月5日、2025年上期の税関での知的財産権侵害物品の差止情況について、輸入差止件数は前年同期比▲5.6%減少したが、3年連続で1.5万超えたことを公示しました。

具体的データでは、輸入差止件数は17,249件(前年同期比▲5.6%減)で3年連続1.5万件を超え、輸入差止点数は416,531点(前年同期比▲43.5%減)で5年連続40万点を超えている。
 地域別の差止件数は、中国が相変わらずトップで14,548件(全体構成比84.3%)と最も多く、2位はベトナムで1,557件(同9.0%)、3位が香港で244件(同1.4%)と続いている。

権利種別から見ると、トップが商標権侵害物品で16,339件(全体構成比93.7%、前年同期比▲6.3%減)、点数で193,229点(同46.4%、同▲27.4%)、次いで、著作権侵害物品で731件(同4.2%、同+6.4%増)、点数で167,845点(同40.3%、同▲25.9%減)であるが、意匠権侵害物品が267件(同1.5%、+41.3%増)、点数で37,483点(同9.0%、同+265.4%増)と増加している。最近は、特許での差止に税関は積極的に取り組んでいることがわかる。

品目別に見ると、衣類が最も多く6,825件(前年同期比35.6%、前年同期比+2.5%増)、次いで、バッグ類4,225件(同22.0%、同+1.0%増)で、この2品目で大半を占める。点数別に見ると、電気製品が28,847点(同6.9%、同+31.4%増)、次いで、衣類が27,400点(同6.6%、同▲38.2%減)、次いで、バッグ類付属品23,234点(同5.6%、同+358.7%増)で、これらで全体の20%を占めている。

参照サイト:https://www.mof.go.jp/policy/customs_tariff/trade/safe_society/chiteki/cy2025_1/index.html

【ネパール】出願係属中商標出願に期限通知(8月19日)

ネパール産業省は、8月19日(ネパール暦2082年5月3日)、商標出願手続きに関する通知を公示した。本通知は、1965年特許意匠商標法に基づく、商標出願に対するもので、以下の短期間での手続きに対応することを求めている。

1.異議公告前の未補完書類のある出願
 商標出願で未提出の書類のある場合、未補完書類を公示日から90日以内(11月16日まで)に提出すること。提出しない場合、91日後に却下処分される。

2.登録料未払いで登録証未発行の係属中の出願
 商標出願の手続きが完了し、登録証が未発行の出願の場合、登録料の支払いを公示日から90日以内(11月16日まで)に提出すること。提出しない場合、91日後に却下処分される。

3.登録後1年以内に使用証拠の提出
 すでに登録された商標出願の場合、商標権者は使用証拠 (例えば、請求書など、ウェブサイトのスクリーンショット、カタログ、製品サンプルなど)を公示日から60日以内(10月17日まで)に提出すること。本手続きは、2022年特許意匠商標法第18C条に基づくもので、不使用と判断されると取消を受ける可能性がある。

商標出願案件により事情があることから手続き代理人に照会することをお勧めする。なお、ネパール暦は西暦と一致しないため注意が必要である。

参照サイト:https://www.doind.gov.np/index.php/detail/311b6daa-191a-48df-b576-d3443b34b107

【台湾】非伝統的商標出願審査基準の改訂(8月1日)

台湾智慧産権局は、2024年5月1日に施行した改正商標法の非伝統的商標の審査基準を2025年8月1日に改訂した。改訂したポイントは以下の通り。

1.商標の機能的要素の明確化すること
2.商標の機能的要素に使用される破線部分の説明を説明文に記載すること
3.立体商標を2次元の商標と比べ主な識別力のある特徴を説明文に記載すること
4.立体商標の指定商品或いは指定役務に関して外観態様を明瞭、明確にするために立体形状を説明文に記載すること

参照サイト:https://www.tipo.gov.tw/en/tipo2/855-57626.html

【中国】CNIPAと中国銀行の「知恵業」融資プロジェクト開始(8月31日)

国家知識産権局(CNIPA)と中国銀行は、8月31日、地方政府の関連部門に対して、知的財産金融サービスによる民間企業の質の高い発展を支援する「知恵業」特別プロジェクトの開​​始を通知(国知発運字〔2025〕25号)した。「知恵業」プロジェクトは、2022年のコロナ発生時に飲食業や観光業などの重点産業を支援するため、中小企業向けに知的財産担保融資をCNIPA と中国銀行が共同で行ったプロジェクトが最初であるが、今回は、人工知能(AI)などの新技術・新分野における民間企業に対象として民間中小企業約1,000社対象とする。中国銀行は、100億元(約2000億円)の特別枠を設けており、50億元は総合パイロット地区(北京、上海、江蘇省、浙江省、広東省、四川省、深セン、寧波)に特許の産業化による中小企業の成長促進を目的として重点的な支援を提供する。

本プロジェクトは、2025年8月から2026年7月まで行われ、国家知識産権局知的財産権出願推進部と中国銀行包摂金融部が調整・指導し、中国銀行の地域知的財産管理部および各支店が実施する。主な活動は、9月中に対象企業を絞り、来年6月をめどにマッチングを支援する計画で、活動内容は特許成果のマッチング、専門の知的財産融資商品通じた総合的なサービスの提供、重点特化産業への融資促進である。中国銀行の各支店は、地域の経済・産業特性を踏まえて、県レベルごとにブランド価値などと指標として、質の高い民間企業を支援するとしている。

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2025/8/31/art_75_201283.html