インドネシア知的財産庁(DJKI)は2016年8月26日に特許法を改正(2016/No.13)し施行した時点で、国内産業保護に向けた複数の制度改革を含めたが、その一環として、第20条に実施義務を導入した。また、同時に強制実施も併せて規定し、第82条に不実施などに対する強制実施許諾請求権、政府主導の強制実施許諾は第93条に医薬品などを対象に規定している。
第20条
(1)特許権者は、インドネシアにおいて製品を製造或いは、方法を使用しなければならない。
(2)第1項の製造或いは使用は、技術移転、投資の誘因及び/または雇用の機会を支援しなければならない。
第82条
(1)強制実施権とは、下記の事由に基づく請求に対する政令(大臣決定)により認められる特許実施許諾である:
(a)特許権者が第20条(1)項に規定されるインドネシアにおける製品の製造或いは方法の使用義務を特許付与後36か月以内に果たしていない場合;
(b)特許が特許権者或いは実施権者により公衆の利益を損なう形態或いは方法で実施されている場合;或いは
(c)過去に付与された特許の改良特許であり、第三者が保有し有効な特許を使用することなく実施することができない場合(利用関係特許の存在)。
(2) 第1項の強制実施許諾の申請には手数料の納付しなければならない。
従って、インドネシアで取得した特許の登録日から3年間インドネシアで運用していない場合、そのまま無効になることはないが、第三者から強制実施許諾請求を受ける可能性が生じることになるか、或いは第20条違反は無効理由であるために第132条の規定に基づき検察官或いは国益を代表する者(社会や国の利益ため行動する者との規定あり)から特許取消訴訟を受けることになる。このようなことからインドネシアで取得した特許権を当面運用できている状況でない場合(輸入は実施に該当しない)は、延期申請をする必要がある。
インドネシア知的財産庁は2018年5月22日付、第20条の実施義務に対する行政規定2018/No.15号を公布し、5年間の猶予期間(第3条)、登録日から3年以内の延期申請義務(第4条)、延期承認制度(第5条)を定めた。延期は承認日から発効し、所定の理由で更なる延長も可能(第6条)と規定されている。本規定は2018年7月11日に施行された。この規定の3年以内の起算日の発効日は明確でないが、現地代理人は2016年特許法の施行日を基準とし、その施行日以前に登録となった特許については、延長申請手続きの期限日を2019年8月26日としている。その施行日以降に登録になった特許で当面運用予定がない特許については、順次登録日から3年以内に延期申請をすることになる。インドネシア知的財産庁のサイトでは、米国政府が訪問し不満を表明したことが公表されており、延期申請が可能であることを説明して、立場は変えないことが示めされている。
延期申請で必要となる書類は次の通り;
1.現地代理人への委任状
2.現在事項全部証明書(原本、公証不要)
3.最新の年金納付レシートのコピー
4.延期申請理由書
※注意事項:住所変更や社名変更、或いは譲渡などがある場合、同時に必要な変更手続きを行うことが必要です。
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