【中国】最高人民法院による独占禁止と不正競争八注目典型事例(9月11日)

最高人民法院は、2024年の中国公平競争政策宣伝週間に合わせて、8件の独占禁止と不正競争防止の典型事例を発表した。独占禁止は、主に水平型独占禁止、支配的地位の乱用など、不正競争は一般条項の適用や誤認混同、営業秘密などが含まれる。事例7は、8月の江蘇高級人民法院の無印良品の判決とも繋がり、外国企業にとり有意義な内容である。概要は、以下の通り:

事例1.「ビーフンメーカー」水平型独占協定事件
 競争関係のある複数の事業者が競争関係のある他の事業者をボイコットする際に取った横方向、縦方向に交錯する契約措置の手配を明らかし、一般消費財での独占行為を規範化した。
 商品価格維持、ボイコット取引の認定及び損害賠償の確定((2023)最高法知民終653号)

事例2.「有線デジタルテレビスクランブル信号サービス公的企業」の市場支配地位濫用事件
 ケーブルデジタルテレビ供給者と受信者の間で事件は発生したが、エンドユーザーがケーブルデジタルテレビを視聴する民生福祉に直接関係し、公平な競争の維持に意義がある。
 抱合せ販売、取引拒否行為の認定((2023)最高法知民終383号)

事例3.「天然ガス会社」市場支配的地位による拘束取引事件
 行政処罰不服訴訟であり、原告の立証責任を軽減するとともに、民生用天然ガスの利用者の権益維持及び業界の市場競争秩序を規範化した。
 独占禁止行政処罰後続訴訟における立証責任及び損害賠償の確定((2023)最高法知民終1547号)

事例4.「野菜卸売市場」の市場支配的地位濫用事件
 最新の独占禁止民事訴訟の司法解釈の規定に基づき仲裁合意では人民法院の独占民事紛争受理を排除できないことを認定し、契約履行行為による市場支配地位濫用紛争の管轄基準を明確にした。(最高法知民終748号)

事例5.「新エネルギー自動車車体」営業秘密侵害事件
 組織的、計画的、大規模な技術秘密侵害行為に対する典型的事例で、懲罰的賠償、侵害に対する具体的民事責任を広範囲積極的に検討された。
 営業秘密侵害の判断及び侵害停止の具体的措置((2023)最高法知民終1590号)

事例6.「轻抖」不正競争紛争事件
 「ホワイトウォッシング(刷粉刷量)」などのインターネット業界の裏の部分を取締る典型的な事例で、流量に関する虚偽宣伝不正競争行為を適時かつ効果的に規制し、プラットフォーム事業者の誠実な経営、健全な業態を保障し、公平な競争、規範的で秩序ある市場環境を構築に貢献した。
 流量の組織化や偽トラフィックの作成など、誤った宣伝行為の特定((2022)浙0110民初8714号)

事例7.「シュナイダー」偽造誤認混同事件
 有名登録商標に便乗するなどの模倣・誤認混同行為(SchneiderにSCHNEiDERと寄せる、或いは会社名の一部に「施耐德」を使用)を厳しく処罰した典型的例で、権利侵害による利益が法定賠償の最高限度額を超えていることを証明する十分な証拠がある場合、人民法院は証拠提出責任を合理的に分配し、裁量による賠償額を確定することができる。
 権利侵害による巨額の悪意のある権利侵害行為に対する賠償額の確定((2021)蘇知終19号)

事例8.企業信用データプラットフォーム不正競争事件
 ビッグデータ業態の発展段階、ビジネスモデル、技術、及びデジタル経済発展の現状と法則を十分に考慮し、原データ主体の競争権益の範囲及びデータ使用者が負担すべきデータ品質保証義務などを合理的に確定した。
 データ利用者の不正競争行為の認定((2023)広東03民終4897号)

参照サイト:https://mp.weixin.qq.com/s/D0FTanyG45fMts60T90_rA

【中国】「AIセキュリティガバナンス枠組」初版を発行(9月9日)

9月9日、2024年国家サイバーセキュリティ広報週間のメインフォーラムで、国家サイバーセキュリティ標準化技術委員会( 全国网络安全标准化技术委员会、以下、委員会)は、「AIセキュリティガバナンス枠組(人工智能安全治理框架)」のバージョン1.0をリリースした。

枠組は、AIのイノベーション的発展を奨励することを第一の重要任務とし、AIのリスクを効果的に防止・解消することを出発点と帰結点とし、包括的で慎重に、安全を確保し、リスクの方向性、迅速な管理、技術管理の結合、協同対応などのAIの安全管理の原則を提示している。

全体は以下の6項目27ページからなり、中国とと英語で作成されている。
1.人工知能安全管理の原則
2.人工知能セキュリティ管理フレームワーク構成
3.人工知能セキュリティリスク分類
4.技術的対応
5.総合的なガバナンス措置
6.人工知能安全開発応用ガイドライン

参照サイト:https://www.tc260.org.cn/front/postDetail.html?id=20240909102807

【中国】上海市営業秘密侵害十大典型事例(9月3日)

上海市場監督管理局は、9月3日付、昨年に続き2023年度の営業秘密侵害にかかる十大典型事例を発表した。すべて元従業員による犯罪であり、不正競争防止法の適用であるが、特に、9番目は外国への情報漏洩を刑法に新設された条項で処罰した事例である。また、10番目は行政、刑事、民事のセットの事件として注目される。その概要は以下の通り:

事例1:中某半導体設備(上海)股份有限公司vs科某研究開発股份公司などの営業秘密侵害事件
(上海市高級人民法院(2017)沪民终169号)
原告のプリモD-RIE誘電体エッチング設備にかかる営業秘密侵害で、当事者の秘密保持期間満了後も一般に開示されていない技術は営業秘密であり、不正な手段で技術秘密を獲得、使用した場合、侵害の停止、損害賠償などの責任を負わなければならないとして、使用禁止と損賠賠償を命じた。

事例2:容某実業(上海)有限公司vs吴某氏らの営業秘密侵害事件
(上海市徐汇区人民法院)
原告は金属材料の輸出入会社で、被告は元従業員でビジネス情報である外国顧客対応を5年間担当し、退職時に顧客情報を獲得し自らの事業に違法に利用した。原告が損害を立証できないところ、裁判所が税関に開示請求を行い、1500万ドル位以上の取引を確認し、侵害停止と損害賠償を命じた。審理の必要に応じて裁判所が立証責任を合理的に担当し、侵害停止と損害賠償を命じた。

事例3:蔡某氏の営業秘密侵害事件
(上海市楊浦区人民検察院)
耐某実業(上海)有限公司が秘密管理する商品(シューズ)の価格と在庫情報にかかるビジネス情報を従業員がダウンロードしていることを知った被告はその情報を入手し、自らのWeChat「ディスカウントストアの商品一掃」で会員に提供した。検察は新業態における営業秘密侵害での隠蔽された手段、複雑な証拠収集、営業情報や営業秘密の特定方法などの侵害立証に積極的に対応し、処罰した。

事例4:陸某X氏、陸某Y氏の営業秘密侵害事件
(上海市虹口区人民検察院)
被告らは元勤務先の上海某信息科技有限公司が開発し秘密保持措置を採っていた「ドラゴンボール伝奇」ゲームのアプリケーションコードを使用し、自ら設立した上海某網絡科技有限公司で「ドラゴンボールZ戦士」ゲームを開発し、オンラインで運営した。検察は、ゲームソフトコードを営業秘密の対象と認定し、違法所得に基づき処罰した。

事例5:青島信某高新材料有限公司、金某氏らの営業秘密侵害事件
(上海市人民検察院第三分院)
被告らは上海邁某貿易有限公司に勤務中に青島信某高新材料有限公司を設立し、秘密保持義務に違反し、青島信某社の技術情報を利用して有機ケイ素化合物を製造販売した。検察は、難易度の高い化学工業分野で、「技術情報+製品効果」や「データの新規調査+研究開発証拠」などの手法を用いて、被告人のリバースエンジニアリングの抗弁を排除し、処罰した。

事例6:徐某氏、上海恒某建築工程有限公司らの営業秘密侵害事件
(普陀区市場監督管理局)
徐氏は、勤務先の建設会社の仕入部長でありながら秘密保持義務に違反し、入札時に入札予定価格などに加えて関係図面などを応札会社3社に無断で開示し、応札会社は取得した営業秘密を事業に使用していたことが判明し、当局は侵害当事者に罰金の処罰を科した。こうした隠ぺいし易く検証が難しい事件を当事者の関係文書のハッシュ値の検証などの方法で立証に成功している。

事例7:高某(上海)工業設備有限公司の商業秘密侵害事件
(奉賢区市場監督管理局)
退職した会社で生産監督であった呉某氏が高某(上海)工業設備有限公司を設立し、前職で取得したファンの図面で影響のない一部の部品を修正し、当該ファンの生産を外注していた。当局は外注の電子メール、送信図面などの証拠の固定、鑑定機構により図面は実質的に同一との判断とともに当該図面は営業秘密との認定し、罰金の処罰を科した。

事例8:上海涵某工程技術有限公司の商業秘密侵害事件
(金山区市場監督管理局)
退職した会社でセールスマネージャーであった陳某氏は、退職時に技術情報などのバックアップファイルを削除せず、上海涵某社に就職し、製品の研究開発や設計などを担当した時に、顧客のプロジェクトに退職した会社の製品図面の社名を変更するだけでそのまま転用するなど、秘密保持義務に違反し、当該会社も知りうる立場でありながら事業に従事させたことから、当局は違法所得の没収、罰金の処罰を科した。

事例9:鄭氏の国外への商業秘密提供事件
(上海市浦東新区人民検察院、上海市浦東新区人民法院)
被告の陳某氏は中国企業のエンジニアであったが、コンサルティング仲介会社のハンティングを受け専門コンサルタントに就任した。その後、外資系コンサルティング会社から電話インタビューをうけ、勤務していた会社との秘密保持義務に違反し、研究開発、生産計画、生産能力などの営業秘密を当該外資系コンサルティング会社を通じて、外国企業やその人員に提供し利益を受けたとして、刑法に新設された第2119条の1つ海外に商業秘密不法提供罪に基づき、禁固と罰金の懲罰が科された。

事例10:上海堃某知能設備有限公司などの商業秘密侵害事件
(上海市松江区市場監督管理局、上海市松江区人民検察院、上海市人民検察院第三分院、上海市普陀区人民法院、上海市第三中級人民法院、上海知識産権法院)
被告の李某氏は豪某機械(上海)有限公司に機械エンジニアとして入社後、第三者と共同で上海堃某知能設備有限公司を設立し、総経理に就任した。その後、前職時の秘密保持義務に違反し、勤務時に入手した「HOMGシーリングマシン」の技術情報と図面を利用し、シーリングマシンを外注で生産販売したことから、当局は違法行為の差止と罰金の処罰を科した。これに不服の李氏は行政訴訟を提起したが棄却された。一方、検察は営業秘密侵害罪で違法所得の没収、侵害品や製造機器などの没収、禁固と罰金が命じられ、二審に上訴したが請求棄却された。一方、豪某機械社は営業秘密侵害による損害賠償を請求し、請求した損害賠償全額が認められた。行政、刑事、民事のフルセットの事例として注目される。

参照サイト:https://scjgj.sh.gov.cn/1073/20240903/2c984a72918c23f10191b6cabd9b4c7d.html

【中国】「医薬品分野に関する独占禁止指南」(意見募集稿)の公示(8月9日)

国家市場監督管理総局(SAMRIは、8月9日付、医薬品分野の独占行為を効果的に予防・制止し、医薬品市場の公平な競争と健全な発展を促進し、消費者と社会公共の利益を維持するため、中国独占禁止法(反独占法)などの法律規定に基づき、「医薬品分野に関する独占禁止指南(ガイドライン)」の意見募集稿を作成し、公示した。一般からの意見は、8月23日まで受け付ける。
 本指南の起草背景は、ここ数年来、中国での薬品分野の独占行為が多発し、安定した供給価格に影響を及ぼしており、市場での公平な競争秩序と消費者の利益が損なわれている。市場監督管理総局は、遠大医薬品独占事件、揚子江薬業独占事件、上薬生化学独占事件など20件を超える医薬品分野独占事件を調査、処分している。2021年、原薬分野の独占行為が多発している状況に対し、「原薬分野に関する独占禁止指南」を公布し、原薬分野の独占行為の規範化に重要な役割を果たしたが、独占禁止法執行のターゲットと効果を高める必要性があるとしている。対象は、漢方薬、生薬、生物製品などすべての医薬品を対象とする。
 本意見募集稿は、7章55条からなり構成は以下の通り
 第一章 総則 独占禁止監督管理法執行の全体原則の明確化(第1~6条)
 第二章 独占協合意 独占合意行為の細分化(第7~19条)
 第三章 市場での支配的地位の濫用 濫用行為の認定原則(第20~29条)
 第四章 事業者の集中(合併) 合併審査原則(第30~36条)
 第五章 公平な競争審査と行政権力の濫用による競争の排除、制限(第37~44条)
 第六章 法的責任の適用(第45~53条)
 第七章 附則

参照サイト:https://www.samr.gov.cn/hd/zjdc/art/2024/art_709b7b3bed794e1ca464524d1e5a3dcd.html

【中国】「2024年中国企業の外国知的財産紛争調査報告」(7月31日)

中国知的財産研究協会(CNIPS)は、7月31日、「2024年中国企業の外国知的財産紛争調査報告」(2024中国企业海外知识产权纠纷调查)をそのサイトで報告した。これまで2年に亘り「アメリカでの知的財産権紛争調査報告」としていたが、2023年度は欧米や日本など諸外国も含む調査報告書と収録範囲を拡大し、下記の3部約80頁の構成となっている。

第 1部 アメリカにおける知的財産紛争
第1章 全体の訴訟状況
第2章 特許訴訟
第3章 商標訴訟
第4章 営業秘密訴訟
第5章 越境電子商取引訴訟
第6章 337調査
第2部 その他の主要国・地域における知的財産紛争
第7章 全体の訴訟況
第8章 特許訴訟
第9章 商標訴訟
第3部 海外の知財制度視察

 報告内容で、2023年に中国企業がアメリカでの知的財産権訴訟は、1,173件と前年比+19.0%と増加し続けている。この内訳では、特許訴訟447件(対前年比+56.1%、以下同じ)で中国企業2,452社(+167.4%)、商標訴訟757件(+5.4%)で中国企業16,793社(+98.8%増)、営業秘密訴訟23件(+27.8%)で47社(+27.0%)である。業種別にみると、特許では製造業(36.6%)、卸売・小売業(36.6%)、商標訴訟では主に卸売・小売業(82.56%)で、地域では主に広東、福建、浙江などの省市に分布し、広東企業は3割近くを占める。訴訟結果は、特許訴訟で和解・取下での結審が65.7%の、商標訴訟では被告が訴訟に応じず敗訴66.1%である。平均賠償額は、特許で2371.72万ドル、商標訴訟で117.98万ドルであった。

 他の国と地域での特許、商標訴訟事件は89件、結審は141件。この内、特許訴訟事件は71件(前年比+47.9%、以下同じ)、商標訴訟事件は18件(-43.75%)で、関与する中国企業165件(+60.2%)増加し、そのうち77%が中国企業だった。特許訴訟の平均賠償額は約330万元だった。

参照サイト:http://www.cnips.org.cn/a18979.html

【中国】「国務院の外国知的財産権紛争処理に関する規定(意見募集稿)」の公示(7月29日)

司法部は、知的財産権の保護を強化し、ビジネス環境を最適化し、中国の国民や企業などの組織が法に基づき外国での知的財産権紛争を処理することを促進し、合法的権益を維持し、高水準の外国開放を促進し、経済の質の高い発展を推進するため、「国務院の外国知的財産権紛争処理に関する規定(意見募集稿)(国务院关于涉外知识产权纠纷处理的规定)」を7月29日に公表し、一般からの意見募集を開始した。意見の提出期限は、2024年8月28日まで、

中国の外国貿易、投資の継続的な増加に伴い、中国企業は外国事業で知的財産権紛争に遭遇することが増えて、例えば海外での商標権先取り、権利侵害訴訟に遭遇し、さらに国家レベルの貿易調査、制裁などに直面している。中国企業は外国の知的財産権紛争に対応する能力の不足や外部の支援不足などの多くの弱点と困難に直面している。中国の国民や企業が外国での知的財産権紛争を処理し、正当な権益を保護できるようにより適切に指導および支援するために、法務省は、関係部局と協力し、既存の法律、規制、政策、措置を見直し、研究し、関係者の意見を考慮し、本規定を起草した。

意見募集稿の主な内容は以下の通り:
1.国務院の関係部門、地方人民政府とその関係部門が外国での知的財産権紛争の処理に対する指導とサービスを強化することを明確にし、商会、業界団体、国境を越えた電子商取引プラットフォームなどの組織が外国知的財産権の権利保護支援プラットフォームを構築することを奨励する。(第2条、第3条、第10条)
2.情報サービスを強化。知的財産権情報公共サービスシステムを整備し、外国の知的財産権に関する法律制度情報を速やかに収集、公表し、外国の知的財産権制度の変更や重点情報について追跡と把握を強化し、典型的な事例分析や研究を実施し、一般公衆に情報検索サービスと早期警報を提供する。(第4条、第5条)
3.対応指導の強化。外国知的財産権紛争処理指導業務機構と作業手順を健全化し、中国の国民と組織に外国知的財産権紛争処理での対応戦略の指導と権利保護支援を提供する。(第6条)
4.専門サービスの強化。商事調停組織や仲裁機関が外国での知的財産権紛争の解決に参画できるよう支援し、弁護士事務所、知的財産権サービス機関などが外国知的財産権サービス能力を向上させることを奨励し、中国の国民や組織に効率的で利便性のある外国知的財産権紛争の解決と良質で効率的な外国知的財産権と法律サービスを提供する。(第7条、第8条)
5.企業の能力構築を強化。企業はコンプライアンス管理を強化し、企業の広報、研修を明確に強化し、外国知的財産権紛争の処理能力を向上させることが求められる。保険機関は外国知的財産権に関する保険業務を展開することを奨励し、企業は権利保護コストを下げるために、外国知的財産権保護互助基金を構築することを支援する。(第9条、第11条)

こうした国上げての対策は、やりすぎると自由主義経済では不正競争の対象になるため、アメリカや欧州を中心に非難したり、中国企業に対する制裁に繋がりうるものとを思料する。

参照サイト:https://www.moj.gov.cn/pub/sfbgw/lfyjzj/lflfyjzj/202407/t20240729_503608.html

【中国】中国日本商会「中国経済と日本企業2024年白書」発表(7月10日)

中国の日系企業などで構成される中国日本商会は、7月10日付、「中国経済と日本企業2024年白書」を発表した。本白書は、毎年、在中国日系企業が直面するビジネスの課題の分析や解決のための建議をまとめ、対中国政府関係機関との対話を促進する目的で作成し、活用している。従って、日本から中国の現状を理解する上で、大変分かりやすく良い資料である。
 今年度の白書は、「人的交流に関する問題」、「データの越境・管理に関する問題」、「政府調達に関する問題」が重点分野であるが、全28章からなり569件の建議が記載されている。第2部は、競争、知的財産、技術標準など、第3部は、各産業別、第4部は、各地方での現状と建議が記載されている。

知的財産については、第2部6章にまとめられているが、現状を「知的財産の保護強化に向けた取り組みに関する中国政府の姿勢にぶれはなく、目標の実現に向けた歩みは着実に進められているといえる」と評価しながらも、不正な商標出願問題から懲罰的賠償の適用まで幅広く提案をしていることは、それぞれ評価できる内容となっている。
1.現状の概要
2.知的財産の保護の現状と課題
3.知的財産に関する競争環境の現状と課題
4.知的財産に関する紛争処理の公平化・合理化
5.建議 23項目
 ① 知的財産の適切な保護の促進
 ②知的財産にかかわる公正な競争環境の実現
 ③知的財産にかかわる紛争処理の公平化・合理化

参照サイト:https://www.cjcci.org/detail/576/576/4679.html
知的財産部分 https://www.cjcci.org/cj_pdf/2024bs/japan/2-6_Chitekizaisan_JP.pdf

【中国】「レアアース管理条例」(10月1日施行)

中国国務院は、6月29日、国務院令第785号を公示し、2024年4月26日に国務院第31回常務会議で採択された「レアアース管理条例(稀土管理条例)」を2024年10月1日に施行することを公布した。

本条例は、レアアースが重要な戦略的資源であり、これまで政府はレアアース関連産業のアクセス基準、環境保護などに多くの政策や措置を導入してきたが、レアアース管理には依然として産業チェーン全体をカバーする管理責任と規制措置を早急に改善する必要があるとして、違法や不法な採掘、製錬分離、割当量を超えた生産、製品の売買などに対する規則や罰則を強化したものである。条例は32条から構成されるが、管理と罰則の面から以下の条項に注意が必要である。

本条例にいうレアアースは、30条に「ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウムなどの元素の総称をいう。」と規定し、4条に「レアアース資源は国に帰属し、いかなる組織や個人もレアアース資源を横領、破壊してはならない。」と規定している。

本条例の適用範囲は、2条に「中国内におけるレアアースの採掘、製錬及び分離、金属製錬、総合利用、製品流通、輸出入などの活動」と広い範囲となっており、5条以下に国の管理指導の下で事業ができることが明記されている。そして、14条では関連企業にトレーサビリティ記録」を求めるとともに、15条ではレアアース製品及び関連技術、技術、装備の輸出入は、関連対外貿易、輸出入管理に関する法律、行政法規の規定を遵守しなければならないとし、輸出入管理条例の対象となることに注意が必要である。

違反した場合の処罰は20条以下に規定されているが、違法取得利益の10倍以下或いは500万元以下の罰金、業務停止処分などが科さされる。

参照サイト:https://www.gov.cn/zhengce/content/202406/content_6960152.htm

【中国】「最高人民法院による独占民事紛争事件の審理における法律の適用に関する若干の問題の解釈」(7月1日施行)

最高人民法院は、6月24日、記者会見を開き、2024年2月4日に最高人民法院裁判委員会第1915回会議で採択された、「最高人民法院による独占民事紛争事件の審理における法律の適用に関する若干の問題の解釈(最高人民法院关于审理垄断民事纠纷案件适用法律若干问题的解释)」(法釈[2024]6号)の公布と2024年7月1日からの施行を発表した。併せて、独占禁止典型事例5件を発表した。

本司法解釈は、「中国独占禁止法(反垄断法)」の改正後2年経過し、2012年の司法解釈に代わる新たな司法解釈として公示されたことになる。独占禁止民事訴訟は2013年から2023年に民事一審977件が審理されており、最高人民法院知識産権法院も2019年1月から2024年5月末までに178件を受理し、131件を結審している。これまでに最高人民法院は独占禁止指導的判例3件、典型事例28件を発表している。2022年の改正独占禁止法に対応し、実体的条項に対応した司法解釈を整備したと言える。本司法解釈起草では、政治主導、立法精神の堅持、新業態と国際競争に対応、司法経験の踏襲、国内外の独禁法理論に立脚するとの5つの基本原則を堅持したとしている。

本司法解釈は2022年11月に意見募集稿された内容とほぼ同じであり、その主な内容は、新たに37条が追加され、全6章51条からなり、構成は以下の通り
第1章 手続き規定   第1~13条
第2章 関連市場の定義 第14~17条
第3章 独占協議    第18~27条
第4章 市場での支配地位の濫用 第28~42条
第5章 民事責任    第43~49条
第6章 附則      第50~51条
第3章では、独占協議を規定しており、主に水平独占協定における協同行為、行為主体、後発薬医薬品(パテントリンケージ)、データやアルゴリズム、プラットフォーム待遇、及び垂直型独占協議の立証責任、反競争効果認定及びその例外、組織支援行為、独占協定免除などの事項を規定しており、第4章で部は市場支配地位の濫用を規定し、主に市場支配地位の定義、各種タイプの市場支配地位濫用行為の分析認定などの事項が含まれている。

なお、発表された5件の典型事例は以下の通り
事例1.「自動車販売」垂直型独占契約の後継訴訟事件[最高人民法院(2020)最高法知民終1137号民事判決書]
事例2.「デスロラタジン柑橘系原薬特許」市場での支配的地位の濫用事件[最高人民法院(2020)最高法知民終1140号民事判決書]
事例3.「工業潤滑油」ハブアンドスポーク協定事件[最高人民法院(2021)最高法知民終1315号民事判決書]
判例4.「希土類永久磁石材料特許」市場での支配的地位の濫用事件[最高人民法院(2021)最高法知民終1482号民事判決書]
判例5.「交通信号制御機」水平型独占協定事件[最高人民法院(2024)最高法知民終455号民事判決書]

参照サイト:https://baijiahao.baidu.com/s?id=1802740484749027991&wfr=spider&for=pc
仮訳
典型事例 https://baijiahao.baidu.com/s?id=1802742336196787083&wfr=spider&for=pc

【中国】「中国独占禁止法執行年次報告書(2023年)」発行(6月18日)

国家市場監督管理総局(国家独占禁止局)は、6月18日、 「中国独占禁止法執行年次報告書(2023年)(中国反垄断执法年度报告)」を発表した。

同報告では、国家独占禁止局(国家反垄断局)が2023年に独占協定を調査、処理し、市場での支配的地位の乱用事件を27件、罰金21.63億元、行政権力の濫用による競争排除制限事件を39件、事業者集中(経営者集中)事件797件を審査処理したことなどを以下の内容でまとめている。第二章で事件概要を把握することができる。
第一章 年間業務概要
第二章 監督管理法執行結果
第三章 法制度構築
第四章 公平な競争政策の実施
第五章 競争宣伝の提唱
第六章 国際交流協力
第七章 地方業務
第八章 大事記
付録  関係法

 2023年度業界別の独占事件

参照サイト:https://www.samr.gov.cn/xw/zj/art/2024/art_066873f18efc42749971bbf23d60d360.html

【中国】公平競争審査条例(2024年8月1日施行)

中国政府の国務院は、6月13日付、2024年5月11日に国務院第32回常務会議で可決され、6月6日の国務院令第783号で公布された「公平競争審査条例(公平竞争审查条例)」及び2024年8月1日の施行を公示した。独占禁止法などの規定に基づき制定され、今後、中国国内で策定されるビジネスに関する各種政策措置が本条例及び今後公布される弁法に照らして適法かどうかの審査や確認が行われることになる。国内障壁や外国障壁を取り除き、公平で自由な競争の保証を目的とするものである。

同条例は、以下の5章27条からなり、以下の5点が強調されている。
第一章 総則
第二章 審査基準
第三章 審査メカニズム
第四章 監督保障
第五章 附則

一、公平な競争の審査範囲の明確化。
行政機関と法律、法規により権限を付与された公共事務管理機能を備える組織(起草部門)は、事業者の経済活動に関する法律、行政法規、地方条例、規則、規範的文書及び具体的政策措置を起草し、本条例の規定に基づき公平な競争の審査を進める。
二、関係部門の職責を規定。
国務院は公平な競争審査協調メカニズムを確立し、全国の公平な競争審査業務を統一的に計画、協調、指導する。国務院市場監督管理部門は公平な競争審査制度の実施を指導し、関係部門と地方での公平な競争審査の実施を促す責任を負う。県クラス以上の地方人民政府は公平な競争の審査業務メカニズムを確立し、健全化し、市場監督管理部門は当行政区における公平な競争審査制度を組織し実施する責任を負う。
三、公正な競争審査基準を明確化。
政策措置の起草において、市場への参入と撤退の制限、商品と要素の自由な流通の制限、生産事業コストに不当に影響を及ぼすなど、生産事業行為に影響する内容を含んではならない。政策措置が競争を排除、制限する効果がある或いはその可能性がある場合でも、国家安全の維持、社会公共の利益などを実現する規定情況に適合し、かつ公平な競争に及ぼす影響がより小さい代替案がなく、合理的実施期間或いは終了条件を確定できる場合、策定できる。
四、公平な競争の審査メカニズムを明確化。
部門が策定する政策措置は、起草部門が起草段階で公平な競争の審査を実施する。複数の部門が共同で策定する政策措置は、主幹起草部門が起草段階で公平な競争の審査を実施する。県クラス以上の人民政府が策定或いは当クラス人民代表大会及びその常務委員会に提出して審議される政策措置は、当クラス人民政府市場監督管理部門と起草部門が起草段階で公平な競争の審査を実施する。公平な競争の審査を実施する場合、関係する利害関係者に意見を聴取しなければならない。一般公衆の利益にかかわる場合、一般公衆の意見を聴取しなければならない。政策措置に公平な競争の審査が実施されていない場合、或いは本条例の規定に適合しない場合、策定してはならない。
五、監督保障の強化。
市場監督管理部門は関連政策措置の抜取り検査を実施し、本条例の規定に違反がある場合、起草部門に是正を促さなければならない。本条例に規定された政策措置に違反がある場合、いかなる単位と個人は市場監督管理部門に通報することができる。国務院は定期的に県クラス以上の地方人民政府の公平な競争の審査業務の情況に対し監督検査を実施する。起草部門が本条例の規定に基づき公平な競争の審査を実施せず、監督指導されても改善していない場合、その責任者に対しインタビューすることができる。

参照サイト:https://www.gov.cn/zhengce/zhengceku/202406/content_6957050.htm
仮訳    https://www.gov.cn/yaowen/liebiao/202406/content_6957073.htm

【中国】最高人民法院民事事件再審請求指南(2024年版)

中国最高人民法院は、民事事件の再審請求手続きのガイドラインである「最高人民法院民事事件再審請求指南」を改正し2024年2月1日に公示している。本指南は2010年ごろ既に公布されており、何度か改正されており、本年5月になって最新版が公示された。

本指南は、以下の9項目14条で解説している。
1.どのような民事事件を最高人民法院に再審請求できるか?
2.当事者はどのような裁定に再審請求できるか。
3.再審請求できる人は誰か?
4.民事再審請求はいつ提出しなければならないか?
5.最高人民法院に再審請求するにはどのような方法があるか?
6.民事再審請求ではどのような書類を提出しなければならないか?
7.外国関連民事事件の再審請求に特別な規定があるか?
8.どのような民事事件を人民検察院に検察建議或いは控訴を請求できるか?
9.民事事件再審の条件には何があるか?
 外国の法人などが手続きをする場合の関係書類の公証認証などが新たに明確にされている。

参照サイト:https://ssfw.court.gov.cn/ssfww/ssfwwnew/detail.htm?ssfwznid=3
仮訳

【中国】「知的財産保護システム構築プロジェクト実施計画」(5月27日)

国家知識産権局は、中央宣伝部、最高人民法院、最高人民検察院、公安部、司法部、商務部、海関総署、市場監督管理総局とともに、4月22日に共同で「知的財産保護システム構築プロジェクト実施計画(知识产权保护体系建设工程实施方案)」を制定し、5月27日に関係部署に通知(国知発保字〔2024〕10号)した。
 同計画は、「知的財産権強国建設綱要2021-2035」及び「第14次5か年国家知識産権保護と運用計画」の実施に当たり、世界水準のビジネス環境を支える知的財産権保護システムを構築し、高水準の科学技術の自立の実現と経済の発展を推進することを目的として策定された。全体は3部13項目から構成されており、概要目次と注目するポイントは以下の通り。

一、全体的要求
(一)指導思想
(二)構築目標
 2027年までに知的財産権保護システムの実質的な措置を講じ、2035年までに基本的実現する。
二、知的財産権保護システムの構築
(一)知的財産権の保護政策と標準体系(保護政策制度の整備や標準保護規範の制定)
(二)知的財産権法執行司法体系(司法、行政による保護の強化)
(三)知的財産権登録権利確認体系(2025年までに発明特許の審査期間を15か月、商標出願の審査は7か月、発明特許の結審精度を95%以上、商標審査の抜取り検査合格率を97%以上とする。その他健全な出願環境の整備)
(四)知的財産権保護管理体系(関係部門の連携強化)
(五)知的財産権保護社会共同統治体系(多元的紛争解決、信義誠実の環境整備など)
(六)知的財産権分野における国家安全管理体系(国家安全保障全体の概念に基づき、知的財産分野での重大なセキュリティリスクを排除する)
(七)知的財産権保護能力支援体系(専門人材確保、鑑定と技術調査の強化、情報プラットフォームの構築など)
三、組織実施の強化
(一)組織リーダーシップの強化
(二)法治保障の強化
(三)条件保障の強化
(四)追跡効果の強化

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2024/5/27/art_75_192629.html

【中国】「2024年知的財産権強国建設推進計画」の通知(5月16日)

国家知識産権局(CNIPA)の国家知識産権強国建設工作部際聯席会議弁公室(合同会議事務局)は、5月11日付の国知聯弁〔2024〕6号により「2024年知的財産権強国建設推進計画」を知財関係部門及び国務院の各関係部門に通知した。

同通知は、「知的財産権強国建設綱要2021-2035」及び「第14次5か年国家知識産権保護と運用計画」に基づき、2024年度の計画を詳細に示したもので、7部110項目の内容となっている。その構成はと主なポイントは以下の通り。

一、知的財産権制度の整備(1-21)
(一)知的財産権法律法規の整備
 商標法、集積回路配置設計保護条例、著作権法実施条例、不正競争防止法、植物新品種保護条例、税関保護徐冷、国防特許条例などの改正
(二)知的財産権の重要政策の改革、整備
(三)新興分野と特定分野の知的財産権規則の整備
二、知的財産権の保護強化(22-83)
(一)知的財産権の司法保護強化
 知的財産審判規則、独占禁止及び不正競争、知的財産権刑事事件及び悪質な知的財産訴訟や知的産権の乱用や虚偽訴訟などの対策を推進
(二)知的財産権の行政保護強化
 商標と特許分野の行政法執行の業務の強化、著作権侵害及び営業秘密保護業務を推進、独占禁止及び不正競争対策、税関での保護強化
(三)知的財産権共同保護メカニズムの健全化
三、知的財産権市場運営メカニズムの完備(84-77)
(一)知的財産権の創造品質の向上
(二)知的財産権の総合運用の強化
(三)知的財産権の市場化運営の促進
四、知的財産権の公共サービスレベルの向上(78-86)
(一)知的財産権公共サービスの提供強化
(二)知的財産権公共サービスの効率向上
五、知的財産権のための良好な人文社会環境の構築(87-94)
(一)知的財産権の文化理念の強力推進
(二)知的財産権事業の発展に向けた基礎強化
六、グローバル知的財産権ガバナンスに徹底的参加(95-104)
七、組織保障の強化 (105-110)

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2024/5/16/art_75_192497.html

【中国】「インターネット不正競争暫定規定」(9月1日施行)

国家市場監督管理局は、5月6日付、局令第91号を公布し、「インターネット不正競争暫定規定(网络反不正当竞争暂行规定)」を2024年9月1日より施行することを5月11日付で公示した。これは、インターネット上での不正競争を予防、制止し、公平な競争の市場秩序を維持することで、イノベーションを奨励し、経営者と消費者の合法的権益を保護し、デジタル経済での競争行為を規範化し、健全で持続的発展を促進することを目的としている。

本規定は、「規定」は、全5章43条、総則、インターネット上の不正競争行為、監督検査、法的責任と付則からなり、主に以下の特徴がある。
(1)総則では全体的要求の明確化。
(2)インターネット上の不正競争行為を包括的に整理、列挙し、①インターネット環境下での新たな不正競争行為として、架空注文履歴ややらせレビュー、良いレビューに対する返金などのホットな問題を規制し、監督管理の盲点の解消。②インターネット上の不正競争行為を細分化し、トラフィックハイジャック、悪意のある妨害、悪意のある非互換の表現形式と認定要素を列挙。③架空注文履歴ややらせレビュー、違法データ取得、差別的待遇などの技術手段を利用した新たな不正競争行為を規制し、今後出現可能な新しい行為に監督管理の根拠の提供する。
(3)プラットフォーム事業者の責任強化。
(4)法執行処理手続き規定の最適化。インターネット上の不正競争行為の広域性、クロスプラットフォーム、クロスエリアなどの特徴に対し、監督検査手順に特別な規定を設け、重大な事件の接点に基づき管轄権を確定する。また、専門的オブザーバー制度を創設し、困難な問題解決に知的、技術的支援を提供する。
(5)法的責任の明確化。反不正当競争法に、電子商取引法、独占禁止法、行政処罰法などの法律を効果的に連携させ、違法所得を没収する法的責任を明確にし、監督管理効果を強化している。

参照サイト:https://www.samr.gov.cn/zw/zfxxgk/fdzdgknr/xwxcs/art/2024/art_b8580b91cdb841d399538e0c670d7907.html
規定 https://www.samr.gov.cn/zw/zfxxgk/fdzdgknr/fgs/art/2024/art_80019fe59e464196bef173dc56678a42.html