【中国】代理人との業務委託契約書ひな形に意見募集(9月24日)

国家知識産権局(CNIPA)は、9月24日、特許及び商標代理人と締結する業務委託契約書ひな形(代理委托合同示范文本)とその締結ガイド(签订指引)を作成し、一般からの意見募集を開始した。
 CNIPAは、国務院弁公庁が公布した「特許転化運用特別行動プロジェクト(2023-2025年)」、「国家知識産権局など17部門の知的財産権サービスの高品質発展の加速に関する意見」に基づき、特許や商標の代理サービスの質の向上、特許の転化運用や商標ブランド構築促進のため、中華全国特許代理師協会、中華商標協会と協力し特許及び商標に関する代理委託契約の雛形と締結ガイドを制定した。

 背景としては、特許代理条例(14条)や商標代理監督管理規定(13条)に書面による委託契約を締結しなければならないとの規定があり、雛形を提示することで当事者双方の合法的権益の確保や業界の事業秩序を標準化しようとする方針がある。
 契約書のひな形は、特許も商標も概ね統一されており、前文、委託事項、委託者の権利・義務、受託者の権利・義務、秘密保持義務、作業期限、料金、双方の明確な共通認識、違約責任、その他の約定事項、紛争解決、契約期間及び解除、契約発効・変更と終了の12項目からなる。
 締結ガイドは、それぞれの条項について、解説と意義を説明する内容となっている。

 代理人によっては税務問題もあるので、既に業務委託契約の締結を顧客に通知し、締結している場合もあると思われるが、締結ガイドで内容を確認する意味はあるので、一読をお勧めする。

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2024/9/24/art_75_195107.html

【中国】最高人民法院による独占禁止と不正競争八注目典型事例(9月11日)

最高人民法院は、2024年の中国公平競争政策宣伝週間に合わせて、8件の独占禁止と不正競争防止の典型事例を発表した。独占禁止は、主に水平型独占禁止、支配的地位の乱用など、不正競争は一般条項の適用や誤認混同、営業秘密などが含まれる。事例7は、8月の江蘇高級人民法院の無印良品の判決とも繋がり、外国企業にとり有意義な内容である。概要は、以下の通り:

事例1.「ビーフンメーカー」水平型独占協定事件
 競争関係のある複数の事業者が競争関係のある他の事業者をボイコットする際に取った横方向、縦方向に交錯する契約措置の手配を明らかし、一般消費財での独占行為を規範化した。
 商品価格維持、ボイコット取引の認定及び損害賠償の確定((2023)最高法知民終653号)

事例2.「有線デジタルテレビスクランブル信号サービス公的企業」の市場支配地位濫用事件
 ケーブルデジタルテレビ供給者と受信者の間で事件は発生したが、エンドユーザーがケーブルデジタルテレビを視聴する民生福祉に直接関係し、公平な競争の維持に意義がある。
 抱合せ販売、取引拒否行為の認定((2023)最高法知民終383号)

事例3.「天然ガス会社」市場支配的地位による拘束取引事件
 行政処罰不服訴訟であり、原告の立証責任を軽減するとともに、民生用天然ガスの利用者の権益維持及び業界の市場競争秩序を規範化した。
 独占禁止行政処罰後続訴訟における立証責任及び損害賠償の確定((2023)最高法知民終1547号)

事例4.「野菜卸売市場」の市場支配的地位濫用事件
 最新の独占禁止民事訴訟の司法解釈の規定に基づき仲裁合意では人民法院の独占民事紛争受理を排除できないことを認定し、契約履行行為による市場支配地位濫用紛争の管轄基準を明確にした。(最高法知民終748号)

事例5.「新エネルギー自動車車体」営業秘密侵害事件
 組織的、計画的、大規模な技術秘密侵害行為に対する典型的事例で、懲罰的賠償、侵害に対する具体的民事責任を広範囲積極的に検討された。
 営業秘密侵害の判断及び侵害停止の具体的措置((2023)最高法知民終1590号)

事例6.「轻抖」不正競争紛争事件
 「ホワイトウォッシング(刷粉刷量)」などのインターネット業界の裏の部分を取締る典型的な事例で、流量に関する虚偽宣伝不正競争行為を適時かつ効果的に規制し、プラットフォーム事業者の誠実な経営、健全な業態を保障し、公平な競争、規範的で秩序ある市場環境を構築に貢献した。
 流量の組織化や偽トラフィックの作成など、誤った宣伝行為の特定((2022)浙0110民初8714号)

事例7.「シュナイダー」偽造誤認混同事件
 有名登録商標に便乗するなどの模倣・誤認混同行為(SchneiderにSCHNEiDERと寄せる、或いは会社名の一部に「施耐德」を使用)を厳しく処罰した典型的例で、権利侵害による利益が法定賠償の最高限度額を超えていることを証明する十分な証拠がある場合、人民法院は証拠提出責任を合理的に分配し、裁量による賠償額を確定することができる。
 権利侵害による巨額の悪意のある権利侵害行為に対する賠償額の確定((2021)蘇知終19号)

事例8.企業信用データプラットフォーム不正競争事件
 ビッグデータ業態の発展段階、ビジネスモデル、技術、及びデジタル経済発展の現状と法則を十分に考慮し、原データ主体の競争権益の範囲及びデータ使用者が負担すべきデータ品質保証義務などを合理的に確定した。
 データ利用者の不正競争行為の認定((2023)広東03民終4897号)

参照サイト:https://mp.weixin.qq.com/s/D0FTanyG45fMts60T90_rA

【中国】国家知識産権局2023年度報告(9月3日)

国家知識産権局(CNIPA)は、9月3日付、特許や商標の出願統計データを含む国家知識産権局2023年度報告を公示した。この年報は、CNIPAの2023年度の活動内容を紹介するものであるが、2023年度の特許と商標の出願状況を唯一知ることができる。

2023年度の特許出願は全体で対前年比3.7%の増加し、2022年まで減少し続けた実用新案と意匠特許出願で、国内出願がそれぞれ3.8%、3.4%と伸びたことは大きな変化である。非正常特許出願対策が一段落したといえるだろう。発明特許出願は167.7万件と+3.6%の増加となってる。
 一方、2023年の外国からの出願は意匠出願が▲4.1%と減少した、実用新案特許出願が4.1%増加している。日本からの発明特許出願は近年減少を続けていたが対前年比+2.2%と増加に転じた。実用新案と意匠特許出願は引き続き減少している。
 2022年5月に加盟が発効したヘーグ協定国際意匠の中国企業の出願は1814件(前年1286 件)と41%増加した。外国からの中国指定は1974件(前年607件)と3.25倍と大きく増加した。

発明特許取得トップ10は以下の通り:
(中国)1.Huawei華為技術4,529件、2. Tencent騰訊4,480件、3.Sinopec中国石油化学4,257件、4.Baidu百度3,638件、5.Oppo広東移動通信3,236件、6.BOE京東方科技2,895件、7.Gree珠海格力電器2,844件、8.inspur浪潮2,587件、9.平安科技1,862件、10.NONOR荣耀2,193件。
(外国)1.Samsung三星電子2,301件、2.トヨタ自動車1,490件、3.Qualcommクアルコム1,398件、4.セイコーエプソン1,184件、5.LG電子1,157件、6.本田技研工業1,066件、7.三菱電機1,053件、8.SKハイニックスる955件、9.ボッシュ932件、10.サムソンディスプレイ854件。

審査関連では、発明特許の平均審査期間が16か月(前年16.5か月)と目標を達成した。

復審(審判)関連は、以下の通り。特許出願拒絶不服再審は実用新案特許出願が2022年より急増しており、2023年19%弱減少したもの、6千件を超えている。意匠特許出願も21%増加しているが、AIを活用した非正常や進歩性判断による拒絶査定に対する不服が多いと考えられる。特許無効は前年が減少したが、何れの種別も前年を大きく上回る増加を示している。

商標は出願も登録も減少した。悪意出願などに対する却下処理や地方政府の知識産権局の対応によるものと思われる。外国からの出願も▲5.8%減少したが、日本からは▲19.8%と大きく減少している。

異議申立は▲21.1%減少し、無効申立も▲0.7%減少し、悪意出願が減少しているものと思われる。不使用取消のみが+33.7%と増加しており、まだ不正出願の登録対策が多くあることがわかる。

詳細は報告書でご確認ください。

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/col/col3430/index.html

【中国】「商標行政法執行証拠規定」(意見募集稿)の公示(8月19日)

国家市場監督管理総局(SAMR)は、8月19日、「商標行政法執行証拠規定(商标行政执法证据规定)」(意見募集稿)を公示し、一般からの意見募集を9月19日まで受け付ける。

党中央委員会と国務院は、知的財産権強化に関する一連の施策を実施しているが、本証拠規定は、商標行政執行、証拠収集、証拠審査と認定などの内容と要件をさらに明確にし、事業主体の正当な権益を保護することを目的としており、2023年12月1日に「商標行政法執行証拠基準規定(商标行政执法证据标准规定」)(意見募集稿)を商標行政法執行の専門的指導を強化し、法執行基準を統一し、商標の違法事実を正確に認定し、証拠の収集、審査、認定を規範化するためのもので、これまで商標行政法執行法には専門的な証拠規定が制定されいなかったために本規定と同様の構成で5章46条で起草された。
 今回は、2度目となり、全24条に減縮されている。主な内容は、目的と法律根拠、適用主体と事件範囲、証拠の概念、証拠の種類を明確にし、主に、書類証拠、物証、視聴覚資料、電子データ、証人証言、当事者の陳述、鑑定意見、現場記録及び外国での証拠などを対象とし、各証拠に対する収集要件と認定を明確にしている。

参照サイト:https://www.samr.gov.cn/hd/zjdc/art/2024/art_275583fb35664df595acaf3c38cba102.html
仮訳

【中国】商標局2024年上半期総括報告(8月12日)

国家知識産権局商標局は、8月12日、2024年上半期の商標業務及び関連情況を総括し報告した。

1.商標出願
今年上半期の審査処理は 334.8万件、平均商標登録審査期間は 4 か月、通常の商標出願の登録期間は 7か月と安定している。
早期審査処理が504件。異議申立処理完了が5万件。審判処理完了が17.6万件。
重大な悪影響を伴う出願の却下が958件、悪意登録対策が20.5万件。
「2024年商標審査業務配分計画」を実施し、毎月指導計画を発行、四半期毎に状況把握しながら処理レベルの強化を実施した。また、審査官の教育・研修による品質管理を実施した。

2.マドプロ商標出願
上半期に商標局が受理したマドプロ商標国際出願は3,637件、前年比20.3%増加した。審査期間は2か月、審査通過率は99%を超えた。
安定した審査期間を維持し審査の質を確保するため、マドプロ商標国際登録審査期限の管理と業務処理全体の品質監督の強化、マドプロ商標国際の利用促進も強化した。

3.地理的表示
今年上半期に新たに107 件の地理的表示登録され、登録件数は7,384件になった。
団体商標・認証商標制度の役割を十分に発揮し、産業クラスターブランドや地域ブランドを創造する「強い知財力構築大綱(2021年~2035年)」を積極的に推進し、「余江眼鏡」、「新干箱包」、「威海釣具」、「山水武寧」など産業クラスターと地域ブランドが8件が団体商標で保護され、地域の新たな生産を促進している。

参照サイト:https://sbj.cnipa.gov.cn/sbj/ssbj_gzdt/202408/t20240812_33904.html

【中国】「2024年中国企業の外国知的財産紛争調査報告」(7月31日)

中国知的財産研究協会(CNIPS)は、7月31日、「2024年中国企業の外国知的財産紛争調査報告」(2024中国企业海外知识产权纠纷调查)をそのサイトで報告した。これまで2年に亘り「アメリカでの知的財産権紛争調査報告」としていたが、2023年度は欧米や日本など諸外国も含む調査報告書と収録範囲を拡大し、下記の3部約80頁の構成となっている。

第 1部 アメリカにおける知的財産紛争
第1章 全体の訴訟状況
第2章 特許訴訟
第3章 商標訴訟
第4章 営業秘密訴訟
第5章 越境電子商取引訴訟
第6章 337調査
第2部 その他の主要国・地域における知的財産紛争
第7章 全体の訴訟況
第8章 特許訴訟
第9章 商標訴訟
第3部 海外の知財制度視察

 報告内容で、2023年に中国企業がアメリカでの知的財産権訴訟は、1,173件と前年比+19.0%と増加し続けている。この内訳では、特許訴訟447件(対前年比+56.1%、以下同じ)で中国企業2,452社(+167.4%)、商標訴訟757件(+5.4%)で中国企業16,793社(+98.8%増)、営業秘密訴訟23件(+27.8%)で47社(+27.0%)である。業種別にみると、特許では製造業(36.6%)、卸売・小売業(36.6%)、商標訴訟では主に卸売・小売業(82.56%)で、地域では主に広東、福建、浙江などの省市に分布し、広東企業は3割近くを占める。訴訟結果は、特許訴訟で和解・取下での結審が65.7%の、商標訴訟では被告が訴訟に応じず敗訴66.1%である。平均賠償額は、特許で2371.72万ドル、商標訴訟で117.98万ドルであった。

 他の国と地域での特許、商標訴訟事件は89件、結審は141件。この内、特許訴訟事件は71件(前年比+47.9%、以下同じ)、商標訴訟事件は18件(-43.75%)で、関与する中国企業165件(+60.2%)増加し、そのうち77%が中国企業だった。特許訴訟の平均賠償額は約330万元だった。

参照サイト:http://www.cnips.org.cn/a18979.html

【中国】「国務院の外国知的財産権紛争処理に関する規定(意見募集稿)」の公示(7月29日)

司法部は、知的財産権の保護を強化し、ビジネス環境を最適化し、中国の国民や企業などの組織が法に基づき外国での知的財産権紛争を処理することを促進し、合法的権益を維持し、高水準の外国開放を促進し、経済の質の高い発展を推進するため、「国務院の外国知的財産権紛争処理に関する規定(意見募集稿)(国务院关于涉外知识产权纠纷处理的规定)」を7月29日に公表し、一般からの意見募集を開始した。意見の提出期限は、2024年8月28日まで、

中国の外国貿易、投資の継続的な増加に伴い、中国企業は外国事業で知的財産権紛争に遭遇することが増えて、例えば海外での商標権先取り、権利侵害訴訟に遭遇し、さらに国家レベルの貿易調査、制裁などに直面している。中国企業は外国の知的財産権紛争に対応する能力の不足や外部の支援不足などの多くの弱点と困難に直面している。中国の国民や企業が外国での知的財産権紛争を処理し、正当な権益を保護できるようにより適切に指導および支援するために、法務省は、関係部局と協力し、既存の法律、規制、政策、措置を見直し、研究し、関係者の意見を考慮し、本規定を起草した。

意見募集稿の主な内容は以下の通り:
1.国務院の関係部門、地方人民政府とその関係部門が外国での知的財産権紛争の処理に対する指導とサービスを強化することを明確にし、商会、業界団体、国境を越えた電子商取引プラットフォームなどの組織が外国知的財産権の権利保護支援プラットフォームを構築することを奨励する。(第2条、第3条、第10条)
2.情報サービスを強化。知的財産権情報公共サービスシステムを整備し、外国の知的財産権に関する法律制度情報を速やかに収集、公表し、外国の知的財産権制度の変更や重点情報について追跡と把握を強化し、典型的な事例分析や研究を実施し、一般公衆に情報検索サービスと早期警報を提供する。(第4条、第5条)
3.対応指導の強化。外国知的財産権紛争処理指導業務機構と作業手順を健全化し、中国の国民と組織に外国知的財産権紛争処理での対応戦略の指導と権利保護支援を提供する。(第6条)
4.専門サービスの強化。商事調停組織や仲裁機関が外国での知的財産権紛争の解決に参画できるよう支援し、弁護士事務所、知的財産権サービス機関などが外国知的財産権サービス能力を向上させることを奨励し、中国の国民や組織に効率的で利便性のある外国知的財産権紛争の解決と良質で効率的な外国知的財産権と法律サービスを提供する。(第7条、第8条)
5.企業の能力構築を強化。企業はコンプライアンス管理を強化し、企業の広報、研修を明確に強化し、外国知的財産権紛争の処理能力を向上させることが求められる。保険機関は外国知的財産権に関する保険業務を展開することを奨励し、企業は権利保護コストを下げるために、外国知的財産権保護互助基金を構築することを支援する。(第9条、第11条)

こうした国上げての対策は、やりすぎると自由主義経済では不正競争の対象になるため、アメリカや欧州を中心に非難したり、中国企業に対する制裁に繋がりうるものとを思料する。

参照サイト:https://www.moj.gov.cn/pub/sfbgw/lfyjzj/lflfyjzj/202407/t20240729_503608.html

【中国】2024年6月までの特許登録、知財訴訟情況(7月19日)

国家知識産権局(CNIPA)が公示した第2四半期6月までの特許と商標の登録などの統計データが更新された。これによると、発明特許が前年比+28%増、実案特許と意匠特許がそれぞれ前年比‐12.5%、‐11.4%となり、3月末の時点から増減率がそれぞれ半数ほどになっている。注目は、外国からの意匠特許登録が+2.2倍と急増しており、ハーグ国際意匠制度を利用した出願が増加していると思われる。
 商標登録は+22%増と安定した回復を示しており、外国からの登録も+28.2%増と回復の傾向を示している。また、異議、無効宣告、却下再審は増加傾向を示している。

なお、中国企業の発明特許取得上位5社は以下の通り:
1.Tencent騰訊2533件、2.Huawei華為技術2478件、3.Baidu北京百度2077件、4.PingAn平安科技1944件、5.BOE京東方科技1860件

最高人民法院の公示によると、2024年上期の知的財産権紛争の一審受理件数は24.1万件と前年同期比1.17%増加した。そのうち、刑事事件は4,273件と前年同期比44.02%と大きく増加している。民事事件は22.6万件と前年同期比0.81%増、行政事件は1.1万件と前年同期比2.94%減であった。なお、多くの知的財産権紛争が調停などの方法で実質的に解決されることが増加しており、知的財産権民事一審事件の調停率は74.45%で、前年同期比4.84ポイント上昇している。

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/col/col61/index.html
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1804973228394875807&wfr=spider&for=pc

【中国】中国日本商会「中国経済と日本企業2024年白書」発表(7月10日)

中国の日系企業などで構成される中国日本商会は、7月10日付、「中国経済と日本企業2024年白書」を発表した。本白書は、毎年、在中国日系企業が直面するビジネスの課題の分析や解決のための建議をまとめ、対中国政府関係機関との対話を促進する目的で作成し、活用している。従って、日本から中国の現状を理解する上で、大変分かりやすく良い資料である。
 今年度の白書は、「人的交流に関する問題」、「データの越境・管理に関する問題」、「政府調達に関する問題」が重点分野であるが、全28章からなり569件の建議が記載されている。第2部は、競争、知的財産、技術標準など、第3部は、各産業別、第4部は、各地方での現状と建議が記載されている。

知的財産については、第2部6章にまとめられているが、現状を「知的財産の保護強化に向けた取り組みに関する中国政府の姿勢にぶれはなく、目標の実現に向けた歩みは着実に進められているといえる」と評価しながらも、不正な商標出願問題から懲罰的賠償の適用まで幅広く提案をしていることは、それぞれ評価できる内容となっている。
1.現状の概要
2.知的財産の保護の現状と課題
3.知的財産に関する競争環境の現状と課題
4.知的財産に関する紛争処理の公平化・合理化
5.建議 23項目
 ① 知的財産の適切な保護の促進
 ②知的財産にかかわる公正な競争環境の実現
 ③知的財産にかかわる紛争処理の公平化・合理化

参照サイト:https://www.cjcci.org/detail/576/576/4679.html
知的財産部分 https://www.cjcci.org/cj_pdf/2024bs/japan/2-6_Chitekizaisan_JP.pdf

【中国】商標出願2024年上半期+1.2%(7月9日)

商標局の7月9日付、2024年度上期の国内商標出願は、343万件で前年同期比238万件に対して4万件増えて+1.2%増加した。登録件数は、238万件で前年同期比238万件に対して42.7万件増えて+21.8%増加し、大きく回復した。

出願件数が10万件を超える地域は以下の通りであるが、河南省、四川省、河北省を除き、出願の多い地域での出願は回復していないが、登録件数は回復しているは、不正や悪意出願が抑えられて、認可対象が増えたと言えるかもしれないが、詳細はわからない。なお、出願が増加しているのは、江西省や陕西省など地域的には内部であり、増加の要因となっている。なお、登録件数はいずれの地域も増加している。

参照サイト:https://sbj.cnipa.gov.cn/sbj/sbsj/202407/t20240709_33697.html

【中国】「知的財産保護システム構築プロジェクト実施計画」(5月27日)

国家知識産権局は、中央宣伝部、最高人民法院、最高人民検察院、公安部、司法部、商務部、海関総署、市場監督管理総局とともに、4月22日に共同で「知的財産保護システム構築プロジェクト実施計画(知识产权保护体系建设工程实施方案)」を制定し、5月27日に関係部署に通知(国知発保字〔2024〕10号)した。
 同計画は、「知的財産権強国建設綱要2021-2035」及び「第14次5か年国家知識産権保護と運用計画」の実施に当たり、世界水準のビジネス環境を支える知的財産権保護システムを構築し、高水準の科学技術の自立の実現と経済の発展を推進することを目的として策定された。全体は3部13項目から構成されており、概要目次と注目するポイントは以下の通り。

一、全体的要求
(一)指導思想
(二)構築目標
 2027年までに知的財産権保護システムの実質的な措置を講じ、2035年までに基本的実現する。
二、知的財産権保護システムの構築
(一)知的財産権の保護政策と標準体系(保護政策制度の整備や標準保護規範の制定)
(二)知的財産権法執行司法体系(司法、行政による保護の強化)
(三)知的財産権登録権利確認体系(2025年までに発明特許の審査期間を15か月、商標出願の審査は7か月、発明特許の結審精度を95%以上、商標審査の抜取り検査合格率を97%以上とする。その他健全な出願環境の整備)
(四)知的財産権保護管理体系(関係部門の連携強化)
(五)知的財産権保護社会共同統治体系(多元的紛争解決、信義誠実の環境整備など)
(六)知的財産権分野における国家安全管理体系(国家安全保障全体の概念に基づき、知的財産分野での重大なセキュリティリスクを排除する)
(七)知的財産権保護能力支援体系(専門人材確保、鑑定と技術調査の強化、情報プラットフォームの構築など)
三、組織実施の強化
(一)組織リーダーシップの強化
(二)法治保障の強化
(三)条件保障の強化
(四)追跡効果の強化

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2024/5/27/art_75_192629.html

【中国】「2024年知的財産権強国建設推進計画」の通知(5月16日)

国家知識産権局(CNIPA)の国家知識産権強国建設工作部際聯席会議弁公室(合同会議事務局)は、5月11日付の国知聯弁〔2024〕6号により「2024年知的財産権強国建設推進計画」を知財関係部門及び国務院の各関係部門に通知した。

同通知は、「知的財産権強国建設綱要2021-2035」及び「第14次5か年国家知識産権保護と運用計画」に基づき、2024年度の計画を詳細に示したもので、7部110項目の内容となっている。その構成はと主なポイントは以下の通り。

一、知的財産権制度の整備(1-21)
(一)知的財産権法律法規の整備
 商標法、集積回路配置設計保護条例、著作権法実施条例、不正競争防止法、植物新品種保護条例、税関保護徐冷、国防特許条例などの改正
(二)知的財産権の重要政策の改革、整備
(三)新興分野と特定分野の知的財産権規則の整備
二、知的財産権の保護強化(22-83)
(一)知的財産権の司法保護強化
 知的財産審判規則、独占禁止及び不正競争、知的財産権刑事事件及び悪質な知的財産訴訟や知的産権の乱用や虚偽訴訟などの対策を推進
(二)知的財産権の行政保護強化
 商標と特許分野の行政法執行の業務の強化、著作権侵害及び営業秘密保護業務を推進、独占禁止及び不正競争対策、税関での保護強化
(三)知的財産権共同保護メカニズムの健全化
三、知的財産権市場運営メカニズムの完備(84-77)
(一)知的財産権の創造品質の向上
(二)知的財産権の総合運用の強化
(三)知的財産権の市場化運営の促進
四、知的財産権の公共サービスレベルの向上(78-86)
(一)知的財産権公共サービスの提供強化
(二)知的財産権公共サービスの効率向上
五、知的財産権のための良好な人文社会環境の構築(87-94)
(一)知的財産権の文化理念の強力推進
(二)知的財産権事業の発展に向けた基礎強化
六、グローバル知的財産権ガバナンスに徹底的参加(95-104)
七、組織保障の強化 (105-110)

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2024/5/16/art_75_192497.html

【中国】市場監督管理総局2023年知的財産権執行10大典型事例(5月10日)

国家市場監督管理総局(SAMR)は、5月10日、2023年度の知的財産権法執行で、商標権侵害、特許虚偽表示、悪意商標出願、違法な商標使用や特許代理活動を取締り、以下の典型的事例を選定し公示した。

1.孫氏らの有名ブランド自動車ガラス偽造販売調査処分事件(浙江省海寧市市場監督管理局)
 被疑者は、2018年からガラスメーカーから自動車ガラスを購入し、BMW、ベンツ、ホンダ、フォルクスワーゲン、トヨタ、GM、フォード、マツダ、フィアット、ロードタイガー、レクサス、ジャガーなどのブランドの商標を印刷し、浙江、江蘇、山東、河南、湖北、湖南などで販売し、2億元以上を売り上げた。商標法57条違反し、市場監督管理局は公安局と協働し、9人を逮捕、26人を拘束した。

2.劉氏らの偽造化粧品不法製造販売調査処分事件(江蘇省東台市市場監督管理局)
 被疑者らは、2022年から住宅でL’Oreal、Fresh、Lancome、Olayの化粧品の偽物を製造販売し、正規品に近い価格で販売し1.3億元に達した。市場監督管理局と公安機関は、生産拠点3か所、販売拠点2か所で大量は包装材料などを押収、上海、広東、浙江など5省8市にまたがる化粧品の不法製造販売ネットワーク1カ所を捜査破壊し、容疑者17人を逮捕した。

3.南寧市日月泉茗茶店の「中茶」登録商標侵害調査処分事件(広西チワン族自治区南寧市市場監督管理局)
 被疑者の店内で「中茶」の標章、「中国土産畜産輸出入会社雲南省茶支社」と商標権を侵害する大量のプーアル茶500万元相当が発見され、公安機関と連携して製造販売拠点を追跡し、11人を逮捕し、9000万元相当の茶葉を押収した。

4.天津北江軽自動車技術有限公司の「DENSO」「TOYOTA」登録商標侵害調査処分事件(天津市北辰区市場監督管理局)
 被疑者の事業所の捜査でDENSO」「TOYOTA」ブランドの偽点火コイル5.4万本、約1,717.5万元相当が発見され、商標法57条に違反し、犯罪行為があるとして公安局に移送し処理した。

5.楊某氏の「FION」登録商標虚偽表示調査処分事件(湖北省利川市市場監督管理局)
 被疑者は、住宅で2022年11月からインターネットを通じて「FION」ブランドの偽バッグを販売し、既に1000個以上販売し、4524個の在庫があり600万元相当し、商標法57条に違反し、犯罪行為があるとして公安局に移送し処理した。

6.新疆阿加依普国際貿易有限責任公司の化学肥料特許虚偽表示調査処分事件(新疆ウイグル自治区和田地区市場監督管理局)
 被疑者の事業所の捜査で包装に「錯化チタン特許配合ZL 201610715940.8」と印刷されたフルボ酸硫黄系窒素肥料、窒素配合肥料、尿素アンモニウム窒素肥料を発見したが、既に76トン15.86万元に相当するが、同特許は拒絶査定されており、特許権が付与されていないにもかかわらず特許表示したことが判明し、違法所得1.13万元を没収、罰金7.5万元で処罰した。

7.上海聖貝企業服務有限公司の無権専利代理行為調査処分事件(上海市市場監督管理局)
 被疑者は、「執業許可証」を取得せずにそのウェブサイトで宣伝し、2021年9月から109社と特許出願委託代理契約110件を締結し、発明、実用新案など特許出願831件を受任し497件を出願した。専利代理条例9条に違反し、違法所得5.22万元没収、罰金5.22万元で処罰した。

8.中知産(北京)知識産権運営管理有限公司の偽造証明書による商標出願調査処分事件(北京市市場監督管理局)
 被疑者は、「青龍絨毯カシミヤ」など3件の地理的標識証明商標出願代行過程で、出願人と共謀し必要書類や公印を改ざんしたことが判明し、市場監督管理局は警告と罰金8万元で処罰した。

9.済南成和知識産権代理有限公司の無権商標代理行為調査処分事件(山東省済南市市場監督管理局)
 被疑者は、2019年11月1日以来、49社を代理し大量の商標出願をしたが、当該出願商標はAdidas、SKAJ USA、Lacoste、New Balance及びその他の著名商標或いは非常に類似した商標であり、「便乗」「すり寄り」の意図は明らかで出願秩序を乱しているとして、商標法19条3項に違反し、悪意商標出願の違法行為を構成するとして、警告、違法所得0.5万元の没収、罰金4万元、また責任者に警告、罰金2万元で処罰した。

10.成都愛爾眼科病院有限公司の第31回ユニバーシアード大会ロゴ無断使用調査処分事件(四川省成都市青羊区市場監督管理局)
 被疑者は、第31回ユニバーシアード夏季大会実行委員会の許可を得ずに、成都ユニバーシアードのエンブレム、文字、図形を微信公式アカウントのツイートに使用し、特殊標識管理条例16条に違反するとして、罰金3000元で処罰した。

参照サイト:https://www.samr.gov.cn/xw/zj/art/2024/art_67e05d6c113943f58b0bd19e2ead74ea.html

【中国】CNIPA「2023年知識産権保護状況」白書を公示(4月30日)

国家知識産権局(CNIPA)は、4月30日付、例年発行している「2023年知識産権保護状況」白書を公示した。構成内容は、保護効果、制度建設、承認登録、文化建設、国際協力からなり全38頁である。

1.保護効果では、司法保護で民事訴訟第一審受理が46.2万件(+5.4%)、行政第一審受理は2万件(-0.3%)、刑事第一審が7千件(+37.4%)であった。行政保護では、各地の市場監督管理局の知的財産権侵害紛争は6.8万件(+18.8%)、商標違法処理3.94万件などである。

2.制度建設では、特許法実施細則が改正され、商標法、商標法実施条例、植物新品種保護条例が改正途中である。そのほか、不正当競争法、電子商取引法、著作権法実施条例、著作権団体管理条例も改正中である。また、部門規定、司法解釈、規範的文書も改正された。

3.承認登録では出願登録件数が紹介され、発明特許登録92万件(+15.3%)、PCT出願国内受理7.4万元(-0.9%)、拒絶査定不服審判10.6万件(+1.0%)、無効宣言審判8.7千件(+23.2%)。商標登録738.3件(-29%)、マドプロ出願国内受理6.2千件(+6.3%)、異議申立11.5万件(-21.1%)。著作権登録は892.3万件(+40.7%)コンピュータプログラム登録249.5万件(+35.9%)。

4.文化建設では、宣伝普及で年次報告、典型事例の紹介、また小中学校のレベルから知財教育課程を設けるだけでなく、行政組織の担当者にもトレーニング課程を設けレベルアップを図っている。

5.国際協力では、意匠法条約や知的財産及び遺伝資源に関する外交会議に関連する協議積極的に推進し、中国とEUの地理的表示の保護協定などを推進、また一帯一路の国家と地域の知的財産権交流、5局の協力体制などに取り組んだ。

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2024/4/30/art_91_192134.html

【中国】2024全国知的財産権行政保護業務計画(4月25日)

国家知識産権局(CNIPA)は、4月26日、地方政府の知識産権局に「2024全国知的財産権行政保護業務計画」(国知発保字〔2024〕13号)を通知し、貫徹、実行を指示しました。業務計画では、この1月に施行された特許法実施細則と特許出願行為を規範化させる規定を確実に実行することを最初に据え、特許権、商標権と地理的表示の保護の4項目を中心にしている。

特許と商標については、適正な出願行為となるよう、非正常特許出願、悪意先取り商標出願があれば刑事訴追することも視野に入れることを含めている。また、保護重点分野として、食品と医薬品、リハビリテーション補助具、子供のおもちゃ、家庭用電化製品、種子産業、セメント、公衆衛生、公共の利益や国家の重要な利益に関連するグリーン技術や低炭素技術などの主要分野への重点を引き続き強化するとともに、半導体、量子技術、人工知能、モバイル通信、ハイエンド機器製造、新エネルギー、新素材、バイオテクノロジー、省エネ、環境保護などの戦略的新興産業の保護を強化するとしている。

地理的表示については、登録業務を厳格に行うとともに、一次農産物、加工食品、医薬品素材、伝統工芸品などの分野に焦点を当て特別な保護作業を引続き実施するとしている。

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2024/4/26/art_546_191948.html