【中国】最高人民法院による独占禁止と不正競争八注目典型事例(9月11日)

最高人民法院は、2024年の中国公平競争政策宣伝週間に合わせて、8件の独占禁止と不正競争防止の典型事例を発表した。独占禁止は、主に水平型独占禁止、支配的地位の乱用など、不正競争は一般条項の適用や誤認混同、営業秘密などが含まれる。事例7は、8月の江蘇高級人民法院の無印良品の判決とも繋がり、外国企業にとり有意義な内容である。概要は、以下の通り:

事例1.「ビーフンメーカー」水平型独占協定事件
 競争関係のある複数の事業者が競争関係のある他の事業者をボイコットする際に取った横方向、縦方向に交錯する契約措置の手配を明らかし、一般消費財での独占行為を規範化した。
 商品価格維持、ボイコット取引の認定及び損害賠償の確定((2023)最高法知民終653号)

事例2.「有線デジタルテレビスクランブル信号サービス公的企業」の市場支配地位濫用事件
 ケーブルデジタルテレビ供給者と受信者の間で事件は発生したが、エンドユーザーがケーブルデジタルテレビを視聴する民生福祉に直接関係し、公平な競争の維持に意義がある。
 抱合せ販売、取引拒否行為の認定((2023)最高法知民終383号)

事例3.「天然ガス会社」市場支配的地位による拘束取引事件
 行政処罰不服訴訟であり、原告の立証責任を軽減するとともに、民生用天然ガスの利用者の権益維持及び業界の市場競争秩序を規範化した。
 独占禁止行政処罰後続訴訟における立証責任及び損害賠償の確定((2023)最高法知民終1547号)

事例4.「野菜卸売市場」の市場支配的地位濫用事件
 最新の独占禁止民事訴訟の司法解釈の規定に基づき仲裁合意では人民法院の独占民事紛争受理を排除できないことを認定し、契約履行行為による市場支配地位濫用紛争の管轄基準を明確にした。(最高法知民終748号)

事例5.「新エネルギー自動車車体」営業秘密侵害事件
 組織的、計画的、大規模な技術秘密侵害行為に対する典型的事例で、懲罰的賠償、侵害に対する具体的民事責任を広範囲積極的に検討された。
 営業秘密侵害の判断及び侵害停止の具体的措置((2023)最高法知民終1590号)

事例6.「轻抖」不正競争紛争事件
 「ホワイトウォッシング(刷粉刷量)」などのインターネット業界の裏の部分を取締る典型的な事例で、流量に関する虚偽宣伝不正競争行為を適時かつ効果的に規制し、プラットフォーム事業者の誠実な経営、健全な業態を保障し、公平な競争、規範的で秩序ある市場環境を構築に貢献した。
 流量の組織化や偽トラフィックの作成など、誤った宣伝行為の特定((2022)浙0110民初8714号)

事例7.「シュナイダー」偽造誤認混同事件
 有名登録商標に便乗するなどの模倣・誤認混同行為(SchneiderにSCHNEiDERと寄せる、或いは会社名の一部に「施耐德」を使用)を厳しく処罰した典型的例で、権利侵害による利益が法定賠償の最高限度額を超えていることを証明する十分な証拠がある場合、人民法院は証拠提出責任を合理的に分配し、裁量による賠償額を確定することができる。
 権利侵害による巨額の悪意のある権利侵害行為に対する賠償額の確定((2021)蘇知終19号)

事例8.企業信用データプラットフォーム不正競争事件
 ビッグデータ業態の発展段階、ビジネスモデル、技術、及びデジタル経済発展の現状と法則を十分に考慮し、原データ主体の競争権益の範囲及びデータ使用者が負担すべきデータ品質保証義務などを合理的に確定した。
 データ利用者の不正競争行為の認定((2023)広東03民終4897号)

参照サイト:https://mp.weixin.qq.com/s/D0FTanyG45fMts60T90_rA

【中国】上海市営業秘密侵害十大典型事例(9月3日)

上海市場監督管理局は、9月3日付、昨年に続き2023年度の営業秘密侵害にかかる十大典型事例を発表した。すべて元従業員による犯罪であり、不正競争防止法の適用であるが、特に、9番目は外国への情報漏洩を刑法に新設された条項で処罰した事例である。また、10番目は行政、刑事、民事のセットの事件として注目される。その概要は以下の通り:

事例1:中某半導体設備(上海)股份有限公司vs科某研究開発股份公司などの営業秘密侵害事件
(上海市高級人民法院(2017)沪民终169号)
原告のプリモD-RIE誘電体エッチング設備にかかる営業秘密侵害で、当事者の秘密保持期間満了後も一般に開示されていない技術は営業秘密であり、不正な手段で技術秘密を獲得、使用した場合、侵害の停止、損害賠償などの責任を負わなければならないとして、使用禁止と損賠賠償を命じた。

事例2:容某実業(上海)有限公司vs吴某氏らの営業秘密侵害事件
(上海市徐汇区人民法院)
原告は金属材料の輸出入会社で、被告は元従業員でビジネス情報である外国顧客対応を5年間担当し、退職時に顧客情報を獲得し自らの事業に違法に利用した。原告が損害を立証できないところ、裁判所が税関に開示請求を行い、1500万ドル位以上の取引を確認し、侵害停止と損害賠償を命じた。審理の必要に応じて裁判所が立証責任を合理的に担当し、侵害停止と損害賠償を命じた。

事例3:蔡某氏の営業秘密侵害事件
(上海市楊浦区人民検察院)
耐某実業(上海)有限公司が秘密管理する商品(シューズ)の価格と在庫情報にかかるビジネス情報を従業員がダウンロードしていることを知った被告はその情報を入手し、自らのWeChat「ディスカウントストアの商品一掃」で会員に提供した。検察は新業態における営業秘密侵害での隠蔽された手段、複雑な証拠収集、営業情報や営業秘密の特定方法などの侵害立証に積極的に対応し、処罰した。

事例4:陸某X氏、陸某Y氏の営業秘密侵害事件
(上海市虹口区人民検察院)
被告らは元勤務先の上海某信息科技有限公司が開発し秘密保持措置を採っていた「ドラゴンボール伝奇」ゲームのアプリケーションコードを使用し、自ら設立した上海某網絡科技有限公司で「ドラゴンボールZ戦士」ゲームを開発し、オンラインで運営した。検察は、ゲームソフトコードを営業秘密の対象と認定し、違法所得に基づき処罰した。

事例5:青島信某高新材料有限公司、金某氏らの営業秘密侵害事件
(上海市人民検察院第三分院)
被告らは上海邁某貿易有限公司に勤務中に青島信某高新材料有限公司を設立し、秘密保持義務に違反し、青島信某社の技術情報を利用して有機ケイ素化合物を製造販売した。検察は、難易度の高い化学工業分野で、「技術情報+製品効果」や「データの新規調査+研究開発証拠」などの手法を用いて、被告人のリバースエンジニアリングの抗弁を排除し、処罰した。

事例6:徐某氏、上海恒某建築工程有限公司らの営業秘密侵害事件
(普陀区市場監督管理局)
徐氏は、勤務先の建設会社の仕入部長でありながら秘密保持義務に違反し、入札時に入札予定価格などに加えて関係図面などを応札会社3社に無断で開示し、応札会社は取得した営業秘密を事業に使用していたことが判明し、当局は侵害当事者に罰金の処罰を科した。こうした隠ぺいし易く検証が難しい事件を当事者の関係文書のハッシュ値の検証などの方法で立証に成功している。

事例7:高某(上海)工業設備有限公司の商業秘密侵害事件
(奉賢区市場監督管理局)
退職した会社で生産監督であった呉某氏が高某(上海)工業設備有限公司を設立し、前職で取得したファンの図面で影響のない一部の部品を修正し、当該ファンの生産を外注していた。当局は外注の電子メール、送信図面などの証拠の固定、鑑定機構により図面は実質的に同一との判断とともに当該図面は営業秘密との認定し、罰金の処罰を科した。

事例8:上海涵某工程技術有限公司の商業秘密侵害事件
(金山区市場監督管理局)
退職した会社でセールスマネージャーであった陳某氏は、退職時に技術情報などのバックアップファイルを削除せず、上海涵某社に就職し、製品の研究開発や設計などを担当した時に、顧客のプロジェクトに退職した会社の製品図面の社名を変更するだけでそのまま転用するなど、秘密保持義務に違反し、当該会社も知りうる立場でありながら事業に従事させたことから、当局は違法所得の没収、罰金の処罰を科した。

事例9:鄭氏の国外への商業秘密提供事件
(上海市浦東新区人民検察院、上海市浦東新区人民法院)
被告の陳某氏は中国企業のエンジニアであったが、コンサルティング仲介会社のハンティングを受け専門コンサルタントに就任した。その後、外資系コンサルティング会社から電話インタビューをうけ、勤務していた会社との秘密保持義務に違反し、研究開発、生産計画、生産能力などの営業秘密を当該外資系コンサルティング会社を通じて、外国企業やその人員に提供し利益を受けたとして、刑法に新設された第2119条の1つ海外に商業秘密不法提供罪に基づき、禁固と罰金の懲罰が科された。

事例10:上海堃某知能設備有限公司などの商業秘密侵害事件
(上海市松江区市場監督管理局、上海市松江区人民検察院、上海市人民検察院第三分院、上海市普陀区人民法院、上海市第三中級人民法院、上海知識産権法院)
被告の李某氏は豪某機械(上海)有限公司に機械エンジニアとして入社後、第三者と共同で上海堃某知能設備有限公司を設立し、総経理に就任した。その後、前職時の秘密保持義務に違反し、勤務時に入手した「HOMGシーリングマシン」の技術情報と図面を利用し、シーリングマシンを外注で生産販売したことから、当局は違法行為の差止と罰金の処罰を科した。これに不服の李氏は行政訴訟を提起したが棄却された。一方、検察は営業秘密侵害罪で違法所得の没収、侵害品や製造機器などの没収、禁固と罰金が命じられ、二審に上訴したが請求棄却された。一方、豪某機械社は営業秘密侵害による損害賠償を請求し、請求した損害賠償全額が認められた。行政、刑事、民事のフルセットの事例として注目される。

参照サイト:https://scjgj.sh.gov.cn/1073/20240903/2c984a72918c23f10191b6cabd9b4c7d.html

【中国】「2024年中国企業の外国知的財産紛争調査報告」(7月31日)

中国知的財産研究協会(CNIPS)は、7月31日、「2024年中国企業の外国知的財産紛争調査報告」(2024中国企业海外知识产权纠纷调查)をそのサイトで報告した。これまで2年に亘り「アメリカでの知的財産権紛争調査報告」としていたが、2023年度は欧米や日本など諸外国も含む調査報告書と収録範囲を拡大し、下記の3部約80頁の構成となっている。

第 1部 アメリカにおける知的財産紛争
第1章 全体の訴訟状況
第2章 特許訴訟
第3章 商標訴訟
第4章 営業秘密訴訟
第5章 越境電子商取引訴訟
第6章 337調査
第2部 その他の主要国・地域における知的財産紛争
第7章 全体の訴訟況
第8章 特許訴訟
第9章 商標訴訟
第3部 海外の知財制度視察

 報告内容で、2023年に中国企業がアメリカでの知的財産権訴訟は、1,173件と前年比+19.0%と増加し続けている。この内訳では、特許訴訟447件(対前年比+56.1%、以下同じ)で中国企業2,452社(+167.4%)、商標訴訟757件(+5.4%)で中国企業16,793社(+98.8%増)、営業秘密訴訟23件(+27.8%)で47社(+27.0%)である。業種別にみると、特許では製造業(36.6%)、卸売・小売業(36.6%)、商標訴訟では主に卸売・小売業(82.56%)で、地域では主に広東、福建、浙江などの省市に分布し、広東企業は3割近くを占める。訴訟結果は、特許訴訟で和解・取下での結審が65.7%の、商標訴訟では被告が訴訟に応じず敗訴66.1%である。平均賠償額は、特許で2371.72万ドル、商標訴訟で117.98万ドルであった。

 他の国と地域での特許、商標訴訟事件は89件、結審は141件。この内、特許訴訟事件は71件(前年比+47.9%、以下同じ)、商標訴訟事件は18件(-43.75%)で、関与する中国企業165件(+60.2%)増加し、そのうち77%が中国企業だった。特許訴訟の平均賠償額は約330万元だった。

参照サイト:http://www.cnips.org.cn/a18979.html

【中国】「国務院の外国知的財産権紛争処理に関する規定(意見募集稿)」の公示(7月29日)

司法部は、知的財産権の保護を強化し、ビジネス環境を最適化し、中国の国民や企業などの組織が法に基づき外国での知的財産権紛争を処理することを促進し、合法的権益を維持し、高水準の外国開放を促進し、経済の質の高い発展を推進するため、「国務院の外国知的財産権紛争処理に関する規定(意見募集稿)(国务院关于涉外知识产权纠纷处理的规定)」を7月29日に公表し、一般からの意見募集を開始した。意見の提出期限は、2024年8月28日まで、

中国の外国貿易、投資の継続的な増加に伴い、中国企業は外国事業で知的財産権紛争に遭遇することが増えて、例えば海外での商標権先取り、権利侵害訴訟に遭遇し、さらに国家レベルの貿易調査、制裁などに直面している。中国企業は外国の知的財産権紛争に対応する能力の不足や外部の支援不足などの多くの弱点と困難に直面している。中国の国民や企業が外国での知的財産権紛争を処理し、正当な権益を保護できるようにより適切に指導および支援するために、法務省は、関係部局と協力し、既存の法律、規制、政策、措置を見直し、研究し、関係者の意見を考慮し、本規定を起草した。

意見募集稿の主な内容は以下の通り:
1.国務院の関係部門、地方人民政府とその関係部門が外国での知的財産権紛争の処理に対する指導とサービスを強化することを明確にし、商会、業界団体、国境を越えた電子商取引プラットフォームなどの組織が外国知的財産権の権利保護支援プラットフォームを構築することを奨励する。(第2条、第3条、第10条)
2.情報サービスを強化。知的財産権情報公共サービスシステムを整備し、外国の知的財産権に関する法律制度情報を速やかに収集、公表し、外国の知的財産権制度の変更や重点情報について追跡と把握を強化し、典型的な事例分析や研究を実施し、一般公衆に情報検索サービスと早期警報を提供する。(第4条、第5条)
3.対応指導の強化。外国知的財産権紛争処理指導業務機構と作業手順を健全化し、中国の国民と組織に外国知的財産権紛争処理での対応戦略の指導と権利保護支援を提供する。(第6条)
4.専門サービスの強化。商事調停組織や仲裁機関が外国での知的財産権紛争の解決に参画できるよう支援し、弁護士事務所、知的財産権サービス機関などが外国知的財産権サービス能力を向上させることを奨励し、中国の国民や組織に効率的で利便性のある外国知的財産権紛争の解決と良質で効率的な外国知的財産権と法律サービスを提供する。(第7条、第8条)
5.企業の能力構築を強化。企業はコンプライアンス管理を強化し、企業の広報、研修を明確に強化し、外国知的財産権紛争の処理能力を向上させることが求められる。保険機関は外国知的財産権に関する保険業務を展開することを奨励し、企業は権利保護コストを下げるために、外国知的財産権保護互助基金を構築することを支援する。(第9条、第11条)

こうした国上げての対策は、やりすぎると自由主義経済では不正競争の対象になるため、アメリカや欧州を中心に非難したり、中国企業に対する制裁に繋がりうるものとを思料する。

参照サイト:https://www.moj.gov.cn/pub/sfbgw/lfyjzj/lflfyjzj/202407/t20240729_503608.html

【中国】2024年6月までの特許登録、知財訴訟情況(7月19日)

国家知識産権局(CNIPA)が公示した第2四半期6月までの特許と商標の登録などの統計データが更新された。これによると、発明特許が前年比+28%増、実案特許と意匠特許がそれぞれ前年比‐12.5%、‐11.4%となり、3月末の時点から増減率がそれぞれ半数ほどになっている。注目は、外国からの意匠特許登録が+2.2倍と急増しており、ハーグ国際意匠制度を利用した出願が増加していると思われる。
 商標登録は+22%増と安定した回復を示しており、外国からの登録も+28.2%増と回復の傾向を示している。また、異議、無効宣告、却下再審は増加傾向を示している。

なお、中国企業の発明特許取得上位5社は以下の通り:
1.Tencent騰訊2533件、2.Huawei華為技術2478件、3.Baidu北京百度2077件、4.PingAn平安科技1944件、5.BOE京東方科技1860件

最高人民法院の公示によると、2024年上期の知的財産権紛争の一審受理件数は24.1万件と前年同期比1.17%増加した。そのうち、刑事事件は4,273件と前年同期比44.02%と大きく増加している。民事事件は22.6万件と前年同期比0.81%増、行政事件は1.1万件と前年同期比2.94%減であった。なお、多くの知的財産権紛争が調停などの方法で実質的に解決されることが増加しており、知的財産権民事一審事件の調停率は74.45%で、前年同期比4.84ポイント上昇している。

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/col/col61/index.html
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1804973228394875807&wfr=spider&for=pc

【中国】中国日本商会「中国経済と日本企業2024年白書」発表(7月10日)

中国の日系企業などで構成される中国日本商会は、7月10日付、「中国経済と日本企業2024年白書」を発表した。本白書は、毎年、在中国日系企業が直面するビジネスの課題の分析や解決のための建議をまとめ、対中国政府関係機関との対話を促進する目的で作成し、活用している。従って、日本から中国の現状を理解する上で、大変分かりやすく良い資料である。
 今年度の白書は、「人的交流に関する問題」、「データの越境・管理に関する問題」、「政府調達に関する問題」が重点分野であるが、全28章からなり569件の建議が記載されている。第2部は、競争、知的財産、技術標準など、第3部は、各産業別、第4部は、各地方での現状と建議が記載されている。

知的財産については、第2部6章にまとめられているが、現状を「知的財産の保護強化に向けた取り組みに関する中国政府の姿勢にぶれはなく、目標の実現に向けた歩みは着実に進められているといえる」と評価しながらも、不正な商標出願問題から懲罰的賠償の適用まで幅広く提案をしていることは、それぞれ評価できる内容となっている。
1.現状の概要
2.知的財産の保護の現状と課題
3.知的財産に関する競争環境の現状と課題
4.知的財産に関する紛争処理の公平化・合理化
5.建議 23項目
 ① 知的財産の適切な保護の促進
 ②知的財産にかかわる公正な競争環境の実現
 ③知的財産にかかわる紛争処理の公平化・合理化

参照サイト:https://www.cjcci.org/detail/576/576/4679.html
知的財産部分 https://www.cjcci.org/cj_pdf/2024bs/japan/2-6_Chitekizaisan_JP.pdf

【中国】「知的財産保護システム構築プロジェクト実施計画」(5月27日)

国家知識産権局は、中央宣伝部、最高人民法院、最高人民検察院、公安部、司法部、商務部、海関総署、市場監督管理総局とともに、4月22日に共同で「知的財産保護システム構築プロジェクト実施計画(知识产权保护体系建设工程实施方案)」を制定し、5月27日に関係部署に通知(国知発保字〔2024〕10号)した。
 同計画は、「知的財産権強国建設綱要2021-2035」及び「第14次5か年国家知識産権保護と運用計画」の実施に当たり、世界水準のビジネス環境を支える知的財産権保護システムを構築し、高水準の科学技術の自立の実現と経済の発展を推進することを目的として策定された。全体は3部13項目から構成されており、概要目次と注目するポイントは以下の通り。

一、全体的要求
(一)指導思想
(二)構築目標
 2027年までに知的財産権保護システムの実質的な措置を講じ、2035年までに基本的実現する。
二、知的財産権保護システムの構築
(一)知的財産権の保護政策と標準体系(保護政策制度の整備や標準保護規範の制定)
(二)知的財産権法執行司法体系(司法、行政による保護の強化)
(三)知的財産権登録権利確認体系(2025年までに発明特許の審査期間を15か月、商標出願の審査は7か月、発明特許の結審精度を95%以上、商標審査の抜取り検査合格率を97%以上とする。その他健全な出願環境の整備)
(四)知的財産権保護管理体系(関係部門の連携強化)
(五)知的財産権保護社会共同統治体系(多元的紛争解決、信義誠実の環境整備など)
(六)知的財産権分野における国家安全管理体系(国家安全保障全体の概念に基づき、知的財産分野での重大なセキュリティリスクを排除する)
(七)知的財産権保護能力支援体系(専門人材確保、鑑定と技術調査の強化、情報プラットフォームの構築など)
三、組織実施の強化
(一)組織リーダーシップの強化
(二)法治保障の強化
(三)条件保障の強化
(四)追跡効果の強化

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2024/5/27/art_75_192629.html

【中国】「2024年知的財産権強国建設推進計画」の通知(5月16日)

国家知識産権局(CNIPA)の国家知識産権強国建設工作部際聯席会議弁公室(合同会議事務局)は、5月11日付の国知聯弁〔2024〕6号により「2024年知的財産権強国建設推進計画」を知財関係部門及び国務院の各関係部門に通知した。

同通知は、「知的財産権強国建設綱要2021-2035」及び「第14次5か年国家知識産権保護と運用計画」に基づき、2024年度の計画を詳細に示したもので、7部110項目の内容となっている。その構成はと主なポイントは以下の通り。

一、知的財産権制度の整備(1-21)
(一)知的財産権法律法規の整備
 商標法、集積回路配置設計保護条例、著作権法実施条例、不正競争防止法、植物新品種保護条例、税関保護徐冷、国防特許条例などの改正
(二)知的財産権の重要政策の改革、整備
(三)新興分野と特定分野の知的財産権規則の整備
二、知的財産権の保護強化(22-83)
(一)知的財産権の司法保護強化
 知的財産審判規則、独占禁止及び不正競争、知的財産権刑事事件及び悪質な知的財産訴訟や知的産権の乱用や虚偽訴訟などの対策を推進
(二)知的財産権の行政保護強化
 商標と特許分野の行政法執行の業務の強化、著作権侵害及び営業秘密保護業務を推進、独占禁止及び不正競争対策、税関での保護強化
(三)知的財産権共同保護メカニズムの健全化
三、知的財産権市場運営メカニズムの完備(84-77)
(一)知的財産権の創造品質の向上
(二)知的財産権の総合運用の強化
(三)知的財産権の市場化運営の促進
四、知的財産権の公共サービスレベルの向上(78-86)
(一)知的財産権公共サービスの提供強化
(二)知的財産権公共サービスの効率向上
五、知的財産権のための良好な人文社会環境の構築(87-94)
(一)知的財産権の文化理念の強力推進
(二)知的財産権事業の発展に向けた基礎強化
六、グローバル知的財産権ガバナンスに徹底的参加(95-104)
七、組織保障の強化 (105-110)

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2024/5/16/art_75_192497.html

【中国】CNIPA「2023年知識産権保護状況」白書を公示(4月30日)

国家知識産権局(CNIPA)は、4月30日付、例年発行している「2023年知識産権保護状況」白書を公示した。構成内容は、保護効果、制度建設、承認登録、文化建設、国際協力からなり全38頁である。

1.保護効果では、司法保護で民事訴訟第一審受理が46.2万件(+5.4%)、行政第一審受理は2万件(-0.3%)、刑事第一審が7千件(+37.4%)であった。行政保護では、各地の市場監督管理局の知的財産権侵害紛争は6.8万件(+18.8%)、商標違法処理3.94万件などである。

2.制度建設では、特許法実施細則が改正され、商標法、商標法実施条例、植物新品種保護条例が改正途中である。そのほか、不正当競争法、電子商取引法、著作権法実施条例、著作権団体管理条例も改正中である。また、部門規定、司法解釈、規範的文書も改正された。

3.承認登録では出願登録件数が紹介され、発明特許登録92万件(+15.3%)、PCT出願国内受理7.4万元(-0.9%)、拒絶査定不服審判10.6万件(+1.0%)、無効宣言審判8.7千件(+23.2%)。商標登録738.3件(-29%)、マドプロ出願国内受理6.2千件(+6.3%)、異議申立11.5万件(-21.1%)。著作権登録は892.3万件(+40.7%)コンピュータプログラム登録249.5万件(+35.9%)。

4.文化建設では、宣伝普及で年次報告、典型事例の紹介、また小中学校のレベルから知財教育課程を設けるだけでなく、行政組織の担当者にもトレーニング課程を設けレベルアップを図っている。

5.国際協力では、意匠法条約や知的財産及び遺伝資源に関する外交会議に関連する協議積極的に推進し、中国とEUの地理的表示の保護協定などを推進、また一帯一路の国家と地域の知的財産権交流、5局の協力体制などに取り組んだ。

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2024/4/30/art_91_192134.html

【中国】検察機関の知的財産権事件保護典型事例

最高検察院は、4月25日付、4月19日まとめた検察機関の知的財産権事件保護典型事例を知的財産権の法的保護強化、包括的なイノベーション強力、合法化されたビジネス環境を構築し、新たな生産力の発展を促進のための参考として、9件の典型事例を地方政府の検察機関に通知した。知的財産権行政保護典型事例は以下の通り:

1.浙江兆某股份有限公司、方氏など6人の営業秘密侵害刑事事件
 青島雲蒙先進材料技術有限公司のアモルファスストリップの製造用スプレートラック、晶析装置、晶析装置の研削機構などのコア技術である営業秘密を被告企業とその従業員が同社の従業員を買収し取得し製造ラインを建設し、その従業員10人以上を引き抜いた事件で、青島人民法院は被告会社に300万元の罰金、4人に禁固3年から5年、罰金100~200万元、原告元従業員2人に懲役1年、罰金5万元を科した。上告棄却で結審。

2.劉氏など3人の著作権侵害刑事事件
 フィリップスやGEのCTなどの医療機器のセキュリティ保護されたソフトウェアや保守マニュアルなどを無断で持出しセキュリティを回避する手段を作成し、ネット上でダウンロード販売した事件で、上海人民法院は著作権侵害として被告らに禁固1年から3年2か月、罰金8万元~70万元を科した。

3.重慶乾波機械設備有限公司、官氏など著作権侵害刑事事件
 重慶乾波機械設備有限公司の役員が業務提携先のNC工作機械の制御システムマザーボードチップのリバースエンジニアリングを当該会社の臨時従業員に委託し、入手した技術で同機種を製造販売した事件で、重慶市人民法院は著作権侵害として官氏に禁固3年、罰金12万元を科した。

4. 関氏など3人の営業秘密侵害刑事事件
 寧波凯越国際貿易有限公司の営業職の従業員である関氏は就業中にドイツ顧客との取引情報を取得し、退職後自社設立し秘密保持義務に違反しドイツ顧客との取引を開始し原告に大きな損害を与えた事件で、寧波人民法院は関氏に禁固4年、罰金400万元を科し、その他の従業員に禁固1年8か月、罰金4~5万元を科した。

5.許氏など26人の登録商標虚偽表示、偽造登録商標商品販売刑事事件
 「ROLEX」時計の模倣品や部品、ケースなどに「ROLEX」商標を表示し大人数のグループで販売した事件で、江蘇省鎮江市人民法院は登録商標偽造罪、登録商標偽造品販売罪などで禁固1~6年、罰金6 万~5,000万元を科した。

6.叶氏の登録商標虚偽表示刑事事件
 被告は、商標権者に無断で第三者の「DELIXI」商標の銘板を作成し自社の配電ボックスに表示し販売し、登録商標偽造罪で刑事告訴された事件で、内モンゴル人民法院第一審で認定に誤りがあり、差戻審で禁固3年6月、罰金33万元が科された。

7.天長市新某有限公司vs湛江市蘇某有限公司、海口市椰某有限公司など不正競争民事紛争控訴民事事件
 原告の登録商標がその標章に悪影響があることを理由に無効とされた状況で、原告から製品の製造委託を受けていた被告が原告製品を無断で製造販売し不正競争行為として提訴された事件で、杭州人民法院は不正競争行為と認定し、15万元の賠償を認定した。

8. 上海今鼎貿易有限公司vs上海市嘉定区市場監督管理局登録商標権利侵害行政処罰執行事件
 商標権侵害した被告に侵害停止と罰金13万元を科したが、応じなかったために市場監督管理局が催告し行政訴訟を提起した事件で、強制執行の処罰決定が下された。

9. 「鎮湖刺繍」知的財産権行政保護行政公益訴訟事件
 国家無形文化遺産に選定されている「鎮湖刺繍」は江蘇省蘇州市湖丘区鎮湖街が発祥で手作り、2010年に国家地理的保護表示製品に指定された。機械刺繍の偽装品が大量に出回り意匠特許や著作権侵害紛争が頻発したが保護が難しいため、行政公益訴訟が検察院から勧告され、基準を満たさない製品に対する警告、処罰、調停を通じて対策に成功した。

参照サイト:https://www.spp.gov.cn//xwfbh/wsfbt/202404/t20240425_652529.shtml

【中国】2023年中国法院知財10大事件と50典型事件(4月22日)

最高人民法院は、4月22日、記者会見を開き、2023年度の知的財産保護状況を報告すると同時に、2023年の中国法院10大知的財産権事件と50典型的知的財産権事件を発表した。特許、商標、著作権、植物新品種、不正競争防止と独占などの知的財産権をカバーし、司法保護では以下のいくつかの特徴がある:
一、人民法院は質の高い発展というテーマを把握し、科学技術イノベーション成果を厳格に保護し、新たな質の高い生産力の発展に奉仕した。
二、社会の懸念に積極的に応え、一般大衆の合法的権益を確実に保護した。
三、新技術、新業態、新分野における審判規則を模索し、新経済と新推進力に貢献した。
四、平等な保護を強化し、市場化、法治化、国際化のビジネス環境を積極的に構築した。
五、連携協力を強化し、知的財産権の全チェーン保護を強化し、包括的保護活動枠組みを構築した。

2023年中国法院10大知的財産権事件
1.「西门子(シーメンス)」商標権侵害及び不正競争事件
 西门子股份公司、西门子(中国)有限公司vs寧波奇帅电器有限公司など[最高人民法院(2022)最高法民终312号]
 ポイント:商標権、商号などの虚偽表示、損害賠償算定のための証拠提出拒否隠蔽工作を妨害行為と認定、一審判決の1億元の賠償額を追認。
2.「拉菲(LAFITE)」商標権侵害及び不正競争事件
 Chateau Lafite Rothschild vs南京拉菲庄园酒业有限公司など7社[最高人民法院(2022)最高法民终313号]
 ポイント;被告が著名商標を真似た「拉菲庄园」をワイン類に悪意で登録し事業に利用した行為を不正協行為と認定、懲罰的賠償を適用し合理的支出を含め7917万元の賠償を命令。
3.「顔認識」発明特許権無効行政事件
 北京中科奥森科技有限公司vs国家知識産権局、Apple電脳貿易(上海)公司[最高人民法院(2021)最高法知行终556号]
 ポイント:対象特許CN100361135Cの無効取消手続き中の請求項の補正が記載範囲を超えかつ無効理由を克服する以外の補正がされたと認定し、差戻を裁定。特許審査指南の改正に反映されており、無効取消中の補正は無効理由に対応する範囲に限定される。
4.「丹玉405号」トウモロコシ植物新品種権侵害事件
 遼寧丹某種業科技股份有限公司vs凌海市農某種業科技有限责任公司、青島連某農業技術発展有限公司[最高人民法院(2022)最高法知民终2907号]
 ポイント:懲罰的賠償の基数が不明確という理由だけで法定賠償額を適用すること否定。
5.ナビゲーション電子地図著作権侵害及び不正競争事件
 北京四维图新科技股份有限公司vs北京百度科技有限公司など[北京市高級人民法院(2021)京民终421号]
 ポイント:地図を著作権での図形作品と認定し、権利者の挙証内容を確認した地図作品の典型的事件。
6.「データ」不正競争事件
 北京微梦创科網絡技術有限公司vs広州简亦迅信息科技有限公司など[広東省高級人民法院(2022)粤民终4541号]
 ポイント:悪意のある技術的手段を用いてサーバーのAPIにアクセスし不正に大量なデータを取得し転売したと認定した典型的事件。
7.医療機器ソフトウェア著作権侵害刑事事件
 劉某生、劉某[上海市第三中級人民法院(2023)沪03刑初23号]
 ポイント:刑法改正案(11)の施行後、技術的手段を意図的に回避することによる著作権侵害の典型的刑事事件。
8.「香菇多糖(レンチナン)」営業秘密侵害事件
 南京汉欣医药科技有限公司vs帝某製薬(江蘇)有限公司[江蘇省南京市中級人民法院(2019)苏01民初3444号]
 ポイント:漢方薬の営業秘密が技術協力契約に含まれ、被告の技術譲渡が秘密保持違反に該当すると認定された事件で、伝統的な技術保護に有意義な事件。
9.「小愛同学」起動用語ウェイクアップワードの不正競争事件
 小米科技有限責任公司vs陳某、深圳市雲某科技有限公司[浙江省温州市中級人民法院(2023)浙03民初423号]
 ポイント:AI搭載電子機器の起動用語「小愛同学」は商標登録などもされており広く使用され一定の影響があると名称と認定し、被告が「小愛同学」などの商標を大量に先取り登録し使用する行為を不正当競争行為と認定した事件。
10.「青少年模式(未成年モード)」不正競争事件
 深圳市腾讯計算機系統有限公司などvs北京愛某科技有限公司[天津自由貿易試験区人民法院(2022)津0319民初23977号]
 ポイント:原告が運営するアプリに保護者が設定できる未成年モードをブロックするアプリの提供が不正協行為と認定された事件。

〇2023年中国法院50典型知的財産権事件
1.知的財産権民事事件45件
(1)特許権帰属、特許権侵害及び特許権保護範囲確認紛争事件5件
(2)商標権侵害紛争事件9件
(3)著作権帰属、著作権侵害及び著作権非侵害確認紛争事件10件
(4)不正競争、独占紛争事件15件
(5)植物新品種、技術契約紛争及び司法処罰事件6件
2.知的財産権行政事件2件
3.知的財産権刑事事件3件

参照サイト:最高人民法院のサイトは日本から閲覧できないため参考サイト
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1797033257381021168&wfr=spider&for=pc

【中国】中国法院知的財産権司法保護状況(2023年)、前年比5%増!(4月22日)

最高人民法院は、4月22日付、記者会見を行い、「中国法院知的財産権司法保護状況(2023年)」などを発表した。
 昨年、全国の人民法院は一審、二審、再審で54万件以上の知的財産事件を受理し、前年比+3.4%増となった。

(1)民事訴訟事件
 2023年の地方の各クラス人民法院は民事一審事件を462,176件受理し、前年比べ2.3万件増、+5.4%増加した。内訳は下記の通りであるが、著作権侵害事件が4千件減、▲1.6%減、その他が0.5%減となった。特許侵害事件が5.7千件増、+14.7%、商標侵害事件が1.9万元増、+16.8%増、技術契約が2.2千件増、+53.2%増、不正競争事件も842件増、+9%増加した。審決は、第一審460,306件と前年比+0.5%増加した。第二審の受理は、37,214件と▲24.8%減、処理も38,713件と▲20.4%と大きく減少した。

2019-2023年 民事第一審受理件数推移
2023年 民事第一審受理構成

(3)行政訴訟事件
 2023年の地方各クラスの人民法院は行政一審事件を20,583件(前年20,634件)受理し、前年比▲0.3%減少した。この内、特許事件は1,990件(前年1,876件、前年比+5.8%)、商標事件は18,558件(前年18,738件、前年比▲1%)、著作権事件は11件(前年12件、前年比1件減)である。処理も22,340件と前年比+26.7%増加した。第二審の受理は10,053件(前年5,897件、前年比+54.6%)、処理は結審9,259件(前年7,285件、前年比+18%)である。原審維持率は7,477件(前年5,518件、前年比+35.5%)と増加した、全体の構成比でも80.7%と増加した。

(4)刑事訴訟事件
 2023年の地方各クラスの人民法院は刑事一審事件を7,335件(前年5,336 件)受理し、審決6,967件(前年5,456 件)処理し、それぞれ前年比+37.5%、+27.7増加した。その内、登録商標類侵害事件は6,634件(前年4,971 件、前年比+33.4%)、著作権侵害事件は627件(前年304件、前年比+106.2%)とそれぞれ増加し、行政での処理が増えている。第二審の受理は956件(前年979件、▲2.4%)、処理は審決965件(前年977件、▲1.2%)とそれぞれ減少した。

 会見や報告書では、①公平性と効率性を確保した知的財産権司法保護レベルの向上、②改革とイノベーションを深化させた知的財産権司法保護メカニズムの改善、③法の統一した適用による知的財産権での司法の信頼性の向上、④国家威信に基づく新レベルの生産力の発展に貢献、⑤連携と協力の強化による知的財産事件の訴訟源の管理の推進、⑥ 国際交流の強化による知的財産権司法保護の国際的影響力の拡大について説明しているが、主な注目点は、以下の通り。
 知的財産民事侵害訴訟で319件に懲罰的損害賠償を適用し、賠償額は11.6億元に達した。最高人民法院は、「盼盼」商標権侵害と不正競争事件で4倍の懲罰的損害賠償を適用し1億元を超えた。「ゴム酸化防止剤」の秘密侵害訴訟の賠償額は2億200万元で、同様の訴訟での最高額を更新した。一方、「メラミン」発明特許と営業秘密侵害事件では6.58億元以上の賠償とともにライセンス供与関係での全面和解で解決するなど和解による解決を進めている。
 また、知財訴訟制度では、専門性や集中化を進める上での知財訴訟特別手続法の起草、技術調査官の人材バンク、「三合一」裁判の推進を行っており、現在、25の高級人民法院、242の中級人民法院、287の基層人民法院が知的財産権民事、行政、刑事事件の集中管轄している。今後は、新技術やコア技術の判断の難しい事件の対応、悪意訴訟や不誠実な事業に対する対応に独占禁止や不正競争事件を含めた事件処理の対応などにAIの活用やデジタル対応の新たな保護モデルの開発に向かうとしている。
 報告書のデータであるが、2022年度は商標と著作権の事件が大きく減少したが、2023年は著作権侵害事件が微減で、今後はあまり大きく増加していかないように思われる。商標事件と特許事件は過去最高と増加傾向を示している。商標事件では、商標取消再審行政事件で「類似商品とサービス区分表」の項目変更のために商標権者の権利範囲を縮小したり、不利な解釈をしたりしないことを明確にしている。なお、法院と国家知識産権局の商標行政事件の意思疎通と協調を強化することで6月から12月の行政訴訟の月平均受理数を1月から5月に比べ23%減少させている。今後は悪意のある商標先取りなどの違法行為に積極的に取り組むとしている。

参照サイト:https://www.chinacourt.org/article/detail/2024/04/id/7908550.shtml
  報告書 https://img.chinacourt.org/mup/uploadfile/2024/04/22/12/8fa944f259dcc2705ffe283a7c2be810.pdf

【中国】最高人民法院による訴訟前保全に関する意見(3月1日施行)

最高人民法院は、3月12日付、2月7日に公布した「最高人民法院による訴訟前保全事件処理の規範化と強化に関する意見(最高人民法院关于规范和加强办理诉前保全案件工作的意见)」 [法(2024)42号]を3月1日付で施行したことを公示した。

本意見は、民事訴訟法第84条、第104条の規定に基づき講じることができる財産保全、証拠保全、行為保全(仮差止のこと)の手続きに関し、特許権など知的財産権の侵害でも積極的に活用できる保全措置の申立てに各地の裁判所が対応する際の司法解釈でもある。本意見は、以下の構成で全29条からなる。
1.一般規定
2.申立の受理
3.訴訟前保全申立の承認
4.提訴前保全措置の実施
5.関連連携メカニズムの改善
6.附則

注目するポイントとしては、
受理に関する第3条で「管轄権のある人民法院は、訴訟前保全の実施が不便であること、起訴登記立案者が訴訟保全を申立てできることなどを理由に受理を拒否してはならない。」の規定、財産保全対象の認定の第10条で個別に条件を挙げて「不動産、銀行口座、自動車、株式、債券など」具体的に上げていること、緊急と認定する情況の第12条、仮差止に関する第13条、保全措置の対象とならない物件の第15条である。

参照サイト:https://healthnews.sohu.com/a/763795554_121106991
仮訳

【中国】最高検察院2023年度活動報告(3月15日)

2024年3月8日の第14回全国人民代表大会第2回会議で最高人民検察院検事長が行った最高人民検察院活動報告が、3月15日付、同サイトに公示された。知的財産関係のコメントは以下の通り。

イノベーションによる発展の保障
 検察院は知的財産権事件を扱うための45の措置を打ち出し、総合的保護を強化する。商標権、特許権、著作権、営業秘密侵害などの犯罪を告訴人数は、1万8000人で前年比40.8%増加した。訴訟では営業秘密保護を強化し「二次秘密漏洩」を防止した。 知的財産権民事行政訴訟監督は、2,508件と前年比2.7倍であった。知的財産権分野の公益訴訟は、873件を処理した。知的財産権に関する悪意訴訟の特別監督を実施したが、某文化メディア会社による音楽ビデオ作品著作権者を偽装し悪意訴訟を5800件以上提起し、広東省、山東省など9つの省・市の検察機関が同時に法に基づき再審監督を指導し5人の犯罪容疑者の逮捕した特徴的な対応を行った。

参照サイト:https://www.spp.gov.cn/spp/tt/202403/t20240315_649599.shtml

【中国】消費者権益保護検察公益訴訟の典型例(3月15日)

最高人民検察院は、3月15日の「世界消費者権利の日」に当たり、消費者権益保護検察公益訴訟の典型的な実例10件を発表した。2023年の中国の全てのレベルの検察機関は、食品と医薬品の安全性の分野で前年比16.8%増加した2万3000件を超える公益訴訟を立案処理した。安全性以外は 1,000 件を超える公益訴訟事件が調査および処理された。典型事例では食品医薬品の安全に関する公益訴訟の処理が7件、民事公益訴訟と訴追支援3件である。以下は、典型事例である。

1.動物用医薬品の違法事業使用に関する行政公益訴訟事件(海南省文昌市人民検察院)
2.生鮮食品ランプの不正使用に関する行政公益訴訟事件(浙江省寧海県人民検察院)
3.医療・美容業界の安全性に関する行政公益訴訟訴訟(福建省龍岩市人民検察院)
4.店舗訪問ビデオによる食品安全広告違法掲載に関する行政公益訴訟事件(北京鉄道運輸検察局)
5.輸入品スーパーマーケットチェーンにおける海外医薬品違法販売に関する行政公益訴訟事件(広西チワン族自治区桂林市象山区人民検察院)
6.子宮頸がんワクチン接種の規範に関する行政公益訴訟事件(河南省信陽市固市県人民検察院)
7.動物血液製剤の違法工業用ホルムアルデヒド添加に関する行政公益訴訟事件(河北省邯鄲市叢台区人民検察院)
8.偽造哺乳瓶乳首販売に対する刑事付随民事公益訴訟事件(広東省深セン市南山区人民検察院)
9.有害食品を販売に対する刑事犯罪付随民事公益訴訟事件(貴州省安順市西秀区人民検察院)
10.自動車会社の消費者権益毀損不当契約条件に関する民事公益訴訟事件(重慶市人民検察院第一支部)

参照サイト:https://www.spp.gov.cn/xwfbh/wsfbt/202403/t20240315_649539.shtml