【欧州】「欧州意匠登録審査ガイドライン」改訂版の公示(5月28日)

欧州知財庁(EUIPO)は、2025年4月28日に欧州意匠庁に承認され、5月1日に作成された「欧州連合意匠登録審査ガイドライン(Guidelines for Examination of registered European Union designs)」の改訂版を公示した。

主な改正点は以下の通り
・用語の意味、定義、法率適用の改定(例、RCD→REUD)
・各国官庁への出願および見本の提出の選択肢の廃止
・分類での単一性要件の廃止
・法規や失効意匠権に関する決定
・既判力(res judicata)の明確化
・優先権主張の拡大 Art 25(1)(e) and (f)
・権利確定手続きの修正
・一部の手数料の減額、廃止
・更新手続き期間の変更
詳細はこちらを参照下さい。

参照サイト:https://www.euipo.europa.eu/en/news/the-2025-euipo-guidelines
ガイドラインhttps://guidelines.euipo.europa.eu/2231430/2231846/designs-guidelines/1-introduction

【EU】EUIPO「生成AIと著作権」を発表(5月13日)

欧州知的財産庁(EUIPO)は、5月13日、広範な調査と分析の成果として「著作権の観点から見た生成AIの発展(The development of Generative Artificial Intelligence from a Copyright perspective)を発表した。
 著作権は経済の礎であり、クリエイター、企業、そしてより広い社会に大きな利益をもたらす。2022年のEUIPO-EPO共同調査によると、EUにおける著作権集約型産業の雇用は総雇用の6.2%を占め、これらの産業はEUの国内総生産(GDP)の6.9%である。その結果、著作権の状況に影響を与える可能性のある生成AIなどの新たなトレンドやテクノロジーを慎重に検討することが極めて重要である。
 生成AIによる生成物の複雑な問題に取り組むため、EUIPOが新たに発表した調査の目的は、生成AIの技術的機能、及び著作権と人工知能に関するEU規則の適用で、この調査報告は、技術的、法的、経済的側面を網羅し、EU著作権法の観点からその発展を詳細に分析している。調査では、机上調査、専門家インタビュー、技術的ソリューションと実践の詳細な分析を含み、相互に関連する3つの分野に焦点を当てている。
(1)著作権で保護された作品を生成AIモデルのトレーニングデータとして使用すること
(2)これらのシステムによる新しいコンテンツの生成とそれによる法的問題
(3)クリエイター、AI開発者、著作権エコシステムに対する広範な影響.

調査報告書は、8章425頁からなり、概要目次と注目の節は以下の通り
Executive Summary
1 Introduction
2 Technical, Legal and Economic Background
2.2 Legal Framework for Generative AI
2.3 Ongoing Legal Challenges and Litigation
3 Generative AI Input
4 Generative AI Output
5 Conclusion
6 References
7 Glossary
8 Annexes

いずれにしても、生成AIが利用する基礎情報を収集するスクレイピングと生成物に対する透明性が求められ、基礎情報である著作物に対する尊敬と配慮、出所の表示及び生成物にそうした情報の記録が求められる。運営者に対する規制を含む法的な枠組みと立法がないと著作権や著作隣接権は保護されないため、適切な対応を行政府には期待するところである。権利者の泣き寝入りだけは認められない。

参照サイト:https://www.euipo.europa.eu/en/publications/genai-from-a-copyright-perspective-2025

【アメリカ】INTA反模倣委員会「トレンドアラート」発行(5月7日)

国際商標協会(INTA)の反模倣委員会(Anticounterfeiting Committee)は、模倣品やオンライン詐欺での新たな動向を紹介するトレンドレポート:着払いウェブサイト(Trend Alert: Cash on Delivery (COD) websites)を発表した。

本レポートは、模倣品業者などが代金の着払いサービスを悪用し、消費者を欺むき模倣品や海賊品を配送している実態に注目し報告している。着払いサービスは、商品やサービスの支払いをクレジットカードなどの決済サービスを介さずに、受取人が配達時に支払う決済方法で、クレジットカードの普及率が低い地域や購入者が実際に商品を確認してから支払いたい場合に利用されるが、模倣品や海賊品を販売する事業者は追跡可能な取引の痕跡を残さないために、この方法を悪用している。
 模倣品や海賊品のウェブサイトには、有名な高級ブランド品、スポーツ用品、電動工具、健康機器、ファッション小物、靴、時計などが数多く掲載されているが、掲載されているブランドやその正規販売店と関係があるように偽装するだけでなく、あり得ないほどの割引、無料の景品などを宣伝することが多く、本レポートでは、ヨーロッパや日本を含むアジアのSNSサイトの具体的事例も報告している。
 権利者や法執行機関による発見を回避するために巧妙化する模倣品販売行為がますます巧妙化していることを紹介するともに、この問題に対処するためには、さまざまな利害関係者による対応が必要であることを報告している。

参照サイト:https://www.inta.org/wp-content/uploads/public-files/advocacy/committee-reports/20250401_INTA-Anticounterfeiting-Trend-Alert-Cash-on-Delivery.pdf

【欧州】EU意匠の更新料金決定(2025年5月1日適用)

欧州連合知的財産庁(EUIPO)は、2024年12月4日付、欧州連合意匠(EUD)の登録後5年毎の更新時の更新年金改定と手続き期限の改正に対する注意喚起を公示し。11月22日の当サイト記事で、EUDの改正が2025年5月1日から改正施行を案内したが、新料金が決定し、以下のように更新年金額が大幅に値上げとなった。また、更新時に認められていた支払い月末までの猶予期間が廃止され、期限管理も変更になるため、注意が必要です。なお、更新年金の納付は6か月前から支払うことができるため、2025年4月30日までに10月までに期限を迎える意匠権の更新年金を現行料金で納付する予算措置がお勧めする。

2025年5月1日からの新料金は以下の通り:
更新時期   現行料金 新料金  値上率
1回目     €90    €150   167%
2回目     €120   €250   208%
3回目     €150   €400   267%
4回目     €180   €700   389%

更新年金納付時期の変更
現行の規定では、満了日を含む月の月末までに納付が可能であり、グレース期限もその6か月後となるが、改正後(2025年5月1日)は満了日が期限となり、グレース期限もその当日となることに注意が必要です。

画像

参照サイト:https://www.euipo.europa.eu/en/news/design-renewals-following-the-eu-design-reform-what-to-know

【欧州】EU意匠制度改正、料金改訂(2025年5月1日施行)

欧州連合理事会(European Council)に提出されていた意匠制度改正案は、規則改正指令2024/2822(規則改正部分) と2024/2823(改正規則)として2024年11月18日の官報に公示され、それぞれ20日後の12月8日に施行される。
 欧州意匠法改正は、現在の3D印刷やデジタル技術などとその経済情況に適合するよう大きく近代化するもので、現行法での課題を解決し、法適用や解釈を改善し、クリエイターや企業に大きな利益ことを期待しているもので、主に4つの改革を目的としている。つまり、意匠権保護範囲を現代化し明確化と強化、保護の利便性の向上、保護制度の相互運用(商標規則との整合性)による調和、及びEU全体で異なるスペアパーツ保護を調和させることにある。
 この改正指令が12月8日に施行されることを受け、改正指令2024/2822の意匠規則改正は、
第1段階、その4か月後の初日である2025年5月1日に基本的な改正が施行され、
第2段階、その18か月後の2026年7月1日その他の改正である新たに保護対象となる意匠出願などが施行される。
また、第3段階として、改正指令の無効手続きやスペアパーツの法的保護について、欧州連合加盟各国は36か月以内、つまり2027年12月9日までに国内法を改正することが求められる。

意匠法の実質的な改正は、欧州連合商標規則の構造に合わせるため、規則全体の条項が削除または再配置されている。主な改正は以下の通り;
1.名称、定義の変更
 共同体意匠(Community design)を欧州連合意匠(European Union design、EUD)に;
 共同体意匠裁判所(Community design court)を欧州連合意匠裁判所(EU design court)に;
 共同体意匠規則(Community Design Regulation)を欧州連合意匠規則(European Union Design Regulation、EUDR)に改正する。
・定義Art.3で、意匠の定義にアニメーションを追加、製品の定義が改正、拡大され、非物理的存在”object or materialises in a non-physical form”が追加され、内装や外装を形成することを目的とした空間配置”spatial arrangements of items intended to form an interior or exterior environment”、その他、表面の模様やGUIも明記された。
・定義Art.3
(1) Designの定義は、最後のits ornamentation をits decoration, including the movement, transition or any other sort of animation of those featuresと追加改正され、動き、変遷、やそうした機能をもつその他の種類のアニメーションも含まれる装飾と拡大された。アニメーションは、幅広い用語であり、段階的に変化するものであり、デジタルに限らず動きや変遷も含まれる視覚的効果などからなる設計と理解できます。
 この改正は、デジタルの意匠設計と視覚的効果をより広範囲に網羅する目的がある。しかし、従来からGUIやアニメーションデザインの出願を受理しており、これを追認する改正であるからそうした見方からは大きな変化でないと思います。なお、動画で提出するような場合に、一義的に決まらない動きや変遷については、複数の意匠として出願する必要があると理解します。
(2) Productの定義は、in a physical object or materialises in non-physical formとデジタル形式から非物理的形式(デジタルであるかどうかを問わず)と改正し、コンピュータプログラムを除く物理的物体に限らずあらゆる工業製品や手工芸品になり得ることを明確にして、デジタルの設計を保護することを意識しています。さらに、(a)項は物品について、or exterior(外部の)を追加し、spatial arrangements of items intended to form an interior or exterior environmentとすることで、店舗設計や仮想空間での設計を対象としていると理解できます。(b)項はGUIや表面設計などの形状を明示し、欧州意匠でかなりの部分を占める技術や自動車分野での画像、ロゴ、GUIなどの保護を明確にしています。
 Product(製品)の定義の拡大は、組物、空間配置、内装・外装の設計に加え、人の経験や仮想環境などまで広く保護されるようになりました。
2.権利と制限
・保護対象Art.19の2項のd号を改正し、侵害対象に新たに3D印刷に対する権利行使を可能とする表現に変更した。
・制限事項Art.20の1項にd号を設け、意匠権者の製品であると識別や参照する目的で行われる行為、e号を設け、コメント、批評、パロディを目的として行われる行為を追加した。
・修理目的意匠を権利対象外にするために、新たにArt.20aが設けられ、1項で、組立製品(Complex Products、例えば自動車)の構成部品の意匠で、組立製品の元の外観を回復するように修理のみに使用することを目的する場合、権利を付与しないと規定した。2号、3号に適用除外がある。
・意匠権保護の認知度を高めるために意匠標識を導入するため、新たにArt.26aが設け、意匠権者やライセンシーは意匠権を適用した製品に〇にDを入れたⒹ記号を表示することができることを規定した。
・製品がEU域内で販売されない場合でも、EU域外の国からEUを経由して侵害品が輸送される場合は保護を受けることができるようにした。
3.出願と審査
・受理窓口Art.35の1項を改正し、各国での受理を廃止、EUIPOのみが受理する。
・出願日確保Art.35の4項を改正し、手数料の納付を条件とした。欧州商標制度と同様1か月の猶予期間がある。
・複数意匠一括出願Art.37の1項を改正し、単一性(単一クラス)の要件を廃止し、同じ種別の製品に限定されることなく、異なるロカルノ分類に当該意匠を複数の意匠出願できるようにした。ただし、複数の意匠出願は最大50 件までの制限がある。
・物理的見本の提出は廃止された。
・公告延期Art.50の5項を改正し、公告料の支払いを条件としなくなり、公告延期期間満了後、公開を望まない場合は自発的に放棄する必要がある。なお、出願時に延期手数料を支払わなかった場合、出願は却下される。
・更新Art.50dの3項を改正し、納付期限日を満了日のある月の月末から満了日とし、6か月前から納付できる。6か月の追納も満了日から起算する。
・権利帰属及びその効果Art.15及び16を改正し、権利帰属手続きによる所有権の変更及び無効手続き前に変更手続きが可能となる。
・出願ガイドラインが2025年3月ごろ公示予定、新しいガイドラインを確認ください。
4.出願手数料、更新費用
・出願手数料は付属書として、指令に含まれるようなった。その他の改正があるので、具体的料金発表時に確認することをお勧めする。
・出願費用は、基礎出願1意匠の料金は、現行を維持€350、複数意匠の2件目以降は€125に減額
・公告延期手数料€40,2意匠目以降€20/件
・公告、登録料の廃止
・更新費用の大幅な値上げ 別の記載を参照。
5.その他の注意点
・非登録意匠(Unregistered Design)の保護は、従来と変わらず発表後3年間の保護と新規性例外の適用(優先権主張含む)の12か月は変更ないが、域内での開示を条件とするため、イギリスはすでにEUを離脱しており、イギリスやスイスで公開した場合に、保護を受けることができないことに注意が必要で、特にイギリスでの展示や発表などをする場合は、少なくともイギリス意匠出願を同時に行い、優先権主張してEU意匠出願することが必要である。

参照サイト:官報 https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2024/2822/oj
欧州知財庁公示 https://www.euipo.europa.eu/en/designs/design-reform-hub/terminology-procedural-changes

【欧州】補修部品の意匠権保護適用除外承認(10月10日)

欧州連合理事会(European Council)は、2024年10月10日、その公式サイトでデザインパッケージに基づく 2 つの立法、すなわち意匠の法的保護に関する改訂指令と共同体意匠に関する改正規則を採択したことを公示した。採択さた条文は、デジタルデザインと 3D プリント時代における工業デザイン保護を改善するために現行意匠法を更新するものとしているが、スペアパーツの保護が除外されることは事業に大きな変更となる。なお、本決定は法制化の最終段階を意味し、官報公示後20日以内に発効し、4か月後に適用され、加盟各国は36か月後(3年以内)までに国内法の改正することになる。

20年以上改正されていない現行の欧州意匠制度の改正は2020年10月に遡るが、2022年11月28日に理事会は、デザインパッケージとして2つの提案をしている。共同体意匠に関する理事会規則(EC)第6/2002号を改正する規則及び意匠の法的保護に関する指令(指令98/71/ECの改正)で、2023年9月25日に採択しました。その趣旨は、
1.3Dプリントで再現できるデザイン保護のための新しい規則の制定
2.自動車部品などの複雑な製品の修理に使用されるスペアパーツの意匠保護の除外
そして、これらは2023年12月22日に最終指令案として暫定合意し公示しました。

現行法の改正は別に報告するとして、スペアパーツの意匠保護除外については、「修理条項」が追加され、複雑な製品の元の外観を復元するために使用される交換部品を意匠保護から除外するが、修理目的の場合のみであり、交換部品が元の部品とまったく同じ外観である場合に限るとしている。つまり、損傷したドアや、車を元の外観に戻すために交換する必要がある車の壊れたライトなどである。この条項は、スペアパーツ市場を自由化し、EUの消費者が修理用により安価に入手しやすいスペアパーツを利用できるようにすることを目的としている。これにより、消費者は10年間で3億4,000万~5億4,400万ユーロを節約できる可能性があるとしている。欧州意匠制度では、これまでも自動車部品の意匠は権利をとっても行使ができない情況であったので、その対象と地域の範囲が広がると理解することになろう。改正法の適用において、旧法での登録に変更なく、改正法での登録がその対象になる経過措置があることから、意匠権として取得することは従来通り勧められるが、権利行使が限定的となることに理解した上での活用になりそうである。

意匠法の改正では、①デジタルに対応し製品の定義を「物理的でない(non-physical)」に、②出願日確定のための意匠の表示要件を十分明確であればに緩和、③公告延期30か月の適用を弾力化、④登録意匠の無効を行政決定レベルに簡素化、⑤国内意匠出願関連料金を欧州意匠より安価に、⑥加盟各国での著作権との重複保護の制度化、など。

参照サイト:https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2024/10/10/intellectual-property-council-gives-its-final-approval-to-the-designs-protection-package/
2023年12月22日の最終合意 https://data.consilium.europa.eu/doc/document/ST-16992-2023-INIT/en/pdf

【欧州】EUIPO詐欺請求書に刑事処罰の判決(10月7日)

欧州知財庁(EUIPO)は、2024年9月、その公式サイトで詐欺EUIPO請求書を送った3人の被告にドイツのミュンヘン刑事裁判所が詐欺罪と認定したことを発表した。

2024年9月、ミュンヘン裁判所は、EUIPOの顧客に誤解を招く請求書を送ったとして、3人の被告に対して商業詐欺に当たり有罪と認定した。各被告には執行猶予3年付きの懲役1年10か月の判決を下し、違法所得約20万ユーロの没収し、賠償金とするよう命じた。
本件の経緯は、2020年12月、顧客からの「European IP Register」のレターヘッドで「Data publication from Office for Harmonization in the Internal Market (OHIM)」の件名での請求書に関する多数の報告を受けて、EUIPOはドイツの管轄検察庁に詐欺の疑いで刑事告訴した。2020年11月から2021年4月までに被告は、詐欺と気づかなかった顧客から約20万ユーロを不当に受取っていた。

本件は、2017年12月のスウェーデン、ストックホルム控訴裁判での同様の事件で詐欺罪での判決について2回目のとなったところから、EUIPOは今後同様案件を詐欺罪による刑事事件として扱うことができる判例としている。そして、不明な請求書については注意を喚起している。日本でも同様の請求書を受領したとの連絡を受けたことがあるため、代理人を経由しない請求書については注意が必要である。

参照サイト:https://www.euipo.europa.eu/en/news/misleading-euipo-invoices-german-criminal-court-finds-three-defendants-guilty-of-fraud

【欧州】欧州連合商標 (EUTM) 30 周年(3月15日)

1994 年 3 月 15 日に発効した共同体商標 (CTM) は現在欧州連合商標 (EUTM) となり、今年の3月15日で30 年の重要な節目となった。EUTMは、現在欧州の27 加盟国をカバーする単一の商標権をとして企業のブランドを保護する制度となっている。欧州連合知的財産局 (EUIPO) は、今年の年末までに商標出願件数が 300 万件に達すると予想している。

2017 年の規制緩和により保護対象がデジタル時代におけるブランド アイデンティティを反映し、色、形、音、動き、マルチメディア、パターン、ホログラムなどの標章の保護が可能になっている。

2023年の年次報告書はまだ発行されていないが、年間17万件程度の出願があり、2022年3月18日に商標出願は累計250万件に達している。

参照サイト:https://www.euipo.europa.eu/en/news/celebrating-30-years-of-protection-in-trade-marks

【欧州】「EUにおける営業秘密訴訟の動向」(6月28日)

欧州知財庁(EUIPO)のの知的財産権侵害欧州監視機関(the European Observatory on Infringements of Intellectual Property Rights)は、6月28日付、「EUにおける営業秘密訴訟の動向(TRADE SECRETS LITIGATION TRENDS IN THE EU)」と題するレポートを公示した。

 本レポートは、2016 年 6 月 8 日の欧州議会および理事会指令 (EU) 2016/943第18条に基づき、2018 年に同監視団が発行した「EU加盟国における営業秘密訴訟のベースライン」を補完するもので、営業秘密の違法な取得、使用、或いは開示に関する訴訟傾向に関する新しい報告書であり、2017年1月1日から 2022年10月31日までの訴訟を対象としている。

新しい報告書は、EU における営業秘密訴訟の傾向の包括的かつ徹底した分析となっており、定量分析、定性分析、判例要約集の 3 部からなる。
 定量的分析は、2017年1月1日から2022年10月31日までの約700件の判決を統計処理し、事件数、法廷および主題、経済的観点について加盟国間の違いを示している。
 定性分析は、営業秘密の定義の解釈、違法行為、営業秘密指令に基づいて認められた措置、および比例原則に関する理論的な議論を示している。
 判例集は、加盟国の裁判所によって発行された営業秘密に関する選択された訴訟の概要を示している。 EUでの営業秘密訴訟の傾向はまだ発展段階であり、EU 司法裁判所は営業秘密指令の主要な条項についてまだ説明する機会がないため、この情報収集は訴訟の傾向を定義するための貴重なリソースとなるとされている。

参照サイト:https://euipo.europa.eu/ohimportal/en/web/observatory/-/news/new-observatory-report-on-trade-secrets-litigation-trends-in-the-eu
 報告書

【欧州】欧州単一特許指定状況(6月12日)

ヨーロッパ特許庁(EPO)は、6月12日付、最初の欧州単一の公開間近(First Unitary Patents on their way to publication)をの記事を公開した。記事によると、欧州特許登録簿(European Patent Register)には、6 月 1 日の単一特許制度の運用開始後、単一効果を要求する欧州特許に関するデータがけいさいされるようになり、EPOは5月末までに800件の単一効果の申請を受領し、さらに4,500件の欧州特許付与の公開延期の申請を受領している。これらの対象特許は6月と7月初旬に単一効果の申請資格が得られます。この単一効果の申請うち、600件ほどが6月末から7月初旬に向けて、登録簿にけいさいされる。

参照サイト:https://www.epo.org/news-events/news/2023/20230612.html

【WIPO】2021年の全世界の知的財産権出願は増加 

国際知的所有権機関(WIPO)は、11月21日付、世界知的財産指標2022(World Intellectual Property Indicators 2022)を公表し、2021年度の各種知的財産権の出願状況を分析し、2020年に比べて+3.6%増加し、その67.6%をアジア各国で占めているとした。

World Intellectual Property Indicators 2022

特許、実案、意匠、商標及び植物新品種ともに中国が全体の大半を占めていることは良く分かる。

参考サイト:https://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2022/article_0013.html

【欧州】欧州連合知的財産庁審査ガイドラインの改正(3月31日施行)

欧州連合知的財産庁は、3月22日付、政令DECISION No EX-22-1を発行し、改正された欧州連合知的財産庁審査ガイドラインを2022年3月31日より施行したことを公示した。本ガイドラインは欧州連合商標(EUTM)と共同体意匠(RCD)に関するもので、改正版では参照先のリンクを5000超追加し、他の上規定、判例などを参照可能とするとともに、従来は見るとこができなかった絶対的拒絶理由による拒絶案件が参照されている。

商標関係では、2021年4月に出された新しいタイプの商標の出願手続き、方式審査、絶対的拒絶理由の審査など変更の公示と地理的表示(GI)の通常の使用が明確にされた。意匠関係では、無効手続きにおける欧州連合商標との整合性のために、出願日を登録料支払日としないことに改正された。

以下は、ガイドラインの目次をご参考まで。
A) 欧州連合商標
Part A: 一般規則
Section 1: Means of Communication, Time Limits
Section 2: General Principles to be Respected in the Proceedings
Section 3: Payment of Fees, Costs and Charges
Section 4: Language of Proceedings
Section 5: Parties to the Proceedings and Professional Representation
Section 6: Revocation of Decisions, Cancellation of Entries in the Register and Correction of Errors
Section 7: Revision
Section 8: Restitutio in Integrum
Section 9: Enlargement
Part B:審査
Section 1: Proceedings
Section 2: Formalities
Section 3: Classification
Section 4: Absolute Grounds for Refusal
Part C: 異議申立
Section 0: Introduction
Section 1: Opposition Proceedings
Section 2: Double Identity and Likelihood of Confusion
Section 3: Unauthorised Filing by Agents of the TM Proprietor (Article 8(3) EUTMR)
Section 4: Non-registered trade marks and other signs used in the course of trade (Article 8(4) EUTMR)
Section 5: Trade marks with Reputation (Article 8(5) EUTMR)
Section 6: Geographical Indications (Article 8(6) EUTMR)
Section 7: Proof of Use
Part D: 無効
Section 1: Cancellation Proceedings
Section 2: Substantive Provisions
Part E: 登録簿手続き
Section 1: Changes in a Registration
Section 2: Conversion
Section 3: EUTMs and RCDs as Objects of Property
Section 4: Renewal
Section 5: Inspection of Files
Section 6: Other entries in the Register
Part M: 国際商標

B) 登録共同体意匠
登録共同体意匠出願審査:Examination of Applications for Registered Community Designs
Section 1 Introduction
Section 2 Filing an Application with the Office
Section 3 Allocation of a Filing Date
Section 4 Examination of the Substantive Requirements
Section 5 Additional Requirements Regarding the Representation of the Design
Section 6 Additional Elements that an Application Must or May Contain
Section 7 Multiple Applications
Section 8 Payment of Fees
Section 9 Withdrawals and Corrections
Section 10 Registration, Publication and Certificates
Section 11 Corrections and Changes in the Register and in the Publication of Community Design Registrations
Section 12 International Registrations
Section 13 Enlargement and the Registered Community Design
意匠無効申立審査Examination of Design Invalidity Applications
Section 1 Purpose
Section 2 Introduction – General Principles Applying to Invalidity Proceedings
Section 3 Filing of an Application
Section 4 Adversarial Stage of the Proceedings
Section 5 The Different Grounds for Invalidity
Section 6 Termination of the Proceedings
Section 7 Other procedural issues
Section 8 Appeal

参照サイト:https://euipo.europa.eu/ohimportal/en/web/guest/news/-/action/view/9285342
変更公示 ガイドライン

【欧州】統一特許裁判所協定の準備開始(1月19日)

ヨーロッパ特許庁(EPO)は、1月18日付、オーストリアが統一特許裁判所協定(UPCA)の暫定適用に関する議定書(PAP)の批准手続きをEU理事会に行ったことを受けて、統一特許裁判所(UPC:Unified Patent Court)の設置準備が1月19日にスタートしたとのニュースリリースを公示した。

BrexitのためにUPCA署名国からイギリスが離脱し、現在はドイツ、フランス、イタリアの3か国をベースにEU加盟国13か国がPPA第3条の条件を満たす状態となっており、オーストリアが批准手続きを行ったことで長く待たれていた条件が整い、UPCと単一特許制度(UP:European patent with unitary effect)の開始に向けた非常に重要な進捗である。今後はドイツ政府の手続き次第での進捗となるが、UPCAの発効はドイツが批准書を寄託してから4か月後にUPCとUPの準備が稼働することになる。つまり、早ければ7か月後の2022年末にはさらなる進展が見られそうである。

参照サイト:https://www.epo.org/news-events/news/2022/20220117.html

【欧州】オーストリアがPAP批准手続き完了(12月2日)

ヨーロッパ特許庁(EPO)は、12月3日付のニュースリリースで、オーストリア議会が統一特許裁判所協定(UPCA)の暫定適用に関する議定書(PAP)の批准手続きに関する手続きを12月2日に完了したことを報じた。これは、UPCA署名国からイギリスが離脱したことから現在でドイツ、フランス、イタリアの3か国をベースにEU加盟国13か国がPPA第3条の条件を満たす状態となり、新しい司法と単一特許制度(UPC)の開始に向けた非常に重要なステップでなる。
 オーストリアが批准書をEU理事会に寄託するとすぐに、すべての準備が完了するための暫定期間が始まり、UPCを設立するための最終的な準備措置を講じ、UPCの作業を開始できるなる。統一特許裁判所の最終準備作業が完了すると、ドイツがUPCAの発効はドイツが批准書を寄託してから3から4か月で統一特許裁判所と単一特許制度が稼働することになる。つまり、早ければ2022年末にはそうした状況が生じることになる。

 ドイツが2020年11月26日にUPCA批准の同意を含む法案に必要な資格のある過半数が採択してから1年が経ち、当初の予定より1年遅れで進捗が見られそうである。

参照サイト:https://www.epo.org/news-events/news/2021/20211203a_fr.html

【EU】EU商標登録200万件(2021年8月24日)

欧州知的財産庁(EUIPO)は、8月24日付、欧州商標登録が100万件の登録から7年目で200万件に達したと公示した。

EUIPOは、2021年6月30日に本年度10万件目の商標出願を受理しており、前年比+25%のペースで急増している。昨年は+10%の増加であり、本年度は20万件の出願を受理することが見込まれている。

ところで、イギリスのEU離脱(Brexit)により、2021年1月1日付で、未登録係属中のEU商標、国際商標出願のEU指定については、イギリス移行出願の期限が9月30日迫っている。出願係属中の案件がある場合は、忘れずに移行出願をお勧めします。
参照サイト:
https://euipo.europa.eu/ohimportal/en/news/-/action/view/8853029
https://www.wipo.int/madrid/en/news/2021/news_0021.html
https://www.gov.uk/government/news/claiming-an-eu-filing-date-on-uk-cases-30-september-2021-deadline