【中国】最高人民法院知識財産法廷成立後、半年の業務成績評価(8月5日)

最高人民法院知識財産権法廷は、「勇敢に改革し着実に実行する」と題した成立後半年間の業務成績を「満足」と題する成績表を発表した。以下は、その概要をご紹介するが、このような内容を見ると、日本の司法制度や運用実態が少なくとも中国を含むアジア各国と比べて、遅れていると言わざるを得ない・・・と感じるのは小職だけだろうか・・・。

2019年1月1日、最高人民法院知識財産権法廷は、イノベーション駆動型発展戦略の強化するため、知的財産権保護を重視し、知的財産権強国と世界科学技術強国を建設する戦略から設立され、特許などの技術的財産権事件の統一的裁判基準を定め、裁判の質と効率をさらに高めるとともに、司法の公信力と国際的影響力の向上を目指した。設立後半年が過ぎ、満足できる成績を出した。

●改革・革新を深化させた多くのハイライト
知識財産権法廷は出発点として、この半年間にわたり積極的に新しいメカニズム、手続きフロー、ルートを模索し、「法廷発展計画(2019-2021)」を起草し、法廷建設のための指導思想、発展原則、発展目標、主要任務、基礎保障、組織化などについて詳細に規定した。さらに、「知的財産権法廷フォーラム」を27回開催して共通認識の形成を推進し、「統一裁判標準実施細則」を制定し、同一の特許事件に同一の裁判官または合議廷に担当させ、統一した裁判基準を保障する。技術調査室の建設を探求し、技術調査官の訴訟参加の諸制度を充実させ、裁判官は事件の技術的事実問題を明らかにし、効果的な支援と援助する。一部の判決を探求し、権利侵害で事実認否が明らかでない事件の場合、権利侵害判定に対して先に部分判決を下し、当事者がこれに対して個別に控訴できるようにして、司法資源を節約する。巡回裁判制度の完備を探求し、積極的に巡回裁判を展開し、当事者の便利性を図り、訴訟のコストを節約させる。
 3月27日に知識財産権法廷の羅東川裁判長は第一件目を公開審理した。この事件は2019年2月15日に立案され、3月27日に公判が開かれ、判決が言い渡されました。4月6日に電子裁判書が発行され、審理は50日と短期間であった。最高人民法院知識財産権法廷は全国範囲における特許などの専門性の高い民事及び行政事件の第二審を統一的に審理するが、こうした事件は通常技術が複雑で、クレームの解釈や損害賠償算定の難易度が高い特徴があるため、公正かつ効率的な司法保護を提供しなければならない。
 4月25日に裁判所はカシオコンピュータ株式会社(原告)vs深圳光峰科技株式会社と影音匯(北京)科技発展有限公司の発明特許権侵害紛争の2つの事件を公開審理し、技術調査官が事実判定に協力し、事件の審理の専門性と客観性を高めた。
 7月4日に知識財産権法廷は初めて裁判中に遠隔証明方式を採用して証拠実物を検査した。特許権侵害裁判中に上海知識産権法院とビデオ接続し、上海にある実物証拠をリアルタイムで映像を伝えることで、遠隔証明方式で順調に被疑侵害品の争点となる技術的特徴の対比作業を終えることができた。革新的な手段でイノベーションを保護し、革新的な理念で業務をリードし、知識財産権法廷は実務上実践することで、イノベーション駆動型発展戦略と国家の知的財産権戦略の強化に司法的保障を提供する職責を果たした。

●裁判のインテリジェント化推進を着実に実施
知識財産権法廷は、第19回世界知的財産権日に合わせて、4月23日から25日まで「知的財産権保護集中開廷週間」活動を行い、、医療機器、ネットワークデータ取得、光学技術などに関する典型的な意義のある11件の事件を選定し公開審理したが、特許技術事件の困難な問題がバーチャルリアリティーVR技術、拡張現実技術、遠隔ビデオズーム技術などを活用したインテリジェントシステムにより解決できることで、裁判がスムーズで効率的に大幅に向上した。
 知識財産権法廷は情報化建設を高度に重視し、ビッグデータ、AIの運用を推進し、情報化による裁判の効率化を推進している。高級人民法院32院、中級人民法院43院は裁判所業務協同プラットフォームの構築を探求し、同プラットフォームを通じて上訴事件の情報を報告し、電子ファイルをアップロードし、オンライン上での電子立案を実現した。さらに利便性のあるデータインタラクティブシステムの構築を推進し、国家知識産権局データベースと専用ネットワークを確立して、同データベース資源を十分に利用し、特許権利情況、審査履歴と全世界のファミリー特許または関連特許文書などを閲覧可能とする。
 この半年間に、「知的財産権法廷イントネーション化建設三年発展計画(2019-2021)」を完成し、副裁判長の周翔を組長とするインテリジェント化建設チームが設置され、知識産権法廷の情報化建設のタイムスケジュールやロードマップが作られた。

●科学技術イノベーションの快足保護
知識財産権法廷は、この半年間、国際的知的財産権の司法保護が高く、訴訟選択優先地となるべく実現を目指してきた。そして、これまで、いくつかの調査チームを設立し、特許法改正、独占禁止、標準必須特許、5 G技術関連法律問題、植物新種などの重点分野と重点問題をめぐって調査研究を展開し、「植物新種権事件に関する裁判文書分析状況報告」「特許権利侵害事件審理期間及び特許無効循環訴訟の実証研究」などの調査研究資料を作成し、国家知識産権局、農業農村部などの部門と積極的に交流し、協力メカニズムの構築を検討し、司法と行政の知的財産権共同保護の新たな枠組みの形成を推進する研究を進めた。
 また、フランス、ルクセンブルク、ドイツでのヨーロッパの知的財産権司法と実務界との交流やAIPPI中日韓三国分科会交流会に参加するなど最高人民法院知識産権法廷の設立背景や意義などをめぐり、諸外国との交流活動を20回以上行った。

参考サイト:
http://courtapp.chinacourt.org/zixun-xiangqing-174742.html