世界知的所有権機関(WIPO)は、9月26日付、毎年発行しているWIPO加盟133国のイノベーション力を評価するグローバル・イノベーション・インデックス(GII、Global Innovation Index)の17回目2024年版を公示した。
2024年版GIIによると、トップは昨年同様、スイス、スウェーデン、アメリカ、シンガポール、イギリスが上位にランキングされ、中国、トルコ、インド、ベトナム、フィリピンが過去 10 年間での急成長の国に挙げられるとしたが、2020年から2022年にかけてのイノベーション投資ブームの反転、金利上昇などでベンチャーキャピタル(VC)資金が2023年比約40%減少、研究開発(R&D)支出の伸びは鈍化し、国際特許出願と科学出版物は減少し、イノベーション投資に暗雲が立ち込めていると報告している。なお、近年、サウジアラビア、カタール、ブラジル、インドネシア、モーリシャス、パキスタンが最も順位を上げており、いずれも3~4年連続好成績を維持していることも指摘している。日本は、一つ落ちて13位、地域では4位である。
GII2024年では、 「社会的起業家精神は増加しているのか?」という調査を主題にしているが、全体的な調査結果を以下のように挙げている。
・2020年から2022年にかけてブームが見られたが、2023年は科学出版物、VC、国際特許出願は低迷し、R&Dは減速した。
・VCや科学出版物はコロナ前の水準まで急激に減少し、ラテンアメリカやアフリカなどの新興地域で顕著である。
・リスクファイナンスを取り巻く環境悪化を反映し、VC投資額は2022年から36%減、2023年にさらに39%減となった。
・VC取引件数が2023年には9.5%減少見込である。
・国際特許出願件数が2023年に1.8%減少、2009年以来初めての減少となった。
・世界の研究開発費は2022年に5%増加しが、2023年は実質3%に減少が予測される。
・企業のR&D支出は、2023年実質約6%増加したが、過去10年間の長期成長率(約8%)を下回っており、2019~2021年の10~15%のピークやパンデミック前の成長率よりも低下した。
・成長技術分野は、健康関連とコンピュータ処理能力が急速に増加し、5G(2022年比約25%増)、ロボットや電気自動車(EV)では、EV投資が2022年比54%増加した。
・一方、グリーンテクノロジーは過去10年間の平均よりも遅く、スーパーコンピュータのエネルギー消費削減、電池価格のコストダウンの難しさが浮き彫りになった。
参照サイト:https://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2024/article_0013.html