【中国】「最高人民法院による不正競争防止法の適用に関する解釈」の施行(3月20日)

最高人民法院は、3月17日付、2022年1月29日に最高人民法院裁判委員会第1862回会議で可決された「最高人民法院による反不正当競争法の適用に関する若干問題の解釈(最高人民法院关于适用《中华人民共和国反不正当竞争法》若干问题的解释)」法釈〔2022〕9号を公示し、3月20日から施行する。本司法解釈は2021年8月19日に意見募集稿を行ったものである。

反不正当競争法(不正競争防止法)は、2018年1月と2019年4月に改正法が施行されており、旧法に対応する法釈[2007]2号「最高人民法院による不正当競争民事事件の審理に関する法律適用の若干問題解釈」に代わる司法解釈となる。なお、営業秘密については、法釈「2020]7号の「最高人民法院による営業秘密侵害の民事事件の審理における法律適用に関する若干の問題の規定」が施行されている。

今回の改正は、意見募集稿の34条に1条追加6条削除及び修正を含む29条からなり、善意使用、悪意による互換性排除、ネットワーク利用、データ収集、時効、裁判所の管轄権に関する条項が除外され、27条に外国発生事件の域内結果発生に対する管轄権を確認している。全体的に見ると、混同行為、虚偽宣伝や中傷について、複数の条項を設けて明確にしている一方、1条と24条は反不正当競争法2条が適用できる条件から特許法、商標法、著作権法などの規定に定める場合は除くというように考えられる。つまり、商標と商号などに及ぶ侵害行為と不正競争行為が関係する事件の場合で、商標法の適用と不正競争防止法の適用の両方が考えられる被疑者の行為を提訴するとき、通常は両方の法適用を主張しますが、どちらかにしろというようなもので、訴権の制限や賠償の制限をしているように理解できる。また、2条は競争関係がないと適用しないと理解できるから、反不正当競争法の利用に一定の制限をつけることを意識しているように理解できる。
以下、一部をご参考まで。全文仮訳はひとりごとをご参照ください。

第1条 事業者が市場競争秩序を乱し、その他の事業者或いは消費者の合法的権益を損ない、反不正当競争法第二章(不正競争行為)及び特許法、商標法、著作権法などの規定に違反する場合、人民法院は反不正当競争法第2条を適用しこれを認定することができる。

第2条 事業者と生産事業活動において取引機会の争奪、競争優位を損なうなどの関係にある市場主体は、人民法院が反不正当競争法第2条に規定される「その他の事業者」と認定することができる。

第3条 特定ビジネス分野で一般的に遵守され、認められている行動規範は、人民法院が反不正当競争法第2条に規定される「商道徳」と認定することができる。
 人民法院は事件の具体的な情況を結びつけて、業界規則或いは商慣行、事業者の主観的状態、取引相手方の選択意欲、消費者の権益、市場競争秩序、社会公共の利益に対する影響などの要素を総合的に考慮し、法により事業者が商道徳に違反しているか否かを判断しなければならない。
 人民法院は事業者が商道徳に違反しているか否かを認定するとき、業界主管部門、業界協会或いは自律した組織が制定した就業規範、自主規制、技術標準などを参照することができる。

第4条 一定の市場での知名度があるとともに商品の出所を区別する顕著な特徴のある標識は、人民法院が反不正当競争法第6条に規定される「一定の影響がある」標識と認定することができる。
 人民法院は反不正当競争法第6条に規定される標識が市場で一定の知名度があるかどうかを認定する場合、中国国内の関連公衆の周知の程度、商品販売期間、地域、金額及び対象、宣伝持続時間、程度及び地域範囲、標識が保護を受けた情況などの要素を総合的に考慮しなければならない。

参照サイト:https://www.court.gov.cn/fabu-xiangqing-351291.html

【韓国】特許法及び不正当競争防止法の改正・施行(2019年7月9日)

2019年1月8日付で公布された、懲罰的損害賠償などを追加規定した改正特許法及び改正不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律(不正競争防止法)が2019年7月9日に施行される。

1.懲罰的損害賠償制度の導入
改正特許法及び改正不正競争防止法では、故意の侵害行為と認められる場合に、認定損害額の3倍を超えない範囲で法院が懲罰的損害賠償額を認定できる制度を導入した。法院が損害賠償額を決定する時の考慮事項は下記の通りで、特許と実用新案が対象;
(1)侵害行為をした者の優越的地位、
(2)故意または損害の発生のおそれを認識した程度、
(3)侵害行為により特許権者が被った被害規模、
(4)侵害行為により侵害者が得た経済的利益、
(5)侵害行為の期間・回数など、
(6)侵害行為による罰金、
(7)侵害者の財産状態、
(8)侵害者の被害救済努力の程度。
(特許法第128条第8項及び第9項の新設、不正競争防止法第14条の2第6項及び第7項の新設)

2.実施料賠償規定の改正
改正特許法では、従前特許法の「通常」という表現により損害額が実損より低く算定されて不十分な補償となる問題点に鑑み、「合理的」と変更し、特許侵害などの個別・具体的な状況を考慮して損害額を算定するようにした。(特許法第65条第2項及び第128条第5項の改正)

3.具体的行為態様の提示義務の新設
改正特許法は、特許権侵害訴訟において、特許権者が主張する侵害行為の具体的な行為態様を否認する当事者が自らの具体的な行為態様を提示するように義務付ける立証の転換を規定し、当該当事者が正当な理由なく自らの行為態様を提示しない場合、法院が特許権者の主張する行為態様が真実なものとして認定することができるように規定した。(特許法第126条の2の新設)

4.営業秘密要件の緩和
改正不正競争防止法は、秘密管理性の規定から「合理的な努力」の表現を削除し、合理的な努力がなくとも秘密として維持管理されているのであれば営業秘密と認定するように要件の立証義務のレベルを緩和した。これまで2015年不正競争防止法の改正により「相当な努力によって秘密として維持」の表現が「合理的な努力によって秘密として維持」に緩和された経緯があったが、今回は当該表現を削除し、要件をさらに緩和した。(不正競争防止法第2条第2号の改正)

5.営業秘密侵害行為などに対する罰則の強化
改正不正競争防止法の規定する処罰対象行為は、
(1)不正な利益を得るか営業秘密保有者に損害を与える目的で、営業秘密を指定された場所以外に無断で流出させる行為、
(2)不正な利益を得るか営業秘密保有者に損害を与える目的で、営業秘密保有者から営業秘密の削除または返還の要求を受けたにもかかわらず、これを継続して保有する行為、
(3)切取・欺瞞・脅迫、その他の不正な手段で営業秘密を取得する行為、
(4)営業秘密侵害行為の事実を知りながら、当該営業秘密を取得または使用する行為。
(不正競争防止法第18条第1項及び第2項の改正)

6.罰則を大幅に加重
国外使用目的:15年(元10年)以下の懲役または15億(元1億)ウォン以下の罰金
国内使用目的:10年(元5年)以下の懲役または5億(5千万)ウォン以下の罰金
こうした罰則の拡大は、処罰の空白を防止する効果があり、刑事処罰水準の強化を通じて営業秘密の保護がより強化されると期待される。

改正法では、営業秘密侵害犯罪の類型を大幅に拡大したという点に最も大きな意味があり、追加された犯罪類型の一部(営業秘密を指定された場所外に無断で流出させる行為、営業秘密の削除・返還要求に応じない行為等)は、民事上の侵害行為の類型にも含まれていないため、今回の改正により刑事責任の対象範囲が民事責任の対象よりも広く拡張され、営業秘密侵害に対する制裁の強化でもある。
また、処罰の範囲の拡張より、営業秘密侵害事件が法的紛争事件として増加するだけでなく、営業秘密流出時の実務的な対応とその紛争の形態にも変化をもたらすことが予測される。例えば、営業秘密侵害の相手方に警告状を発送したが、相手方が応じなければ、別途刑事措置を取ることができる。また故意侵害の根拠として相手方が警告状に応じなかったことを提示することで懲罰的損害賠償を請求することも可能になるなど、これまでとは異なる紛争状況につながる可能性がある。

出典:Kim&Chang