【中国】北京知識産権法院2022年データ不正競争10大典型事例(4月23日)

北京知識産権法院などは、4月23日、世界知的財産権の日に合わせた2023中関村知的財産権フォーラムで、北京知識産権法院のデータ不正競争(反不正当競争法)に関する10大典型事例を発表した。事件の当事者は比較的有名な電子情報サービス企業であり、対象の不正競争行為はデータの収集、応用、処理、取引などの各段階で発生する典型的な事例であり、商業道徳のあるべき姿や不正競争法の適切な適用が、データ所有者、データ需要者、消費者などの主体の利益、個人情報の保全、技術的手段の悪用などの面で注目できる紹介となっている。典型事例は以下の通り。

事例1:抖音(douyin、中国版 tiktok)のショートビデオキャプチャー事件 (2021)京73民终1011号
北京微播视界科技有限公司(Weibo)vs北京创锐文化传媒有限公司
【抖音サイトから5万件以上のショートビデオ、1万件以上の個人情報、127件のユーザーコメントを自社サイトに無断転載した。反不正当競争法2条違反、影響の除去、500万元の損害賠償】

事例2:自動車消費者のクレーム情報略取事件 (2022)京73民终3718号
北京车质网信息技术有限公司vs北京奥蒂思品牌管理咨询有限公司ほか
【被告は原告の運営するサイトから5万件以上のクレーム情報や自動車の品質情報を自社サイトにクレーム処理情報と捏造、転載した。反不正当競争法2条、8条違反、不正競争行為の停止、影響の除去、105万元の損害賠償】

事例3:ゲームアカウントレンタルプラットフォーム事件 (2022)京73民终3270号
深圳市腾讯计算机系统有限公司(テンセント)vs四川众聚云购电子商务有限公司ほか
【原告のゲームの利用者のアカウントなどを他のゲームに利用できるように被告のAPPがレンタル仲介することは、ネットゲームの実名認証メカニズムと未成年者の熱中防止を妨害。反不正当競争法2条違反、12条非違反、不正競争行為の停止、影響の除去、116.7万元の損害賠償】

事例4:“省钱招(Save Money)”ブラウザプラグインによるトラフィック略取事件 (2021)京73民终1092号
北京网聘咨询有限公司ほかvs魔方网聘(北京)科技有限公司
【被告は原告サイトのサービスに対する価格比較ブラウザプラグインを提供し、利用者がこれを選択すると被告のサイトにジャンプするよう設定、利用者の原告利用履歴も収集。反不正当競争法条、12条1項、第4項違反、影響の除去、106万元の損害賠償】

事例5:大学卒業生の就職データ不正使用事件 (2020)京73民终3422号
広州爱拼信息科技有限公司ほかvs好未来教育集团(TAL Education Group)ほか
【被告らは原告が収集、加工した662校の大学卒業生10年の就職時給与と就職先業界の分析データを不正に入手し使用及び販売。反不正当競争法2条違反、65万元の損害賠償】

事例6:データの営業秘密侵害事件 (2020)京73民终2581号
北京融七牛信息技术有限公司vs赵媛姣、北京智源享众广告有限公司
【原告に入社した越氏は秘密保持義務に違反し、会社の市場経費台帳Excelファイルを共同被告の北京智源に開示、北京智源はそれを利用した。越氏は反不正当競争法9条1項3号違反、北京智源は同9条3項に違反、違反行為の停止、営業秘密文書の永久削除、越氏は5万元、北京智源は18万元の損害賠償】

事例7:マイクロブログの世論モニタリングデータ略取事件 (2019)京73民终3789号
北京微梦创科网络技术有限公司vs湖南蚁坊软件股份有限公司
【原告のWeiboバックグラウンドデータを違法無断で取得、保存し被告サイトで開示、データ分析レポートを提供した。反不正当競争法12条2項4号違反、違法行為停止、影響の除去、528万元の損害賠償】

事例8:“飯友(Find you)”APPによるデータ略取事件 (2019)京73民终2799号
北京微梦创科网络技术有限公司vs上海复娱文化传播股份有限公司
【被告は技術的保護手段をバイパスまたは破壊するために自社のAPPを利用して許可なく原告のWeiboバックグラウンドデータを取得した。反不正当競争法2条違反、影響の除去、210.3万元の損害賠償】

事例9:ビデオアカウントのタイムシェアリング事件 (2022)京73民终1154号
深圳市腾讯计算机系统有限公司(テンセント)ほかvs惠州市淘卓网络科技有限公司
【被告は原告らが提供するテンセントビデオ公式サイトとWeChatのVIPアカウントを分割して安価にレンタルした。反不正当競争法2条違反、影響の除去、45.7万元の損害賠償】

事例10:不動産情報略取事件 (2022)京73民终4201号
北京链家房地产经纪有限公司ほかvs北京神鹰城讯科技股份有限公司ほか
【被告は原告の運営する不動産情報サイトから無断違法に技術的手段を利用し、不動産基本情報、取引情報、特色、実測図、VR図、間取図などを取得し、原情報の透かしを削除し、自社サイトに転載、営業に使用した。反不正当競争法2条違反、影響の除去、550万元の損害賠償】

参照サイト:https://bjgy.bjcourt.gov.cn/article/detail/2023/04/id/7260310.shtml
ttps://baijiahao.baidu.com/s?id=1763973104028767804&wfr=spider&for=pc

【中国】最高人民法院による独占禁止と不正競争指針と典型事例の記者発表会(9月27日)

最高人民法院は、9月27日、8月30日の中央包括的深化改革委員会第21回会合が開催され、習近平総書記出席の独占禁止の強化と公正な競争政策の徹底的な実施が社会主義市場経済システムを改善するための固有の要件であるとの発言を受けて、人民法院の独占禁止及び不正競争関連の裁判のための指針が作成された。裁判所は主に不正競争の裁定を担っているといえる。これを受けて、今後の基本方針と典型事例10件が発表された。

1.基本指針
(1)裁判の役割を十分に発揮し、公正な競争のための法的環境を構築
 2018年~2020年に、全国の裁判所は不正競争民事事件の受理は14,736件、年平均18%増加した。独占民事事件の受理は158件、年平均で60件を超える。傾向としては営業秘密侵害事件などの増加と高額賠償、また新しい形態の事件として、データの権益保護、ネット事業者二拓問題、ビックデータなどSNSでも注目を受けている。

(2)司法解釈の積極的制定を推進し、規則制度を継続的に改善
 昨年以来、インターネット上の知財権、知財権の刑事保護、営業秘密、知財民事訴訟での証拠、懲罰的賠償など多数の司法解釈と規範性文書を発表したが、今後は不正競争分野、独占禁止(二)の司法解釈の制定を予定している。

(3)国家安全保障を維持するため、国内外の法治を調整
 OPPOとSisvel市場支配地位紛争(Frand)、TCLとEricssonの市場支配地位濫用紛争など世界的市場での独占事件など外国事件の司法管轄と域外適用の主導権問題に対応し、中国の司法主権と当事者の合法的権益を確実に守る。

(4)同時に複数の措置を講じて司法のサービス保証レベルを向上
 行政による独禁法の執行と司法の連携を強化し、行政法執行基準と司法裁判基準の統一を促進し、行政部門との情報交換などを含めた交流と協力を強化し、効率的な監督管理体制を共同で推進する。

2.不正競争と独禁法の典型事例(営業秘密侵害事件のみ概説)

(1)「優先鋸」営業秘密侵害事件 (2019)最高法知民終7号
 優鎧公司は離職した従業員が設立した路啓公司が販売する位置決め裁断機が技術秘密を使用しており、当該製品を使用した魯麗公司も併せて提訴した。第二審では現場での技術対比を行い切断方法と手順が技術秘密に該当するとして、侵害停止と600万元(約10,200万円)の賠償を命じた。なお、魯麗公司は証拠隠滅行為があり罰金が科せられた。原告の立証義務の軽減と証拠隠滅に対する司法の信義誠実の原則確保の意思表示がポイントである。

(2).「平編み機部品」営業秘密使用許諾契約紛争民刑事事件 (2019)最高法知民終333号
 慈星公司は必沃公司と平編み機の部品の製造委託契約を締結し技術図面を秘密保持契約を締結して供与したが、必沃公司が同一部品を外部に販売していることを発見し、契約違反を理由に製造販売差止及び損害賠償を求めて提訴した。一方、寧波市公安局は必沃会社が営業秘密侵害の疑いで立件捜査していた。第一審は営業秘密侵害に関係するとして、事件を公安局に移送したところ、被告は不服で控訴した。第二審は犯罪と紛争は異なる法律関係にあり、第一審は技術秘密使用許諾契約について審理をしなければならないと再審理を命じた。営業秘密侵害事件では刑事事件が並行するのは当然であるため、民事と刑事が同時処理されることがままあるが、公安は経済紛争を理由に立件を避け、裁判所は犯罪の嫌疑を理由に民事訴訟の避けるようなことがあり得るところ、本件では刑事責任と民事責任の両方が混同されずに適切に処理されたことがポイントである。

(3)「愛奇芸アカウント」不正競争事件 (2019)京73民終3263号
(4)「陸金所金融サービスプラットフォーム」不正競争事件 (2019)沪0115民初11133号
(5)「720ブラウザ広告遮断」不正競争事件 (2018)粤73民終1022号
(6)「微信データ権益」不正競争事件 (2019)浙8601民初1987号
(7)「ネット決済」行為不正競争事件 (2019)渝05民初3618号
(8)「公共企業」の市場支配地位濫用事件 (2018)桂01民初1190号
(9) 「煉瓦協会」独占紛争事件 (2020)最高法知民終1382号
(10) OPPOとSisvel 市場支配地位濫用事件 (2020)最高法知民轄終392号

参照サイト:http://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-324471.html
      http://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-324491.html

【中国】「公平競争審査制度実施細則」の施行(7月8日)

国家市場監督管理総局は、6月28日付、国家発展改革委員会、財政部、商務部及び司法部と共同で、国市監反壟規〔2021〕2号を公示し、6月29日付で公布された「公平競争審査制度実施細則(公平竞争审查制度实施细则)」を7月8日付で公示、施行し、各地方政府の担当部門に運用の開始を指示した。

本細則は、2016年に「市場システム構築における公平な競争審査制度の確立に関する意見(国発〔2016〕34 号)」として指示が出され、その後、2017年10月に「公平競争審査制度実施細則(暫定)(公平竞争审查制度实施细则(暂行))」として施行され運用されてきたが、今回の改正で正式な実施細則となった。細則は全31条からなり概要は以下の通り:
第1章 総則    第1条~第4条
第2章 審査制度と手続き 第5条~第12条
第3章 審査標準  第13条~第16条
第4章 例外規定  第17条~第19条
第5章 第三者評価 第20条~第24条
第6章 監督と責任追及 第25条~第29条
第7章 付則    第30条~第31条

参照サイト:http://gkml.samr.gov.cn/nsjg/fldj/202107/t20210708_332422.html