【中国】国家知識産権局の特許権評価報告書による先行意匠の抗弁の是非の判断(3月7日)

国家知識産権局は、浙江省知識産権局からの「特許侵害紛争事件において、提供された特許権評価報告書を先行意匠の抗弁の証拠とできるか否か」の照会(浙知〔2021〕34号)に対して、3月2日付で回答(国知発保函字〔2022〕31号)したことを3月7日付で公示した。

特許法第67条は、「特許権侵害紛争中に、被疑権利侵害者が、その実施した技術或いは意匠が従来技術或いは先行意匠であることを証明する証拠がある場合、特許権侵害を構成しない。」と規定している。上記の規定によると、先行意匠の抗弁は一つの抗弁権であり、被訴侵害者が抗弁する前提であるとともに、被訴侵害者は先行意匠の証拠を提出しなければならない。本件では、被訴侵害者が抗弁を主張していない場合、知識産権局は先行意匠による抗弁を自発的に適用することができない。また、意匠特許権評価報告書を請求者が提出し、先行意匠の証拠を提出する主体の要件に合わない。
 「特許侵害紛争行政裁決事件処理指南」は、先行意匠の抗弁を適用するとき、被訴侵害品と先行意匠の1つだけを対比するとともに、同一或いは実質的に同一の判断基準を採らなければならないと規定している。上記の規定によれば、先行意匠の証拠は、被訴侵害意匠が先行意匠と同一或いは実質的に同一であることを証明しなければならない。本件では、特許法実施細則第57条及び特許審査指南の関連規定に基づくと、意匠特許権評価報告書は、当該意匠特許が特許法及びその実施細則に規定する特許権付与条件に合致するか否かの評価であり、対比文献と対象意匠特許との関連度を反映する頁と対象意匠特許が特許権付与条件に合致するか否かの評価を示す説明部分が含まれる。そのため、意匠特許権評価報告書は、被訴侵害意匠が先行意匠と同一或いは実質的に同一であることを証明することはできない。

当然と言えば当然の判断であるが、行政ルートでの権利行使の場合、意匠特許権者はほとんどのケースで意匠特許評価報告書を提出している。意匠特許の有効性判断では、対象意匠特許に先行意匠で開示されている意匠設計や当業者が常用する意匠設計が含まれる場合、それら以外の意匠設計で全体的な視覚的効果により影響を及ぼす部分に権利があると判断することになる。もしそうした設計の部分がないならば、当該意匠特許は無効であり、権利行使ができないと判断しなければならない。

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2022/3/7/art_546_173745.html