【中国】 国家知識産権局の特許権侵害行為の再犯問題に対する回答(9月3日)

国家知識産権局(CNIPA)は、福建省知識産権局からの「特許権侵害再犯事件の処理に関する照会」(閩知発〔2021〕31号)に対して、9月3日付回答(国知発保函字〔2021〕133号)したことを9月8日付公示した。回答した内容は以下の通りで、再犯に対しては停止命令を出すことができるとしている。

「特許権侵害再犯事件の処理に関する照会」に対する回答
 現在、「特許法」、「特許法実施細則」は特許権侵害再犯行為について規定していない。部門規定「特許行政法執行弁法」第20条は、「特許管理業務部門或いは人民法院が権利侵害が成立していることを認定するとともに権利侵害者に侵害行為の即時停止を命じる処分の決定或いは判決後、被請求者が同一特許権に再び同一種類の侵害行為を行い、特許権者或いは利害関係者が処分を請求する場合、特許管理業務部門は侵害行為の即時停止を命じる処分の決定を直接出すことができる。」と規定している。また、北京、天津、河北、浙江、福建、河南、湖北、広東、重慶、四川、貴州、重慶、新疆などの省レベルの地方政府は地方法規において、 特許権侵害再犯行為に対して行政処罰を与えることができると明確に規定している。

1.履行期限
 当事者は行政裁決書の受領日から直ちに侵害行為を停止しなければならない。履行期限は、侵害者の侵害範囲、侵害品の販売量、侵害品の回収と生産金型の廃棄の難度などの要素を総合的に考慮して確定することができる。

2.特許侵害再犯行為の起算日の認定
 再犯の起算日は最初の侵害行為に対する行政及び司法手続の終了日に依存し、裁判所が事件で強制執行した場合は強制執行終了日、権利者が権利者の申立による場合はその期限の満了日、或いは行政及び司法手続が終了した日を終了日と認定できる。その後発生した侵害行為は再犯行為である。

3.「改善後も侵害している」行為に対する処理
 こうした行為は依然として権利侵害であり、特許権侵害行為を繰返していると認定できる。但し、侵害者が侵害を回避しようとしていることから主観的意図が明らかではなく、行政処罰を軽減することができる。

4.特許権侵害再犯行為に対する裁定手続
 再犯行為の成立は当事者による特許権侵害行為が再度存在する事実に基づかなければならない。特許法第65条の規定は行政裁定或いは司法判決を経た後、それらの判断に基づき再度の特許権侵害行為を認定することができる。特許業務管理部門が当事者による特許権侵害の有無を判断をした後、特許法執行部門は地方の法規に基づき特許権侵害再犯行為」の行政処罰を行う。行政処罰を行う場合、「行政処罰法」の関連規定に従う。

5.特許権侵害再犯行為に関する行政責任と民事責任の関係
 現行「特許法」第71条は故意侵害で情状が重大な場合、損害賠償の1倍以上の5倍以下の懲罰的賠償額を確定できると規定している。「最高人民法院による知的財産権侵害民事事件の審理における懲罰的賠償の適用に関する解釈」(法釈〔2021〕4号)第4条は再犯について定めており、情状が重大に該当する規定し、懲罰的賠償の適用を示唆している。民法典第187条は「民事主体は同じ行為により民事責任、行政責任及び刑事責任を負わなければならず、行政責任或いは刑事責任は民事責任に影響を与えない」と規定しているため、再犯行為に対しては行政処罰と懲罰的賠償を同時に適用することができる。                       以上

 当職の経験では再犯は様々な形で発生しており、地方政府の知的財産局を通じて侵害者と調停書を作成し和解しても、気にもせずに再犯することもあるし、他に移転して再犯することもあるし、場合によっては兄弟や親族が経営する会社で再犯することもある。こうしたことから、特許法に基づき行政がこうした再犯に対応することに限界があることを考えられる。こうしたことから裁判所に再犯については持ち込むことを前提に再犯のモニタリングと証拠収集を継続することが中国では肝要である。

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2021/9/8/art_546_169851.html?xxgkhide=1