【中国】「知財刑事事件に対する法律適用の解釈」(意見募集稿)の公示(1月18日)

最高人民法院は、1月18日付、最高人民法院、最高人民検察院による「知的財産権侵害刑事事件の処理における法律適用に関する若干問題の解釈(意見募集稿)」(最高人民法院 最高人民检察院就《关于办理侵犯知识产权刑事案件适用法律若干问题的解释(征求意见稿)》向社会公开征求意见)を公示し、3月5日まで一般からの意見を募集している。

中国の刑法は、2021年3月1日に改正法が施行されており、知的財産関係では、第3章第7節の知的財産権侵害に対する犯罪に次の規定がある。
第213条 登録商標虚偽表示
第214条 登録商標虚偽表示の商品販売
第215条 登録商標標識の不正に製造・販売
第216条 特許虚偽表示
第217条 著作権侵害
第218条 権利侵害複製品の販売
第219条 営業秘密侵害
第219条の1 営業秘密の国外供与
第220条 法人処罰

今回の意見募集稿は、これまでに出されている刑事事件に適用する刑法の司法解釈〔2004〕19号、〔2007〕6号及び[2020]10号を廃止し置き換えるもので、全31条からなり、構成は以下のようになっている。
第1条から6条 215条関連
第7条から8条 216条関連
第9条から12条 217条関連
第13条 218条関連
第14条から17条 219条関連
第18条から23条 処罰関連
第24条から29条 算定基準
第30条 被害者の直接告訴対応
第31条 司法解釈の適用
全体的に営業秘密に関する規定が細かく追加規定された内容となっている。

参照サイト:https://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-386871.html
仮訳

【中国】改正刑法に刑罰の追加(2021年3月1日施行)

最高人民法院と最高人民検察院は、2021年2月26日に、2月22日の最高人民法院審判委員会第1832回会議、最高人民検察院第13回検察委員会第63回会議で、「中華人民共和国刑法」の罪名の補充規定の確定(七)に関する法釈〔2021〕2号が採択されたことを公示した。改正刑法は3月1日より施行されており、同日に関連する罪名に関する司法解釈も施行されているが、これに追加する形で本司法解釈も施行された。

知的財産権関連で注意しなければならない追加された関連の刑法と罪名は、営業秘密、商標などに使用時の国名などや人名、遺伝資源などの収集活動であり、以下の通り:

1.第219条の1 (改正案(十一)第23条)
 国外のために盗取、偵察、買収、不法に営業秘密を提供罪;
 (为境外窃取、刺探、收买、非法提供商业秘密罪)
2.第299条 (改正案(十一))
 国旗、国章、国歌を侮辱罪(旧国旗・国章侮辱罪)
 (侮辱国旗、国徽、国歌罪)
3.第299条の1 (改正案(十一)第35条)
 英雄烈士名誉、栄誉侵害罪
 (侵害英雄烈士名誉、荣誉罪)
4.第334条の1 (改正案(十一)第38条)
 人類遺伝資源不法採集、人類遺伝資源材料密輸罪
 (非法采集人类遗传资源、走私人类遗传资源材料罪)
5.第341条1項
 貴重、絶滅危惧野生動物危害罪(名称変更)
 (危害珍贵、濒危野生动物罪)
6.第341条3項 (改正案(十一)第41条)
 陸上野生動物密猟、買収、運送、販売罪
 (非法猎捕、收购、运输、出售陆生野生动物罪)
7.第342条の1 (改正案(十一)第42条)
 自然保護破壊罪
 (破坏自然保护地罪)
8.第344条 (改正案(十一))
 国家重点保護植物危害罪(名称変更)
 (危害国家重点保护植物罪)

参照サイト:http://www.court.gov.cn/fabu-xiangqing-288171.html

【中国】刑法改正、2021年3月1日施行(12月26日)

12月26日、第13回全人代常務委員会第24回会議は刑法改正案(十一)を採択した。2021年3月1日より施行される。改正には、未成年の刑罰対象年齢の引き下げ、感染症の予防・管理の妨害罪、不正医薬品の製造・販売罪、違法資金調達・債権回収財、高所からの物の落下や交通安全妨害罪に加え、なりすまし、侮辱、違法な遺伝子クローニングが追加されている。

知的財産関係では、第3章第7節の知的財産権侵害に対する犯罪(特許の虚偽表示を除く)に処罰を強化しているので、その点に注目してご紹介する。
1.取締と拘束(禁固)が除外され、刑期を最長10年まで引上げ
2.登録商標虚偽表示罪に、役務商標(サービスマーク)を追加
3.著作権法改正に伴う著作権侵害対象を範囲拡大
4.アメリカと合意した経済貿易協定での営業秘密行為が列挙
 電子侵入またはその他の不正な手段と商業秘密犯罪の種類を拡大した。注目点としては営業秘密の概念を削除し、認定基準を開放し新しい状況・問題に対応し、「類推解釈」を追加した。
5.営業秘密侵害罪に新たに「ビジネススパイ罪(商业间谍罪)」を新設し、海外への流出対策を追加

改正刑法 第3章第7節
第213条 登録商標虚偽表示
 登録商標権者の許諾を得ずに、同一種類の商品、サービスにその登録商標と同じの商標を使用し、情状が重大な場合3 年以下の懲役、罰金を併科或いは単科に処す。情状が特に重大である場合3 年以上10年以下の懲役に処し、かつ罰金を併科する。
第214条 登録商標虚偽表示の商品販売
 登録商標を詐称した商品と知りながら販売し、違法所得額が比較的大きい或いはその他重大な情状がある場合、3年以下の懲役、罰金を併科或いは単科に処す。違法所得額が巨額或いはその他特別に重大な情状がある場合、3 年以上10 年以下の懲役に処し、かつ罰金を併科する。
第215条 登録商標標識の不正に製造・販売
 他人の登録商標の標識を偽造、無断製造、或いは偽造或いは無断製造された登録商標の標識を販売した場合、情状が重大な場合、3 年以下の懲役、罰金を併科或いは単科に処す。情状が特に重大である場合、3年以上 10 年以下の懲役、かつ罰金を併科する。
第216条 特許虚偽表示 (改正なし)
 他人の特許を詐称し、情状が重大である場合、3 年以下の懲役或いは拘役、罰金を併科或いは単科する。
第217条 著作権侵害
 営利を目的とし、以下に掲げる著作権侵害或いは著作隣接権を侵害する情状の一つがあり、違法所得額が比較的大きい或いはその他の情状が重大である場合、3年以下の懲役、罰金を併科或いは単科する。違法所得金額が巨額或いはその他の特別の情状がある場合、3 年以上10 年以下の懲役、かつ罰金を併科する。
(1) 著作権者の許諾を得ずに、その文字作品、音楽、美術、視聴作品、コンピュータソフトウェア及び法律、行政法規に規定されるその他の作品を複製発行、情報ネットワークを通じた一般へ送信した場合;
(2) 他人が専用出版権を享有する図書を出版した場合;
(3) 録音録画製作者の許諾なく、その製作した録音録画を複製発行、或いは情報ネットワークを通じた一般へ送信した場合;
(4) 上演者の許諾なく、その上演の録音録画製品を複製発行、或いは情報ネットワークを通じてその上演を一般へ送信した場合;
(5)他人の署名を詐称した美術作品を制作し、販売した場合;
(6)著作権者或いは著作隣接権者の許諾なく、権利者がその作品、録音録画製品などに採った著作権或いは著作隣接権を保護する技術措置を故意に回避或いは破壊した場合;
第218条 権利侵害複製品の販売
 営利を目的とし、本法第217条に規定する権利侵害複製品を販売し、違法所得が巨額或いはその他の重大な情況がある場合、5年以下の懲役かつ罰金を併科或いは単科する。
第219条 営業秘密侵害
 以下に掲げる商業秘密侵害一つがあり、情状が重大な場合、3年以下の懲役、罰金を併科或いは単科する。情状が特別重大な場合、3 年以上10 年以下の懲役、かつ罰金を併科する。
(1) 窃盗、賄賂、詐欺、脅迫、電子的侵入或いはその他の不正な手段により権利者の商業秘密を獲得する行為;
(2) 前号の手段を用いて獲得した権利者の営業秘密を開示、使用或いは他人に使用許諾する行為;
(3) 秘密保持義務に違反或いは権利者の営業秘密の保持に関する要求に違反し、その掌握する営業秘密を開示、使用或いは他人に使用を許諾する行為。
 前項に掲げる行為を明らかに知りながら、当該営業秘密を獲得、開示、使用或いは他人に使用を許諾した場合、商業秘密侵害と見做される。
 本条にいう権利者とは、営業秘密の所有者及び営業秘密の所有者から許諾を得た営業秘密の使用者をいう。
第219条の1 営業秘密の国外供与
 国外の機構、組織、人員のために窃盗、間諜(スパイ)、買収、違法に営業秘密を提供した場合、5年以下の懲役、罰金を併科或いは単科する。情状が特別重大な場合、5 年以上の懲役、かつ罰金を併科する。
第220条 法人処罰
 単位(法人組織)が本節第 213 条から第 219 条の1に規定する罪を犯した場合、単位に対して罰金を科し、かつその直接の主管責任者及びその他の直接責任者に対して、本節各条の規定により処罰する。

参照サイト:http://www.npc.gov.cn/npc/c30834/202012/e144a7ea2cd245da9d7e73ed205a9322.shtml
http://www.law-lib.com/law/law_view1.asp?id=708277