北京知識産権法院は記者会見を行い、「北京知識産権法院の営業秘密侵害民事事件訴訟での立証基準(北京知识产权法院侵犯商业秘密民事案件诉讼举证参考)」を制定したことを発表するとともに、同法院での典型事例を公表した。
北京知識産権法院の説明では、2021年10月までに営業秘密侵害紛争の提訴は163件、その内訳は一審事件136件、二審事件27件で120件が受理され、審理された43件での原告勝訴は17件と40%を占めており、以下のような特徴があること報告された。
①係争企業の知名度が高く、比較的迅速に発展する業界と競争が激しい事業主体間で発生するため事件の影響が大きい。
②企業の従業員、元従業員に関わる案件が多く、北京知識産権法院での事件の93%を占める。関連従業員や元従業員は往々にして企業の高級管理者で勤務中に企業の重要な営業秘密情報を把握または接触できる。
③原告敗訴の主な理由は権利者の立証が不十分であるためである。これは侵害された商業秘密の隠蔽性、複雑性と関係するが、権利者の立証難の問題も強い。
また、権利者の立証難については、証拠保全措置、調査命令の発行などの方法で積極的に立証に努めることを推奨している。
「立証基準」は、 不正競争防止法、最高人民法院による商業秘密民事事件の審理における法律適用の若干の問題に関する規定」、北京市高級人民法院知的財産権民事訴訟証拠規則指南などの関連法律規定を参考に、営業秘密保護のための権利の基礎、権利侵害行為、民事責任、手続きなどについて58条からなり、以下のように構成されている。英文版もあるので、ご参照ください。
第一部 基礎となる権利に関する立証基準
1.法により起訴できる主体
2.営業秘密の法定条件
3.法定条件の抗弁事由
第二部 権利侵害行為に関する立証基準
4.権利侵害の主張方法
5.権利侵害行為の抗弁事由
第三部 民事責任の請求に関する立証基準
6.権利侵害の停止
7.損害賠償
第四部 手続きに関する立証基準
8.保全
9.調査命令
10.訴訟中の秘密保持措置
11.刑民事調整
北京知識産権法院での典型事例は以下の通り:
1.自動運転技術に関わる営業秘密侵害紛争事件 [(2017)京73民初2000号]
元従業員で技術責任者が離職後、競合会社の役員に就任し営業秘密を侵害したとの提訴した事件で、最終的に原告が起訴を取下げた。
2.ゴルフ場営業秘密侵害紛争事件 [(2018)京73民終686号]
金融機関のVIP顧客にゴルフ付加価値サービスを提供する商業秘密を元従業員が入社した会社で利用し利益を上げていることを提訴した事件で、経済損失と合理的支出の799万元の賠償が下された。
3.石油探査技術に関わる営業秘密侵害紛争事件 [(2017)京73民初1382号]
石油ガス探査開発技術での石油微生物探査技術の一部である技術秘密が被告に侵害されたと証拠保全が申立てられ、被告のパソコン内のデータや紙書類などが証拠保全され侵害と認定された事件で、侵害停止と 経済損失と合理的支出の75万元の賠償が下された。
参照サイト:https://bjzcfy.chinacourt.gov.cn/article/detail/2021/11/id/6351057.shtml
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