アメリカ特許商標庁(USPTO)は、7月1日付の官報(Federal Register)に明細書における実施例の明確な書き分けをすることを指摘した公示を掲載した。具体的には、実験を伴わない予想や期待に基づく論理的実施例(Prophetic examples, paper examplesと呼ばれることもある)と実際の実験や実施に基づく実施例(Working examples)の明細書における記載が曖昧であり審査基準(MPEP)に従わない記載があることから、記載要件や開示義務違反になっている事例があるため、論理的実施例については、明確に分かるように書き分けすることを指摘している。
論理的実施例の記載方法について、MPEP(608.01)には、論理的実施例(Prophetic examples)は、過去形で記載しないことが指摘されており、未来形或いは現在形の文体で書くことができるとしている。こうした過去形以外の文体を使用することで、読み手が実際の実施例と論理的実施例の違いを判断する支援になると指摘している。さらに、適切な実務(Best practice)として、明確な論理的実施例と実施した実施例と書き分けをすることを指摘している。“It is a best practice to label examples as prophetic or otherwise separate them from working examples to avoid ambiguities.”
特許法上の実施可能要件を含む記載要件(35 U.S.C. 112(a)、MPEP 2164, 2163)や開示義務(MPEP2004.8)から無効になる要素の排除は重要である。日本の実務では、実施例の記載は明確に書き分けをしているので、概ね問題ないが、翻訳会社によっては実施例に関する用語をexamplesだけでいいとしていることもあるので、翻訳チェックでは注意をしなければならないところであろう。
参照サイト:https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2021-07-01/pdf/2021-14034.pdf