【中国】個人名「丁真」商標出願を大量に却下(2月10日)

商標局は、2月10日付、「丁真」関連の大量な悪意商標出願を却下したことを公示しました。これは、悪質で使用を目的とせず販売目的であったり、有名な名前にフリーライドする(傍名牌)ための先取りや買占め商標出願(囤積商標)に対する対抗策であり、こうした公示を商標局がすることは、こうした不正行為に歯止めやブレーキをかける目的があると思われる。

対象となった「丁真(Dingzhen)」は、四川省カンゼ・チベット自治州理塘県(Litang)に住むチベット族の青年の名前で、現在20歳である。理塘は海抜4000メートルの高地で天空の街とも呼ばれ、住民は約7万人である。彼はこうした地方の町で家族とともに暮らしいるが、ある旅行者がSNSに彼を投稿したところ2020年11月から中国国内の若者たちからその純朴な素顔などから注目され、一躍有名となった。その後、地元の観光大使に就任し、彼のプロモーション動画が掲載されると大量にアクセスされ、中国のCCTVのみならず、アジアや日本のテレビ局でも報道がされて、今なお人気は収まらない所である。
参考(音声に注意):https://www.youtube.com/watch?v=XjFy5W87npw

 プロモーション動画などでは、丁真的世界、丁真珍珠が使用されていることから「丁真」を含む関係の商標出願が168件(2月9日現在)されている。
 このうち、91件が出願却下されたことになる。内、13件は同一の会社の出願のもので商標法第4条1項(事業活動とは関係のない出願)と第10条1項(7)号(欺瞞的性格を帯びているもの或いは品質や産地を誤認混同させるもの)で却下された。78件は複数の会社或いは個人名での出願のもので第10条1項(7)号のみ却下された。
 商用態様は、単なる「丁真」のみならず、本人の写真をつけたもの、「丁真的世界」、「丁真珍珠」、「丁真的微笑」、「丁真牦牛肉」などがあり、
 出願区分は、商品では飲料の33、32類、食品の29類、サービスでは運送・旅行の39類,広告などの35類が多く出願されている。

参照サイト:
https://www.cnipa.gov.cn/art/2021/2/10/art_75_156734.html
https://www.cnipa.gov.cn/art/2021/2/10/art_75_156733.html

【中国】商標局は新型コロナウィルス事態に付け込んだ商標出願を大量に却下(3月6日)

商標局は、新型コロナウィルスの対策に関連する名称が大量に商標出願されている事態を受けて、3月3日に対策に当たっている現地の病院の名称である“火神山”、“雷神山”、“钟南山”など63件、3月5日に最初に発見した医師の名前“李文亮”や “文亮”など37件の商標出願を却下したことを公示した。

李医師にまつわる商標出願37件については、商標法第10条1項8号に基づく、「社会主義での道徳、風習を害し、或いはその他の有害な影響を及ぼすもの」を理由としたことを明らかにした。37件には、“李文亮”が33件、“文亮医生”、“文亮知先”、“文亮·李”、“礼文亮”など各1件が含まれ,14の出願人、15の区分にわたっている。

商標局は今後も同様の対策を行うことを明言するとともに、地方政府の担当部局に指導強化を指示している。こうした事態は2月初めから中国のSNSで情報が発信されており、悪意出願で指導するべきだとの声が多く上がっていたところ、少し遅い対応ともいえる。中国ではアリババネットで誰でも簡単に商標出願することができ、今回の商標出願も大半がインターネット商標出願事業者を通じたものであるため、ネット事業者に対する規制も必要であろう。 或いは李先生の名誉回復だろうか。 いずれにしても、中国の火事場の何とかを商標局が悪意と判断するのはしたりというべきかな。

追記 3月18日
商標局は、3月16日までに合計1580件強の関連商標出願に対して、328件を却下、866件を自主的取下げの指導をしたことを公示した。引き続き390件強を却下する予定とのことで、出願不受理を含めた対策をするとのことである。また、地方政府の法執行部門と協働して、こうした出願をさせない環境整備を強化するとしている。

参照サイト: http://www.cnipa.gov.cn/zscqgz/1146478.htm
http://www.cnipa.gov.cn/zscqgz/1146509.htm

追記関連サイト: http://www.cnipa.gov.cn/zscqgz/1146741.htm

【中国】悪意登録商標出願を13万件却下(12月23日)

商標局は、12月20日に商標に対する悪意ある登録審査実務説明会を開催したことを報じ、商標の悪意ある登録行為に打撃を与える対策を強く維持し、商標登録秩序を強力に規範化すると表明し、2018年から約13万件の悪意商標出願が審査、異議、審判を通じて却下されたことを報じた。

同説明会には約200社の企業と商標代理人が参加し、会議では商標代理人に商標法を遵守し、悪意商標出願しないことを遵守する書面を提出することが求められ約160の代理人が署名し提出したと報じられている。

2019年11月までに中国の商標登録出願件数はすでに712.1万件に達し、累計有効登録商標数は2,478万件に達し、中国の法人の約4.9社に1つの登録商標を所有している計算になる。中国は、全世界でトップの商標出願件数を17年連続続けており、2018年は全世界の商標出願件数の52%を占め、また有効登録商標でも40%を占める。

同説明会は、商標局の夏青氏は、商標の悪意ある登録に打撃を与えるために入口規制を強化するとともに、知的財産権の保護を強化するには多方面の協力が必要であり、企業、社会と政府が連携して知的財産権を保護するための良好なビジネス環境を創造することを強調した。

参照サイト: http://sbj.cnipa.gov.cn/gzdt/201912/t20191223_309386.html

【中国】悪意商標出願に対する知識産権局の立場と方針の説明(7月4日)

7月4日、国家知識産権局条法司(法務部門)は、3月に開催された第13期全国人民代表大会第2回会議で代表者から発せられた「悪意のある商標登録行為の防止」の提案について、主題に対する見解や対策について回答したことを公表したので、以下の通り、ご参考まで仮訳でご紹介する。

「悪意のある登録商標行為の防止の提案」について、国家知識産権局としては、会議での代表者の提案の一部は4月に発表された商標法改正に既に含まれているものの、改正に含まれていない他の提案事項を今後の商標法改正で十分考慮する。当局は商標の悪意出願問題を非常に重視しており、この数年に各種の措置を講じ、悪意のある登録商標行為を規制し、一定の効果を収めていると応じ、以下の点を説明する。

1.悪意のある商標登録行為の規制とそれに対する処罰メカニズム
2019年4月23日、全国人民代表大会常務委員会は商標法改正案(草案)を審議し、悪意ある登録行為に対する6つの規制条項を追加し、改正は2019年11月1日から施行される。(改正法参照
 当局も現在、日々の業務で悪意のある商標出願行為に対して積極的に措置を取っている。他人の先の権利を大きく侵害したり、公共の資源を利用したりする大量な悪意のある登録出願は一律に却下している。実際に使用意図がなく、正常な生産事業活動にかんがみて必要な商標登録出願数を著しく超えている場合、審査、異議、無効段階で却下しているる。また、3年連続不使用取消事件では、「商標使用」の認定基準を厳格化し、実際のところ不使用、象徴的な使用のみの場合、取消する。こうした措置は悪意のある商標出願行為を一定程度抑制し、公平な競争秩序を維持する役割を果たしている。
 また、「登録商標出願行為の規範化に関する若干の規定」を起草し、現在は意見を募集している。今回の商標法改正後、関連法律に基づいて各方面と意見を調整し、同規定の内容を改善し、商標法の修正内容を実務で対応する。なお、指摘された商標登録後の売買行為に対する具体的な処罰措置については、今後の検討課題である。

2.商標出願人の資格での制限と実際の使用証明の提出
提案された商標出願人の主体資格を制限することについては、出願する商標を使用する商品に対する生産資格がなければならず、登録商標の権利者は3年毎に実際の使用証明などの提出を求めなければならない。
 こうしたことを前提とすると、国がイノベーション駆動発展戦略を実施しており、当局は行政サービスの改革も進めるために、出願人の商標登録手続きに利便性のある措置を取っているが、こうした手続きの追加は真逆の対策となり、出願人の負担を増加させることになる。
 次に、我が国は、WIPOの商標法条約と商標法シンガポール条約を1994年に批准しており、その適用可能性を検討している。ところで当該条約は出願人に商業登録簿や願書に記載の指定商品や役務に対する活動記録を提出することを要求してはならないと規定しているため、当局が出願人の出願時に関連する事業資格証明書を要求する場合、我が国が積極的に参加を検討している国際条約の規定に一致しないことをすることになる。
 更に、我が国の商標法は商標権者に3年毎の実際の使用証明の提供を明確に要求してないが、商標法第49条には3年連続不使用取消の規定がある。この制度の趣旨は商標権者に合法的かつ効果的な商標の使用を促すことにあり、客観的には遊休商標の整理、悪意による商標登録の抑制及び公平な競争秩序の維持を目的としている。また、我が国は先願主義を商標権取得の原則としているが、依然として商標の使用義務を強調している。 

今回の商標法の改正も商標出願人の使用義務を強化するとともに、第4条第1項には「使用を目的としない悪意のある商標登録出願は却下しなければならない」との規定が追加された。まずは審査段階で適用され、悪意のある登録に対する打撃は異議及び無効宣言の段階で適用される。上記の規定は先登録制を変えずに、商標の使用要件を強化したことになる。次のステップでは、当局は商標法での商標の使用目的をより明確にするために一連の措置を強化することで、商標出願をより健全化する。提案に対して、当局は今後の商標法の全面改正の中で、調査と評価を強化し、法制度に対する不断の改善を通じて、我が国の経済社会の発展にもっと良いサービスを提供する。

以上