【中国】「知識産権行政保護技術調査官管理弁法」施行(9月25日)

国家知識産権局(CNIPA)弁公室は、2023年9月25日、国知弁発保字〔2023〕35号を公示し、9月15日付、地方の知識産権局及び関係部局に、「知識産権行政保護技術調査官管理弁法(知识产权行政保护技术调查官管理办法)」の施行を通知した。

中国政府は、技術系の知的財産権紛争の増大を受けて、司法ではすでに技術調査官の活用のための法整備や人材の確保し運用を開始しているが、近年の行政による保護においては、特許や集積回路配置設計の権利侵害紛糾事件の多くは難解で複雑で専門家が必要とされているところ、2021年、「技術調査官の特許、集積回路配置設計の権利侵害紛争行政裁決事件処理の参加に関する若干の規定(暫定)」を制定するとともに技術調査官35名を第1陣に確定し、特許権侵害紛争の行政裁決に派遣し、参与させた。その後、地方の知識産権管理部門に技術調査官制度を構築させ、2022年末現在、31の省クラスで技術調査官制度の設置を行い、合計約700名が登録されている。本弁法の施行で、技術調査官の制度をさらに強化し、技術調査官の知的財産権行政事件処理への参加の規範化、業務支援の健全化を図っている。

本弁法は、全48条からなり、主に技術調査官の位置づけ、職責など以下のような構成となっている。
第1章 総則 第1~5条
第2章 任命 第6~9条
第3章 権利と義務  第10~14条
第4章 担当と派遣  第15~22条
第5章 手続きと規範 第23~33条
第6章 管理と監督  第34~43条
第7章 付則 第44~48条

技術調査官は、各地の知識産権局が技術調査官名簿から抽出され、事件処理のために任命され、参加し、独立した立場から事件処理支援を行う。その主な職務は、事件の争議及び調査範囲、順序、方法などに対する提案、調査、検証、質疑、口頭審理に参加、技術調査意見の提出、及び、事件処理者鑑定人や専門家への協力、事件関連会議に参加、その他の関連作業となっている。技術調査官の活用により、技術関連案件の適切な判断や処理支援が進むことには大きな期待がある。一方で、技術調査官に対する忌避条件などが定められているが、司法と異なり行宇正処理事件の場合、技術調査官の適否、報告意見に対する評価や質疑など課題が多くあることには留意するべきである。

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2023/9/25/art_75_187768.html

【中国】行政執行に技術調査官を活用開始(5月7日)

国家知識産権局弁公室は、5月10日付、国知弁発保字〔2021〕17号で、「技術調査官が特許、集積回路配置設計の侵害紛争行政裁決参加に関する若干の規定(暫定)」《关于技术调查官参与专利、集成电路布图设计侵权纠纷行政裁决办案的若干规定(暂行)》を公示し、即日施行した。

これは、民事訴訟では既に導入されている技術調査官制度を特許や集積回路配置設計の技術が難しい行政執行事件処理でも活用することで、事件解決をスムーズにすることにある。規定は全20条からなる。
 技術調査官は、専利局、業界団体、大学、科学研究機関、企業などの関連分野の技術者から選出されるとあるが、募集になると思われる。こうして集められた技術専門家は国家知識産権局が名簿を作成し管理する。地方政府の知的財産部門はその地域で専門家の募集や管理をできるとしている。
 技術調査官の職務は補佐官であり、決定権を持っているわけではなく、主に以下を担当する:
(1)技術的事件の争点、調査の範囲、順序、および方法の提案
(2)調査および証拠収集に参加
(3)尋問および口頭審理に参加
(4)技術調査の意見の提出
(5)裁定事件処理担当官の支援、関連技術分野の鑑定士や専門家を組織して意見を提供
(6)合議体の会議に出席
(7)その他の関連作業
 なお、技術調査官は秘密保持義務を有しており、またその報告書類は公開されない。

 これらを見て、注意点は業界団体から経験者が調査官になる点である。日本企業や外国企業にとって不利な意見や報告書を作成する可能性があり、実務家としては忌避を申立てることも気に留めておくことをお勧めする。

 6月16日の公示によると、35名の技術調査官が採用された。トレーニングを受けて配属される予定である。

参照サイト:http://www.cnipa.gov.cn/art/2021/5/10/art_75_159232.html
      https://www.cnipa.gov.cn/art/2021/6/16/art_53_160074.html