国家知識産権局は、10月11日の「黒竜江省知識産権局の「知的財産権の故意侵害」の認定基準に関する事項の照会(黒知呈〔2021〕13号)」に対して、以下のように回答、指示したことを、10月18日付の国知発保函字〔2021〕161号で公示した。
1.「知的財産権の故意侵害」行為の認定基準について
知的財産権の懲罰的賠償規定において、「故意」は知的財産権の懲罰的賠償条項で適用される主観的要件であり、懲罰的賠償は権利侵害者に対する加重処罰として、権利侵害行為に対し主観的過失のレベルをより高くすることを求めている。「情状が重大」とは、懲罰的賠償条項のもう一つの構成要件であり、主に加害者の侵害行為を実施した手段方式及びその結果などを客観的に評価することであり、通常は加害者の主観的状態に対する判断をしない。従って、「知的財産権の故意侵害」の認定基準を細分化するとき、法により知的財産権保護を強化し、「故意」と「情状が重大」を科学的に区別し、2つの構成要素に対して不適切な交差或いは重複した評価をしないように注意しなければならない。
上記の考慮に基づき、書簡の基準の第6項と第7項の提案は客観的な判断をする必要がある。
2.「知的財産権の故意侵害」行為を重大な違法信用喪失名簿への追加の判断について
「市場監督管理での重大な違法信用喪失名簿管理弁法」(総局令第44号)(以下、「弁法」)の第9条は、「知的財産権の故意侵害などの公平な競争秩序の破壊と市場秩序の攪乱の違法行為を実施し、本弁法第2条に規定する情状に該当する場合、重大な違法信用喪失名簿に追加する。」と明確にしている。また、「弁法」第2条は、「当事者が法律、行政法規に違反し、性質が劣悪で、情状が重大で、社会の被害が比較的大きい場合、比較的重い行政処罰を受け、重大な違法信用喪失名簿に追加する。」と規定している。いわゆる、比較的重い行政処罰には以下に掲げることが含まれる:
(1)行政処罰裁量基準に従い、重罰原則に基づき罰金を科す;
(2)資格等級の格下げ、許可証、営業許可証の取消;
(3)生産事業活動を展開を制限、生産停止・事業停止命令、閉鎖命令、就業制限;
(4)法律、行政法規及び部門規則に規定されるその他の比較的重い行政処罰。
同時に、「弁法」第12条は、「違法行為の性質が劣悪で、情状が重大で、社会の被害が比較的大きい情況に属するかどうかを判断する場合、主観的悪意、違法の頻度、持続時間、処罰の種類、没収金額、商品の価値金額、一般大衆の生命や健康に対する危害、財産の損害、社会的影響などの要素を総合的に考慮しなければならない。」と指摘している。
上記の規定と要件に基づき、弁法第9条に従い「知的財産権の故意侵害」行為により重大な違法信用喪失名簿に追加するか否かを判断し、同時に弁法第2条に従い当該行為がより重い行政処罰を受けるかどうかを判断し、弁法第12条に従い当該行為の性質が劣悪で、情状が重大で、社会的被害が比較的大きい情況に属するか否かを判断しなければならない。
本公示では、地方政府の知的財産部門に対して、懲罰的賠償の判断基準の故意と情状が重大の適用について、それぞれ独立区別して査定することを指摘している(黒竜江省の照会状の 第6項と第7項 は不明)。また、ブラックリストに登録する場合に弁法を適用する基準とフローを指導している。行政ルートでの処罰は差止が原則であり、懲罰的賠償の適用は行政訴訟になりうるので、あまり適用事案は限られると考える。一方、処罰については、明確に指摘されているので、現地法人が受けうる処分を理解する助けになる。
なお、司法解釈では、「故意」を①警告してもやめない、②当事者間に利害関係者による支配関係がある、③被告が労務関係などから知的財産権に接触したことがある、④被告が業務関係から知的財産権に接触したことがある、⑤被告が海賊版や登録商標を偽造したことがある、⑥その他の故意としており、「状所が重大」を①再犯、②事業としての知財侵害、③証拠の偽造・毀損・隠匿、④保全措置拒否、⑤巨額の利益や損害、⑥社会的影響、⑦その他と定めている。
参照サイト:http://www.cnipa.gov.cn/art/2021/10/18/art_75_170831.html