【中国】「最高人民法院知識産権法庭典型事例(2022)」の公示(3月30日)

最高人民法院知識産権法庭は、3月30日付、2022年に審理された3,468件の技術の絡む知的財産権と独占事件の中から20件を典型事例として精選し公示した。今回典型事件として発表された事件は、特許民事事件7件、特許行政事件3件、植物新品種事件3件、営業秘密侵害事件3件、独占禁止事件4件で、主に次の4点にを関連している。
1.知的財産権の保護レベルを強化し、イノベーション創造活力をさらに刺激
2.権利保護の難題に新たなルートを模索し、革新的方法でイノベーションを保護
3.平等保護の原則を維持し、市場志向、法の支配、国際化による一流のビジネス環境を構築
4.独占行為を厳格に規制し、市場の公平な競争秩序を維持

各事件の概要と意義は以下の通り:

(1)特許民事事件
1.中国初の医薬品特許リンケージ訴訟
 中外製薬株式会社vs温州海鶴薬業有限公司:(2022)最高法知民終905号
 【意義】中国特許法改正後の初めての後発医薬品特許リンケージ訴訟
2.「メラミン製造法」発明特許及び営業秘密の侵害訴訟
 四川金象赛瑞化工股份有限公司、北京烨晶科技有限公司vs山東华鲁恒升化工股份有限公司、寧波厚承管理咨询有限公司、寧波安泰环境化工工程设计有限公司、尹某氏:(2020)最高法知民終1559号、(2022)最高法知民終541号
 【意義】共同侵害行為と認定し、最高の損害賠償額2.18億元、内資と外資企業、国有と民営企業などの各種企業を平等に保護。
3.「橋梁伸縮継手装置」の標準必須特許侵害訴訟
 徐某氏、宁波路宝科技实业集团有限公司vs河北易德利橡胶制品有限责任公司、河北冀通路桥建设有限公司:(2020)最高法知民終1696号
 【意義】交通運輸部発行の標準規格の必須特許であり、ライセンシーの過失に対する特許権者による賠償請求を認定。
4.「動的パスワードUSBケーブル」実用新案特許侵害訴訟
 深圳市租电智能科技有限公司vs深圳市森树强电子科技有限公司など:(2022)最高法知民終124号
 【意義】不安定な特許無効宣言係属中に裁判審理を進める場合、当事者の利益の公平性や誠実性を考慮し、裁判所は当事者に自発的に補償の約定の奨励や指導可。
5.「固着式アンカーボルト」実用新案特許侵害訴訟
 福州百益百利自动化科技有限公司vs上海点挂建筑技术有限公司、张某氏:(2021)最高法知民終1066号
 【意義】侵害者の宣伝内容に基づき侵害規模と賠償額を総合的に決定、比較安価な部品で約5000万円の賠償額を認定。
6.「ガス化炉除塵装置及びシステム」2件の特許権帰属訴訟
 航天长征化学工程股份有限公司vs鲁西化工集团股份有限公司、聊城市鲁西化工工程设计有限责任公司:(2020)最高法知民終1652号、(2020)最高法知民終1293号
 【意義】共同開発の守秘義務に違反し改良技術を無断でした特許出願の帰属に関し、実質的な創造的技術貢献がなく改良技術に該当せず原告に帰属すると認定。
7.「縫合器と縫合針キット」の実案特許権及び発明特許出願権帰属訴訟
 浙江左元医疗技术有限公司vs万某氏:(2022)最高法知民終1330号、(2022)最高法知民終2365号
 【意義】元従業員による職務発明の権利化に対する帰属紛争であり、原告の立証不足を調停で解決。

(2)特許行政事件
8. 「L-オルニダゾール」2件の発明特許無効行政訴訟
 長沙市华美医药科技有限公司与国家知識産権局、南京圣和药业股份有限公司:(2020)最高法知行終475号、(2020)最高法知行終476号
 【意義】化合物の医薬品用途の進歩性(創造性)判断において、従来技術に具体的かつ明確な示唆があるか否か全面的かつ総合的に考慮しなければならないと一審判決を破棄、審決維持。
9.「コンピュータ装置活動のためのカードメタファー」発明特許無効行政訴訟
 アップルコンピュータ貿易(上海)有限公司vs国家知識産権局、クアルコム:(2021)最高法知行終1号
 【意義】国際的に有名な科学技術企業間の紛争、技術的解決策のいくつかの技術的特徴の相互依存による相乗効果での特定の機能が実現される場合進歩性があると判示し、審決維持。
10. 「リバロキサバン製剤」発明特許侵害行政裁決不服訴訟
 南京恒生制药有限公司、南京生命能科技开发有限公司vs南京市知識産権局、バイエル知識産権有限责任公司:(2021)最高法知行終451号、(2021)最高法知行終702号
 【意義】南京市知的財産権局はバイエル社から特許侵害処理を申立てを受け、両社のウェブサイト出の販売の申し出ははBolar条項例外に該当せず侵害停止を裁決、裁判所もこれを維持。

(3)植物新品種事件
11.「YA 8201」トウモロコシ植物新品種権利侵害訴訟
 四川雅玉科技股份有限公司vs雲南金禾种业有限公司、雲南瑞禾种业有限公司:(2022)最高法知民終783号、(2022)最高法知民終789号
12.「楊氏金紅1号」キウイ植物新品種権利侵害訴訟
 四川依顿猕猴桃种植有限责任公司vs馬辺彝族自治県石丈空猕猴桃专业合作社:(2022)最高法知民終211号
13.「彩甜糯6号」雑種トウモロコシ親植物新品種侵害訴訟
 荆州市恒彩农业科技有限公司vs鄭州市华为种业有限公司、甘肃金盛源农业科技有限公司:(2022)最高法知民終13号

(4)営業秘密事件
14. 雑種トウモロコシ新品種親本「W68」営業秘密侵害訴訟
 河北华穗种业有限公司vs武威市搏盛种业有限责任公司:(2022)最高法知民終147号
 【意義】最高人民法院が初めて審理した繁殖材料の営業秘密侵害事件で、作物育種の過程で形成される育種中間体、近交系親などは、育種家の創造的労働の知的成果であり、技術情報と担体の両方の特徴があり、不可分であり、一般に知られず、相応の秘密保持措置を講じられていれば営業秘密として法的に保護できると判示。
15.「石油・ガス微生物探査」営業秘密侵害訴訟
 盎亿泰地质微生物技术(北京)有限公司vs英索油能源科技(北京)有限责任公司、罗某氏、李某氏、胡某氏、张某氏:(2021)最高法知民終1363号
 【意義】元従業員が新会社を設立し、元勤務先の営業秘密を侵害した事件で明らかに主観的悪意があり原告の取引会を不当に奪取したとして、被告企業のすべての利益を侵害利益と認定。
16.「有客多」ウィジェットソースコード営業秘密侵害訴訟
 深圳花儿绽放网络科技股份有限公司vs浙江盘兴数智科技股份有限公司、浙江盘石信息技术股份有限公司:(2021)最高法知民終2298号
 【意義】営業秘密のソースコードを契約により開示を受けた被告が守秘義務に違反して公開した事件で、商品価値の判断に研究開発費、当該技術秘密の実施収入、期待利益、競争上の優位性を維持するための時間などを総合的に勘案できると判示。

(5)独占事件
17.給排水公的企業による市場の支配的地位の濫用限定取引訴訟
 威海宏福置业有限公司vs威海市水务集团有限公司:(2022)最高法知民終395号
 【意義】裁判所が初めて暗黙の取引制限を認定した独占事件で、独占禁止法での取引の制限は事業者が取引相手の自由な選択を実質的に制限しているかどうかであり、限定取引行為が明示的直接的でも、暗黙的間接的でもよいことを明確化。
18.中国スーパーリーグ画像独占授権での市場の支配的地位の濫用訴訟
 体娱(北京)文化传媒股份有限公司vs中超联赛有限责任公司、上海映脉文化传播有限公司:(2021)最高法知民終1790号
 【意義】原告が入札に参加したが落札できなかったことだけで、民事権利の排他性或いは排他的民事権利自体が独占禁止法の予防と規制の対象ではないことを判示。
19. ゼネラルモーターズの最低再販価格限定に関する垂直独占契約後継訴訟
 缪某vs上汽通用汽车销售有限公司、上海逸隆汽车销售服务有限公司:(2020)最高法知民終1137号
 【意義】独占禁止法執行機関が独占の行政処罰後、消費者が独占行為による損害賠償を主張した独占禁止後継民事訴訟で、原告の立証負担がないと判断され、独占禁止での行政法執行と司法連携が現実された。
20.茂名コンクリート企業協同行為水平独占協議行政処罰不服訴訟
 茂名市电白区建科混凝土有限公司vs広東省市场监督管理局:(2022)最高法知行終29号
 【意義】水平独占合意における「その他の協同行為」には明確な合意や決定が直接現れないため、隠蔽性が強く、実務上認定に難があるが、当事者の意思連絡、情報交流と値上げ行為の一致性から水平独占合意を認定した。また、罰金の算定での「前年度売上」の「前年度」は処罰を行った時点と時間的に最も近く、事実上最も関連する違法行為が存在する年度として確定することを明確化。

参照サイト:https://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-394812.html

【中国】「最高人民法院知識産権法庭2022年度報告」の公示(3月30日)

最高人民法院は、3月30日付、「最高人民法院知識産権法庭年度報告(2022)」を公示した。本年度報告は4部15項目、35頁からなり、概要は以下の通り。

1.事件基本情況
2.知的財産権と公平な競争の法的保護の強化
3.メカニズム制度改革の継続的深化
4.専門チームの構築強化

(1)2022年の処理状況
①2022年の事件数
 2022年の技術類知的財産権と独占事件の受理6,183件(前年5,238件、+18%)、内、新規4405件。審決3,468件(前年3,460件、+0.2%)、処理率78.7%。
 なお、過去3年間の技術類知的財産権事件の受理は9,368件,審理7,625件、独占事件の受理は90件,審理55件。

②裁判官一人当たりの処理件数と審理期間
 2021年の裁判官一人当たりの担当は142.5件(前年比+16件)で処理は79.9件(前年比-3.6件)、平均審理期間165.2日、管轄事件28.6日(前年比+4日)、民事二審179日(前年比+49.6日)、行政二審215日(前年比+71.4日)と処理期間が長くなっている。

③事件内容別内訳
 民事二審は2,956件(前年2,569件)で、発明特許権侵害615件(前年576件)、実案特許権侵害968件(前年806件)、特許出願権と権利帰属紛争312件(前年213件)、植物新品種権紛争144件(前年68件)、集積回路配置設計紛争6件(前年2件)、営業秘密紛争78件(前年79件)、コンピュータソフトウェア紛争648件(前年593件)、契約紛争96件(前年153件)、独占紛争15件(前年25件)、その他の紛争は74件(前年54件)。全体的に増加している。
 行政二審877件(前年1,290件)は不服再審で、特許出願241件(前年457件)、実案特許出願27件(前年36件)、意匠特許出願0件(前年3件)、発明特許権無効234件(前年283件)、実案特許権無効207件(前年234件)、意匠特許権無効84件(前年102件)、植物新品種紛争3件(前年1件)、集積回路配置設計紛争2件(前年0件)、独占行政紛争24件(前年2件)、行政処罰などその他の行政事件65件(前年172件)を処理したが、いずれも減少しており前年比-32%である。なお、独占行政紛争は大きく伸びた。

④審理結果
 審決3,468件(前年3,460件)での原審維持2,040件(前年2,272件)、維持率58.8%(前年65.7%)、内、民亊は41.3%、行政は87.1%。民事調停が268件(前年198件)と増加している。却下再審・改審468件、その他66件。

⑤外国、香港台湾澳門の関与事件
 受理457件(前年437件)で民事274件(前年176件)、行政183件(前年261件)、対前年比+32.9%。

(2)事件の全体的特徴
 ① 権利侵害民事事件は4年連続増加。発明と実案特許侵害が全体の53.5%を占め、前年比+14.5%、営業秘密侵害事件が73件と前年比+14.5%増。
 ② 行政事件が減少し、特に発明特許出願不服再審が-47.3%、同無効行政不服再審-17.3%とそれぞれ減少した。
 ③ 戦略的新興産業分野の事件が全体の30.4%と相変わらず多く、次世代情報技術、生物医薬、ハイエンド装備製造、標準必須特許、医薬品リンケージなどである。

参照サイト:https://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-394802.html
英語版

【中国】「最高人民法院知的財産権法廷裁判要旨(2019)」の公示(4月16日)

最高人民法院知識産権法廷は、4月16日付、「最高人民法院知的財産権法廷裁判要旨(2019)」を公示し2019年度の技術類知的財産権裁判の特徴を要約するとともに、2019年に結審した事件の中から36つの典型的な事件を選出し、40件の規則を示し、技術類知的財産権分野での新しいタイプ、難解、複雑な事件を指摘している。以下、概要でご紹介する。

2019年技術類知的財産権裁判の主な特徴:
1.特許民事事件:クレーム解釈が主な課題で、従来技術、先使用権及び合法的出所による抗弁が最も一般的な抗弁事由である。
2.特許行政事件;進歩性判断が主な課題、司法の行政に対する監督機能をさらに強化する。
3.植物新品種事:法律問題がますます多様化し、技術的事実の究明と権利侵害の認定の難しい事件が増加している。
4.営業秘密事件:技術秘密の非公開性と権利侵害の隠蔽性が審理の難度を上げている。
5.コンピュータソフトウェア事件:契約約定の不明確と技術的事実の究明に難度がある。
6.技術契約:違約事実の審理が要点になっている。
7.管轄異議などの手続性事件の増加や多様化が顕著である。

(1)特許民事事件
1.機能的特徴の認定 【(2019)最高法知民终2号】
2.主題名称に記載されている効果、機能の請求項に対する実質的限定作用 【(2019)最高法知民终657号】
3.複数主体による方法特許実施の侵害判定 【(2019)最高法知民终147号】
4.従来技術による抗弁の認定における発明のポイントの検討 【(2019)最高法知民终89号】
5.先使用権による抗弁における「主要技術図面」の認定
6.販売者の合法的な出所による抗弁の審査 【(2019)最高法知民终118号】
7.販売者の合法的な出所抗弁成立時は権利者が合理的な支出を負担 【(2019)最高法知民终25号】
8.被疑侵害者が正当な理由なく侵害帳簿資料の提供を拒否した場合の損害賠償の算定
9.特許侵害行政投訴は侵害警告の範囲と条件を構成 【(2019)最高法知民终5号】
10.仮差止と部分的判決の処理関係
11.特許権侵害事件の審理期間中に請求項が無効と宣告された後の手続き処理 【(2019)最高法知民终161号】
12.特許権侵害事件の審理期間中に請求項の一部が無効とされた後の処理 【(2019)最高法知民终350号】
13.特許無効宣告行政手続中に自発的に放棄した請求項の特許侵害訴訟に及ぼす影響 【(2019)最高法知民终145号】
14.再審査手続の従来技術による抗弁での新たな証拠の処理【(2019)最高法知民申1号】

(2)特許行政事件
15.新規性判断における単独対比の原則 【(2019)最高法知行终53号】
16.進歩性と明細書での十分な開示などの法的要件の関係 【(2019)最高法知行终127号】
17.進歩性判断における発明が実際に解決する技術課題の確定 【(2019)最高法知行终32号】
18.進歩性判断における技術的示唆の認定 
19.進歩性判断における生物材料の保存の考察 【(2019)最高法知行终16号】
20.研究成果の科学的価値と進歩性断の関係 【(2019)最高法知行终129号】
21.実物の公開による従来技術の認定 【(2019)最高法知行终1号】
22.特許無効宣言手続きにおける請求項の具体的な補正方法の要件 【(2019)最高法知行终19号】
23.請求項の補正が原特許の保護範囲を拡大するか否かの基準 
24.国家知識産権局による新たな理由或いは証拠に基づく拒絶査定の条件と手続き 【(2019)最高法知行终5号】
25.無効取消手続きにおける全面審査の原則 【(2019)最高法知行终124号】

(3)植物新品種事件
26.品種審査と植物新品種権付与の関係 【(2019)最高法知民终585号】
27.繁殖材料の認定 【(2019)最高法知民终14号】
28.収穫材料と繁殖材料の属性を兼ね備えた植物素材の販売行為と植物新品種権侵害判定
29.植物新品種権の独占的実施許諾の認定 【2019)最高法知民终130号】

(4)営業技術秘密事件
30.営業秘密に関わる民刑事交差事件の処理 【(2019)最高法知民终333号】
31.技術秘密の侵害と特許権主張の合併審理 【(2019)最高法知民终672号】

(5)コンピュータソフトウェア事件
32.コンピュータソフトウェア開発契約書での開発標準の認定 【(2019)最高法知民终694号】
33.オープンソース協議の適用範囲とソフトウェア著作権侵害判定に対する影響 【(2019)最高法知民终663号】
34.コンピュータソフトウェア開発契約の開発者の履行遅延行為の認定 【(2019)最高法知民终433号】

(6)独占事件
35.カルテル紛争の仲裁性認定 【(2019)最高法知民辖终46号】

(7)管轄などの手続の事件
36.訴訟が繰り返される複数の関連案件を統括的に調整し、集中的に管轄する適用 【(2019)最高法知民终447号、470号】
37.関連のある特許権侵害非侵害確認の分散審理の調整 【(2019)最高法知民辖终1号、2号】
38.特許権譲渡条項を含む持分譲渡紛争の管轄 【(2019)最高法知民辖终158号】
39.管轄の連結点での部品の使用行為の認定 【(2019)最高法知民辖终201号】
40.管轄の連結点での情報ネットワーク侵害行為の認定 【(2019)最高法知民辖终13号】

参照サイト:http://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-225831.html

【中国】最高人民法院知識財産法廷成立後、半年の業務成績評価(8月5日)

最高人民法院知識財産権法廷は、「勇敢に改革し着実に実行する」と題した成立後半年間の業務成績を「満足」と題する成績表を発表した。以下は、その概要をご紹介するが、このような内容を見ると、日本の司法制度や運用実態が少なくとも中国を含むアジア各国と比べて、遅れていると言わざるを得ない・・・と感じるのは小職だけだろうか・・・。

2019年1月1日、最高人民法院知識財産権法廷は、イノベーション駆動型発展戦略の強化するため、知的財産権保護を重視し、知的財産権強国と世界科学技術強国を建設する戦略から設立され、特許などの技術的財産権事件の統一的裁判基準を定め、裁判の質と効率をさらに高めるとともに、司法の公信力と国際的影響力の向上を目指した。設立後半年が過ぎ、満足できる成績を出した。

●改革・革新を深化させた多くのハイライト
知識財産権法廷は出発点として、この半年間にわたり積極的に新しいメカニズム、手続きフロー、ルートを模索し、「法廷発展計画(2019-2021)」を起草し、法廷建設のための指導思想、発展原則、発展目標、主要任務、基礎保障、組織化などについて詳細に規定した。さらに、「知的財産権法廷フォーラム」を27回開催して共通認識の形成を推進し、「統一裁判標準実施細則」を制定し、同一の特許事件に同一の裁判官または合議廷に担当させ、統一した裁判基準を保障する。技術調査室の建設を探求し、技術調査官の訴訟参加の諸制度を充実させ、裁判官は事件の技術的事実問題を明らかにし、効果的な支援と援助する。一部の判決を探求し、権利侵害で事実認否が明らかでない事件の場合、権利侵害判定に対して先に部分判決を下し、当事者がこれに対して個別に控訴できるようにして、司法資源を節約する。巡回裁判制度の完備を探求し、積極的に巡回裁判を展開し、当事者の便利性を図り、訴訟のコストを節約させる。
 3月27日に知識財産権法廷の羅東川裁判長は第一件目を公開審理した。この事件は2019年2月15日に立案され、3月27日に公判が開かれ、判決が言い渡されました。4月6日に電子裁判書が発行され、審理は50日と短期間であった。最高人民法院知識財産権法廷は全国範囲における特許などの専門性の高い民事及び行政事件の第二審を統一的に審理するが、こうした事件は通常技術が複雑で、クレームの解釈や損害賠償算定の難易度が高い特徴があるため、公正かつ効率的な司法保護を提供しなければならない。
 4月25日に裁判所はカシオコンピュータ株式会社(原告)vs深圳光峰科技株式会社と影音匯(北京)科技発展有限公司の発明特許権侵害紛争の2つの事件を公開審理し、技術調査官が事実判定に協力し、事件の審理の専門性と客観性を高めた。
 7月4日に知識財産権法廷は初めて裁判中に遠隔証明方式を採用して証拠実物を検査した。特許権侵害裁判中に上海知識産権法院とビデオ接続し、上海にある実物証拠をリアルタイムで映像を伝えることで、遠隔証明方式で順調に被疑侵害品の争点となる技術的特徴の対比作業を終えることができた。革新的な手段でイノベーションを保護し、革新的な理念で業務をリードし、知識財産権法廷は実務上実践することで、イノベーション駆動型発展戦略と国家の知的財産権戦略の強化に司法的保障を提供する職責を果たした。

●裁判のインテリジェント化推進を着実に実施
知識財産権法廷は、第19回世界知的財産権日に合わせて、4月23日から25日まで「知的財産権保護集中開廷週間」活動を行い、、医療機器、ネットワークデータ取得、光学技術などに関する典型的な意義のある11件の事件を選定し公開審理したが、特許技術事件の困難な問題がバーチャルリアリティーVR技術、拡張現実技術、遠隔ビデオズーム技術などを活用したインテリジェントシステムにより解決できることで、裁判がスムーズで効率的に大幅に向上した。
 知識財産権法廷は情報化建設を高度に重視し、ビッグデータ、AIの運用を推進し、情報化による裁判の効率化を推進している。高級人民法院32院、中級人民法院43院は裁判所業務協同プラットフォームの構築を探求し、同プラットフォームを通じて上訴事件の情報を報告し、電子ファイルをアップロードし、オンライン上での電子立案を実現した。さらに利便性のあるデータインタラクティブシステムの構築を推進し、国家知識産権局データベースと専用ネットワークを確立して、同データベース資源を十分に利用し、特許権利情況、審査履歴と全世界のファミリー特許または関連特許文書などを閲覧可能とする。
 この半年間に、「知的財産権法廷イントネーション化建設三年発展計画(2019-2021)」を完成し、副裁判長の周翔を組長とするインテリジェント化建設チームが設置され、知識産権法廷の情報化建設のタイムスケジュールやロードマップが作られた。

●科学技術イノベーションの快足保護
知識財産権法廷は、この半年間、国際的知的財産権の司法保護が高く、訴訟選択優先地となるべく実現を目指してきた。そして、これまで、いくつかの調査チームを設立し、特許法改正、独占禁止、標準必須特許、5 G技術関連法律問題、植物新種などの重点分野と重点問題をめぐって調査研究を展開し、「植物新種権事件に関する裁判文書分析状況報告」「特許権利侵害事件審理期間及び特許無効循環訴訟の実証研究」などの調査研究資料を作成し、国家知識産権局、農業農村部などの部門と積極的に交流し、協力メカニズムの構築を検討し、司法と行政の知的財産権共同保護の新たな枠組みの形成を推進する研究を進めた。
 また、フランス、ルクセンブルク、ドイツでのヨーロッパの知的財産権司法と実務界との交流やAIPPI中日韓三国分科会交流会に参加するなど最高人民法院知識産権法廷の設立背景や意義などをめぐり、諸外国との交流活動を20回以上行った。

参考サイト:
http://courtapp.chinacourt.org/zixun-xiangqing-174742.html