最高人民法院院長の周強は3月7日の第14期全国人民代表大会第1回会議第2回全体会議で「最高人民法院活動報告」で、この5年間の総括及び2023年度計画を発表した。この報告内容は3月17日に公示されており、その報告における知的財産権関連の内容は以下の通り:
「2.法に基づくサービスの新たな発展構造の構築、質の高い発展の推進」において
知的財産権の司法保護を強化し、イノベーションの原動力を引き出したとし、1審の知的財産権事件は219万4000件、前年同期比221.1%増加、5 G通信、新エネルギー新材料、ハイエンド装備製造などのハイテク関連事件を審理し、重要な核心的技術及び新興産業、重点分野などの知的財産権保護に力を入れた。植物新品種権の司法解釈を公布し、「金粳818」稲、「丹霞紅」梨などの事件1585件を審理し、育種イノベーションを奨励した。海南法院は「南繁硅谷(シリコンバレー)」での司法保障を強化、陝西法院は種子ビジネス知的財産権司法保護基地、甘粛法院は種子法廷を設立し、「農業品種」の保護を開始した。また、漢方医薬の知的財産権保護を強化する意見を出し、天津、江西などの法院は司法措置を充実させ、漢方医薬の伝承・イノベーションの発展を保障した。さらに、懲罰的賠償を強化し、2022年の知的財産権侵害事件の賠償額は2018年に比べ153%増加した。このように中国の知的財産権専門裁判システムは基本的に形成された。
一方、市場での公平な競争の維持においては、独占と不正競争事件2万9000件を処理しており、医薬、電信、建材、文化消費などの分野の独占事件で独占協定、市場での支配地位の乱用行為を処罰し、市場競争の活力と消費者の合法的権益を保護した。また、営業業秘密侵害、悪意のある商標強奪など事件では信義誠実の原則と商業道徳に背く行為を処罰した。伝統ブランド、老舗、著名商標の司法保護を強化し、「五常米」、「沁州黄小米」、「雲南白薬」などの商標権、不正競争事件を審理し、名声便乗やただ乗り行為を処分した。「青山椒」などの「非合法権利行使(碰瓷式维权)」は認めず、本来の合法的事業者の保護を推進した。
「5.司法体制改革とスマート裁判所建設で重大な進展」において
140のプロジェクトで改革を実施し、司法裁判と現代科学技術の深い融合を推進し、裁判システムと裁判能力の再構築を実現したとし、最高人民法院知的財産権法廷は全国規模で特許など技術類の知的財産権と独占事件を統一的に審理し、科学技術イノベーションをよりよく保護し、奨励したこと、及び、海南自由貿易港知識産権法院の設置を報告している。
ところで、中国ではオンライン裁判モデルやインターネット裁判所の運営が確実に進んでおり、司法業務のオンライン処理はコロナ対策以後、全国の裁判所がネット上立案2996万件、開廷504万件、証拠交換819万件、異地執行593万件、インタビュー15万件を実施している。また、中国特有のインターネット裁判所(北京、杭州、広州)は新たにブロックチェーンや人工知能のよるイノベーションや規則を確立しており、例えば、ブロックチェーンの司法適用意見を制定し、司法ブロックチェーン統一プラットフォームは28億9000万件を超えるデータチェーンを固定している。
「2023年度計画」は、財産権保護、市場参入、公平な競争、社会信用などの面を充実し、知的財産権の司法保護に力を入れ、独占禁止と不正競争防止の司法を強化し、国レベルの知的財産権事件の上告審理メカニズムの健全化、デジタル経済司法政策を充実させ、より質の高い司法サービスで質の高い発展を堅持し、財産権と知的財産権をより司法的に保障し、契約履行をより効果的にし、革新的な活力をさらに引き出すとしている。