全人代は、2022年12月より検討してきた民事訴訟法の改正を終え、2023年9月1日の中国第14次全人代常務委員会第5回会議で改正案を採択し、2024年1月1日に発効することを主席令第11号で公示した。
改正内容は、国外での関連民事訴訟手続きに対する制度改善に焦点を当てており、中国の主権、安全保障、開発での利益の保護を目的としており、国境を越えた紛争での国際的な管轄権、送達、裁判の判決の執行などに、公平性、効率性、利便性の確保の課題があることに対応しようとするものである。知的財産分野では標準必須特許や国際規格に関する特許紛争が生じた場合の対応などに影響があると考える。改正は、26項目にわたり、相続、冤罪なども含まれる。
知的財産関連で注意する条項は、管轄関連で
1)現行の272条が276条となり、以下のように規定された
外国関連民事紛争により、中国の領域内に住所のない被告に対して身分関係以外の訴訟を提起し、契約締結地、契約履行地、訴訟主題物所在地、差押え可能な財産所在地、権利侵害行為地、代表機関の所在地が中国の領域内にある場合、契約締結地、契約履行地、訴訟主題物所在地、差押え可能財産所在地、権利侵害行為地、代表機関住所地の人民法院が管轄する。
前項の規定のほか、外国関連民事紛争が中国と適切な関連にある場合、人民法院が管轄することができる。
2)新設
第277条 外国関連民事紛争の当事者が書面協議により人民法院の管轄を選択した場合、人民法院は管轄することができる。
第278条 当事者が管轄異議を提出せず、かつ応訴答弁或いは反訴を提出した場合、人民法院に管轄権があると見做す。
3)現行の273条が279条となり、詳細に規定が追加されて、民事事件で人民法院に専属管轄権がある対象として、第2号に以下のように規定された。
(2) 中国領域内で付与された知的財産権の有効性の審査に関連して提起された紛争の訴訟。
4)新設
第280条 当事者間の同一の紛争は、一方当事者が外国の裁判所に起訴、他方当事者が人民法院に起訴、或いは一方当事者が外国裁判所に起訴するとともに、人民法院に起訴し、人民法院が本法に基づき管轄権を有する場合、受理することができる。当事者が排他的管轄協議を締結し外国裁判所の管轄を選択した場合で、本法の専属管轄に対する規定に違反せず、中国の主権、安全または社会公共利益に関連しない場合、人民法院は受理しないと裁定することができる。すでに受理されているものは、起訴棄却の裁定を下す。
第281条 人民法院が前条の規定に基づく事件を受理後、当事者が外国の裁判所が人民法院より先に受理したことを理由に、書面で人民法院に訴訟の中止を申立てた場合、人民法院は訴訟の中止を裁定することができる。但し、以下のいずれかの情況が存在する場合を除く:
(1)当事者が協議で人民法院の管轄を選択、或いは紛争は人民法院の専属管轄に属する;
(2)人民法院による審理が明らかに便利である。
外国の裁判所が必要な措置を講じて事件を審理していない、或いは合理的な期限内に結審していない場合、当事者の書面による申立に基づき、人民法院は訴訟を回復しなければならない。
外国の裁判所が下した法的効力が発生した判決、裁定は、すでに人民法院により全部或いは一部が承認され、当事者がすでに承認された部分に対して、人民法院に起訴した場合、受理しない裁定を下す、すでに受理されているものは、起訴棄却の裁定を下す。
なお、送達と執行については、283条から305条に規定されているが、日中間に執行にかかる条約がないため、実務上運用ができない。送達については、ショートメッセージをう含む電子的送達を認める規定が追加されているが、送達できない場合が生じる恐れがあることに注意が必要である。
参照サイト:http://www.npc.gov.cn/npc/c2/c30834/202309/t20230901_431419.html