国家知識産権局は、12月11日付で11月19日公示した各地方政府の知識産権局に対する「特許権侵害紛争行政裁決模範確立業務通知(关于开展专利侵权纠纷行政裁决示范建设工作的通知)」 のポイントを押さえた解釈を公示したので、仮訳で紹介する。地方政府の知識産権局の特許権侵害紛争行政裁決については12月27日にガイドラインである「 特許権侵害紛争行政裁決指南 」が公示されており、増加の続いている特許権侵害紛争に対して、今後は地方の知識産権局が積極的に地方条例を作るなどして特許権侵害紛争に取り組むことが予想される。
以下は本解釈の部分仮訳である。
(1)制度の基礎を堅固にする。
地方政府の立法部門が関連する地方条例に特許権侵害紛争の行政裁決に関連する手続きと実体的条項を加えることを奨励、支持する。関連する地方の法規を起草、改訂するときに特許権侵害紛争に関わる場合は、「処理する」、「決定を下す」などの表現を「行政裁決を下す」に調整しなければならない。
(2)受理ルートをスムーズにする。
法律法規と法定手続きに厳格に従い特許侵害紛争行政裁決の職責を履行する。担当組織は特許権侵害紛争の行政裁決業務の根拠、法定職責及び案件の受理範囲を積極的に公開し、事件の処理手順と進行を公開する。人民裁判所、人民調停委員会及び専門調停組織の設立を推進するとともに行政裁決告知制度を実施し、弁護士と末端の法律サービス従事者を指導し、積極的に行政裁決ルートを知らせる。「誰が法を執行するか」の法律普及責任制を真剣に実施し、様々な方法で特許権侵害紛争行政裁決の優位性、業務効果と典型的な判例を宣伝し、関連権利者が行政裁決を通じて特許権侵害紛争を解決するよう奨励する。
(3)業務手法を革新する。
特許権侵害紛争事件の立案登録制度を推進し、立案手続きを簡略化する。事件送達情報ネット公告制度を確立し、事件の送達の便宜を図る。立案時に請求人が意匠や実用新案特許の事件で特許権評価報告書を提出した場合、当事者の陳述と尋問を経て、特許権侵害紛争事件の書面審理メカニズムを進める。審理前に十分な準備ができ、証拠収集が全面的で、審理の調査で明確な事件である場合、口頭審理後裁決を下すことを奨励する。専門技術者として招聘された技術調査員は、事件処理に参加し、技術の事実の究明に協力し、鑑定意見を提供する。特許行政裁決と特許権確認手続きの連動メカニズムを確立し、係争中の特許が無効宣告請求を受けた場合、権利侵害紛争受理地の省(区、市)の知識産権局は、国家知識産権局知識産権保護司と専利局復審と無効審理部と共同で審理を行うことができる。
(4)連携調整を成し遂げる。
地方政府の知識産権局が特許権侵害紛争を裁決する場合はまず調停するとともに、行政指導などの方法を十分に運用し、事実調査結果、専門鑑定或いは法律意見を提供することによって、当事者の紛争解決の協議を推進しなければならない。当事者が調停を経て合意に達した場合、地方政府の知識産権局は速やかに調停合意書を作成するとともに、当事者が法に基づき司法による確認を請求するよう誘導しなければならない。調停による合意が不調の場合、地方政府の知識産権局は速やかに裁決を下さなければならない。争いのない事実記載制度を確立し、調停過程に確認された争いのない事実については、行政裁決過程において当事者は改めて立証する必要はない。但し、国家の利益、公共の利益及び他人の合法的権益に関わる場合、或いは相反する証拠があり元の確認事実を覆すのに十分である場合、当事者に改めて立証を求めなければならない。
(5)作業メカニズムを健全化する。
省クラスの知的財産権局と案件量の比較的多い市クラスの知識産権局は、具体的に業務を担当する専門部署或いは専門担当者を明確にする必要があり、行政判断業務と社会の両ニーズを満足することを確保する。特許権侵害紛争行政裁決事件の各クラスの行政部門における監督、移管、移送などの手順を完成させ、職責の明確化、権限の平等、効率的な活動体制メカニズムの構築を加速させる。事件等級指導システムを確立し、省或いは市をまたがり全国的に影響のある事件は国家知識産権局が指導或いは監督し、市クラスをまたがる事件は省(区、市)の知識産権局が指導または監督する。上級機関の委託或いは地方法規の授権方法を通じ、法に基づき条件のある県クラスの知識産権局が特許権侵害紛争行政裁決業務を展開することを推進する。省(区、市)の知識産権局は管轄区内の法律執行処理基幹を法により集中組織し、管轄区内の重大、難事件を速やかに処理することができる。
(6)能力確立を強化する。
各地方政府の知識産権局は特許権侵害紛争行政裁決チームの確立を強化し、強力なスタッフを配置し、国家統一法律職業資格を取得した人員を優先的に配置し、行政裁決に従事させる。集中教育、業務指導、判例講座、評価の審査などを通じて、行政裁決担当者の専門的能力と業務水準を向上させる。行政裁決チームの専門化、職業化発展モデルを積極的に模索し、事件の解決に役立つ特許権侵害紛争行政裁決専門チームを育成する。特許権侵害紛争検証鑑定技術サポートシステムの建設活動を積極的に展開し、地方での知的財産権侵害判定専門家バンクの確立を推進し、法律顧問と公務弁護士の役割を発揮し、さらに行政裁決の処理能力及び事件の処理の専門性を向上させる。
知的財産権侵害紛争行政裁決業務を展開することは、党中央、国務院の知的財産権保護の全面的強化に関する重要な取組みを深く貫徹することになり、中国の「知的財産権保護強化に関する意見」の重要な実施を推進することでもあり、特許権侵害紛争行政裁決モデルの建設を展開することは、知的財産権侵害紛争行政裁決業務を推進する具体的な措置である。国家知識産権局は引き続き党中央、国務院の知的財産権保護強化に関する重要な配置と要求を真剣に貫徹し、関連部門と共同し、地方政府の知的財産権管理部門を指導し、特許侵害紛争行政裁決モデル建設業務を真剣に組織し、より大きな力で知的財産権保護を強化し、事業者環境を最適化する。
参照サイト:
12月11日 https://www.cnipa.gov.cn/art/2019/12/11/art_2432_170429.html
11月19日 https://www.cnipa.gov.cn/art/2019/11/19/art_75_132022.html