【ミャンマー】特許法施行(5月31日)

ミャンマー政府は、2024年5月31日に2019年特許法を施行したことを、国家行政評議会(SAC)の6月1日の通知第106/2024号で発表した。そして、特許規則が6月4日に公示された(ミャンマー語のため内容不明)ので、今後は、出願受理開始を待つことになる。

特許の定義 不明確(技術分野における困難を解決することできる物
または製法の創作)
非保護対象 医薬品とその製造方法は2033年1月1日まで保護されない
優先権主張 基礎出願から1年以内
出願言語  ミャンマー語か英語
公開制度  出願日から18か月後、或いは早期公開請求に基づき公開
異議申立  付与前異議申立可能(公開日から90日以内)
審査請求  出願日から36か月以内
審査対象  新規性、進歩性、産業上利用可能性、不特許対象
      他国での審査経過を提出可、対応は発行日から60日間
権利期間  出願日から20年間
無効取消  登録性など(77条)

小特許制度 改良した新規な構造の物の外観若しくは部品、または
(小発明) 物の部分を創造した技術創作、ビジネス方法・化学品除く
異議申立  付与前異議申立可能(公開日から60日以内)
審査    異議なければ登録査定
権利期間  出願日から10年間

特許法の和訳は、JICA/Jetroサイトで見ることができる。
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/mm/ip/pdf/laws_201903.pdf
特許法(英語)・特許規則(ミャンマー語) https://ipd.gov.mm/patent/laws-rules-and-direction-patent/laws-rules-and-direction-patent

【マレーシア】特許法及び規則2022年改正施行(3月18日)

マレーシア知的財産庁(MyIPO)は、3月17日付、マレーシア特許法及び規則2022年改正を2022年3月18日に施行を公示した。主な改正内容は以下の通り、なお、改正法の一部は後日の施行になる点に注意が必要である。

1.オフィシャルフィーの値上げ
​ 全てのオフィシャルフィー(PartI,II,III,PCT)が値上げされた。特に、超過クレーム料金の段階的改定が多い。
2.電子出願制度
 改正法では電子出願は準備が完了するまで保留とされている。
3.塩基配列リスト
 特許出願で塩基配列を含む場合、出願明細書に含まれるものとし出願とともに提出しなければならない。
​4.優先権主張の回復
 出願人は、優先期間内に特許出願を提出しなかったことが意図的でない場合、所定の料金を支払い、優先権主張の回復を要求できる。
 国内特許出願の場合、優先権主張期間満了日から2か月以内に回復請求できる。
 PCT出願の場合、優先日から30か月の満了日から1か月以内、または早期審査請求日から1か月以内に請求できる。
5.公開と早期公開
 PCT出願を除き、最先の出願日起算18か月で官報に掲載される。なお、印刷発行はされず、電子的閲覧が可能である。早期公開をオフィシャルフィーの支払とともに請求することができる。
6. 情報提供(Third Party Observations)
 第三者は特定な特許出願に対し、新規性と進歩性違反を理由に、出願公開より3か月以内(PCT出願は移行出願後3か月以内)に情報提供をすることができる。
7.実体審査請求
 実体審査請求時の対応国の審査状況の情報提供はオプションの対応になる。
 修正実体審査請求した場合、選択国での最終処分ある場合に、変更はできない。
 審査延期申請(料金支払要)は、修正実体審査請求のみ可能となり、選択国の審査未了の場合となる。
8.実体審査応答期限
  審査意見に対応数する期限が2か月から3か月に変更。
9.分割出願(26B条)
 分割出願のための延期申請はできなくなった。
 実体審査の第1回目の審査意見で認可が明確である場合、出願人は認可を遅らせないように、審査意見の発行日から3か月以内に分割出願を検討することになる。
10.年金納付
 年金納付期間を最大5年間分一括納付ができる。
11.失効特許の回復
 失効した特許の回復手続き期限を2年から12か月に短縮した。
12.マレーシア国外で最初に出願するための要件
 マレーシア国外で最初に出願承認請求には、所定の願書での請求と料金の支払いを条件とする。
 本件については、居住者の定義が以下の通り明確にされた;
 a)マレーシア市民とは、マレーシアの居住者、
 b)マレーシアの非市民とは
   i)マレーシアに永住権を取得し、通常マレーシアに居住している;
   ii)マレーシアに入国および滞在するための有効な証明書を所持し、マレーシアに居住している;
   iii)マレーシアの法律に基づき成立、設立、または登録された法人;
   iv)マレーシアの法律に基づき設立または登録された法人化されていない団体。
13.国家管轄当局への情報開示義務
 2017年生物資源および利益共有法[法律795]へのアクセスの下で設立された国家管轄当局または関連する管轄当局に、特許登録局がチェックポイントとしての機能する目的で、関連特許出願の公開前に情報の開示を可能とする。
14.担保権
 所定申請書と料金の支払いをすることで、担保権登記をすることができる。
15.強制実施権
​ TRIPS協定31条の2に従い、マレーシアでの医薬品の生産と当該医薬品の輸出を可能とする。

​今後の施行となる規定
1)微生物の寄託(26c条)
2)包袋閲覧 
3)登録後異議申立

関連サイト:
特許法2022年改正法
 https://www.myipo.gov.my/wp-content/uploads/2022/03/02-PATENTS-AMENDMENT-ACT-2022.pdf
特許規則2022年改正規則
 https://www.myipo.gov.my/wp-content/uploads/2022/03/PERATURAN-PERATURAN-PATEN-PINDAAN-2022.pdf
改正法実施政令
 https://www.myipo.gov.my/wp-content/uploads/2022/03/DIRECTIVE-OF-PATENTS-ACT-1983-AND-PATENTS-REGULATIONS-1981-17.03.2022-1.pdf

【韓国】特許法などの一部改正施行(8月17日)

韓国政府は特許法、実用新案法、デザイン保護法、商標法などの一部を改正する法律を2021年8月17日に公布し、公布後3ヶ月(一部は6ヶ月後)後から施行される。

特に、出願実務で影響があるのは、特許法第84条の審査請求料の返還の範囲が拡大されたことで、従来、審査前は全額返還、審査請求後は、
①専門機関による先行技術調査業務に対する結果通知があったとき、
②同一人により同じ発明が同じ日に2件以上の特許出願がある場合に、当該特許出願人に期間を定めて協議の結果を申告するよう命じる協議結果申告命令があったとき、
③拒絶理由通知があったとき、
は、特許出願を取下・放棄しても既に支払った審査請求料の返還はされなかった。
改正特許法では、
①は、先行技術調査業務の結果通知があった後に特許出願を取消・放棄した場合に、審査請求料の全額返還(約45万ウォン,約4.3万円)
②は、「協議結果申告命令があった後、申告期間が満了する前」に
③は、「拒絶理由通知後、意見書提出期間の満了前」に
特許出願を取消・放棄した場合、審査請求料の1/3の返還 (約15万ウォン,約1.4万円)
に改正された。なお、不法な手数料の減免を受けた場合は倍額の徴収を受ける。11月18日より施行。

その他の改正は以下の通り:
① 特許審判段階での調停制度の導入
 審判を終結することのできる調整制度の導入により、審判中に審判長が調停を必要と認める場合、当事者の同意を条件に産業財産権紛争調停委員会に付託できる。調整委員会に回付された審判事件は、回付された時から3か月以内に両当事者間の合意により迅速に終結することができる。
② 民事訴訟法(2002年法)の適時提出制度の準用
 特許審判の当事者が主導的に主張や証拠を適切な時期に提出せず、審判長が要求する時期より遅れた場合、故意或いは重過失で遅延した主張や証拠の提出は却下されるようになった。
③ 特許審判院での専門人材の配置
 最先端技術に対する専門性と信頼性を強化するために、特許審判院に関連専門家を配置し審判事件の支援とすることができるようになった。
④職権補正での誤りは無効措置
 審査官の誤った職権補正は初めからなかったものとなる。

以上

【韓国】知財法改正公布(10月20日)

韓国知的財産庁(KIPO)は、特許法、商標法、デザイン保護法及び不正競争防止法の改正が公布された。

特許法は、2020年10月20日付、第225条第2項の改正の公布及び施行が同日にされた。
 本改正前の特許法は、特許権または専用実施権の侵害罪に対して7年以下の懲役または1億ウォン以下の罰金に処するものの、被害者の告訴がなければ公訴を提起することができない「親告罪」として規定しており、実効性のある手段になっていないとの指摘が提示されていた。これに対し改正特許法では、親告罪として規定されていた特許権または専用実施権の侵害罪を被害者が起訴を望まないという意思を確実に表明する場合にのみ起訴をしない「反意思不罰罪」(被害者告訴不要)に変更することによって特許権の保護を一層強化した。
 なお、韓国の刑事訴訟法では、刑事告訴の期間が「親告罪に対しては、犯人を知った日から6カ月を経過すれば告訴することができない」と制限されているが、今回の特許法改正により特許侵害罪の場合、この告訴期間(6カ月)の制限なしに、捜査機関が職権捜査して処罰可能となった。

商標法とデザイン保護法及び不正競争防止法では、2020年10月20日付、「アイディア侵害禁止規定」に3倍賠償の規定を追加する改正、法定損害賠償額の増額が公布された。
 2019年7月9日に特許法改正と不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律(不正競争防止法という)の営業秘密侵害行為に3倍賠償制度は導入施行されているが、今回商標法とデザイン保護法及び不正競争防止法の「アイディア侵害禁止規定」においてもその規定が導入された。商標法とデザイン保護法は公布と同日に施行された。不正競争防止法での施行は2021年4月21日の予定である。
 3倍賠償制度に関する規定はいずれの法律でもほぼ同じ内容であり、賠償金額の算定時に考慮しなければならない8項目について次の通り規定している。
①侵害者の優越的地位の有無;
 [商標法のみ「侵害行為により該当商標の識別力または名声が損傷された程度」と規定している]
②故意または損害発生のおそれを認識した程度;
③侵害行為により特許権者及び専用実施権者が受けた被害の規模;
④侵害行為により侵害者が得た経済的利益;
⑤侵害行為の及ぶ期間・回数など;
⑥侵害行為による罰金;
⑦侵害者の財産の状態;
⑧侵害者による被害救済努力の程度。
 商標法とデザイン保護法の法定賠償額は次の通り改正され、同日施行された。
①法定損害賠償金を5千万ウォンから1億ウォンに引上げ;
②故意侵害の場合における法定損害賠償金を3億ウォンに引上げ;
③使用料相当額の基準を“通常”受取ることができる金額から“合理的”水準に変更。

情報提供:Kim&Chang

【中国】特許法、著作権法など改正の審議開始(6月20日)

全国人民代表大会のサイトには、6月20日付、2020年度立法業務計画について公示されている。知的財産権関連では、特許法(専利法)と著作権法がその対象になっている。そのほか、電子データ保護法、行政処罰法、個人情報保護法など多数の法令改正が挙げられている。
 他の情報ソースによると、6月28日から30日かけて開催される全人代常務委員会第20回会議で特許法改正第2回審議稿の審理が行われる予定で、意匠(国際意匠制度加盟、部分意匠の保護)、特許実施運用(公然許諾)の促進、特許開放規定及び特許紛争解決メカニズム関連が含まれる。
参照サイト:http://www.npc.gov.cn/npc/c30834/202006/b46fd4cbdbbb4b8faa9487da9e76e5f6.shtml

6月29日追記、28日の会議では、
部分意匠の導入が議論され、諸外国に準じた保護を入れる方向になった模様。いずれにしても、国際意匠制度との調整をすることになろう。
特許の奨励について、発明者や創作者に対する奨励と特許の開放に関し、公然使用許諾による収益分配或いは同等の通常実施権の付与など何らかの規定がされる模様。
医薬品の期間延長も導入になる模様。
法定賠償額では、特許と実案・意匠の価値の違いから、同様の規定が適用されることに異論が生じているようで、最低額の規定が削除されるかもしれない。
以上
参照サイト:http://www.cnipa.gov.cn/zscqgz/1149817.htm

【カナダ】改正特許法&改正規則の施行(2019年10月30日)

カナダ知的財産庁(CIPO)は、7月10日付官報で、特許法条約に加盟するために特許法(Patent Act (C-43 and C-59))及び特許規則(Patent Rules 2018)の改正を公示したので、下記の通り、規則改正に基づく手続きの変更などの概要をご案内する。

(1)PCT移行出願
1.1 意図しない移行期限の延期>最先の出願日から42か月まで延長可
 国際出願日が2019年10月30日以降のPCT出願で、カナダ移行出願が30か月を超える場合、延期申請と回復費用200カナダドルを支払うことで42か月まで移行を延長できる。 国際出願日が2019年10月30日以前である場合は回復費用を支払うことになる。
1.2 優先権の回復
 国際出願日が2019年10月30日以降のPCT出願で、国際段階で優先権が回復された場合、カナダ国内段階でも優先権の回復が可能となる。国際段階で優先権が回復されなかった場合、カナダ国内移行後1か月以内に「意図しない」を理由に回復措置がなされた場合、優先権を回復することができる。
1.3 優先権証明書の提出
 国際出願日が2019年10月30日以降のPCT出願で、優先権書類の証明書が国際段階で提出されなかった場合、優先権証明書をカナダ知的財産庁に提出するか、或いは、DASデジタルアクセスサービスで利用可能とされていなければならない。
1.4 出願費用支払いと翻訳文の提出
 出願費用と英語或いはフランス語の翻訳文の提出期限に変更はない。

(2)パリ条約移行或いは直接出願
2.1 出願日確保
 2019年10月30日以降の出願では、外国語での出願日確保が可能となる。英語或いはフランス語の翻訳文の提出は、カナダ知的財産庁の通知日から2か月以内(延長不可)となり、通知日から3か月以内に出願費用と遅延手数料(150カナダドル)を支払わない場合、放棄したとみなされる。なお、2019年10月30日以降でカナダ知的財産庁が閉庁する土日、祝祭日でも電子出願で出願日を確保することができる。
2.2 2か月の優先権回復期間の導入
 出願日が2019年10月30日以降の特許出願について、「意図しない」を理由に優先権の回復措置が可能となり、最先の出願日から14か月以内に限り優先権主張出願が可能となる。なお、カナダ特許日から2か月以内に優先権回復請求を行わなければならない。
2.3 優先権証明書の提出
 出願日が2019年10月30日以降の特許出願について、最先の出願日から16か月以内に優先権証明書をカナダ知的財産庁に提出するか、或いは、DASデジタルアクセスサービスで利用可能とされなければならない。提出されていない場合、、カナダ知的財産庁の通知日から2か月以内に対応しなければならない。この期限までに対応していない場合、優先権主張を取下げたものと見做される。
2.4 先の見做し出願の引用
 出願日が2019年10月30日以降の特許出願について、出願人は出願日確保のための明細書提出ではなく、先の出願を参照することができる。引用期限は出願から2か月以内(延長不可)である。以前に提出した引用出願から2か月以内に、先に提出した出願のコピーを提出するか、WIPOデジタルアクセスサービスから入手できるようにする必要がある。
2.5 出願の自発追加補正
 出願日が2019年10月30日以降の特許出願について、明細書の欠落や図面の追加を2か月以内(延長不可)に行うことができる。

(3)審査
3.1 審査請求期限を4年に短縮
 国際出願日或いは出願日が2019年10月30日以降の特許出願について、審査請求期限を5年から4年に短縮する。
3.2 分割出願の審査請求期限も3か月に短縮
 分割出願の親出願日が2019年10月30日以前で、分割出願日が2019年10月30日以降の分割特許出願について、親出願日から5年以内または分割出願日から3か月以内に審査請求及び手数料を支払わなければならない。
 分割出願の親出願日が2019年10月30日以降の分割特許出願について、親出願日から4年以内または分割出願日から3か月以内に審査請求及び手数料を支払わなければならない。
3.3 審査請求期限徒過による放棄
 審査請求期限が2019年10月30日以降の特許出願について、審査請求されず手数料も納付されない場合、カナダ知的財産庁は遅延通知を発行する。当該遅延通知日から2か月以内に審査請求、手数料、遅延手数料が納付されない場合、出願は放棄となる。
3.4 審査応答期限を4か月に短縮
 2019年10月30日以降、オフィスアクションの応答期限を6か月から4か月に短縮する。なお、最長審査応答期限の6か月は変更ないため、残存期間の延長は可能である。

(4)認可時の応答期限を4か月に短縮
 2019年10月30日以降、認可通知の応答期限を6か月から4か月に短縮する。延長はできない。なお、認可時手数料の超過ページ数から塩基配列リストを対象から除外する。
 認可時の明らかなエラーなどを訂正するための審査再開請求が簡素化され、応答期限日前に認可通知の取下げ請求と手数料400カナダドルを支払うことで、追加の審査を求めることができる。なお、従来通り、登録料を納付せずに放棄後に回復措置をした場合の審査再開は明らかなミスの訂正のみに限られる。

(5)年金
 2019年10月30日以降、何人も維持年金、登録年金のいずれも納付することができる。
 年金が納付されない場合、原納付期限から6か月以内またはカナダ知的財産庁の通知日から2か月以内に当該年金額と遅延手数料(150カナダドル)を支払わない場合、放棄したとみなされる。

(6)その他の改正
6.1 登録後の訂正
 従来の特許法第8条に基づく事務的ミスの訂正手続きは、2019年10月30日以降廃止され、以下のような特定な事務的ミスに対する限定的な手続きのみになる。
6.1.1 優先権の訂正
 出願日が2019年10月30日以降であるかどうか関わらず、優先件主張日の訂正は正しい優先日から16か月以内であれば訂正できる。優先権主張のその他の項目である国名、官庁名、番号の訂正は認可通知に対する登録料納付前までに訂正できる。
6.1.2 出願人や発明者の訂正
 PCT移行出願は、移行出願日から3か月以内或いは譲渡手続き前。PCT移行出願以外は、公報発効前或いは譲渡手続き前までに訂正できる。
6.1.3 特許権者による訂正
 特許権者或いは発明者名の誤記及び明細書或いは図面の誤記(当業者に自明で、修正以外の意図がない内容)の訂正は登録日から12か月以内に手数料200カナダドルを支払うことで訂正できる
6.1.4 カナダ知的財産庁のミスの訂正
 特許権者、発明者名などの誤記及び明細書或いは図面の誤記(庁内書類から明らかで、修正以外の意図がない内容)の訂正は登録日から12か月以内に手数料なく訂正できる。
6.2 Due Careについて
 今回の改正でDue Care(善良な注意義務) が導入され、審査請求期限徒過や特許年金納付期限徒過による回復を請求する出願人或いは特許権者は善良な管理者としての注意義務に違反していないことを示す義務が求められている。つまり、申請時に十分な管理義務を果していたにもかかわらず回復措置をしなければならなくなった事情を記載した供述書を提出しなければならない。
6.3 Unintentionalについて
 Unintentional(意図しない)懈怠の回復が導入され、PCT移行出願や優先権主張の回復に適用される。これについての明確な条件は規定されていない。
6.4 第三者の中用権(新設)
 出願人或いは特許権者が審査請求や特許年金の納付を逸し、回復措置をした場合、善意の第三者はその事由を基に中用権を主張することができることが明確化された。
6.5 譲渡手続き
 旧法化で要求された譲渡契約書の提出は原則不要になり、2019年10月30日以降は出願人或いは特許権者が譲渡手続きを行う場合は、申請書と手数料100カナダドルを支払うことで手続きが可能となる。一方、出願人或いは特許権者以外が譲渡手続きを行う場合は、譲渡契約書或いは譲渡を証明する書類を提出しなければならない。

参考サイト:
https://www.canada.ca/en/intellectual-property-office/news/2019/07/canada-is-modernizing-its-patent-regime-to-implement-the-patent-law-treaty-and-the-new-patent-rules-will-come-into-force-on-october-30-2019.html
特許規則
http://www.gazette.gc.ca/rp-pr/p2/2019/2019-07-10/html/sor-dors251-eng.html
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【韓国】特許法及び不正当競争防止法の改正・施行(2019年7月9日)

2019年1月8日付で公布された、懲罰的損害賠償などを追加規定した改正特許法及び改正不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律(不正競争防止法)が2019年7月9日に施行される。

1.懲罰的損害賠償制度の導入
改正特許法及び改正不正競争防止法では、故意の侵害行為と認められる場合に、認定損害額の3倍を超えない範囲で法院が懲罰的損害賠償額を認定できる制度を導入した。法院が損害賠償額を決定する時の考慮事項は下記の通りで、特許と実用新案が対象;
(1)侵害行為をした者の優越的地位、
(2)故意または損害の発生のおそれを認識した程度、
(3)侵害行為により特許権者が被った被害規模、
(4)侵害行為により侵害者が得た経済的利益、
(5)侵害行為の期間・回数など、
(6)侵害行為による罰金、
(7)侵害者の財産状態、
(8)侵害者の被害救済努力の程度。
(特許法第128条第8項及び第9項の新設、不正競争防止法第14条の2第6項及び第7項の新設)

2.実施料賠償規定の改正
改正特許法では、従前特許法の「通常」という表現により損害額が実損より低く算定されて不十分な補償となる問題点に鑑み、「合理的」と変更し、特許侵害などの個別・具体的な状況を考慮して損害額を算定するようにした。(特許法第65条第2項及び第128条第5項の改正)

3.具体的行為態様の提示義務の新設
改正特許法は、特許権侵害訴訟において、特許権者が主張する侵害行為の具体的な行為態様を否認する当事者が自らの具体的な行為態様を提示するように義務付ける立証の転換を規定し、当該当事者が正当な理由なく自らの行為態様を提示しない場合、法院が特許権者の主張する行為態様が真実なものとして認定することができるように規定した。(特許法第126条の2の新設)

4.営業秘密要件の緩和
改正不正競争防止法は、秘密管理性の規定から「合理的な努力」の表現を削除し、合理的な努力がなくとも秘密として維持管理されているのであれば営業秘密と認定するように要件の立証義務のレベルを緩和した。これまで2015年不正競争防止法の改正により「相当な努力によって秘密として維持」の表現が「合理的な努力によって秘密として維持」に緩和された経緯があったが、今回は当該表現を削除し、要件をさらに緩和した。(不正競争防止法第2条第2号の改正)

5.営業秘密侵害行為などに対する罰則の強化
改正不正競争防止法の規定する処罰対象行為は、
(1)不正な利益を得るか営業秘密保有者に損害を与える目的で、営業秘密を指定された場所以外に無断で流出させる行為、
(2)不正な利益を得るか営業秘密保有者に損害を与える目的で、営業秘密保有者から営業秘密の削除または返還の要求を受けたにもかかわらず、これを継続して保有する行為、
(3)切取・欺瞞・脅迫、その他の不正な手段で営業秘密を取得する行為、
(4)営業秘密侵害行為の事実を知りながら、当該営業秘密を取得または使用する行為。
(不正競争防止法第18条第1項及び第2項の改正)

6.罰則を大幅に加重
国外使用目的:15年(元10年)以下の懲役または15億(元1億)ウォン以下の罰金
国内使用目的:10年(元5年)以下の懲役または5億(5千万)ウォン以下の罰金
こうした罰則の拡大は、処罰の空白を防止する効果があり、刑事処罰水準の強化を通じて営業秘密の保護がより強化されると期待される。

改正法では、営業秘密侵害犯罪の類型を大幅に拡大したという点に最も大きな意味があり、追加された犯罪類型の一部(営業秘密を指定された場所外に無断で流出させる行為、営業秘密の削除・返還要求に応じない行為等)は、民事上の侵害行為の類型にも含まれていないため、今回の改正により刑事責任の対象範囲が民事責任の対象よりも広く拡張され、営業秘密侵害に対する制裁の強化でもある。
また、処罰の範囲の拡張より、営業秘密侵害事件が法的紛争事件として増加するだけでなく、営業秘密流出時の実務的な対応とその紛争の形態にも変化をもたらすことが予測される。例えば、営業秘密侵害の相手方に警告状を発送したが、相手方が応じなければ、別途刑事措置を取ることができる。また故意侵害の根拠として相手方が警告状に応じなかったことを提示することで懲罰的損害賠償を請求することも可能になるなど、これまでとは異なる紛争状況につながる可能性がある。

出典:Kim&Chang