国家知識産権局(CNIPA)は、8月5日付、改正特許法70条に新設された「全国的に重大な影響を与える特許侵害紛争」に基づく初めての行政事件の裁決が2件下されたことを公示した。
特許法 第70条第1項
国務院専利行政部門は、特許権者或いは利害関係者の申立により、全国的に重大な影響を与える特許侵害紛争を処理することができる。
重大な特許権侵害紛争行政裁決弁法
第3 条 以下に掲げる情況いずれかがある場合、重大な特許権侵害紛争に属する:
(1)重大な公共利益に及ぼす場合;
(2)業界の発展に深刻な影響がある場合;
(3)省クラスの行政区域を跨ぐ重大な事件;
(4)その他の重大な影響を及ぼす可能性のある特許権侵害紛争。
第22 条 国家知識産権局が特許権侵害紛争を処理する場合、立案日を起算して3 か月以内に事件を結審しなければならない。事件が複雑或いはその他の原因により、規定期限内に事件を結審できない場合、承認を経て、1 か月延長することができる。(以下省略)
公示された裁決は国知保裁字[2021]1号と2号で、対象特許はドイツのベーリンガーインゲルハイム社が保有する発明特許ZL 2015102999950.X(8-[3-アミノ-ピペリジン-1-イル]-キサンチン、その製造方法および医薬品としての使用)、被請求人は広東東陽光薬業有限公司と宜昌東陽光長江薬業股份有限公司で、被請求人の複数の地区でのインターネットによる販売の申し出が受理条件に適合するかどうか、特許法でいう権利侵害の例外の条件に適合するかどうかなどが審理対象となり、受理日は2021年11月5日であるが、無効取消請求などの経緯があり、最終的に法定期限内に審決が下された。なお、対象の医薬品はジェネリック薬として申請がされていた(H2020324)。
裁決書によると、2つの事件は対象特許や被疑侵害行為の対象が同じであり、無効取消請求も起こされていたことから合併審理がなされ、対象特許有効、被申立人による製造、販売、販売の申し出は侵害行為になるとして、侵害停止の裁定が下された。インターネットの掲載は既に削除されていた。損害賠償などの言及はない。
参照サイト:http://www.cnipa.gov.cn/art/2022/8/5/art_53_177018.html