国家知識産権局(CNIPA)は、4月26日、全国知的財産権週間に合わせて、2022年度の特許行政保護典型事例10件と商標行政保護事例10件を公示した。2022年度の特許(発明、実案、意匠)にまつわる紛争を地方政府の知的財産部門が処理した紛争事件は5.8万件、保護支援事件7.1万件、調停仲裁事件8.8万件となっているが、その内の侵害事件では医薬品や食品などを典型事例で挙げているが、行政調停や省際越境事件処理が目立っている。
案例1.“櫛(くし)”意匠特許侵害事件
担当部局: 安徽省涇県知識産権局
特許番号:306931506S (202130464274.7)
特許権者:汪強
侵害者:安徽涇県朴存商貿有限公司
【概要】ECサイトでの侵害品販売に評価書を提出して行政投訴。知識産権局は類否判断主体の「一般消費者」を含め国家知識産権局(CNIPA)に意見を求め、特定の判断者の知識レベルや認知能力に基づく判断を避けることを主な目的とすることを前提に、保護範囲に入るとして販売停止処分。
案例2.“動物用薬瓶”実用新案特許侵害事件
担当部局: 湖南省長沙市芙蓉区知識産権局
特許番号:210096380U(201920076353.8)、203122427U (201320028054.X)
特許権者:湖南楽福地医薬包材科技有限公司、湖南千山製薬機械股份有限公司
侵害者:長沙某商貿有限公司(仮名)
【概要】2つの行政投訴があり合併調査審理モデルを適用、技術専門家が参加し、調査、証拠収集、技術支援が行われ、それぞれ保護範囲に入ると判断。1件は行政調停により和解成立し、長沙市中級人民法院で司法確認完了。2012076353.8(折畳み式蓋)は販売停止命令、ライセンス契約するようを命じる行政裁決。
案例3.“銅線補助固定クリップ”シリーズ発明特許侵害事件
担当部局:広東省中山市知識産権局
特許番号:107026009B(201710330407.4)など10件
特許権者:中山展暉電子設備有限公司
侵害者:元従業員
【概要】特許権者は元従業が製品図面を不正な手段で入手し製造販売した「全自動巻線機」が10件の発明特許権侵害を中山市知的財産権局にと営業秘密侵害を中山市公安局港湾支局に投訴した。同時に立件、共同現場調査で侵害仮認定、被訴侵害者が抗弁しないために行政調停で和解成立、160万元の賠償と侵害行為の停止の調停合意書締結。
案例4.“押し板ガイドスライド機能付き高効率電池材料焼成炉”実用新案特許侵害事件
担当部局: 江蘇省知識産権局
特許番号: 205655661U (201620358253.0)
特許権者: 蘇州滙科機電設備有限公司
侵害者:無錫中工熱控科技有限公司
【概要】特許権者は被訴侵害者が中堅技術者を引抜き、実案特許技術と同じスラブ炉製品を生産販売していると行政投訴、知識産権局は立件後現場調査で確認した関連製品や図面から請求項1を完全に侵害するとして販売停止、在庫の販売中止と行政裁決、被訴侵害者は行政不服訴訟を二審の最高人民法院まで訴求したが棄却された。完成品ではなく部品など関連部材など現場での収集証拠からの侵害判断に意味がある。
案例5.“フライドポテトボックス(薯条盒)”意匠特許侵害事件
担当部局: 天津市河東区知識産権局
特許番号:305171075S(201930039762.6)
特許権者:陸明燕
侵害者:天津某市场管理有限公司(仮名)
【概要】個人事業者の特許権者の侵害投訴を受けた知識産権局は侵害状況を検討後、被訴侵害者の反論に法的認定を良く説明説得し、侵害行為の停止の和解の行政調停にまとめた。調停和解書は裁判所による司法確認完了。
案例6.“ジペプチジルペプチダーゼ阻害剤(糖尿病)”発明特許侵害事件
担当部局:北京市知識産権局
特許番号:102134230B(201110006009.X)
特許権者: 武田薬品工業株式会社
侵害者:北京百灵威科技有限公司、北京迈瑞达科技有限公司
【概要】特許権者の投訴を受けて、被訴侵害者1は侵害事実を知らず、製品回収、販売停止を弁明、被訴侵害者2はそのサイトでの販売の申し出のみで掲載を削除と弁明があったが知識産権局はぞれぞれの製品が保護範囲に入るとして、販売の申し出を禁じる行政裁決をだした。外国企業の権利保護をアピールすることが目的。
案例7.「エキス入りキャンディ」特許虚偽表示商品販売事件
担当部局: 河北省石家庄市橋西区市場監督管理局
特許番号: 101053352B(200710068855.8)
侵害者:郑州庞博教育科技有限公司
【概要】通報を受けた市場監督管理局がインターネットライブ販売サイトで販売するキャスターの特許3件の説明に対して事実関係を確認したところ、その立証できず、うち1件は関係があるものの特許権者からの使用許諾もないことから、特許法実施細則84条1項3号に違反するとして、違法所得72,206.70元の没収と罰金108,310.10元を科した。
案例8.“椅子(月亮椅、ムーンチェア)”意匠特許侵害事件
担当部局:四川省宜賓市、四川省濾州市、重慶市栄昌区の知識産権局
特許番号:306888296S (202130435026.X)
特許権者:杜朝彬
侵害者:羅某氏、重慶市栄昌区某藤芸厂、(各仮名)
【概要】特許権者が所在地の異なる侵害者をそれぞれ管轄する知識産権局に被訴侵害者を行政投訴したために、立件を決定した3地域の知識産権局は共同運営体制をとり、地域を跨ぐ事件の研究と対応を行うとともに、被訴侵害者の製造販売に併合審理を行い、販売状況が悪くすでに販売していないことから和解にまとめるとともに、調停和解書の司法確認を完了した。
案例9.“置換オキサゾリジノン及び血液凝固の分野での使用”発明特許侵害事件
担当部局: 江蘇省南京市知識産権局
特許番号: 1262551C(00818966.8)
特許権者:Bayer AG(拜耳医药保健股份公司)
侵害者:南京恒生制药有限公司
【概要】特許権者は被訴侵害者が「第18回世界製薬原料薬中国展」展示会に出展した薬剤が係争特許を侵害し、販売の申し出にあたるとして行政投訴、被訴侵害者は旧特許法69条5項(行政審査を受ける医薬品のための情報収集)に該当すると非侵害を主張した。知識産権局は侵害と判断し侵害行為停止の行政裁決。被訴侵害者の行政不服訴訟は二審の最高人民法院でも棄却された
案例10.“断熱窓ユニットのためのスペーサ枠用スペーサプロファイル及び断熱窓ユニット”発明特許侵害事件
担当部局:上海市知識産権局
特許番号:101044292B(200580030094.6)
特許権者:Technoform Glass Insulation Holding GmbH(泰诺风玻璃隔热控股股份有限公司)
侵害者:威海宇光施尔乐节能材料有限公司ほか
【概要】特許権者は被訴侵害者が「第31回中国国際ガラス工業技術展覧会」で展示した関連製品が特許侵害するとして行政投訴、担当した知識産権局は当事者間に業務委託業務関係があり和解の意思があるが、上海浦東と山東省威海市と地域が離れていることから共同運営体制をとり、ネット会議により調停和解書を締結し、司法確認を完了した。
参照サイト:http://www.cnipa.gov.cn/art/2023/4/26/art_3207_184726.html