最高人民法院は、2025年中国公正競争政策広報週間(9月8日~12日)に併せて、独占事件の裁判を通じて、公平な競争秩序を維持し、全国統一市場の建設に堅固な司法保障を提供することを示すために独占禁止典型事例5件を公表した。これらは、一般市民の生活に不可欠な分野に関連し、行政権力の濫用による競争の排除・制限、価格カルテルや市場細分化に伴う水平的独占行為、業界団体による独占行為といった重要な法律問題を取り上げている。
事例1.「シェア電動自転車」の行政権力濫用による競争排除・競争制限事件 (2023)最高法知行终1011号)
杭州青某公司vs杭州市行政審批服務局、杭州市大数据中心、第三人:杭州市交某智慧城市開発有限公司
インターネット自転車レンタルサービスを提供する杭州青某社は、行政認可サービス局とビッグデータセンターが市内で電動自転車の共同フランチャイズを設立・運営していることを行政権力の濫用による競争の排除・制限行為に該当するとして、行政訴訟を提起し、一審は訴訟を棄却したが、二審の最高人民法院は行政機関によるシェアリング電動自転車のフランチャイズの設定・付与に該当し、合法性、合理性を欠き、競争を排除・制限する効果があるとして、独占禁止法での濫用を構成すると裁定した。
事例2.「セメント協会水平独占協定」独占禁止行政処罰・行政再審事件 (2024)最高法知行终148号、(2023)京73行初6605号)
陕西省水泥協会vs江蘇省市場督管理局、国家市場監督管理総局
セメント協会が省内の一部のセメント企業13社を組織し独占協定を締結させ、複数回価格を引上げたことを市場監督管理局は独占禁止法違反と判断し違法行為の停止を命じ、罰金50万元を科した。これに不服のセメント協会は行政訴訟を提起したが一審は請求を棄却し、二審はセメント協会がWeChatグループなどで意見交換し、価格競争の回避と価格安定策の導入に関するコンセンサスを形成したと判断していたことを認定し、一審判決を維持した。
事例3.「樟脳原料水平独占協定」独占禁止行政処罰・行政再審事件 (2023)最高法知行终30号、(2021)苏01行初753号)
梧州黄埔化工薬業有限公司vs江蘇省市場監督管理局、国家市場監督管理総局
梧州黄埔化工薬業有限公司と蘇州優合科技有限公司は合成樟脳を、蘇州嘉福製薬有限公司は天然樟脳を製造する競合会社であるが、市場監督管理局は調査の結果、3社は水平独占契約を締結しているとして、違法行為の停止、違法収益の没収、及び前年売上高の5%の罰金が科された。これに不服の原告は、行政訴訟を提起したが一審は請求を棄却し、二審は当事者が市場の分割に同意し、会議などを通じて下流最終医薬品メーカーに対する交渉価格を決定し強要していたなどと認定し、原判決を維持した。
事例4.「コンクリート企業」水平独占協定事件 (2024)最高法知民终456号、(2023)渝01民初303号)
広西建工第五建筑工程集団有限公司vs重慶建典混凝土有限公司
当事者は、単価を決める売買契約を締結し、その後、補足協定で単価を引き上げ、重慶建典社は広西建工社にコンクリートを供給していたところ、重慶建典社と重慶江都建材有限公司が市場を分割する水平独占契約を締結し実施したとして行政処罰をうけたことから、広西建工社は損害が生じたとして、損害賠償を求めて提訴し、一審は46.7万元の損害賠償を命じた。水平独占契約中の条件に基づいて締結・履行された当事者の契約は正常かつ公正な市場競争の下で締結・履行されたものではないと判断し、認定し、原判決を維持した。
事例5.「ホルムアルデヒド販売市場」水平独占協定事件 (2024)最高法知民终350号、(2023)鄂01知民初335号)
湖北三潤祥新材料有限公司vs湖北鑫西康化工有限公司
当事者は、競業避止条項を含むホルムアルデヒド供給に関する売買契約を締結していたが、被告が省エネ企業とホルムアルデヒドの調達契約及び包括契約を締結したことから、競業避止条項に違反するとして50万元の支払いを求めて提訴した。一審は、競業避止条項は独占条項に該当しないとして、請求を棄却した。二審は、当事者は上流・下流関係に加え、湖北省の特定地域におけるホルムアルデヒド販売市場で競合関係にあり、実質的に市場を分割する水平独占契約を締結していたので契約は無効と判断し、一審判決の理由を訂正し、控訴を棄却した。