【中国】「医薬品分野に関する独占禁止指南」(意見募集稿)の公示(8月9日)

国家市場監督管理総局(SAMRIは、8月9日付、医薬品分野の独占行為を効果的に予防・制止し、医薬品市場の公平な競争と健全な発展を促進し、消費者と社会公共の利益を維持するため、中国独占禁止法(反独占法)などの法律規定に基づき、「医薬品分野に関する独占禁止指南(ガイドライン)」の意見募集稿を作成し、公示した。一般からの意見は、8月23日まで受け付ける。
 本指南の起草背景は、ここ数年来、中国での薬品分野の独占行為が多発し、安定した供給価格に影響を及ぼしており、市場での公平な競争秩序と消費者の利益が損なわれている。市場監督管理総局は、遠大医薬品独占事件、揚子江薬業独占事件、上薬生化学独占事件など20件を超える医薬品分野独占事件を調査、処分している。2021年、原薬分野の独占行為が多発している状況に対し、「原薬分野に関する独占禁止指南」を公布し、原薬分野の独占行為の規範化に重要な役割を果たしたが、独占禁止法執行のターゲットと効果を高める必要性があるとしている。対象は、漢方薬、生薬、生物製品などすべての医薬品を対象とする。
 本意見募集稿は、7章55条からなり構成は以下の通り
 第一章 総則 独占禁止監督管理法執行の全体原則の明確化(第1~6条)
 第二章 独占協合意 独占合意行為の細分化(第7~19条)
 第三章 市場での支配的地位の濫用 濫用行為の認定原則(第20~29条)
 第四章 事業者の集中(合併) 合併審査原則(第30~36条)
 第五章 公平な競争審査と行政権力の濫用による競争の排除、制限(第37~44条)
 第六章 法的責任の適用(第45~53条)
 第七章 附則

参照サイト:https://www.samr.gov.cn/hd/zjdc/art/2024/art_709b7b3bed794e1ca464524d1e5a3dcd.html

【中国】「中国独占禁止法執行年次報告書(2023年)」発行(6月18日)

国家市場監督管理総局(国家独占禁止局)は、6月18日、 「中国独占禁止法執行年次報告書(2023年)(中国反垄断执法年度报告)」を発表した。

同報告では、国家独占禁止局(国家反垄断局)が2023年に独占協定を調査、処理し、市場での支配的地位の乱用事件を27件、罰金21.63億元、行政権力の濫用による競争排除制限事件を39件、事業者集中(経営者集中)事件797件を審査処理したことなどを以下の内容でまとめている。第二章で事件概要を把握することができる。
第一章 年間業務概要
第二章 監督管理法執行結果
第三章 法制度構築
第四章 公平な競争政策の実施
第五章 競争宣伝の提唱
第六章 国際交流協力
第七章 地方業務
第八章 大事記
付録  関係法

 2023年度業界別の独占事件

参照サイト:https://www.samr.gov.cn/xw/zj/art/2024/art_066873f18efc42749971bbf23d60d360.html

【中国】「標準必須特許分野に関する独占禁止指南」(意見募集稿)(6月30日)

国家市場監督管理総局(SAMR)は、6月30日付、「標準必須特許分野に関する独占禁止指南(关于标准必要专利领域的反垄断指南)」の意見募集稿を公示し、7月29日まで一般から意見募集を行う。本指南(ガイドライン)は、事業者が標準必須特許を濫用し競争を排除・制限し、市場での公正な競争を保護し、知的財産権と標準化が協調してイノベーションの発展を促進させ、消費者の権利と社会公共の利益を保護することを防止および阻止することを目的としている。

本指南の意見募集稿は、5章20条と比較的コンパクトな内容となっている。
第1章 総則 第1~7条
第2章 標準必須特許に係る独占合意 第8~10条
第3章 標準必須特許に係る市場での支配的地位の濫用行為 第11~17条
第4章 標準必須特許に係る事業者の集中(合併)第18~19条
第5章 付則 第20条

参照サイト:https://www.samr.gov.cn/hd/zjdc/art/2023/art_6422b2fb728f486b9814349213ea07c6.html
仮訳

【中国】最高人民法院による独占禁止と不正当競争典型事例の公示(11月17日)

最高人民法院は11月17日付け、記者会見を行い、独占禁止と不正競争防止の司法による強化を図るため、昨年9月27日にも典型事例を10件発表しており、今回は新たに独占禁止と不正防止における特徴と典型事例をそれぞれ10件発表した。

独占禁止事件の特徴
・独占行為に対する厳しい制裁とリスクの解消と低減
 水平型独占協定行為の認定と損害賠償や損失の認定基準を明確化した。
・合法的権利行使行為の範囲と知的財産権濫用の審査基準
 権利行使の合法的な境界の明確化による規範化と医薬品特許契約における独占禁止審査の必要性を明確化した。
・一般の注目する事件に積極的に対応し公平な競争を保障
 社会が注目している事案での競争行為の排除、制限を制止し、市場競争活力の回復、促進し、市場競争による利益獲得を保証した。
・独占禁止法執行に対する行政法執行基準と司法基準の協調・統一を促進
 人民法院が独占禁止法執行機関の職責履行を支持、監督を通じて、双方の基準の協調・統一を促進し、独占禁止法執行の合力を高めた。

不正競争防止事件の特徴
・司法保護による市場の公平な競争の維持
 インターネットでの不正競争を含む新しいタイプの事件に積極的に対応した。
・消費者の合法的権益保護
 社会が注目する消費者の権益にかかわる事件で、権利者の合法的権益保護と消費者の権益保護を効果的に行った。
・営業秘密の司法保護強化と法律適用の統一
 事件に存在する立証難、秘密保持難などの課題に対し、立証責任の合理的確定、侵害行為を効果的に抑制した。特に、契約での秘密保持期間満了後も相手方の法定秘密保持義務を明確にした。

独占禁止典型事例
1.「自動車教習所共同経営」水平独占契約紛争事件((2021)最高法知民終1722号)
2.「無励磁スイッチ特許侵害和解契約」水平独占契約紛争事件((2021)最高法知民終1298号)
3.「幼稚園」水平独占契約紛争事件((2021)最高法知民終2253号)
4.「サクサグリプチン錠医薬品に係る特許逆払契約」発明特許侵害紛争事件((2021)最高法知民終388号)
5.「延安コンクリート企業」契約紛争及び水平独占契約紛争事件((2020)陝西01知民初509号)
6.「中国スーパーリーグの画像」市場支配的地位の乱用紛争事件((2021)最高法知民終1790号)
7.「威海水務集団」市場支配的地位乱用紛争事件((2022)最高法知民終395号)
8.「海南消防検査会社水平独占契約」独占禁止行政処罰事件((2021)最高法知行終880号)
9.「茂名コンクリート会社水平独占契約」独占禁止行政処罰事件((2022)最高法知行終29号)
10.「恵州市自動車検査協会水平独占契約」独占禁止行政処罰事件((2020)広東73行初12号)

不正競争防止事件
1.「キャスター同行式」生中継不正競争紛争事件((2016)京0101民初22016号)
2.「焦げ付き防止鍋」商業誹謗紛争事件((2021)浙民終250号)
3.「喜劇王」不正競争紛争事件((2020)広東73民終2289号)
4.「アプリ機能ただ乗り」不正競争紛争事件((2020)上海0115民初87715号)
5.「WeChat抽選」有賞販売行政処罰事件((2021)蘇0509行初44号)
6.「店舗評価システム盗用」不正競争紛争事件((2021)川01民初913号)
7.「張百年」ニセモノ混同紛争事件((2022)最高法民再4号)
8.工事写真虚偽宣伝紛糾事件((2022)最高法民再1号)
9. グアニジノ酢酸」営業秘密紛争事件((2020)最高法知民終621号)
10.「チップ量産試験システム」営業秘密侵害仮差止保全措置事件((2020)最高法知民終1646号)

参照サイト:https://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-379741.html
独占禁止典型事例 https://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-379701.html
不正競争防止典型事例 https://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-379711.html

【中国】最高人民法院による独占禁止と不正競争指針と典型事例の記者発表会(9月27日)

最高人民法院は、9月27日、8月30日の中央包括的深化改革委員会第21回会合が開催され、習近平総書記出席の独占禁止の強化と公正な競争政策の徹底的な実施が社会主義市場経済システムを改善するための固有の要件であるとの発言を受けて、人民法院の独占禁止及び不正競争関連の裁判のための指針が作成された。裁判所は主に不正競争の裁定を担っているといえる。これを受けて、今後の基本方針と典型事例10件が発表された。

1.基本指針
(1)裁判の役割を十分に発揮し、公正な競争のための法的環境を構築
 2018年~2020年に、全国の裁判所は不正競争民事事件の受理は14,736件、年平均18%増加した。独占民事事件の受理は158件、年平均で60件を超える。傾向としては営業秘密侵害事件などの増加と高額賠償、また新しい形態の事件として、データの権益保護、ネット事業者二拓問題、ビックデータなどSNSでも注目を受けている。

(2)司法解釈の積極的制定を推進し、規則制度を継続的に改善
 昨年以来、インターネット上の知財権、知財権の刑事保護、営業秘密、知財民事訴訟での証拠、懲罰的賠償など多数の司法解釈と規範性文書を発表したが、今後は不正競争分野、独占禁止(二)の司法解釈の制定を予定している。

(3)国家安全保障を維持するため、国内外の法治を調整
 OPPOとSisvel市場支配地位紛争(Frand)、TCLとEricssonの市場支配地位濫用紛争など世界的市場での独占事件など外国事件の司法管轄と域外適用の主導権問題に対応し、中国の司法主権と当事者の合法的権益を確実に守る。

(4)同時に複数の措置を講じて司法のサービス保証レベルを向上
 行政による独禁法の執行と司法の連携を強化し、行政法執行基準と司法裁判基準の統一を促進し、行政部門との情報交換などを含めた交流と協力を強化し、効率的な監督管理体制を共同で推進する。

2.不正競争と独禁法の典型事例(営業秘密侵害事件のみ概説)

(1)「優先鋸」営業秘密侵害事件 (2019)最高法知民終7号
 優鎧公司は離職した従業員が設立した路啓公司が販売する位置決め裁断機が技術秘密を使用しており、当該製品を使用した魯麗公司も併せて提訴した。第二審では現場での技術対比を行い切断方法と手順が技術秘密に該当するとして、侵害停止と600万元(約10,200万円)の賠償を命じた。なお、魯麗公司は証拠隠滅行為があり罰金が科せられた。原告の立証義務の軽減と証拠隠滅に対する司法の信義誠実の原則確保の意思表示がポイントである。

(2).「平編み機部品」営業秘密使用許諾契約紛争民刑事事件 (2019)最高法知民終333号
 慈星公司は必沃公司と平編み機の部品の製造委託契約を締結し技術図面を秘密保持契約を締結して供与したが、必沃公司が同一部品を外部に販売していることを発見し、契約違反を理由に製造販売差止及び損害賠償を求めて提訴した。一方、寧波市公安局は必沃会社が営業秘密侵害の疑いで立件捜査していた。第一審は営業秘密侵害に関係するとして、事件を公安局に移送したところ、被告は不服で控訴した。第二審は犯罪と紛争は異なる法律関係にあり、第一審は技術秘密使用許諾契約について審理をしなければならないと再審理を命じた。営業秘密侵害事件では刑事事件が並行するのは当然であるため、民事と刑事が同時処理されることがままあるが、公安は経済紛争を理由に立件を避け、裁判所は犯罪の嫌疑を理由に民事訴訟の避けるようなことがあり得るところ、本件では刑事責任と民事責任の両方が混同されずに適切に処理されたことがポイントである。

(3)「愛奇芸アカウント」不正競争事件 (2019)京73民終3263号
(4)「陸金所金融サービスプラットフォーム」不正競争事件 (2019)沪0115民初11133号
(5)「720ブラウザ広告遮断」不正競争事件 (2018)粤73民終1022号
(6)「微信データ権益」不正競争事件 (2019)浙8601民初1987号
(7)「ネット決済」行為不正競争事件 (2019)渝05民初3618号
(8)「公共企業」の市場支配地位濫用事件 (2018)桂01民初1190号
(9) 「煉瓦協会」独占紛争事件 (2020)最高法知民終1382号
(10) OPPOとSisvel 市場支配地位濫用事件 (2020)最高法知民轄終392号

参照サイト:http://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-324471.html
      http://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-324491.html

【中国】「国務院独占禁止委員会による知的財産権分野に関する独占禁止指南」の公示(9月18日)

市場監督管理総局は、9月18日付、独占禁止局が昨年1月4日に成立させた「国務院独占禁止委員会による知的財産権分野に関する独占禁止指南(国务院反垄断委员会关于知识产权领域的反垄断指南)」を他の独占禁止法関連の公示に合わせて公布した。

本指南は、2017年3月に国務院独占禁止委員会が初めて知的財産権の濫用に関連するガイドラインとして起草し、意見募集したもので、昨年2019年1月4日に成立させていた。その背景は、第19期四中全会で競争政策の基盤強化のために独占禁止法の執行を強化、改善することが提案されたが、一方で、知的財産権の創造、保護、運用の強化により、経済効率の向上と消費者及び公益の保護を目指しところ、不正な知的財産権の権利行使や反競争的面がある。そのため、知的財産権を効果的に保護しながら、その濫用や競争を制限する行為を予防、阻止するためのガイドラインの制定が必要と判断された。起草には、米国、EU、日本などの独占禁止関連ガイドラインを参考に、原則的な規定のみになっている「独占禁止法」を補完し、知的財産権の濫用による排除・制限行為をよりよく規制することを目指した。

主な特徴は、厳格に「独占禁止法」の基本条項を根拠にして、知的財産権関連に特化させるとともに現行の行政法規、部門規則などとの連携を重視している。そして、中国の国情に基づいた法律執行の実務を十分に考慮し、法律執行の実践で直面してきた最も切実な問題を重点的に対応している。また、独占禁止法と知的財産権の法執行の不確定性の特徴を十分に考慮し、法執行機関の自由裁量権を規範化させるとともに、一定の柔軟性を持たせている。

内容は、全5章28条からなり、概要は以下の通り
第一章 総則
第二章 競争を排除、制限する可能性がある知的財産合意
第三章 知的財産権に関わる市場での支配的地位の濫用行為
第四章 知的財産権に関わる事業者集中
第五章 知的財産権に関わるその他の状況

参照サイト:http://gkml.samr.gov.cn/nsjg/fldj/202009/t20200918_321857.html
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