最高人民法院は、9月27日、8月30日の中央包括的深化改革委員会第21回会合が開催され、習近平総書記出席の独占禁止の強化と公正な競争政策の徹底的な実施が社会主義市場経済システムを改善するための固有の要件であるとの発言を受けて、人民法院の独占禁止及び不正競争関連の裁判のための指針が作成された。裁判所は主に不正競争の裁定を担っているといえる。これを受けて、今後の基本方針と典型事例10件が発表された。
1.基本指針
(1)裁判の役割を十分に発揮し、公正な競争のための法的環境を構築
2018年~2020年に、全国の裁判所は不正競争民事事件の受理は14,736件、年平均18%増加した。独占民事事件の受理は158件、年平均で60件を超える。傾向としては営業秘密侵害事件などの増加と高額賠償、また新しい形態の事件として、データの権益保護、ネット事業者二拓問題、ビックデータなどSNSでも注目を受けている。
(2)司法解釈の積極的制定を推進し、規則制度を継続的に改善
昨年以来、インターネット上の知財権、知財権の刑事保護、営業秘密、知財民事訴訟での証拠、懲罰的賠償など多数の司法解釈と規範性文書を発表したが、今後は不正競争分野、独占禁止(二)の司法解釈の制定を予定している。
(3)国家安全保障を維持するため、国内外の法治を調整
OPPOとSisvel市場支配地位紛争(Frand)、TCLとEricssonの市場支配地位濫用紛争など世界的市場での独占事件など外国事件の司法管轄と域外適用の主導権問題に対応し、中国の司法主権と当事者の合法的権益を確実に守る。
(4)同時に複数の措置を講じて司法のサービス保証レベルを向上
行政による独禁法の執行と司法の連携を強化し、行政法執行基準と司法裁判基準の統一を促進し、行政部門との情報交換などを含めた交流と協力を強化し、効率的な監督管理体制を共同で推進する。
2.不正競争と独禁法の典型事例(営業秘密侵害事件のみ概説)
(1)「優先鋸」営業秘密侵害事件 (2019)最高法知民終7号
優鎧公司は離職した従業員が設立した路啓公司が販売する位置決め裁断機が技術秘密を使用しており、当該製品を使用した魯麗公司も併せて提訴した。第二審では現場での技術対比を行い切断方法と手順が技術秘密に該当するとして、侵害停止と600万元(約10,200万円)の賠償を命じた。なお、魯麗公司は証拠隠滅行為があり罰金が科せられた。原告の立証義務の軽減と証拠隠滅に対する司法の信義誠実の原則確保の意思表示がポイントである。
(2).「平編み機部品」営業秘密使用許諾契約紛争民刑事事件 (2019)最高法知民終333号
慈星公司は必沃公司と平編み機の部品の製造委託契約を締結し技術図面を秘密保持契約を締結して供与したが、必沃公司が同一部品を外部に販売していることを発見し、契約違反を理由に製造販売差止及び損害賠償を求めて提訴した。一方、寧波市公安局は必沃会社が営業秘密侵害の疑いで立件捜査していた。第一審は営業秘密侵害に関係するとして、事件を公安局に移送したところ、被告は不服で控訴した。第二審は犯罪と紛争は異なる法律関係にあり、第一審は技術秘密使用許諾契約について審理をしなければならないと再審理を命じた。営業秘密侵害事件では刑事事件が並行するのは当然であるため、民事と刑事が同時処理されることがままあるが、公安は経済紛争を理由に立件を避け、裁判所は犯罪の嫌疑を理由に民事訴訟の避けるようなことがあり得るところ、本件では刑事責任と民事責任の両方が混同されずに適切に処理されたことがポイントである。
(3)「愛奇芸アカウント」不正競争事件 (2019)京73民終3263号
(4)「陸金所金融サービスプラットフォーム」不正競争事件 (2019)沪0115民初11133号
(5)「720ブラウザ広告遮断」不正競争事件 (2018)粤73民終1022号
(6)「微信データ権益」不正競争事件 (2019)浙8601民初1987号
(7)「ネット決済」行為不正競争事件 (2019)渝05民初3618号
(8)「公共企業」の市場支配地位濫用事件 (2018)桂01民初1190号
(9) 「煉瓦協会」独占紛争事件 (2020)最高法知民終1382号
(10) OPPOとSisvel 市場支配地位濫用事件 (2020)最高法知民轄終392号
参照サイト:http://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-324471.html
http://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-324491.html