12月16日付、中華人民共和国民法典の草案が公表された。しかし、政府サイトにはいまのところ掲載されていない。草案は7編1260条からなり全体の構成は下記の通りであるが、2017年10月1日に制定された民法総則が含まれ、その一部は改正されている。また、技術契約については契約法の関係規定が援用されている。なお、これまでに、常任委員会は物権、契約、相続を2回、 人格権、婚姻家族および権利侵害を3回にわたり審査している。
第一編 総則
第二編 物権
第三編 契約
第四編 人格権
第五編 婚姻家庭
第六編 相続
第七編 権利侵害責任
本草案で、知的財産や技術契約などに関する条項は下記の通り。技術契約については重要なため、これらの条項を仮訳でご紹介する。
第一編 総則
第5章 民事権利(所有権)第123条
第8章 民事責任 第179条
第9章 訴訟時効 第188条
第二編 物件 第四部 担保物権
第18章 質権 第440条 第444条
第三編 契約 第二部 典型的契約
第9章 売買契約 第600条
第20章 技術契約
第一節 一般規定 第843-850条
第二節 技術開発契約 第859-861条
第三節 技術譲渡契約及び技術許諾契約 第862-877条
第五編 婚姻家族
第3章 家族関係 第一節 夫婦関係 第1062条
第七編 第二章 損害賠償 第1185条
第一編 総則
第5章 民事権利(所有権)
第123条 民事主体は知的財産権を享有する。
知的財産権とは、権利者が法に基づき次に列挙する専有権を享有する。
①著作物、②発明、実用新案、意匠、③商標、④地理的表示、⑤営業秘密、⑥集積回路配置設計、⑦植物新品種、⑧法律が規定するその他の客体。
第8章 民事責任
第179条 民事責任は主に次に列挙する方法で負担する;
①侵害停止、②妨害排除、③危険消去、④財産返還、⑤原状回復、⑥修理、再製、交換、⑦継続履行、⑧損害賠償、⑨違約金支払、⑩影響除去、名誉回復、⑪謝罪
法律が懲罰的賠償を規定している場合、その規定を参照する。
本状が規定する民事責任を負担する方法は、単独での適用或いは組合せでの適用もできる。
第9章 訴訟時効
第188条 民事上の権利を人民法院に訴訟により請求する時効は3年とする。法律に別途規定がある場合はその規定を援用する。
訟時効の起算日は権利者が損害を知った日或は知りえた日とする。ただし、損害を受けた日より20年経過した場合、人民法院は保護を与えない。特殊な事情がある場合、人民法院は権利者の申請に基づき延長することができる。
第二編 物件 第四部 担保物権
第18章 質権 第2節
第440条 以下に掲げる権利を処分することができる債務者または第三者は質に出すことができる。
①為替手形、手形、小切手、②債券、預金証書、③倉荷証券、船荷証券、④譲渡可能なファンド持分、株式、⑤譲渡可能な登録商標専用権、特許権、著作権などの知的財産権における財産権、⑥既存及び将来の売掛金、⑦法律、行政法規に規定される担保のその他の財産権
第444条 登録商標専用権、特許権、著作権などの知的財産権に質権を設定する場合、質権は質権登記時から成立する。
知的財産権における財産権の質権設定後、質権設定者は譲渡或いは他人に使用許諾することはできない。但し、質権設定者及び質権者の協議により合意した場合は除く。質権設定者が質権設定した知的財産権における財産権を譲渡或いは他人に使用許諾した収益がある場合、事前に質権者に前倒し返済するか或いは預託されなければならない。
第三編 契約 第二部 典型的契約
第9章 売買契約
第600条 知的財産権表示のある物を売る場合、法律に別段の規定があるかまたは当事者に別段の約定がある場合を除き、当該表示のある物の知的財産権は買取人に帰属しない。
第20章 技術契約
第一節 一般規定
第843条 技術契約とは、当事者が技術開発、譲渡、許諾、コンサルティング或いはサービスに関して締結する相互の権利及び義務を確立する契約である。
第844条 技術契約を締結する場合、知的財産権の保護及び科学技術の進歩に有利であり、科学技術の成果の研究開発、転化、応用及び普及を促進しなければならない。
第845条 技術契約の内容は一般的にプロジェクトの名称、内容、範囲及び要求、履行計画、場所及び方式、技術情報及び資料の秘密保持、技術成果の帰属及び収益の分配手続き、検収基準及び方法、用語及び用語の解釈などの条項を含むものとする。
契約履行に関する技術背景資料、実施可能性検証及び技術評価報告、プロジェクト役割書及び計画書、技術標準、技術仕様、原設計及び製造加工文書、及びその他の技術文書は、当事者の約束により契約の構成部分とすることができる。
技術契約が特許に関する場合、発明創造の名称、特許出願人及び特許権者、出願日、出願番号、特許番号及び特許権の有効期間を明記しなければならない。
第846条 技術契約の代金、報酬または使用料の支払方法は当事者が約定する場合、一括払い、一時払い或いは一括払い、分割支払い、使用料支払い、初期前払い及び使用料の方法を採用することができる。
約定された使用料の支払いは、製品の価格、特許の実施及び技術秘密の使用後に新たに追加された生産額、利益或いは製品の販売額の一定比率、或いは約定したその他の方法で計算することができる。約定支払比率は、固定比率、逐年逓増比率、或いは逐年逓減比率を採用することができる。
約束した支払について、当事者は会計に関する検査方法を約定することができる。
第847条 職務技術成果の使用権、譲渡権が法人或いは非法人組織に帰属する場合、法人或いは非法人組織は当該職務技術成果について技術契約を締結することができる。法人或いは非法人組織が職務技術成果を譲渡する技術契約を締結する場合、職務技術成果の完成者は、同等の条件で優先的に譲渡を受ける権利を有する。
職務技術成果とは、法人或いは非法人組織の職務任務の執行、或いは主に法人或いは非法人組織の物質的技術条件を利用して完成した技術成果である。
第848条 非職務技術成果の使用権、譲渡権が技術成果を完成した個人に帰属する場合、技術成果を完成した個人は当該非職務技術成果について技術契約を締結することができる。
第849条 技術成果を完成した個人は、関連する技術成果文書に自らが技術成果の完成者であることを明記する権利及び栄誉証書、奨励を取得する権利を有する。
第850条 技術を不法に独占し、技術の進歩を妨害或いは他人の技術成果を侵害する技術契約は無効とする。
第二節 技術開発契約
第859条 開発を委託して完成した発明創造は、法律に別段の規定或いは当事者に別途の約定がある場合を除き、特許を出願する権利は研究開発者に帰属する。研究開発者が特許権を取得した場合、委託者は法に基づき当該特許を実施することができる。
研究開発者が特許出願権を譲渡する場合、委託者は同等の条件で優先的に譲受する権利を有する。
第860条 共同開発で完成した発明創造は、当事者に別段の約定がある場合を除き、特許を出願する権利は共同研開発の当事者の共有に帰属する。当事者の一方が当該共有特許出願権を譲渡する場合、他方は同等の条件で優先的に譲渡を受ける権利を有する。
共同開発の当事者の一方が、当該共有特許出願権の放棄を表明した場合、他方は単独で出願或いは他方は共同で出願することができる。出願人が特許権を取得した場合、特許出願権を放棄した方は、その特許を無償で実施することができる。
共同開発の当事者の一方が特許出願に同意しない場合、他方或いはその他の各当事者は特許を出願することはできない。
第861条 委託開発或いは開発協力による技術秘密成果の使用権、譲渡権及び利益の分配方法について、当事者は約定する。約定がない或いは約定が不明確である場合に、本法第510条の規定に基づいてもまだ確定できない場合、同一技術案の特許付与前は、当事者には均しく使用及び譲渡する権利を有する。但し、委託開発の研究開発者は、研究開発成果を委託者に渡す前に、研究開発成果を第三者に譲渡することはできない。
第三節 技術譲渡契約及び技術許諾契約
第862条 技術譲渡契約とは、合法的に技術を所有する権利者が、現存する特定の特許、特許出願、技術秘密に関する権利を他人に譲渡を締結する契約である。
技術許諾契約とは、合法的に技術を所有する権利者が、現存する特定の特許、技術秘密に関する権利を他人に実施、使用の許可を締結する契約である。技術譲渡契約及び技術許諾契約において、技術を実施する専用設備、原材料の提供或いは関連の技術コンサルティング、技術サービスの提供に関する約定は、契約の構成部分に属する。
第863条 技術譲渡契約には、特許権譲渡、特許出願権譲渡、技術秘密譲渡などの契約が含まれる。技術許諾契約には、特許実施許諾、技術秘密使用許諾などの契約が含まれる。
技術譲渡契約及び技術許諾契約は書面形式を採用しなければならない。
第864条 技術譲渡契約及び技術許諾契約は、特許の実施或いは技術秘密の使用範囲を約定することができる。但し、技術競争及び技術発展を制限することはできない。
第865条 特許実施許諾契約は、当該特許権の存続期間内のみ有効である。特許権の有効期間が満了或いは特許権の無効が宣言された場合、特許権者は当該特許について他人と特許実施許諾契約を締結してはならない。
第866条 特許実施許諾契約の許諾者は、被許諾者に特許の実施を許諾した約定に基づき、特許実施に関する技術資料を交付し、必要な技術指導を提供しなければならない。
第867条 特許実施許諾契約の被許諾者は、特許実施の約定に基づき、約定以外の第三者に当該特許の実施を許可してはならず、かつ、約定に従い使用料を支払わなければならない。
第868条 技術秘密譲渡契約の譲渡人及び技術秘密使用許諾契約の許諾者は、約定に基づき技術資料を提供し、技術指導を行い、技術の実用性、信頼性を保証し、守秘義務を負わなければならない。
前項に規定する守秘義務は、譲渡人或いは許諾者による特許出願を制限するものではない。但し、当事者に別段の約定がある場合は除く。
第869条 技術秘密譲渡契約の譲受人及び技術秘密使用許諾契約の被許諾者は、約定に基づき技術を使用し、使用料を支払い、守秘義務を負わなければならない。
第870条 技術譲渡契約の譲渡人は、自身が提供した技術の合法的所有者であることを保証するとともに、提供した技術の完全性、正確性、有効性を保証し、約定の目標を達成することができるものでなければならない。
第871条 技術譲渡契約の譲受人は、約定の範囲及び期間に基づき、譲渡人の提供した技術における未公開の秘密部分に対して、守秘義務を負わなければならない。
第872条 譲渡人が約定に基づき技術を譲渡していない場合、使用料の一部或いは全部を返還するとともに、違約責任を負わなければならない。特許の実施或いは技術秘密の使用で約定の範囲を超え、第三者が約定に違反し無断で当該特許を許可或いは当該技術秘密を使用した場合、違約行為を停止し、違約責任を負わなければならない。守秘義務の約定に違反した場合、違約責任を負わなければならない。許諾者が違約責任を負わなければならない場合は、前項規定を参照し適用する。
第873条 譲受人が約定に基づき使用料を支払わない場合、使用料を追納しするとともに約定に基づき違約金を支払わなければならない。使用料の追納或いは違約金を支払わない場合、特許の実施或いは技術秘密の使用を停止し、技術資料を返却し、違約責任を負わなければならない。特許の実施或いは技術秘密の使用が約定の範囲を超えた場合、譲渡人の同意を経ずに第三者に当該特許の実施或いは当該技術秘密の使用を許可した場合、違約行為を中止し、違約責任を負わなければならない。約定した守秘義務に違反した場合、違約責任を負わなければならない。
被許諾者が違約責任を負わなければならない場合、前項の規定を参照し適用する。
第874条 譲受人或いは被許諾者が約定に基づき特許を実施し、技術秘密を使用して他人の合法的権益を侵害した場合、譲渡人或いは許諾者は責任を負うものとする。但し、当事者に別段の約定がある場合は除く。
第875条 当事者は互恵の原則に基づき、特許の実施、技術秘密の使用による後続の改善技術成果の共有方法について契約で約定することができる。約定がない或いは約定が不明確の場合、本法第510条の規定に基づいてもまだ確定できない場合、一方の後続の改良技術成果を他の各当事者は共有する権利がない。
第876条 集積回路配置設計の専有権、植物新品種権、コンピュータソフトウェア著作権などその他の知的財産権の譲渡及び許諾は、本節の関連規定を参照し適用する。
第877条 法律、行政法規に技術輸出入契約或いは特許、特許出願契約に別段の約定がある場合、その規定に従う。
第五編 婚姻家族
第三章 家族関係
第一節 夫婦関係
第1062条 夫婦に婚姻関係が存続する期間に得た以下の財産は、夫婦の共同財産のため夫婦は共同で所有する。
①給与、賞与及びその他の労務報酬、②生産、経営、投資の収益、③知的財産権の収益、④相続或いは贈与を受けた財産、本法第10633条第3項の規定を除く、⑤その他共同所有の財産に帰属しなければならないもの。
夫婦は共同財産に対して、平等な処分権を有する。
第七編 権利侵害責任
第二章 損害賠償
第1185条 他人の知的財産権を故意に侵害し、情状が重大である場合、被侵害者は相応の懲罰的賠償を請求する権利を有する。