香港特別行政府は、2022年12月5日に改正を可決した2022年著作権改正法(版権条例、The Copyright Ordinance、Cap. 528)を5月1日より施行する。今回の改正ではデジタル環境における著作権保護を強化するために、以下の5点が主要なポイントとなっている。
(1) 排他的な技術中立的送信権を新設し、公衆に電子的に送信される著作物を保護;
(2) 上記の送信権侵害に対する刑事処罰の導入;
(3) 著作権の様々な使用をカバーする著作権保護の例外規定の拡大;
(4) 著作権侵害対策のためのオンラインサービスプロバイダー(OSP)に対するセーフハーバー規定の導入;
(5) 著作権侵害民事訴訟での追加の損害賠償とその考慮時効の追加。
送信権(communication right)は、日本では公衆送信権とされており、著作権者があらゆる送信形態で写真などを含む著作物を一般公衆に発信する権利であり、複製権とは区別され、従来の通信モードよりも幅広く他人が許諾なく送信することを制限する規定であり、2000年以降数多くの国で導入されている。刑事罰の対象は、映画の違法配信などのネットを利用した大規模な著作権侵害に限られ、4年までの禁固刑や5万香港ドルの罰金が科される。著作権保護の例外規定は、比較的広く追加されており、(i) パロディ、風刺、似顔絵、風刺画、(ii) 現在の出来事についてのコメント、(iii) 著作物の引用もオンライン学習、図書館、博物館、およびアーカイブの運営を促進するために広げられた。また、私的、家庭内での一時利用についても明確にされた。一方、著作権侵害対策にOSPにおける事業者の協力が得られるように、OSPのそうした活動に対する保護範囲を定めている。損害賠償では、立証難に対する対応と侵害者の提訴後の対応などを判断材料とすることが明確にされた。