【中国】商標評審部門の2019年度行政事件の分析(7月6日)

商標局評審部門は、7月6日付、2019年度の審決不服行政訴訟の中から8項目を挙げて、評審部門の立場から司法判断について、率直な意見を述べている。比較的批判的内容であり、立場の違いが良く判断できるので、ご参考まで仮訳を作成した。

取り上げられた項目は下記の通りで、それぞれご参考までコメントを付した。
(1) 単色カラー商標の登録可能性
 ルブタンの赤色ソールを単一色と問題にしているが、実務上は製品の一部の着色(ポジションマーク)であり、同様の登録はジョンディア社のトラクターなど既に存在している。論点は立法経緯を司法が無視している点を指摘しており、今後も単一色を行政として登録する用意はないようである。
(2) 国名を含む絶対的拒絶理由による却下にかかる異なるの法律の適用
 司法が公序良俗を適用理由にしていることに対する議論であり、どちらかというとWIPOでのキューバやアフリカ諸国の国名の議論に近い点を行政がどのように判断するかは疑問である。
(3) 第10条1(7)項の誤った適用
 社名や商号の先取り登録に対する行政判断は欺瞞的であると判断しているが、司法はこれを認めていない。
(4) 一事不再理の認定
 旧法と新法での異議申立を例に一事不再理の適用の違いを議論しているが、一旦最低の出た事案には原則一事不再理を認める立場である。従って、権利の安定性について疑義がある場合、一事不再理にならないような対応を取ることは不可欠である。
(5) 共存契約の採否
 共存契約の行政での採用基準を確認することができる。共存契約は私権の処分に関するため、安易に利用するべきではない。
(6) 第15条1項(代理人の先取り商標出願禁止)の適用
 悪意性のある先取りについて、柔軟な対応をする行政の理解を確認することができる。
(7) 商標に引用商標を含む場合の混同の判定
 結合商標の登録の難しさを顕著性のある或いはない商標との組合せの場合を検討している。中国は分離観察であることから、識別力を使用に求める方向性を理解することができる。
(8) 異議申立と行政訴訟の訴権
 改正後の現行商標法は異議申立失敗後の行政訴訟を制限している。これは審査滞留期間の長期化を避けるために導入されたものであるが、中国の民法上の平等の原則には反していると思われる。いずれにしても、実務上の確認となっている。

参照サイト:http://spw.sbj.cnipa.gov.cn/fwtx/202007/t20200706_319409.html