【中国】医薬品特許行政裁決事件2023年度分(7月25日)

国家知識産権局(CNIPA)は、7月25日にパテントリンケージに係る複数の医薬品特許行政裁決事件を公示したので、2023年に提出された事件の内、公示されている13特許30事件について、以下の通りまとめた。取下の裁決が多いが、理由はわからないが特許自体を譲渡している案件もある。特許自体が無効になった事件が1請求項の範囲に入る入らないとの裁定結果になっているので、記載上は侵害、非侵害と記載した。日本企業が1社含まれる。
8月2日公告分まで13事件を追加。

1)200580036180.8(CN101043878B) GENZYME CORPORATION
(2023)国知药裁0038号 取下
2)200680047103.7(CN101365432B) MERCK & CO., INC.
(2023)国知药裁0001号 侵害 
(2023)国知药裁0002号 非侵害
(2023)国知药裁0009号 取下 
(2023)国知药裁0010号 取下 
(2023)国知药裁0011号 取下
(2023)国知药裁0012号 侵害
(2023)国知药裁0013号 取下
(2023)国知药裁0046号 取下
(2023)国知药裁0060号 取下
(2023)国知药裁0061号 取下
3)200780039567.8(CN101573106B) HELSINN HEALTHCARE S.A.
(2023)国知药裁0030号 取下
(2023)国知药裁0031号 取下
4)200880012425.7(CN101662937B) SMITHKLINE BEECHAM CORPORATION 
(2023)国知药裁0037号 取下
(2023)国知药裁0044号 取下
(2023)国知药裁0051号 取下
(2023)国知药裁0056号 取下
5)200980112028.1(CN101983073B) BOEHRINGER INGELHEIM INTERNATIONAL GMBH 
(2023)国知药裁0043号 非侵害
6)200980138060.7(CN102164585B) EGIS GYÓGYSZERGYÁR NYILVÁNOSAN MŰKÖDŐ RÉSZVÉNYTÁRSASÁG
(2023)国知药裁0014号 取下
(2023)国知药裁0022号 却下
(2023)国知药裁0047号 取下
(2023)国知药裁0048号 取下
(2023)国知药裁0062号 却下
7)200980140931.9(CN102186490B) FOREST LABORATORIES HOLDINGS LIMITED
(2023)国知药裁0026号 侵害
(2023)国知药裁0027号 侵害
(2023)国知药裁0055号 侵害
8)200980150172.4(CN102238945B) ASTRAZENECA UK LIMITED
(2023)国知药裁0003号 取下 
(2023)国知药裁0004号 取下 
(2023)国知药裁0020号 取下
(2023)国知药裁0021号 取下
9)201080060545.6(CN102724970B) WYETH LLC
(2023)国知药裁0005号 非侵害
(2023)国知药裁0017号 取下 
10)201210006776.5(CN102580084B) GENENTECH, INC.
(2023)国知药裁0036号 特許無無効
11)201210191052.2(CN102702119B) Novartis AG
(2023)国知药裁0032号 取下
(2023)国知药裁0033号 取下
12)201410082103.7(CN103893140B) WYETH LLC
(2023)国知药裁0007号 非侵害
(2023)国知药裁0016号 取下
13)201410468293.6(CN104324015B) 第一三共株式会社
(2023)国知药裁0015号 非侵害
(2023)国知药裁0023号 非侵害
14)201480015788.1(CN105101952B) PFIZER INC.
(2023)国知药裁0045号 侵害
(2023)国知药裁0050号 非侵害
15)201610795817.1(CN107050455B) HELSINN HEALTHCARE SA
(2023)国知药裁0028号 取下
(2023)国知药裁0029号 取下

以上

【中国】中国初医薬特許リンケージ事件に非侵害判決(4月15日)

北京知識産権法院はそのSNSサイトで、4月15日付、原告の中外製薬株式会社が2021年11月に温州海鶴薬業有限公司が中国発明特許ZL2005800098777.6(ED-71製剤)の特許権保護範囲に入るか否かの確認を求めた中国初の医薬特許リンケージ事件の公判を開催し、審理の結果、被訴ジェネリック医薬品は当該特許権の保護範囲に入らないと判断し、原告の請求を却下したことを速報した。

本件は、当サイトが昨年11月11日に中国初の特許リンケージ事件として報じたもので、2021年6月の改正特許法施行後初めての76条に基づく事件であるが、温州海鶴薬業有限公司は「エルデカルトールソフトカプセル」という名のジェネリック医薬品の上場許可申請をしていた。裁判所は審理において、当該ジェネリック薬に使用されている技術は、当該特許請求項1とは異なり、均等でもないため保護範囲に入らない。請求項2から6は請求項1の従属請求項であることから同様に保護範囲に入らないため非侵害であり、原告の主張を支持しないとの判断を下した。原告は法廷で上訴を表明、被告は一審判決を従うことを表明した。

同SNSサイトは次のように事件について紹介している。
事件担当裁判官は次のように述べている、医薬品特許リンケージ制度の重要な意義は、原研薬企業のために医薬品市場の確実性に対する判断を強化し、持続的に投入されることで業界の革新的な発展を促進するだけでなく、ジェネリック製薬企業はジェネリック薬の上場リスクを事前に確認し、盲目的に市場に上場し、訴訟で高額の賠償をすることを避けるとともに、さらにジェネリック薬の高品質な発展を推進することにある。原研薬企業とジェネリック製薬企業の利益をバランスさせることで、薬品の可能性を最大限に推進し、中国の一般が良い薬、安価な薬を入手できるようにしなければならい。

判決文もないので、どのような判断がされたのか不明であるが、SNSサイトの書きぶりからは新制度の成果を強調する内容になっているように感じるのは当職だけではないのではないか。侵害の一般規則、オールエレメント、均等論の適切な適用がされたのか、鑑定比較は適切な方法や担当者であったのかなど、判決文の公開と控訴の中で明確にされることが好ましいと考えている。

参照サイト:https://mp.weixin.qq.com/s/-9SocP2TLE20Xw7me3OxNw

【中国】「北京知識産権法院の医薬品登録申請関連特許権民事事件に関する立件ガイドライン(試行)」の施行(2022年1月4日)

北京知識産権法院は、1月4日付、「北京知識産権法院の医薬品登録申請関連特許権紛争民事事件に関する立件ガイドライン(試行)(北京知识产权法院关于申请注册的药品相关的专利权纠纷民事案件立案指引(试行))」を公示し、同日施行した。

本ガイドラインは、北京知識産権法院が医薬品のパテントリンケージ事件の第一審管轄権を有することから、当事者の紛争申立を受理後の立件審査段階の関連事項を明確にすることを目的としており、特に、当事者の主体資格証明、被告適格、主体証明書の公証認証について明確にしている。
1.ライセンシーの主体資格証明について
 最高人民法院の司法解釈に基づき、独占的・排他的使用許諾者は一般的使用許諾者と違い、権利者が申立せず、かつ権利者から承諾があれば、本ガイドラインに規定される主体資格証明を提出することで、単独で提訴することができる。
2.被告適格について
 非侵害確認訴訟の原則同様、医薬品上場許可申請者が原告として訴訟を提起した場合、特許権者を被告となることを明確にしている。
3,外国企業の書類の公証認証について
 医薬品登録申請に関する特許権紛争は民事訴訟に属するため、原告が外国企業(含む、香港、マカオ、台湾である場合、行政訴訟で認められる提訴後3か月の補充期間は認められず、同時提出が原則となる。

北京知識産権法院の医薬品登録申請関連特許権紛争民事事件に関する立件ガイドライン(試行)は全8条からなり、概要は以下の通り。なお、参照サイトには英文も併記されている。
第1条【対象民事紛争】 省略
第2条【当事者の提出すべき主体資格資料】
 特許権者は身分及び関連特許が有効であることを立証する書類
 ライセンシーは上記に加え、実施許諾契約を証明する書類、特許権者からの承諾書など
第3条【医薬品上場許可申請者が提出すべき主体資格資料】
 薬品上場許可申請表と国務院薬品監督管理部門の薬品登録申請受理通知書
第4条【被告適格】 省略
第5条【訴訟請求と事実理由】
 中国上場医薬品特許情報登録プラットフォームの情報、薬品特許紛争早期解決メカニズム実施弁法(試行)」に基づく陳述書及び陳述根拠
第6条【訴訟提起期限】
 医薬品上場許可申請者が訴訟を提起するには、特許権者或いは利害関係者が国家医薬品審査機関の申請公開日から45日以内に訴訟を提起していないことを条件とする。
第7条【外国人の書類の公証認証手続】 省略
第8条【その他の要件対応】 省略

参照サイト:https://bjzcfy.chinacourt.gov.cn/article/detail/2022/01/id/6468073.shtml

【中国】北京知識産権法院は中国初の医薬品特許リンケージ事件を受理(11月10日)

中国では、改正特許法が2021年6月1日に施行され第76条に医薬品特許上市承認過程のいわゆるパテントリンケージの規定が新設された。これに併せて、国家薬品監督管理局と国家知識産権局は、「医薬品特許紛争早期解決メカニズム実施弁法(試行)」を、最高人民法院は、「最高人民法院による医薬品の登録申請に関連する特許権紛争民事事件の審理における法律適用の若干の問題に関する規定(法釈〔2021〕13号」を公布したので、紛争解決メカニズムの具体的手続き対応は概ね完了し、北京知識産権法院に管轄権が集中している。

この度、北京知識産権法院は改正特許法の施行後初めてこの種の事件を受理した。原告の中外製薬株式会社は、対象の特許はZL2005800098777.6(CN1938034B 登録日2010.12.08 PCT/JP2005/001749 JP2004-030702)、名称:ED-71製剤、中国では特許医薬品エルデカルトールソフトカプセル(艾地骨化醇软胶囊)」の発売許可者である。

原告は温州海鶴薬業有限公司が国家薬監部門に「エルデカルトールソフトカプセル」という名のジェネリック医薬品の上場許可申請を申請していることを発見した。医薬品上場特許情報登録プラットフォームの公示情報によると、被告はジェネリック医薬品について4.2類の陳述を出している。したがって、原告は、特許法第76条に基づき、北京知識産権法院に当該ジェネリック医薬品が本件特許権の保護範囲に含まれていることの確認を求めたと思われる。北京知識産権法院は、原告の起訴が医薬品特許リンケージ訴訟の起訴条件を満たしているとして立案した。今後の審理が開始されるもの思われる。

医薬品名の日本語訳は中外製薬のサイトを参照した。同社は、骨粗鬆症治療剤(活性型ビタミンD3製剤)エディロール®カプセル0.5μg、同0.75μg(一般名エルデカルシトール)の後発医薬品について、日本でも係争中である。
同社サイト https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20210217163000_1081.html

情報出所 SNSサイト

【中国】「医薬品特許紛争早期解決メカニズム行政裁決弁法」の施行(2021年7月5日)

国家知識産権局は、2月9日に意見募集した医薬品のパテントリンケージ対応の「医薬品特許紛争早期解決メカニズム行政裁決弁法(药品专利纠纷早期解决机制行政裁决办法)」を7月5日付、公告第435 号で公告し、同日施行した。

本弁法は、2条増えて、全24条からなり、申立の条件、要件、申立書記載事項、予備審査、審理、不服対応、守秘義務などが規定されている。新設されたのは第5条と第6条は当事者を明確にするため、3条では忌避理由を明確化、第4条では申立条件に1つの申立は1つの主張に限定されることなど、第10条の不受理条件に新たに4項目、第13条に合併審理の条件、16条と17条に調整条件が追加された。詳細は仮訳をご参照ください。

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2021/7/5/art_74_160566.html