【インドネシア】商標不使用取消期間が5年に(7月30日)

インドネシア憲法裁判所(Constitutional Court)は、2024年7月30日、登録商標不使用事件の第二審で控訴人の主張の一部を認め、連続した3年間の使用を5年間、不可抗力による除外規定を追加する商標法改正を示した。同改正は、即日発効した。

 本事件は、中国企業が登録商標IDM000553432(HDCVI &図形、9類:CCTVカメラなど、権利者:Ricky Thio)に対し商標法77条1項に規定される3年連続不使用による取消をジャカルタ中央商事裁判所(Commercial Court of Central Jakarta)に申立て、審理を経て係争商標は取消された(判決28/Pdt.Sus HKI/Merek/2023/PN Niaga Jkt.Pst)。
 係争商標権者は、憲法裁判所の控訴審で、登録商標が3年連続で使用されなかった場合に商標権を取消す現行商標法の規定する期間は短く、商標権者、特に中小企業(SME)に十分な保護を与えていないこと、また、COVID-19を引用し、不使用期間の免除理由に不可抗力として含められるべきであると主張した。
 この主張を受けて、裁判官は、2024年7月30日の公開審理で、上訴人の主張の一部を認め、商標法の無効取消の5年に不使用取消の期限も調整することはすべての商標権者の公平性を確保し、内国民待遇の原則に沿い、商標取消に関する規制と調和すること、さらに、商標法77条2項に規定される不使用の例外規定に経済危機や通貨危機、自然災害、パンデミックなどの不可抗力の条件なども明確にすることが重要であると判断を示した(決定書144/PUU-XXI/2023)のである。
 これに基づき、憲法裁判所は、商標法77条1項の「3年間」を「5年間」、起算日を「登録日または最終使用日」とし、また2項c号の「政府の規制により制定されるその他の同様の禁止事項。」を「政府の規制により定められた不可抗力の条件を含む、その他の同様の禁止事項。」と改正することも決定したのである。
 インドネシアでは、憲法裁判所 の決定は最終的なものであり、その決定が宣告された時点で直ちに恒久的な法的効力を持つとされているため、商標法に対する憲法裁判所の決定は最終的なもので拘束力があると判断される。つまり、2024年7月30日より上記の法改正が施行されたことになる。

 インドネシアで不使用取消を申立てる場合、申立人が商標権者の不使用を立証する義務があり、主だった地域での使用状況を調査する必要があるため、調査費用が高額になる上に裁判所に申立てることになるため、申立人には負担の大きな手続きとなっている。この改正で、各国が3年としている不使用期間が5年間になるとその調査の難しさが加わることになる。悪意のある第三者による先取り登録など難しい案件では、さらに難しくなるため、異議申立の重要性が高まる。

参照サイト:https://en.mkri.id/news/details/2024-07-30/Court_Extends_Non-Use_Trademark_Period_from_Three_to_Five_Years

【アメリカ】商標近代化法による取消手続きガイド(3月8日)

アメリカ特許商標庁(USPTO)は、3月8日付、商標近代化法(the Trademark Modernization Act (TMA) of 2020)で取消手続きのガイドに新たな実務ガイドを公示した。

新たに不使用を理由に異議申立をする抹消(Expungement)および再審査(Reexamination)手続きが導入されたが、公示では手続き時の使用証拠の評価、手続き時期を効率的に決定するために役立つ、いくつかの新しい実務を説明している。 また、手続きの上の制限との影響についても概説している。

新しい実務ガイドは、“Limitations of proceedings” と“Best practices”の項目を開くことで確認することができる。以下の事項に注目してください:
 不使用の証拠でデジタル的に変更された見本
 Petitionの準備
 関連性があり、読みやすい証拠の提出

なお、取消手続きの比較表を作成したのでご参照ください。

参照サイト:https://www.uspto.gov/trademarks/laws/2020-modernization-act

【中国】北京知識産権法院の商標権取消復審事件と偽証罪に関する報告(9月10日)

北京知識産権法院は、9月10日、商標権取消再審不服行政訴訟における偽証での処罰状況の説明会を開催した。説明会では、商標権取消復審不服行政訴訟事件の審理状況を報告するとともに、この種の事件で3年連続不使用の使用証拠の偽証行為の現状、規制する主な方法と知的財産権の一連の保護強化に対する提案、及び典型的事例6件を発表した。
以下は、その報告の抜粋を紹介する。全文は当社サイト「ひとりごと」でご確認ください。

1.商標権取消復審不服行政事件に関わる偽証での処罰情況の報告

(1) 北京知識産権法院での商標権取消復審不服行政事件の審理状況
 2019年以降、本院は商標登録権利確認事件40,114件を結審した。その内、商標権取消復審行政事件は3,843件と全商標登録権利確認事件の9.6%を占める。この内、国家知識産権局が商標を取消した事件は970件と取消率は27.7%で商標登録権利確認事件の平均取消率を上回る。本院が審理したこうした商標権取消復審不服行政事件には以下の特徴がある。
①商標権取消復審不服行政事件は商標3年連続不使用行政事件が占める比率が高い。
②商標権者は通常行政訴訟手続きで新しい証拠を補充提出する。
③商標権者は十分な使用証拠を提出できない場合、虚偽の証拠を提出することさえある。
④行政訴訟での取消率は行政事件の平均取消率より高い。

(2) 商標権取消復審行政訴訟事件における偽証行為を規制する主な方法
 商標の価値はその使用にあり、使用を通じて商品或いはサービスの出所を識別する役割を発揮する。しかし、商標権者が行政訴訟で商標の使用証拠を偽造する行為は、商標の使用事実を捏造し、信義誠実の精神の欠如や希薄な遵法意識などの問題を反映している。このような行為に対して、本院は多くの商標権取消復審不服行政事件で処罰を科した。2016年10月、登録商標第146278号「家家JIAJIA及び図」の商標権者には虚偽の証拠を提出した行為があると認定し、行政訴訟で初めて、行政訴訟法の関連規定に基づき偽証に対し1万元の罰金を科した。信義誠実による商標登録と使用の秩序を構築するため、本院は今後も以下の多くの措置を採り全面的に偽証行為を規制する。
①証拠原本との検証や証拠審査のレベルを向上する。
②公的サイトを利用し、主導的に証拠の真実性を検証する。
③提出理由の説明と偽造証拠の結果の釈明を命じる。
④審査基準を厳格化し、3年連続不使用の商標は取消す。
⑤偽証行為を厳格に処分し、法に基づき処罰する。
⑥原因を整理し、訴訟ガイドラインを補強する。

(3)偽証行為のさらなる規制と全てのチェーンにおける保護強化に関する提案
 知的財産権保護は一つの体系的プロジェクトであり、審査登録、司法保護、業界自律などの連携における協同と協力を必要とし、知的財産権の大規模な保護活動の枠組みを構築する必要がある。商標権取消復審不服行政事件での偽証行為をさらに規制し、知的財産権の全てのチェーンにおける保護を強化するため、本院は以下に掲げる内容を提案する。
①商標の使用行為を完備する。
②信義誠実の原則を強化する。
③商標の使用証拠の審査と処罰レベルを強化する。
④司法手続きと行政手続きの連携を強化し、連動メカニズムを確立する。

2.商標権取消復審行政事件での偽証処罰典型事例
①登録商標第1486278号“家家JIAJIA及び図”事件 (2015)京知行初字第1165号
 提出された検査報告書のコピーと原本の商標の不一致、ハラル食品営業許可証の事業対象の不一致、屋外広告登録証の宣伝期間の不一致、提出された領収書の品名が不一致などの事実により1万元の罰金。対象登録商標取消。
②登録商標第3084001号“茶馬古道及び図”事件 (2020)京73行初14664号など6事件
 提出された商品の写真にある商標と中国商品情報サービスプラットフォームでの商標が不一致、領収書に記載された販売者が国家企業信用情報公示システムと当該地区の工商行政管理局で確認したが不存在及び納税者識別番号もそれぞれ不一致、領収書のコピーに記載の商品と全国増値税領収書検査プラットフォームのデータに記載されている商品とが不一致及び商標の表示なしなどの事実により3万元の罰金。対象登録商標取消。
③登録商標8403409号“緑森林小屋”事件 (2020)京73行初13177号
 提出された3枚の領収書の記載と全国増値税領収書検査プラットフォームのデータの内容が不一致などの事実により1万元の罰金。対象登録商標取消。
④登録商標第9841494号“ITSTYLE ”事件(2020)京73行初13083号
 提出された領収書のコピーには商標と商品の記載があるが、全国増値税領収書検査プラットフォームのデータに記載されている商品が不一致などの事実により1万元の罰金。対象登録商標取消。
⑤登録商標第10048229号“美琪琳”事件(2021)京73行初8597号
 提出された5枚の領収書には商標の記載があるが、全国増値税領収書検査プラットフォームのデータには記載がない、商標権者が不一致を認め証拠を撤回したためきょぎこういとして1万元の罰金。対象登録商標取消。
⑥登録商標第4579231号“Black Diamond”事件(2021)京73行初3275号
 提出された2枚の領収書のコピーは領収書の作成日と番号が同じで商品名は不一致の事実により1万元の罰金。対象登録商標取消。

参照サイト:北京知識産権法院SNSサイト

【韓国】2018年商標不使用取消増加傾向

特許審判院は2014年から2018年の商標取消審判の請求件数が増加傾向であることを発表した。取消請求件数は、この5年間で74%増加、不使用取消審決も49%増加している。

審判項目/年  2014年 2015年 2016年 2017年 2018年
取消請求   1,449件 1,903件 2,122件 2,124件 2,523件
不使用査定   970件  1,124件  1,207件  2,172件  1,444件

韓国では不使用取消請求を何人も可能としており、商標権者は請求日より3年間遡及した期間に継続して使用したことを立証する証拠を提出しなければならない(商標法第119条第1項第3号)。日本企業の韓国での登録商標も例外でなく、具体的な立証証拠を定期的に確保することが勧められる。

日本の商標実務家の間では日本国内での不使用取消に注目しているが、日本特許庁の年次報告書では、毎年平均1000件程度の取消請求がある一方、審決結果の統計データが公示されていないため、不使用取消件数は調べければならない。誰かご教示ください。

(出展:HA&HA)