【中国】「2024年商標行政法執行典型7事例」の公示(6月10日)

国家市場監督管理総局(SAMR)は、6月10日、2024年に各地の市場監督管理部門が「知的財産権保護」を目的とした特別法執行措置を実施し、内外の商標権者の権益を平等に、かつ消費者の権益を効果的に保護する良好な成果を上げた事例として、以下の7件を商標行政法執行典型事例と選定した。

1.蘇州市凱棟服装補助材料有限公司の「YKK」登録商標侵害品生産販売調査・処分事件
(江蘇省蘇州市常熟市市場監督管理局、商標法57条(3)号)
 2024年3月、他の事件で関連の侵害を発見し、当局は公安部門と共同で侵害会社を検査し、現場で「YKK」の標識が印刷されたファスナー1261本とファスナーヘッド108万個を発見した。権利者が侵害品と確認し、違法事業額は150万元。広範囲な地域、多額の資金が絡み、明確な分業体制で偽造・模倣品販売という完全な闇産業チェーンを形成されていたことから、当局と公安局が対策チームを設置し厳しく取り締まり、公安機関が事件を処分した。

2.上海愛豆菌文化伝播有限公司の第三者登録商標侵害幇助行為調査・処分事件
(上海市楊浦区市場監督管理局、商標法57条(6)号、条例75条)
 2024年4月、当局はインターネット動画プラットフォームでナイキやルイ・ヴィトンなど世界的に有名なブランドの偽造スポーツシューズの宣伝動画の大量投稿を発見し、プラットフォームは動画の削除やアカウントの停止などを講じ、その後、偽造品販売の出所とそのプロモーション・マーケティング産業チェーンを封鎖した。侵害会社は広告代理店で動画内容の審査を行わずに偽造品販売動画4本にライブストリーミングサービスを提供し、33万元を売上げていた。便宜供与の違法行為として行政処罰の罰金66万元を科した。

3.「Kayou」登録商標侵害するアニメ・漫画カード製品製造販売12社調査・処分事件
(広東省市場監督局、商標法57条(3)、(7)号)
 2024年10月、当局は東莞市東城街のアニメカード製品を製造・販売する被疑侵害会社14か所に特別法執行を実施し、浙江卡游文化伝播有限公司の登録商標「Kayou」の被疑侵害アニメカード3,448箱とプラスチックフィルム3,884枚(総額13.6万元)を押収し、12社の侵害品没収、違法所得没収、罰金などの行政処分を科した。侵害会社は商標権者が製造した箱入りの漫画カード製品を購入し、高級レアカードのみを取り出し通常のカードと入れ替え、包装を修復した後、再販売していた。

4.ハイテク産業開発区爍禾服飾工作室の「ERDOS」登録商標侵害調査・処分事件
(山東省青島市市場監督局、商標法57条)
 2024年12月、商標権者(鄂尔多斯羊絨集団)の通報より、当局は侵害会社で「ERDOS」の付いたカシミヤシャツ28枚、ズボン1枚、大量の詐称表示材料(襟ラベル2,100枚、洗濯表示ラベル6,880枚、ファスナー977個、ネット販売用携帯電話11台など)などを発見し、侵害事業額6万元と判断し、公安機関に移送し処分した。本件は、有名SNSを通じて商品情報を公開し、WeChatに誘導して1対1で取引する新たな違法ネット販売行為ですべて仮想の住所のため当局独自のシステム、各レベル監督局とWeChat運営者の協力で解決された。

5.山西銘嘉紙業有限公司の「维达」登録商標侵害調査・処分事件
(山西省陽泉市市場監督管理局、商標法57条)
 2024年7月、商標権者(維達紙(中国)有限公司)の情報提供を受け、当局は、公安局食とともに侵害会社を検査し、トイレットペーパー3,580袋、包装フィルム及び袋215kg、ロール2,650個を押収し、商標権者が侵害品と確認した。同社は2023年3月からトイレットペーパー侵害品を製造し4つのオンラインストアで販売しており、事業総額312万元以と判明した。公安機関に移送し処分した。

6.何氏の悪意商標登録調査・処分事件
 (四川省広元市青川県市場監督局、商標法4条)
 2024年5月、当局は、内部情報に基づき、何氏による被疑悪意商標登録を捜査し、2021年以降、他の地域の商標代理機関に委託し、架空の個人事業者や他人になりすまし「峨眉山」などの著名景勝地の商標102件を出願し36件の登録に成功し、商標譲渡による不当利得4,000元の事実があり、典型的な悪質な商標先取り行為に該当するため、1.2万元の罰金を科した。

7.馮氏の「赣南脐橙(贛南ネーブルオレンジ)」登録商標侵害事件
(江西省贛州市贛武県市場監督局、商標法57条(2)号)
 2023年12月、当局は、某工業団地内のネーブルオレンジ加工工場が福建省産のネーブルオレンジを贛南ネーブルオレンジとして販売しているという通報を受け、公安局と連携し検査し、馮氏が2023年10月から福建省永春県からネーブルオレンジ15万Kgを順次購入、浙江省浙江省楊梅坑工業団地の果物工場で加工し、内1万Kgを1Kg 3.15元で販売し、違法取引額31,500元が判明した。侵害行為の即時停止と9.45万元の罰金が科された。地理的表示の正当な権益が保護された。

参照サイト:https://www.samr.gov.cn/xw/zj/art/2025/art_21144964823e4f2eadf02e1cc722e78b.html

【中国】江蘇省高級人民法院は商標権侵害と営業秘密侵害の民事紛争事件審理指南(改訂版)を公示、施行(4月16日)

江蘇省高級人民法院は、2020年12月29日に江蘇省高級人民法院裁判委員会第36回全体会議で可決した商標権侵害民事紛争事件審理指南(改訂版)(江苏省高级人民法院侵害商标权民事纠纷案件审理指南(修订版))及び営業秘密侵害民事紛争事件審理指南(改訂版)(江苏省高级人民法院侵犯商业秘密民事纠纷案件审理指南(修订版))を4月16日に公布し、同日施行した。これは、2011年に施行された同指南(ガイドライン)をその後の商標法、不正競争防止法などの改正や司法解釈を反映するよう改正したものである。内容は下記の通りで、詳細かつ具体的な規定と記載のため実務者には参考になる。

●商標権侵害民事紛争事件審理指南(改訂版)
 第一部 商標権侵害民事紛争事件の審理構想概要
 第二部 商標権の有効性、商標権保護範囲の審査
 第三部 商標権侵害訴訟提訴
 第四部 商標権侵害行為
 第五部 権利衝突事件審理
 第六部 商標権侵害抗弁事由
 第七部 馳名商標認定
 第八部 民事責任負担
 第九部 その他(悪意訴訟に対する反賠償請求権、仮差止、民事制裁、非侵害確認訴訟)
 付属:訴訟事例41件

 参照サイト:http://www.jsfy.gov.cn/art/2021/04/16/11_103830.html

●営業秘密侵害民事紛争事件審理指南(改訂版)
 第一部 商業秘密侵害民事紛争事件審理概要
 第二部 商業秘密審査と認定
 第三部 商業秘密侵害行為審査と認定
 第四部 民事責任負担
 第五部 司法鑑定
 第六部 刑事民事が交差する場合の処理
 第七部 証拠保全と仮差止
 第八部 訴訟秘密情報保護
 付属:守秘承諾書及び関連法律規定

 参照サイト:http://www.jsfy.gov.cn/art/2021/04/16/11_103828.html

【中国】商標権侵害判断基準の公示(2020年6月15日)

国家知識産権局は、6月17日付で6月15日付公布の商標権侵害判断基準を公示した。本基準は昨年12月に意見募集が8章58条で公示されたものだが、国家知識産権局は、これまでの商標行政保護の経験と実務を体系的に整理総括した38条で、商標の使用、同じ商品、類似商品、同じ商標、類似商標、混同しやすい、販売免責、権利衝突、適用中止、鑑定識別などの内容を細かく規定したものと説明している。

意見募集稿との違いは、侵害判断部分での出願審査の判断が含まれる条項と例外部分の調整が主である。本判断基準で注意しなければならないことは、12条の商標の指定商品との侵害判断において、現行の区分表に基づいて判断することである。権利行使時にはこの点を十分確認する必要があり、古い登録商標しか保有していない場合、現状の事業に合った商標権を取得することが必要である。また、上位概念の指定商品や役務での登録の場合、権利行使ができないこともありうるため、具体的商品名で権利化を改めてすることが必要である。

本基準は、行政ルートの権利行使で各地の知識産権局が参照する基準であるが、主だった12項目について、以下のように簡単にまとめることができる。
1.商標の使用:商標の使用が商標権侵害行為を判定する前提要件とし、商標の使用の定義、具体的な表現形式を列挙して、商標の使用の判定原則を明確にしている。
2.同じ商品、類似商品:同じ種類の類似商品の判定原則を規定し、区分表がその判断基準になることを明確にしている。
3.同じ商標、類似商標:伝統的商標に加え、立体商標、色の組合せ商標、音声商標などの新しい商標について判断基準を明確にし、「商標審査及び審理基準」の役割を明確にしている。
4.混同しやすい:2014年の改正商標法では初めて混同しやすいについての規定がされ、2つの混同しやすいケースと考慮すべき要因を明確している。
5.商標登録者の許諾の範囲:商標使用許諾の範囲を超えたために紛争が発生した場合の判断基準を明確にしている。
6.商標権侵害の具体的行為:実務上多発しやすい商標権侵害行為の態様を挙げて、商標法の具体的な適用条項を明確にしている。
7.販売の免責:侵害を知らない状況及び仕入先の説明に関する関連条件を明確にしている。
8.他の知的財産権との衝突:商標と他の知的財産権の衝突の処理原則、商標出願日を比較基準と明確にしている。
9.先使用の抗弁:未登録商標の先使用の抗弁を規範化するために、一定の影響がある商標、原使用範囲などを明確にしている。
10.中止の適用:係争中に事件処理を中止できる状況を細分化し明確にしている。
11.再犯:5年以内に2回以上の商標権侵害行為に対する処罰を適用する基準を明確にしている。
12.権利者の認識:商標権者が発行した鑑定意見に対する法律責任を規定しており、法律執行機関は意見主体の合法性、鑑定意見の真実性、関連性及び鑑定意見を審査し証拠とする前提条件を明確にしている。

参照サイト:http://www.cnipa.gov.cn/gztz/1149656.htm
仮訳