【韓国】知財法改正施行(2024年5月1日)

韓国知的財産庁(KIPO)では、昨年末に改正されたデザイン法と商標法の改正が5月1日より施行される。

デザイン法(日本の意匠法に該当)
1.関連意匠出願期間を3年まで拡張
 現行法では、関連意匠出願ができる期間が基礎意匠出願日から1年以内であるところ、3年以内まで拡張される。
2.新規性喪失の例外主張の時期的制限削除
 現行法では、意匠出願の本人による公開日から12か月以内であれば新規性を喪失しない適用を受られるところ、当該時的制限の規定が削除された。なお、例外適用の主張時期は、出願時、登録可否決定前、異議申立に答弁書提出時、無効審判での答弁書提出時である。
3.優先権主張の要件緩和
 現行法では、優先権主張は最先の出願日から6月以内、優先権書類提出は出願日から3か月以内との時期的制限がありかつ徒過に対する救済はないところ、正当な理由がある場合に2か月の追完期間を設けるとともに、出願日から3か月以内に優先権の補正や追加ができる。

商標法
1.コンセント制度の導入
 現行法では、登録に障害となる先願や先登録商標があり審査意見書が出された場合に譲渡/アサインバックなどにより対策をしなければならないところ、先願や先登録の商標権利者から自身の商標登録に対する共存同意を得た場合、同意書を提出するだけで拒絶理由を解消できることができる。但し、対象の標章と指定商品・役務がいずれも同一である場合は適用されない。また、日本と違い完全手続き型であるため、混同の審査がなく同意書の提出があれば拒絶理由を解消できるため、同意交渉に基づく同意書の作成は不可決である。なお、現在出願継続中の案件で5月1日以降の審査意見書でも対応できる。
 注意するべきことは、コンセントに関わる登録商標の当事者のいずれも不正競争の目的で商標を使用し、誤認混同や品質誤認になると認定された場合、その混同や誤認をさせることになった商標権は、審判で無効取消され、関係当事者は無効取消後3年間同一の標章を登録できなくなることに注意が必要である。また、先行商標以外の拒絶理由がある場合は個別に対尾する必要がある。
 *共存同意書の提出可能時期
 ∙ 出願公告前:出願時から出願公告または特許庁の拒絶決定前まで
 ∙ 出願公告後:異議申立に対する答弁書提出期限或いは
        特許庁の職権拒絶に対する意見書提出期限内
 ∙ 再審査請求時:再審査請求期限内(拒絶決定書受領後3ヶ月以内)
 ∙ 拒絶決定不服審判請求時:請求時から審理終結前まで
 *共存同意書に記載されるべき事項
  同意日、先登録(出願)の詳細、出願商標の詳細、共存同意の指定商品・役務の範囲、共存同意での登録商標であることの登録原簿記載に対する同意、当事者の署名か捺印
 *認められない共存同意書
   条件付き同意、包括的同意、1商標1出願に違反に対する同意
2.マドプロ国際商標出願および基礎登録商標権分割出願の制限解除
 現行法では、韓国を指定した国際商標出願の韓国の手続きで当該出願の分割および基礎登録商標権分割出願ができるように制限する規定を改正或いは削除した。
3.国際商標登録出願の国内登録商標の部分代替認可導入
 最近改正されたマドリッド議定書規則に一致させせるため、国内登録商標の指定商品が国際登録商標の指定商品の「すべて」を「一部のみ」を含む場合も部分代替を認める規定を導入した。

参照サイト:KIPO、Kim&Chan

【ミャンマー】商標法施行(2023年4月1日)

ミャンマー知的財産局(IPD)のフェイスブックサイトIP Myanmarは、3月10日付の公告No. 82/2023 により、懸案となっている商標法を2023年4月1日より施行することが発表された。4月に入り、IPDのFacebookサイトに詳細が随時掲載され始めており、商標法規則が3月31日に公布され、予定通り4月1日(土曜日)に施行され、4月3日より出願費用の納付が開始された。ソフトオープニング期間中の商標出願があれば、以下の1の対応になり、現地代理人から委任状と費用請求が通知されるので、必要な手続きを2023年5月31日(延長、6月30日)までに完了することになる。なお、未出願の重要商標があれば、早急に出願することが勧められる。なお、過去の登記所での登記(コーショナリー登録)に基づく商標出願(93条(a)項)は2023年10月25日まで可。(更新日:5月22日)

詳細は随時追加しているが、現在、現地から得られている情報は以下の通り、
1.ソフトオープニング期間の商標出願対応
  料金の発表 4月1日 現地語の料金表 
   出願費用 1区分 15万チャント 約US$72、約9700円
   登録費用   同上
    上記に加えて5%の税金
  納付開始  4月3日 現地語の納付方法 5月31日までが延長6月30日まで
  必要書類  代理人委任状(Form2)+公証 
        複数の出願がある場合、1枚にまとめること可
  登録手続き 上記委任状と出願費用を5月31日までに納付すると、
        出願日が通知される、そして、登録段階(登録料納付)に入る。
        現地語の公示
2.グランドオープン
  開始時期  4月26日
  出願対象  再登録対象商標、新規商標
  出願書類  願書(Form1)、代理人委任状(Form2)+公証
  出願費用  1区分 15万チャント 約US$72、約9700円+税
  審査    方式審査後公開
  異議申立  公開日から60日以内、異議申立なければ登録認可
  登録    現在のところ、異議申立がなければ出願後12か月を予定
        登録時費用は出願費用と同じ
  権利期間  出願日起算10年間 更新は6か月前から可、グレース期限6か月

上記の後、意匠法、著作権法の施行、その後、特許法、地理的表示法の施行となる予定だが来年以降の話になりそうである。

以下オフィシャルフィー料金表

参照サイト:https://www.facebook.com/ip.myanmar/?ref=page_internal

【マレーシア】商標法改正施行(2019年12月27日)

マレーシア知的財産庁(MyIPO)は、12月27日付、マドプロ国際商標条約への加盟発効及び国内商標法の改正施行を公示した。改正内容は下記の通り。

  • 保護対象を非伝統的商標に拡大
    音、色(単色或いは組合せ)、ホログラム、位置、におい、形状(商品自体かパッケージ)、動き、及び商標要素の組合せの出願が可能になった
  • 多区分一出願の導入
  • 団体・証明商標制度の導入と防御商標制度の廃止
  • 出願日認定の明確化
    従来の出願受付日から、未補完書類や外国語商標の翻訳や翻案がある場合、補完が完成した時点で、出願日が認定されるように変更となった。優先権主張のある場合、優先権主張日まで出願日(登録日と見なし)は繰り下がらない。優先権主張を伴う出願の場合、先願による排除権のみが機能する
  • 拒絶理由通知の明確化
    絶対的拒絶理由と相対的拒絶理由に分けた審査がされるようになる。また、当事者の同意書を審査に活用するコンセント制度を導入、但し無条件受け入れではない
  • 分割出願及び出願併合制度を導入
  • 登録証発行廃止
    簡便なシールを添付した認可通知が発行される。登録証が必要な場合は、別途有料で発行を請求することができる
  • 登録確定の推定期間の短縮
    除斥期間が7年から5年に短縮された
  • 不使用取消理由の追加
    商標が希釈化し一般名称となった場合、また、品質、性質や地理的出所などと誤認されるようになった場合も、不使用取消の対象となる。
  • ライセンス登録義務の廃止
    被許諾使用者の登録義務を廃止し、ライセンス契約書があれば第三者対抗要件となる。なお、ライセンス登録は可能であるため、ライセンス登録をお勧めする。
  • 商標権侵害の拡大解釈導入
    指定商品や役務の解釈を類似するところまで、禁止権を拡大解釈するように変更した。また、侵害行為者を侵害寄与や侵害関係者として、代行、保管、展示などの行為者も侵害行為者に含む。こうしたことから原告の侵害立証義務が少し緩和されると思われる
  • 模倣品対策の規定導入
    虚偽表示や誤認させる使用に対する罰金1万リンギットを規定した
  • 理由のない警告に対する救済の導入
    単純な警告から訴訟など具体的な権利行使に動く可能性が高い
  • 担保権の導入
    商標権も一般物件と同様に担保の対象となった
  • 弁護士依頼者間の秘匿特権の規定
  • 移行措置
    旧法中出願の係属中出願には旧法が適用されるが、新法の適用を請求する権利が出願には留保されている。

参照サイト:
商標法 http://www.myipo.gov.my/wp-content/uploads/2019/12/ACT-815-TRADEMARKS-ACT-201.pdf
ガイドライン https://drive.google.com/file/d/1go_DlUdCQ3wpKM2oMhlR6yKjPzgA_63I/view

【カナダ】商標法改正施行(2019年6月17日)

かねてより商標法改正を進めていたカナダ知的財産庁(CIPO)は、とうとう改正を施行する。これまので使用主義から先願主義にかわるため、使用宣誓書が不要になる。このため、中国のように先取りなど意識した悪意商標出願の懸念がされている。ここでは、主要な改正と経過措置をご紹介する。

主要な改正は下記の通り;
(1)非伝統的商標まで保護対象を拡大; 立体形状、色彩、ホログラム、動き、音声、におい、味覚、触感。なお、非伝統的商標の識別性の審査をするための証拠等を要求する可能性があることに注意するべきである。
(2)ニース商品役務分類の採用; 現行法の商標出願では分類は必要でなかったが、改正法施行後の全ての新規商標出願にはニース分類に従った分類が付与されるため、出願時には分類を特定することになる。
(3)出願ベースの廃止; 改正法施行後の商標出願では、使用、使用意図、本国出願・登録、本国使用など出願の基礎理由(ベース)が不要になる。現行法の商標出願で使用予定ベースとした場合、改正法施行後に使用宣誓書の提出は不要になる。
(4)連合商標制度の廃止; 今後は連合関係の登録商標の移転が緩和される。
(5)優先権主張; 改正法施行後の商標出願では、優先権出願が基礎出願から6か月以内に認められる。この期間は延長される可能性がある。
(6)出願オフィシャルフィーは区分数に準ずる変更; 現行法では出願料は一律CA$250(カナダドル)であるが、改正法施行後は出願する商品や役務の区分数に準ずるため、最初の1区分がCA$300、追加1区分毎にCA$100(オンライン出願の場合)になる。なお、登録料は廃止される。
(7)識別性の審査の導入; また、識別性の審査が改正され、記述的や単なる氏名や名称での識別性の審査から単なる識別性まで拡大される。
(8)分割出願の導入; 改正商標法規則での大きな変更として、出願を2個以上の出願に分割することができるようになったし、後日併合することもできるようなった。これは、異議申立を受けた場合などの有効であり、OAや異議申立を受けた場合に、その対象となった商品や役務を分割し、その他の部分を先に登録することができる。分割出願については出願費用を支払う必要があるが、引き続き出願日を維持しながら係属することができるメリットがある。また、登録時に既に登録になっている元の出願と併合し管理を一括にすることができるのは良い制度である。
(9)使用宣誓書の廃止; 改正商標法規則での大きな変更として、使用宣誓書提出にかかる要件が廃止された。つまり、認可通知後に登録料を支払うことで速やかに登録になり、使用宣誓手続き関連が廃止されたのは出願人にとって負担が軽減された。
(10)権利期間の変更と更新出願; 登録日から15年が10年に短縮される。 更新出願は満了日6か月前から、満了日後6か月或いはCIPOからの更新通知の受領後2か月以内のどちらか遅い方までにに可能となった。更新出願のオフィシャルフィーは現行法では区部数に関係なくCA$350であるが、改正法施行後は、最初の1区分がCA$400、追加1区分毎にCA$125になる。従って、現行法での登録商標は、ニース分類に従った書き換えを行い、その区分数に従った更新出願オフィシャルフィーの支払いとなる。
(11)マドプロ商標出願の導入; カナダはマドリッド協定議定書に基づく商標国際登録制度の締約国になる手続きを3月17日に行い、改正法の施行とともに発効する。OA対応や異議申立期間はそれぞれ18か月以内である。併せて、シンガポール条約にも加盟する。
(12)その他の事項;出願内容の公告前の補正が実質的な変更がないことを条件に認められる、譲渡や移転登録手続きでの立証証拠提出要件の廃止し明確な連絡先のみを求めるようになった、先使用権者の権利については、異議申立で対応するとの立場をとる。

以上、ご参考まで。

https://www.ic.gc.ca/eic/site/cipointernet-internetopic.nsf/eng/wr04254.html

【アルゼンチン】改正商標法施行(2019年6月3日)

アルゼンチン知識産権局(INPI)は政令242/2019を4月3日公示し、改正商標法No.27,444(公示日:2018年5月30日)を2019年6月3日に施行する。また、政令123/2019が5月27日に公示され、更新、使用宣誓書、及びOA自動延長期限についても明らかにした。

主な改正内容は下記の通り;
(1)使用による自他識別性のある形状(Shape&Form)の標章が登録可能になる。
(2)アルゼンチンで登録された国内外の地理的表示(GI)は、商標登録できない。
(3)更新に猶予期間を導入、更新期限後6か月まで追加費用の支払いにより更新かのうになる。保護満了日の前6か月から後6か月までの期間、更新手続きが可能となった。
 注意:使用宣誓書の導入により、2013年1月12日以降に登録になったすべての登録商標の更新時には使用宣誓書を同時に提出しなければならない。この場合、使用宣誓書遅延提出費用の支払いが必要であることに注意する。また、使用宣誓書が提出されていない場合、更新出願は拒絶される。
(4)登録後5年目に使用宣誓書提出義務の導入により、2013年1月12日以降に登録になったすべての登録商標が対象で、5年目と6年目の間に使用宣誓書を提出しなければならない。経過措置として、2018年1月12日から2019年6月3日の間に提出義務のある登録商標については、2020年1月12日までの猶予期間を設けている。2019年6月4日以降に5年目を迎える登録商標は6年目の期日までに提出することになる。こうした手続きがされていない場合、課徴金の発生や不使用とみなされることになる
(5)不使用取消及び絶対的拒絶理由による取消及び無効手続きに知識産権局での行政手続きを導入した。これら以外は従来通り商事裁判所での手続きとなる。
(6)OA自動延長期間が短縮され、初回10日間、2回目5日間になる、官費については不明。

(出典:RICHELET & RICHELET)