日本でも報道されている外商投資法を国務院は第13期全国人民代表大会（全人代）第2回会議において3月15日付で成立させた。再来年の2020年1月1日から施行される。これまで外国企業の中国投資に対して適用されてきた「中外合資経営企業法」、「外資企業法」、と「中外契約経営企業法」は廃止されて、外国からの投資にかかる統一基本法なる。
本外商投資法は、2015年に草案が作成されて昨年末まで意見募集がされていたが、米中間の貿易交渉の過程で押し切られた感じである。草案と比べて、行政機関や職員に対する営業秘密の守秘義務が追加され、設立される組織に対して会社法、パートナーシップ企業法などの適用、事業者集中に対する独占禁止法の適用が明確にされた。なお、第40条の規定は中国が不公平な措置を採られた場合の対抗規定になっているため各方面から懸念が示されている。
外商投資法は全6章42条から構成される
第一章 総則（第1－8条）
第二章 投資促進(第9－19条)
第三章 投資保護(第20－27条)
第四章 投資管理(第28－35条)
第五章 法律責任 (第36－39条)
第六章 附則（第40－42条）
知的財産に関連する投資保護や法律責任の関連条文のみを抽出し、仮訳でご参考とする。
第一章 総則
第1条 対外開放の一層の拡大を図るため、外商投資を積極的に促進し、外商投資の合法的権益を保護し、外商投資管理を規範化し、全面的な開放の新たな枠組みの形成を推進し、社会主義市場経済の健全な発展を促進するために、憲法に基づき、本法を制定する。
第三章 投資保護 (第20－27条)
第21条 外国投資者は中国国内での出資、利益、資本収益、資産処理所得、知的財産権ライセンス料、法により獲得した補償或いは賠償、生産所得など、法に基づき人民元或いは外貨により自由に海外出入金することができる。
第22条 国は外国投資者及び外商投資企業の知的財産権を保護し、知的財産権者及び関連する権利者の合法的権益を保護する。知的財産権を侵害する行為に対しては、法に基づき厳格に法律責任を追及する。
国は外商投資手続きにおいて自由意志の原則及びビジネスルール基づく技術提携を奨励する。技術提携の条件は投資当事者双方が公平の原則を遵守し平等に協議して確定する。行政機関及びその職員は行政手段を利用して技術譲渡を強制してはならない。
第23条 行政機関及びその職員は職責を履行する過程において知り得た外国投資者、外商投資企業の営業秘密を法に基づき秘密保持しなければならず、公表或いは違法に第三者に提供することはできない。
第24条 各クラスの人民政府及びその関連部門が外商投資に関する規範性文書を制定する場合、法律法規の規定に合致しなければならない。法律、行政法規の根拠なく、外商投資企業の合法的権益を減損させる、或いはその義務を増加させてはならず、市場参入及び退出にかかる条件を設置してはならず、外商投資企業の正常な生産事業活動に干渉してはならない。
第五章 法律責任 (第36－39条)
第36条 外国投資者が外商投資参入ネガティブリストで禁止する分野へ投資を行った場合、関係主管部門は投資活動の停止を命じ、期限を定めて持分、資産を処分或いはその他の必要な措置を採り、投資実施前の状態に回復させる。違法所得がある場合は、違法所得を没収する。
外国投資者の投資活動が外商投資参入ネガティブリストの所定制限性参入特別管理措置に違反した場合、関係主管部門は期限を定めて是正を命じ、参入特別管理措置の要件を満たすよう必要な措置を採る。期限を過ぎても是正しない場合、前項規定を参照して処理する。
外国投資者の投資活動が外商投資参入ネガティブリストの規定に違反した場合、前項2項の規定を参照して処理すること以外に、法に基づき相応の法律責任を負わなければならない。
第37条 外国投資者、外商投資企業が本法規に違反した場合、外商投資情報報告制度が求め投資情報を送信していない場合、商務主管部門は期限を定めて是正を命じる。期限を過ぎても是正しない場合、10万元以上50万元以下の罰金を科す。
第39条 政府関係機関の職員が外商投資の促進、保護、管理の業務において職権を濫用し、職務を怠慢し、私利私欲を図った場合、或いは職責履行中に知り得た営業秘密を公表、第三者に違法に提供した場合、法に基づき処分する。犯罪を構成する場合、法に基づき刑事責任を追及する。
第六章 附則（第40－42条）
第40 条 いかなる国或いは地域が投資において中華人民共和国に対して差別的な禁止、制限或いはその他の類似する措置を取る場合、中華人民共和国は実際の状況に基づき、そのような国や地域に対して相応の措置を採る。
参考サイトは下記の通り。
http://www.npc.gov.cn/npc/xinwen/2019-03/15/content_2083532.htm