【中国】「商標出願早期審査弁法」の施行(2025年7月18日)

国家知識産権局は、7月18日付、第634号公告を公示し、「商标注册申请快速审查办法(商標登録申請早期審査弁法)」が2025年7月7日付成立し、公布日から施行した。本弁法は、すでに2022年1月18日に「商標登録申請早期審査弁法(試行)」として施行しており、昨年11月に意見募集したものを正式に施行したものである。

本弁法の対象は、対象商標出願を2条で限定している通り、原則は中国企業となるため、外国からの出願は対象とならないため、あえて言えば、外国企業の現地法人であり、社会貢献になるような文字商標である場合に限定されるので、使い勝手はない制度と言える。
試行版との大きな違いは、第2条(1)号に具体的なビジネス対象として、宇宙ビジネス(商业航天)、低空域空経済(低空经济)、深海科学技術などの国家発展戦略の新興産業とバイオものづくり(生物制造)、量子科学技術、身体性知能(具身智能)、6 Gなどの未来産業に関連するとともに、商標専用権取得に緊急性がある場合を加えたところである。

以下ご参考まで、本弁法の仮訳である。

商標登録出願早期審査弁法
第1条 国の質の高い発展に奉仕するために、知的財産権分野のイノベーション環境の最適化とビジネス環境の改革のため政策決定体制を実行し、知的財産権審査の質と審査効率を持続的に向上させ、商標ブランド戦略を進化させ、法に基づき国家利益、社会公共の利益或いは重大な地域発展戦略に関わる商標登録出願を早期に審査し、審査モデルをイノベーションし、審査手続きを改善するために、「中国商標法」、「中国商標法実施条例」の関連規定に基づき、実際の商標実務と結びつけて、本弁法を制定する。
第2条 以下に掲げるいずれかの情況を備える商標登録出願には、早期審査を請求することができる:
(1)宇宙ビジネス(商业航天)、低空域空経済(低空经济)、深海科学技術などの国家発展戦略の新興産業とバイオものづくり(生物制造)、量子科学技術、身体性知能(具身智能)、6 Gなどの未来産業に関連するとともに、商標専用権取得に緊急性がある場合;
(2)国或いは省クラスの重要事業計画、重要プロジェクト、重要科学技術インフラ、重要イベント、重要展覧会及び重要な文化遺産などの標章に関し、商標保護の緊急性がある場合;
(3)省クラスの人民政府が推進する現代化産業システム、新質生産力開発を中心とする産業チェーンに関連し、かつ商標がすでに使用されている場合;
(4)特に重大な自然災害、事故災害、公衆衛生事件、社会安全保障事件などの突発的社会事件の発生時期に、当該突発的社会事件の対応に直接関係がある場合;
(5)経済社会の質の高い発展に奉仕し、知的財産権強国建設要綱の実施を推進するためには確かに必要、或いは国益、社会公共の利益或いは重大な地域発展戦略を維持するために重大な現実的意義があるその他の事情がある場合。
第3条 商標登録出願に早期審査を請求する場合、以下に掲げる条件を同時に満たさなければならない:
(1)出願人全員の同意を得ていること;
(2)電子申請方式を採用していること;
(3)登録申請する商標標章は、文字、図形、字母(アルファベット)、数字或いは以上の要素の組合せであること;
(4)指定商品或いは役務は、第2条に掲げる情況と密接に関連し、かつ国家知識産権局が公示した受入れ可能な商品と役務の名称であること;
(5)優先権を主張していないこと;
(6)団体商標、証明商標の登録出願でないこと。
第4条 商標登録出願に早期審査を請求する場合、国家知識産権局に以下に掲げる資料を書面で提出しなければならない:
(1)商標登録出願早期審査請求書;
(2)本弁法第2条の規定に適合する証明資料;
(3)党中央と国家機関の関連部門、省クラス人民政府或いはその弁公庁が発行した早期審査請求に対する推薦意見、或いは省クラスの知的財産権管理部門が発行した早期審査請求理由及び関連資料の真実性に対する審査意見。
第5条 国家知識産権局は、早期審査請求の受領後、申請資料を厳格に審査する。本弁法の規定に適合する場合、早期審査を許可する。本弁法の規定に適合しない場合、早期審査せず、5営業日以内に早期審査請求人に通知する。
第6条 国家知識産権局が早期審査を許可した場合、20営業日以内に審査を完了しなければならない。早期審査しない場合、法律に規定する一般的手順に従い審査する。
第7条 早期審査の過程で、商標登録出願に以下に掲げるいずれかの情況を発見した場合、早期審査手続を終了することができる:
(1)商標登録出願が法により補正、説明或いは修正する、または同日出願審査手続を行う場合;
(2)商標登録出願人が早期審査請求を提出後、審査猶予請求を提出した場合;
(3)早期審査ができないその他の事情がある場合。
第8条 早期審査された商標登録出願が法に基づき審査決定が出された後、法律の関連規定に従い、関連主体は、初歩的審査公告された商標登録出願に異議申立、拒絶或いは一部拒絶された商標登録出願に拒絶査定再審請求を提出できる。
第9条 国家知識産権局は、商標登録出願の早期審査を処理する場合、法に基づき厳格に職責を履行し、公正に職権を行使し、規律検査監察部門の監督を受け、早期審査活動が監督の下で規範性、透明性を確保しなければならない。
第10条 本弁法の解釈は、国家知識産権局が責任を負う。国家知識産権局商標局は、商標登録出願の早期審査の具体的な業務を担当する。
第11条 本弁法は公布の日から施行する。商標登録出願早期審に関するその他の規定が、本弁法と抵触する場合は本弁法を基準とする。原「商標登録出願早期審査弁法(試行)」(国家知識産権局第467号)は同時に廃止する。
添付:1.商標登録出願早期審査請求書
   2.商標登録出願早期審査処理指南

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2025/7/18/art_569_200677.html

【中国】「商標出願早期審査弁法」(意見募集稿)の公示(11月29日)

国家知識産権局(CNIPA)は、11月29日、従来試行してきた「商標登録出願に関する早期審査弁法(試行)」を正式に施行する改正案を公示し、一般の意見募集を開始した。弁法(試行)は、国内各地の発展を擁護するために、2022年1月18日に施行されたが、地方政府の推薦書を必要とするのため、外国企業にとっては現地法人のみが利用できる可能性がある程度で利用できるものではない規則であり、改正案でもその条件が残っているため、利用できないことに注意が必要である。

 今回の改正は、従来試行としてきた弁法(規則)の運用の結果、その目的とする「国家発展の戦略的新興産業と未来産業の利益の保護が十分ではないこと、省クラスの人民政府が関係の商標保護規定を設けていないこと、対象となる標章が文字商標に限られること、指定できる商品とサービスの名称が「類似商品とサービス区分表」に記載される標準的名称に限られることで十分機能していないことから改正するとしている。
 改正案は、次世代情報技術、バイオ技術、新エネルギー、新素材、ハイエンド機器、新エネルギー車両、グリーン環境保護、航空宇宙、海洋機器などの国家発展戦略的新興産業とAI、量子情報、遺伝子技術、未来ネットワーク、深海・宇宙開発、水素エネルギーとエネルギー貯蔵などの未来産業、そして商標専用権の取得が喫緊に必要な状況を出願可能な範囲に組み込むなどその保護対象を具体的にし、出願標章や指定商品も柔軟に対応できる内容となっている。
 参考まで、主要条文は以下の通り
 第3条 早期審査を請求する商標出願は、以下に掲げる条件を同時に満たさなければならない:
 (1)出願人全員の同意がある場合;
 (2)電子出願方式を採用する場合;
 (3)出願する商標の標章が文字、図形、アルファベット、数字或いは以上の要素の組合せである場合;
 (4)団体商標、証明商標の出願でない場合;
 (5)指定する商品或いはサービスが第2条に記載される情況と密接に関連し、かつ国家知識産権局が公表した受入れ可能な商品及びサービスの名称である場合; (6)優先権主張しない場合。
 第6条 国家知識産権局は早期審査を許可した場合、承認日から20営業日以内に審査を完了しなければならない。

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2024/11/29/art_78_196343.html