【中国】最高人民法院の2020年度十大知財事件など公示(4月22日)

最高人民法院は4月22日、知的財産権宣伝週間に合わせて、2020年度の知的財産権民事訴訟状況、十大知的財産権事件、50知的財産権典型事件、及び「人民法院知的財産権司法保護戦略(2021—2025年)」を記者発表会で公表した。

1.2020年度民事訴訟情況
 2020年度全国の人民法院が新たに受理した、知的財産権関連民事訴訟の一審、二審、再審の新規受理事件数は525,618件、結審数は524,387件と前年比それぞれ+9.1%と+10.2%の増加した。結審した事件には、RedBull(红牛)商標権帰属紛争を含むなど国内外の権利者の合法的権益を平等に保護していていると指摘している。
参照サイト:http://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-298141.html

2.人民法院知的財産権司法保護戦略(2021—2025年)(法発〔2021〕14号)
 最高人民法院は、第14次5か年計画(十四五)の初年度にあたり、司法保護戦略を公示し、地方の法院及び関係部署に通知した。本司法保護戦略は、5編19項目からなり、特に効果を上げる分野として以下の5項目を挙げている。
(四)科学技術イノベーションの成果の保護強化
(五)著作権と関連権利の保護強化
(六)商業標識の保護強化
(七)独占禁止と不正競争防止の審判強化
(八)知的財産権侵害行為に対する処罰力強化

参照サイト:http://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-298141.html

3.2020年度知的財産権紛争十大事件と50典型事件(法処〔2021〕146号)
①アップルコンピュータ貿易(上海)有限公司と国家知識産権局、上海臻智能网络科技股份有限公司の発明特許無効宣告請求行政紛争事件
 〔最高人民法院(2017)最高法行再34号行政判決書〕
②華為技術有限公司、華為端末有限公司、華為軟件技術有限公司とCONVERSANT Wireless Licensing S.à.r.lの特許権非侵害確認及び標準必須特許許諾紛争3事件
 〔最高人民法院(2019)最高法知民終732、733、734号民事裁定書〕
③Red Bull Vitamin Beverage Co., Ltd.と天丝医薬保健有限公司の商標権帰属紛争事件
 〔最高人民法院(2020)最高法民終394号民事判決書〕
④蘇州賽芯電子科技有限公司と深圳裕昇科技有限公司、戸財歓、黄建東、黄賽亮の侵害集積回路配置設計専有権侵害紛争事件
 〔最高人民法院(2019)最高法知民結局490号民事判決書〕
⑤武漢大西洋連鋳設備工程有限責任公司と宋祖興公司の分配紛争事件
 〔最高人民法院(2019)最高法民再135号民事判決書〕
⑥OPPO広東移動通信有限公司、OPPO広東移動通信有限公司深圳支社とシャープ株式会社、ScienBiziP Japan株式会社の標準必須特許許諾紛争事件
 〔広東省深圳市中級人民法院(2020)広東03民初689号民事裁定書〕
⑦上海玄霆娯楽情報科技有限公司と成都吉乾科技有限公司、四三九九網絡股份有限公司の著作権侵害紛争事件
 〔江蘇省高級人民法院(2018)蘇民終末1164号民事判決書〕
⑧深圳市騰訊計算機系統有限公司、騰訊科技(深圳)有限公司と浙江捜道網絡技術有限公司、杭州集客通科技有限公司の不正競争紛争事件
 〔浙江省杭州鉄道運輸法院(2019)浙8601民初1987号民事判決書〕
⑨恵州市壱佰娯楽有限公司と中国音像著作権集団管理協会の独占紛争事件
 〔北京知識産権法院(2018)京73民初780号民事判決書〕
⑩李海鵬など9名による著作権侵害事件
 〔上海市高級人民法院(2020)上海刑終105号刑事裁定書〕
>50典型事件は以下の通り
 1.知識産権民事訴訟
  (1) 特許権帰属、侵害紛争事件  4件
  (2) 商標権侵害紛争事件    14件
  (3) 著作権帰属、侵害紛争事件 10件 
  (4) 不正当競争、独占禁止事件 10件
  (5) 植物新品種、技術契約、禁制紛争事件 3件
 2.知的財産権行政訴訟 4件
 3.知的財産権刑事訴訟 5件

参照サイト:http://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-297991.html

【中国】最高知識産権法院で初めての民事行政事件合同審理実施(12月5日)

2019年に最高人民法院に最高知識産権法院が設立されてから、初めての民事第二審と行政第二審が、「集中審査期間」に同時に行われた。これは対象特許や紛争当事者が同じものであり、民事事件と行政事件の同時裁判における新しい試みであり、今後こうした事案は増える方向にあると思われる。

民事訴訟は、厦門実正電子科技有限公司が「過熱保護回路構造」の実用新案特許ZL201220203855.0を侵害するとして、楽金電子(天津)電器有限公司、烟台万昌電器有限公司と浙江天猫网絡有限公司を浙江省杭州市中級人民法院に2017年10月25日に提訴し、保護範囲に入らないため非侵害との判決が2019年3月20日に下された事件((2017)浙01民初1405号))に対する第二審((2019)最高法知民終366号)で、原審維持の判决が下された。

行政不服訴訟は、楽金電子(天津)電器有限公司が専利復審委員会に本件実用新案特許ZL201220203855.0に対して、進歩性なしによる無効取消を2018年1月9日請求したが先行技術文献が異なる技術的特徴のため進歩性ありとの審決(第36449号)を下したことに対する行政不服訴訟を北京知識産権法院に申立て、北京知識産権法院が原審維持の判決((2018)京73行初8992号))を2019年7月1日に下し、この判決の取消を求めた第二審((2019)最高法知行終142号))で、こちらも原審維持の判決が下された。

この試みでは、保護範囲や解釈の違いや矛盾を減らすために同じ技術調査官を指名していること、当事者の座席配置の問題は円卓会議のように当事者を両側、専利復審委員会が真ん中に着席するようにしたこと、判決を一般が理解しやすいように「案件の審理経過」、「事実認定」、「判決の要旨」を明記するようにしたことが指摘されている。

本件の結果は原審維持であるが、もし「新たな証拠」や「事実認定の違い」或いは外的要因などなどが訴訟中に生じた場合はどうなるのであろうか、法院長のお考えのようになるほうが良いように個人的には考えるがどうなるか注目していきたいところです。

参考サイト:https://www.chinacourt.org/index.php/article/detail/2019/12/id/4716813.shtml

【中国】最高人民法院による知識産権法庭の若干問題に関する規定[法釈2018]22号 (2018年12月27日公布、2019年1月1日施行)

11月2日付ご紹介した最高人民法院の10月27日付の「特許等知的財産権訴訟手続きの若干の問題に関する決定」で設立され、特許権など訴訟専門第二審である最高人民法院内の「知的財産法庭」の設置とその役割を明確にする規定が2018年12月27日付公布された。

本規定は全15条からなり、注目する点は第2条の対象訴訟事件、第4条の当事者の同意を条件とした訴訟内容の公開、第5、6条の訴訟手続きでのビデオ会議や巡回裁判、及び第12、13条の経過措置である。

第2条 知識産権法庭は下記に掲げる事件を審理する; (1)高級人民法院、知識産権法院、中級人民法院が作成した発明特許、実用新案特許、植物新品種、集積回路配置設計、技術秘密、コンピュータプログラム、独占の第一審民事事件の判決や裁定に不服の上訴事件;
(2)北京知識産権法院が発明特許、実用新案特許、意匠特許、植物新品種、集積回路配置設計の登録確認の第一審行政事件判決や裁定に不服の上訴事件;
(3)高級人民法院、知識産権法院、中級人民法院が発明特許、実用新案特許、意匠特許、植物新品種、集積回路配置設計、技術秘密、コンピュータプログラム、独占の行政処罰など第一審行政事件の判決や裁定に不服の上訴事件;
(4)本条第1、2、3項で言う第一審民事と行政事件で全国での重大、複雑な事件;
(5)本条第1、2、3項で言う第一審事件において既に法律効力が発生した判決、裁定、調停書に法に基づき再審請求、控訴、再審など裁判監督手続きが適用された事件;
(6)本条第1、2、3項で言う第一審事件の管轄権争議、罰金、禁固決定に対する再審請求、審理延長請求などの事件;
(7)最高人民法院は知識産権法庭が審理したその他の事件も認定しなければならない。

なお、2019年1月1日付で最高人民法院内の「知的財産法庭」は正式に設置された。また、庭長は羅東川、副庭長は、王闯、周翔、李剣の3名、他に最高人民法院裁判官が6名、北京市高級人民法院と知識産権法院から5名、元専利復審委員会から3名、上海市から2名、浙江省、江蘇省、厦門市、山東省、湖北省、湖南省、広州市から各1名で合計23名の裁判官が配属されている。

参考サイトは下記の通り。

http://www.court.gov.cn/fabu-xiangqing-137481.html

http://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-137821.html