【日本】最高裁は外国サーバに基づく特許侵害認定(2025年3月3日)

日本の最高裁は、2025年3月3日、動画配信サービス「ニコニコ動画」の提供者である株式会社ドワンゴ(原告)がFC2, Inc.(被告1)と株式会社ホームページシステム(被告2)を日本の特許権を侵害すると提訴した上告審で、二審判決を維持し、上告棄却の判決を下した。これにより、外国に所在するサーバのプログラムを日本国内で利用できる場合、特許法にいう「提供」に該当するとして、従来の属地主義の原則の判例に基づかない、日本の特許権を侵害するとの初めての判決を下すとともに、外国に所在するサーバをシステムの要件した場合、特許法にいう「生産」に該当するとの判決も下した。

事件概要
●対象特許(1):4734471 「表示装置、コメント表示方法、及びプログラム」
原審 2018年9月19日    平成28(ワ)38565 請求棄却
二審 2022年年7月20日 平成30(ネ)10077 原審判決取消(侵害判断)
上告 2025年3月3日       令和5年(受)第14号、第15号 上告棄却
 *特許法2条3項1号 外国に所在するサーバのプログラムの提供に該当する
    同101条1号 「譲渡等」に該当する
●対象特許(2):6526304 「コメント配信システム」
原審 2018年9月19日 令和1(ワ)25152 請求棄却
二審 2023年5月26日 令和4(ネ)10046 原審取消一部変更(侵害判断)
上告 2025年3月3日   令和5年(受)第2028号 上告棄却
 *特許法2条3項1号 外国に所在するサーバを構成要件とすることが生産に該当する
以上の判決により、二審判決の侵害差止と損害賠償を確認した。

 判決文によると、4734471に関しては、「電気通信回線を通じた国境を越える情報の流通等が極めて容易となった現代において、プログラム等が、電気通信回線を通じて我が国の領域外から送信されることにより、我が国の領域内に提供されている場合に、我が国の領域外からの送信であることの一事をもって、常に我が国の特許権の効力が及ばず、上記の提供が「電気通信回線を通じた提供」や「譲渡等」(一部編集)に当たらないとすれば、特許権者に業として特許発明の実施をする権利を専有させるなどし、発明の保護、奨励を通じて産業の発達に寄与するという特許法の目的に沿わない」とするとともに、「本件配信は、我が国で本件各サービスを提供する際の情報処理の過程として行われ、我が国所在の端末において、本件各プログラム発明の効果を当然に奏させるようにするものであり、当該効果が奏されることとの関係において、前記サーバの所在地が我が国の領域外にあることに特段の意味はないといえる」とし、「そして、被上告人が本件特許権を有することとの関係で、上記の態様によりされるものである本件配信が、被上告人に経済的な影響を及ぼさないというべき事情もうかがわれない。」と結論付けました。
 4734471に関しては、「電気通信回線を通じた国境を越える情報の流通等が極めて 容易となった現代において、サーバと端末とを含むシステムについて、当該システ ムを構築するための行為の一部が電気通信回線を通じて我が国の領域外からされ、 また、当該システムの構成の一部であるサーバが我が国の領域外に所在する場合に、我が国の領域外の行為や構成を含むからといって、常に我が国の特許権の効力が及ばず、当該システムを構築するための行為が特許法2条3項1号にいう「生産」に当たらないとすれば、特許権者に業として特許発明の実施をする権利を専有させるなどし、発明の保護、奨励を通じて産業の発達に寄与するという特許法の目的に沿わない」とするとともに、「本件システムを構築するための行為及び本件システムを全体としてみると、本件配信による本件システムの構築は、我が国所在の端末を使用するユーザが本件各サービスの提供を受けるため本件各ページにアクセスすると当然に行われるものであり、その結果、本件システムにおいて、コメント同士が重ならないように調整するなどの処理がされることとなり、当該処理の結果が、本件システムを構成する我が国所在の端末上に表示されるものである。これらのことからすると、本件配信による本件システムの構築は、我が国で本件各サービスを提供する際の情報処理の過程としてされ、我が国所在の端末を含む本件システムを構成した上で、我が国所在の端末で本件各発明の効果を当然に奏させるようにするものであり、当該効果が奏されることとの関係において、前記サーバの所在地が我が国の領域外にあることに特段の意味はない」とし、「そして、被上告人が本件特許権を有することとの関係で、上記の態様によるものである本件配信やその結果として構築される本件システムが、被上告人に経済的な影響を及ぼさないというべき事情もうかがわれない。」と結論付けました。

 いずれも、システム構成として、国境を超えるのは当たり前の時代であり、その一部が越境することについて、異議はないとし、日本に所在する端末の存在をシステムの構成要件にすることが本件特許の及ぶ必要条件として認定したように理解できる。属地主義の原則からすると、例外の事例を出したと理解しないと、特許の独立の原則から外れることになるのではないだろうか。短絡的に考えると、システムクレームの場合、実施行為において、サーバの所在地は外国だけでなくクラウドでもいいということになるし、閲覧、操作が日本にある端末のみできるならばよいというように読める。侵害判断では、権利者の救済を前提とし、特許権者に経済的影響を及ぼしていれば、訴求できるのは当たり前の判断である。このように考えると、クレームドラフティング、権利取得国について、改めてよく考え、対応することが求められる。

参照サイト: https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=93838
 https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=93839