【インドネシア】特許法改正案(8月18日)

インドネシア知識産総局(DGIP,DJKI)は、2016年に改正された特許法を改正することについて、Dede Mia Yusanti局長がメディ発表を行い、24項目を紹介した。改正の目的は雇用創出機会の創出及び国際標準への対応であるが、全体的に現状の実務を含めた調整が多い。しかし、特許実施義務については負担が増えそうである。なお、改正時期は不明である。

公示された改正内容は以下の通り:
1. 第4条(d)号の修正
 単なるコンピュータプログラムは非特許対象であるところ、技術的効果と特徴がある場合、特許保護対象とする。
2. 第4条(f)号の削除
 発見を非特許対象から削除する。
3. 第6条(1)項の修正
 特許出願の新規性喪失の例外のグレース期間を6か月から12か月に拡大する。
4. 第9条1項(c)号を第4条(c)号に移行
 科学と数学の分野における理論と方法は非特許対象へ移行する。
5. 第19条に項を追加
 第三者への実施許諾(TRIPS第28条(2)項,対応)を追加する。
6. 第20A条の追加
 第20条でいう特許権者はインドネシアでの特許実施に関する陳述書を提出し、特許付与後、毎年末に大臣に報告しなければならない。
7. 第26条に遺伝資源(SDG)の申告義務の追加
 発明が遺伝資源に関する場合、明細書及び願書に明確正確に記載しなければならず、政府が承認する公式機関により承認されなければならない。
8. 第25条に項を追加
 発明が遺伝資源或いは伝統的知識に関連する場合、遺伝的資源或いは伝統的知識の出所の陳述を提出しなければならない。
9. 第24条に項を追加
 (1)項に規定のクレーム数が10個を超える場合、超過手数料を支払わなければならない。
10. 第28条に項を追加
 (1)項に規定の出願人は、インドネシアの法定住所として、代理人の住所を記載し、選択しなければならない。
11. 第30条に項を追加
 (1)項に規定の優先権主張が12か月以内にされなかった場合、期限満了後4か月以内に提出することができる。優先権主張料金は支払わなければならない。
12. 第34条に項を追加
 第25条(2)項(b)号の明細書が外国語の場合、英語以外の場合は英語とインドネシア語の翻訳文、明細書が英語の場合、インドネシア語の翻訳文を提出しなければならない。
13. 第36条(方式審査での却下)に項を追加
 (1)項に記載の見做し取下げ出願は、料金の支払いとともに再出願することができる。
14. 第51A条の追加
 第51条に記載の実体審査は料金の支払いとともに予備実体審査で処理することができる。
15. 第57A条の追加
 第51条に記載の実体審査の早期審査は公開後に料金の支払いとともに請求することができる。
16. 第63A条(分割出願)の追加
 実体審査請求は、料金の支払いと共に大臣に請求することができる。
17. 第67条(審判請求)に項を追加
 (1)項(c)号での申立人、被申立人の居所がインドネシア国内にない場合、インドネシアの代理人を通じて提出しなければならない。
18. 第68条(拒絶査定)に項を追加
 出願拒絶査定に対する審判請求は、出願拒絶の通知日或いは実体審査での拒絶査定通知日から3か月以内に提出しなければならない。
19. 第72条に項を追加
 商事裁判所への提訴は、特許審判委員会による審査・決定後にすることができる。
20. 第84A条(強制実施権の請求)の追加
 強制実施権の付与に関する第81条(4)号および第84条(1)b号は、独占と競争を管轄する事業競争監督委員会の決定がある場合、除外される。
21. 第103条(強制実施の終了)に項を追加
 強制実施権は強制実施権の最初の認定日から2年間公共の利益を害する状況での如何なる実施も認められない。
22. 第109条(政府による特許実施)に項を追加
 政府に実施する意図がない場合、特許権者は政府の承認がある場合にのみ特許を行使することができる。
23. 第111A条(第109条(1)(b)号)の追加
 インドネシアで製造できない医薬品の政府による輸入調達の決定(強制実施権の設定)
24. 第112条(国防、安全保障)に項を追加
 特許権者が1項に記載の排他的権利を行使できない場合、年金納付義務を免除する。

参照サイト:https://www.dgip.go.id/artikel/detail-artikel/djki-sosialisasikan-rancangan-revisi-undang-undang-paten-kepada-stakeholder-terkiat?kategori=liputan-humas

【中国】中国特許法の第4次改正が成立(2021年6月1日施行)

第13次全人代常務委員会第22回会議は10月17日付で特許法改正を採決した。改正法は2021年6月1日から施行される。

既にご紹介したように、今回の特許法改正には主に以下の3つが主要な内容である。概ね、最終的な改正草案の内容通り追加された模様である。
1.特許権者の合法的権益の保護強化
法定賠償額を最低3万元以上500万元と引上げ、賠償額の算定に1から5倍の懲罰的賠償の導入など特許権侵害に対する賠償の増額、立証責任、提訴前仮差止に加えて、行政ルートでの保護専利行政保護を充実させるとともに、信義誠実の原則、特許期間補償の導入、医薬品特許紛争の早期解決に関する内容が追加された。
2.特許の実施と運用の促進
職務発明制度の整備、特許開放許可制度の新設、特許転化支援の強化に関する内容が追加された。
3.特許登録手続きの調整
特に意匠特許制度の改正では部分意匠制度、国内優先権主張制度、保護期間を15年に延長が追加され、その他では新規性例外の規定に国家の緊急事態や公共の利益の喪失を追加、無審査登録の特許権評価報告制度を充実させる内容が追加された。

改正は、全31条に及び新設6条、削除1条である。7月の最終案と比べての変更は、以下の通り
 第51条2項 年金の減免の導入
 第71条 故意侵害の懲罰倍数の上限を3倍から5倍に(他の法律に合わせた)
     法定損害額の下限を3万元以上とした
 第76条 医薬品のパテントリンケージ対応は75条から分け新設、書き換えた

参照サイト:https://www.cnipa.gov.cn/art/2020/10/18/art_53_153525.html
仮訳 新旧対照表

【韓国】特許法改正施行、方法特許の申し出を侵害態様に追加(2020年3月11日)

韓国政府は特許法の改正を 2019年12月10日付で公布し、2020年3月11日から施行される。改正内容は、第2条(定義)の3項の実施について、ロ号の方法の発明の場合:「その方法を用いる行為」を「 その方法を用いる行為またはその方法の使用を申し出る行為」と改正し、使用の申し出を侵害態様に追加した。
 なお、 第94条(特許権の効力)に下記の②を追加し、侵害を知りながらの条件付きとしている。
②特許発明の実施が第2条第3号ロ目による方法の使用を申し出る行為の場合、特許権の効力は、その方法の使用が特許権または専用実施権を侵害するということを知りながらその方法の使用を申し出る行為にのみ及ぶ。

韓国特許法は、 「記録媒体に記録されたプログラム」のみを特許付与対象してきたために、オフラインで流通される場合にのみ保護され、コンピュータプログラムなどで具現化された発明技術の方法を含むソフトウェアがオンラインで販売、提供する行為を規制する改正が2005年から検討されており、今回の改正で導入されることになる。

ただし、「申出」が対象であり、「知りながら」を条件とするため、プログラムを侵害行為と知りながらオンラインで提供する者、具体的にはソフトウェアやデータを送信する行為やプラットフォームにアップロードする行為に対してのみ権利行使が可能であり、プログラムの使用には権利行使が可能ではない点に留意するしなければならない。もちろん、個人や善意の使用者にも権利行使はできない。権利範囲は狭く、また被疑侵害行為を立証する課題は大きいと思われる。

出展:Kim&Chang

【中国】 羅東川、最高知識産廷長の特許無効手続き改正意見が注目を集める (3月15日)

中国での政策決定大会である第13期全国人民代表大会(全人代)第2回会議と全国政協第13期第2回会議(両会)が、3月5日と3月3日に北京で開催されたが、新設された最高知識産法廷の羅東川廷長が現在改正が進められている特許法における特許無効手続きが科学的ではなく複雑であるため、特許権侵害と特許無効の相互の審理に影響があり、イノベーション型企業と社会から注目を受けていると指摘するとともに、特許無効手続きを改革し完全なものとする提言をしたことが報道され注目を受けているので、ご参考まで同氏の指摘をご紹介する。

現在の中国特許制度では特許の有効性の判断と処分権は専利復審委員会の専権事項であり、裁判所にはその決定権がないため、従来から無効却下→不服裁判→審査差戻の「循環訴訟」の温床になっていると指摘されているため、司法の立場からその問題点を指摘したと言える。なお、羅東川氏はこの提言を2009年の特許法改正時にも発表した経緯がある。

現在、中国経済は高度成長段階から高品質の段階に発展する転換期であり、イノベーション型国家と知的財産権強国の建設を加速し、知的財産権の保護と運用を更に強化することが求められている。しかし、知的財産権保護の面では、中国の現状の制度では国際的要件に対応できていない面がいくつかあり、その一つに特許無効手続き制度がある。羅東川氏は、現在の特許無効手続きは、特許登録後に第三者が特許の有効性に異議を申立てたことで始動する行政再審と司法審理手続きとなっており、言わば、審査部門が登録した特許権を無効にする手続きとなっていると説明するとともに、以下のように科学的でない点と循環訴訟が不可壁である点の2つを指摘している。

<科学的でないこと>

特許無効事件は、無効宣言請求人と被請求人の対抗が終始存在するため、当事者系手続きに属する。専利復審委員会は紛争において裁決を下す裁判者であるものの、行政であるため単独一方的な行為ではない。特許無効の決定は、行政処罰など典型的な行政行為とは明らかに違い、特許権を付与するかどうかの審決とも異なる。中国特許法は、専利復審委員会の裁決に不服の場合、裁判所に訴訟を提起することができると規定している。つまり、特許無効事件の訴訟手続きは行政訴訟手続きに従って処理され、専利復審委員会は個別の無効事件において、すべて被告になければならない。

このことから以下の3つの問題がある。

1 .真正な紛争当事者の双方は後続の訴訟手続きにおいて、その地位のバランスを失い、原紛争当事者は原告と第三者に代わり、専利復審委員会は争議の裁判者の立場から被告になり、訴訟での立場が悪いだけでなく、事実上、一方当事者の強い「代理人」になるのである。また、訴訟手続きにおける不作為またはミスのために当事者の利益が損なわれる、また専利復審委員会が期限内に答弁しないために敗訴の判決を受けることもある。

2 .行政訴訟の方式と規則により、当事者は行政訴訟手続き中に新証拠を提出できず、原則和解できないため、裁判所は単に専利復審委員会の決定を維持するか、取消すことになり、直接特許権の効力を決定することはできない。

3 .専利復審委員会は大量の特許無効事件では、被告を作り、応訴に疲れ、限られた行政資源を急増する特許無効宣言請求事件を処理するために集中することは難しく、公共資源の大きな浪費となっている。

<不可避な循環訴訟>

現行の特許無効手続きでは、循環訴訟を避けることはできない。特許無効事件は行政訴訟事件として審理されるために、特許法は裁判所に特許権の効力に対して司法としての変更権原を与えていない。専利復審委員会の誤った決定を裁判所は直接変更することはできず、取消の判決と再審の命令を出すことだけができる。専利復審委員会が新たな決定を下した後、当事者は再度新しい無効決定に対して行政訴訟を提起することができため、この循環を繰返すことは、特許侵害訴訟に遅延させることになる。これは、積極的なイノベーションとイノベーション成果の保護に影響を及ぼすだけではなく、スムーズで安全な市場取引に影響を及ぼすとともに、当事者の訴訟コストを更に増加させるのである。

世界に目を向けると、主要先進国または地域での特許無効手続きには2つの共通点がある。

1つは、一般的に特許無効手続きを特殊手続きとして扱い、特許行政審判機関は訴訟で被告とならない。例えば、アメリカ、日本、ドイツ、イギリス、フランス、オーストラリア、韓国、タイ、香港特別行政区などが代表的な国または地域であり、特許権無効手続きは常に無効請求人と特許権者の双方が当事者であり、特許行政審判機関は裁決者であり、被告にはならない。これは基本的に国際的な共通認識と共通の手法である。

2つは、特許無効紛争解決メカニズムは効率を重視し、手続きは更に簡便である。大陸法系の国と地域の裁判所は特許行政審判機関に判決の実質的な要求に従って行政行為をやり直すように指示するとともに、判決に基づいて裁決を下し、新たな事実と理由を入れてはならないとした場合、当事者は新たな裁決に対して再起訴することができないことを明確にしている。英米法系の国と日本の実務では、裁判所は特許民事事件で、特許権の有効性を審理することができ、特許侵害と特許無効の結果の調和を実現することができる。

こうした状況から羅東川氏は、特許無効手続き改革では、救済手続きの簡素化と紛争の実質的な解決の促進、法執行の統一的基準の確保の2つの基本的な目標を実現しなければならないと指摘している。

2019年1月1日付、最高人民法院知的財産法廷が新設され、すべての特許無効事件と特許侵害事件第二審が集中し統一した審理を実現することができるようになり、最高司法の面から特許権の有効性判断の統一を実現することができる。これは特許無効手続きの改革のために堅固な組織基盤を築いたことになる。同時に、技術調査官制度が日ごとに成熟し、司法裁判の専門化と職業化がますます強化され、裁判所が特許権の有効性問題の判断にさらに専門性と権威持ち判断することになる。

最高人民法院に知識産権法廷を設立したことを契機に、羅東川氏は特許無効手続きの改革と整備するために4つの具体的な意見を提案している。

(1)専利復審委員会は特許無効訴訟では被告とならず、第三者となることを明確にする。特許法第46条第2項を改正案:「専利復審委員会の特許権無効或いは特許権維持の決定の宣言に不服の場合、通知の日から3か月以内に人民法院に起訴することができるとともに、無効宣言請求手続きの相手方の当事者を被告として、専利復審委員会を第三者とすることができる」。

(2)専利復審委員会は必要に応じて、或いは人民法院の求めに応じて、特定の問題に意見を提出するために出廷することができることを明確にする。特許法第46条に1項を追加する案:「人民法院は前項の案件を審理する場合、必要に応じて専利復審委員会に出廷して特定な問題について意見を発表するよう通知することができる。」或いは「専利復審委員会は特許無効行政訴訟に被告として訴訟に参加しない。但し、必要に応じて出廷して意見を発表することができる。同時に、人民法院が専利復審委員会に特定の問題に出廷して意見を発表するよう求めた場合、それに出廷する義務がある。」

(3)人民法院に司法変更権を与えるか、或いは専利復審委員会は人民法院が下した判決の実質的な要求に従って決定を下さなければならないことを明確することを特許法に明確に規定する。

 (4)特許無効の抗弁を明確にする。特許侵害事件において、被告は原告の特許権の有効性に対して無効の抗弁をすることができ、特許民事侵害事件を審理する人民法院は個別の案件において、特許権の有効性を審査する権限を与える。これは特許侵害事件の審理期間を短縮し、審理効率を高めることに有利であり、特許紛争の実質的な解決に役立つものである。

参考サイトは下記の通り。

 http://www.chinatrial.net.cn/news/26204.html

【中国】市場監督管理総局2019年度の法律改正計画を公示(2019年2月5日)

国家知識産権局を管轄する市場監督管理総局は、2月5日付、2019年度の法律改正計画(国市監法〔2019〕18号)を公示した。1月10日付に起草されたものであるが、特許法(専利法)は含まれていないのは既に国務院に提出されており、特許審査基準の改正計画から3月の全人代で承認予定との噂通りと思われる。

知識産権局の関連では、「特許審査基準(専利審査指南)」、「特許代理管理規則」の改正、新たな立法で「商標出願行為の規範に関する若干の規定」、「商標電子出願及び電子送達に関する規定」、「特許代理人資格試験規則」を年内に完成するため6月までに準備を終えるとしている。この他、6月以降になるのは「特許法実施条例」の改正、新たに「官庁標識登録保護規則」、「商標代理監督暫定規則」を立法予定している。

この他で注文するべきものは、反独占局(独占禁止局)が「反独占法(独占禁止法)」の改正、独占協議、市場支配的地位の濫用、競争の制限とは以上に関する規定の改正を予定している。また、価格監督検査及び不当競争局の「営業秘密侵害行為の禁止に関する若干の規定」の改正などがある。

その他、医薬品、乳幼児食品や化粧品の取引に関する検査、管理などの規則や広告宣伝に関する規則など97の立法と改正が計画されている。

参考サイトは下記の通り。

http://www.gov.cn/xinwen/2019-02/05/content_5364002.htm