欧州連合知的財産庁(EUIPO)は、2020年6月18日に特別BREXITサイトを開設し、関係当事者への通知を掲載していたが、このサイトに9月10日付の以下の2つの新しい文書を掲載し、さらに詳しくBREXIT後の制度改正と対策すべき内容を紹介した。
- 通知No.2/20イギリスの欧州連合離脱が庁実務の特定の側面に及ぼす影響(Communication No 2/2020 of the Executive Director of the Office of 10 September 2020 on the impact of United Kingdom’s withdrawal from the European Union on certain aspects of the practice of the Office)
- 付属Q&A説明書 イギリスの欧州連合離脱が欧州連合商標及び共同体意匠の側面に及ぼす影響Q&A(Impact of the United Kingdom’s withdrawal from the European Union on the European Union trade mark and the Community design Q & A document)
通知No.2/20は6月18日付の通知を補完する内容となっており、Q&A説明書は55の設問に回答する構成となっており、移行経過措置期間が2020年12月31日をもって終了することを踏まえて、この3か月間に対応するべきイギリスの離脱による実務上の対応に対する最終的示唆を提供している。
通知No.2/20は以下の構成となっており、主な注意点は以下の通り:
i. 範囲を目的
ii.権利者と代理人に対する通知
iii.シニオリティ・先行商標(欧州商標法39条、40条)
iv.コンバージョン・各国移行(欧州商標法139条)
v.当事者系手続きでの先の権利
vi.代理
vii.代理人
viii.国際出願の優先権の基礎
- 2021年1月1日出願以降のイギリス商標出に基づくシニオリティの主張はできなくなる。以前に出願されたものは、経過措置期間終了時点で無効となる。
- 欧州連合商標出願の拒絶或いは取下によりイギリス国内商標出願に2021年1月1日以前の3か月以内に国内移行係属中の事案は処理される。
- 2021年1月1日より、イギリスの権利は当事者系手続き(異議、無効)において、もはや「先の権利(prior rights)」とは見做されなくなる。
- 欧州連合(EU)及び欧州経済領域(EEA)以外に居住する権利者は代理人を必要とする。なお、経過措置期間終了前に手続きをしていた事案を除く。
- 代理人を必要とする事案で代理人が指名されていない場合、庁はその対応を促すものの代理人が指名されない場合、手続きは却下される或いは提出物は対応されないことになる。権利者が対応しない。但し、2021年1月1日以前に提出された事案を除く。
- 代理行為の継続は係属中の手続きに限られ、これまでのイギリスの代理人も代理人できる。
- 係属中の案件の代理人情報を除き、EUIPOでの代理権限が失われる全ての代理人は、その情報が経過措置期間終了後自動的に削除され、代理人ID番号も失効し、庁が管理する代理人リストから除外され、手続きサイトで案件のメッセージの送信もできなくなる。
Q&Aは以下の構成となっており、主な注意点は以下の通り:
A.保護の範囲
B.権利維持
C.公用語としての英語
D.優先権及びシニオリティ
E.当事者系と査定系手続き
F.国際出願
G.欧州意匠
H.所有権と行為能力
I.イギリスの利用者への影響
J.代理
K.イギリスの代理人への影響
- 欧州連合のいずれかの商標裁判所による措置或いは2021年1月1日から発効する措置は、経過措置期間終了前に手続きが開始された事案のみ、イギリスで執行することができる。
- イギリスの裁判所は、当日から欧州連合内で効力を有する措置を下す権限を失うため、経過措置期間終了前に開始された法的手続きの結果として下された措置、或いは経過措置期間終了時の決定的な措置のみが欧州連合域内で執行可能である。
- 欧州商標のイギリスでの使用は欧州連合域内での使用とは見なされなくなるため、2021年1月1日より前の欧州商標のイギリスでの使用は使用証明対象期間に該当する場合は考慮される。
- 維持されていないイギリス商標のシニオリティはイギリスではもはや主張ができないが、このイギリス商標のシニオリティは、新たにクローンとして作成されたイギリス商標にリンクされる。
- 英語は依然として公用語の1つであり、英語でのサービスは欧州商標に対する絶対的拒絶理由の根拠となる可能性がある。なお、イギリスにしか存在しない絶対的拒絶理由に基づいて拒絶や無効にすることはできない。
- 英語を公用語とする場合相対的拒絶理由において関連があると見なされるが、今後は以前のヨーロッパでの権利とその後の欧州商標出願の衝突での評価目的に利用できないことに注意が必要である。
- イギリスの先の権利は欧州知的財産庁での手続きに主張できなくなる。2021年以降、イギリス法に基づくいかなる異議申立や無効取消も受理されない。
- 経過措置期間終了前のイギリスでの商標の使用は有効である。しかし、欧州連合でのそうした使用の評価は徐々に低下する。
- 欧州商標の著名性の立証は当該立証時点での著名性に基づき決定されなければならないため、経過措置期間終了とともにイギリスでの著名性の評価はりようできなくなる。
- 国際登録商標の欧州指定はイギリス国内商標に移行し登録される。
参照サイト:https://euipo.europa.eu/ohimportal/brexit-q-and-a